報道発表資料
この事例集が、これから取組を始めようとする方々を含め、多くの関係者の参考となり、全国各地で「豊かな海」を目指した取組が進むことが期待されます。
1.背景
平成27年2月に瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく瀬戸内海環境保全基本計画について、変更の閣議決定がなされ、同年10月に同法が改正されました。これらにより、瀬戸内海を「豊かな海」としていく考え方が明確にされました。さらに、同年12月には、東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を対象に実施されている水質総量削減制度について、中央環境審議会から「第8次水質総量削減の在り方について」の答申が出されました。
いずれも、良好な水質を保全することに加え、干潟や藻場の保全・再生などを通じて生物多様性・生物生産性を確保することの重要性が掲げられています。また、湾・灘ごとなどの実情に応じた総合的な取組を、地域の多様な主体が連携して推進することなどが必要とされています。
2.「豊かな海」を目指した取組の事例集
法改正などで掲げられた「豊かな海」の考え方は、全国の閉鎖性海域(内湾や内海など陸域に囲まれた閉鎖性の高い海域)の水環境を保全する上でも重要なものとなります。また、「豊かな海」を目指すためには、地域の実情に応じて、関係行政や漁業者、NPO、研究者、地域住民、企業など地域の様々な関係者が連携して取り組んでいくことが必要です。
このため、今般、各地における「豊かな海」を目指した取組の事例集をまとめました。事例集では、「豊かな海」を目指して様々な創意工夫のもと進められている10の取組について、それぞれの取組の概要や成果、ポイントなどを整理するとともに、図表や写真を多用してできるだけわかりやすいものとなるように工夫をしました。
■豊かな海とは
今回の事例集では、水質が良好な状態で保全され、生物多様性や生物生産性が確保されるなど、様々な価値や機能が最大限に発揮された海を「豊かな海」としています。
■取組の事例集
「豊かな海」を目指して様々な創意工夫のもと進められている以下の10事例を対象として、関係者へのヒアリング調査などを行い、それぞれの取組の概要や成果、ポイントなどを整理し、事例集としてとりまとめました(添付資料)。
10事例の一覧表
取組の種類 |
取組の内容 |
場所 |
|
1 |
干潟の保全・再生 |
かつて干潟であった遊休地に、再び海水を導入して干潟に再生しようとする取組 |
英虞湾 |
2 |
干潟の保全・再生 |
流域全体を視野に入れ、地域の多様な関係者が連携した干潟再生の取組 |
瀬戸内海 椹野川 |
3 |
干潟の保全 |
残された干潟を中心として、行政と市民団体や企業などが有機的に連携・共働した取組 |
博多湾 |
4 |
深掘り跡の埋戻し |
環境改善に必要な土砂について、流域の関係機関が連携して活用方策を検討している取組 |
三河湾 |
5 |
浅場の造成 |
国と県が連携し、河川の浚渫土砂を活用して漁場改善のために浅場を造成した取組 |
瀬戸内海 加古川 |
6 |
藻場の造成 |
行政の準備した枠組みを活用した、企業によるアマモ場の造成の取組 |
東京湾 |
7 |
藻場の造成 |
行政と企業が協働し、新たな観点から藻場を活用した環境改善を進めている取組 |
東京湾 |
8 |
藻場の保全・再生 |
漁業者が自らモニタリングなどを行い、小学校とも連携した藻場の再生に向けた取組 |
名護屋湾 |
9 |
環境配慮型構造物の整備 |
行政が整備した生物共生型護岸を、様々な市民団体が連携して活用している取組 |
瀬戸内海 (大阪湾) |
10 |
環境配慮型構造物の整備 |
行政が漁業者の意見を聴きながら、自然調和型の漁港づくりを進めている取組 |
瀬戸内海 (播磨灘) |
10事例の位置図
(参考)技術的なガイドラインなど
事例集とあわせて、各地における「豊かな海」を目指した取組の参考となるよう、これまでに国が中心となって策定された技術的なガイドラインなどを整理しました。なお、この他、地方公共団体などにおいても各地域の実情を踏まえたガイドラインなどが策定されています。
「豊かな海」を目指した取組に活用できる技術なマニュアルなどの一覧
項目 |
名称 |
発行元 |
発行年月など |
自然再生 |
海の自然再生ハンドブック -その計画・技術・実践- |
監修:国土交通省港湾局 著 :海の自然再生ワーキング・グループ 企画:財団法人港湾空間高度化環境研究センター |
平成15年11月 |
里海 |
里海づくりの手引書 |
環境省 |
平成23年3月 |
里海づくり活動状況調査の結果について |
環境省 |
平成27年3月 (報道発表) |
|
干潟・藻場 |
藻場・干潟ビジョン |
水産庁 |
平成28年1月 |
干潟 |
干潟造成技術マニュアル(Ver.1) ~成功事例に学ぶ干潟造成技術~ |
国土交通省中国地方整備局 |
平成18年3月 |
順応的管理による海辺の自然再生 |
国土交通省 |
平成19年3月 |
|
干潟生産力改善のためのガイドライン |
水産庁 |
平成20年2月 |
|
藻場 |
藻場の復元に関する配慮事項 |
環境省 |
平成16年3月 |
改訂 磯焼け対策ガイドライン |
水産庁 |
平成27年3月 |
|
アマモ類の自然再生ガイドライン |
水産庁、一般社団法人マリノフォーラム21 |
平成19年3月 |
|
藻場資源消滅防止対策ガイドライン |
水産庁 |
平成21年3月 |
|
環境配慮 型構造物 |
生物共生型港湾構造物の整備・維持管理に関するガイドライン |
国土交通省 |
平成26年7月 |
添付資料
- 連絡先
- 環境省水・大気環境局水環境課閉鎖性海域対策室
直通:03-5521-8320
代表:03-3581-3351
室 長:根木 桂三 (6502)
室長補佐:石川 拓哉 (6503)
担 当:中西 靖裕 (6506)