報道発表資料
本事業は、横須賀火力発電所構内において、重油・原油を燃料とする3~8号機等を廃止し、新たに石炭を燃料とする発電設備(出力約130万kW)を設置するものである。
環境大臣意見では、省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成、達成状況の毎年度の自主的公表、その達成に向けた取組内容の検討及び準備書への記載、達成できないと判断した場合の事業見直しの検討、原則、電力業界の自主的枠組み参加事業者への電力供給等を求めた。
また、経済産業省に対して、全ての発電事業者に対する確実な省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標遵守、電力業界に対する自主的枠組み参加事業者の拡大と目標達成の取組促進、小売電気事業者に対する高度化法の遵守、省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置の適切な運用等を通じた、電力業界全体の取組の実効性の確保等を求めた。
1.背景
環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kW以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書※について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。本件は、この手続きに沿って意見を提出するものである。
今後、経済産業大臣から事業者である東京電力フェエル&パワー株式会社に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。
※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。
2.事業の概要
本事業は、東京電力フェエル&パワー株式会社が、横須賀火力発電所構内において、重油・原油を燃料とする3~8号機、軽油を燃料とする非常用設備である1号ガスタービン発電設備及び軽油等を燃料とする2号ガスタービン発電設備を廃止し、新たに石炭を燃料とする発電設備(出力約130万kW)を設置するものである。
3.環境大臣意見の概要
【1】前文
我が国の温室効果ガス削減目標を規定した「日本の約束草案」と整合的なエネルギーミックスについて、その達成を各電源において目指す中で2030年度の総発電電力量に占める石炭火力発電の割合は26%程度であり、2014年度の実績の石炭火力発電の電力量が既にそれを上回っている状況の中で、石炭火力発電所の新設・増設計画が後を絶たず、石炭火力発電の割合の増加は我が国の温室効果ガス削減目標の達成に深刻な支障を来すことが懸念される。
現時点において、本事業者の省エネ法に基づく目標(火力発電効率A指標及びB指標)の達成状況は不明であるが、来年度以降、情報を自主的に公表することが期待される。また、本事業者は、目標達成に向けた具体的な方策や行程は必ずしも明確にしていないものの、保有する火力発電設備のうち液化天然ガス火力発電設備の割合が高いことに加え、今後、老朽設備のリプレース等による発電効率の向上、維持等により、現時点では2030年度までにいずれの目標も達成できるとの見通しを示している。
なお、本事業は、株式会社JERAが実施することが検討されており、現時点では火力発電効率B指標の目標達成に向けた具体的な方策や行程は十分に示されていないものの、株式会社JERAが実施する場合には、石炭火力と液化天然ガス火力のバランスのとれた適切な電源ポートフォリオの構築等により、当該目標を達成することが示されている。
いずれにしても、これらの方針等を踏まえ、2030年度の目標の達成に向けた努力が必要である。
本事業で発電した電力は、自社以外の自主的枠組みに参加する小売電気事業者に販売するよう努めることとしているが、現時点で供給先は未定であるため、今後、自主的枠組み参加事業者に電力を供給することを明らかにする必要がある。
経済産業省においては、全ての発電事業者に対して2030年度に向けて、確実に省エネ法の目標を遵守させること。共同実施の評価の考え方を明確化すること。また、自主的枠組みに関し、電力業界に対して、参加事業者の拡大に取り組み、目標の達成に真摯に取り組むことを促すこと。さらに、小売電気事業者に対して、高度化法を遵守させること。省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置を適切に運用すること等を通じて、電力業界全体の取組の実効性を確保すること。
【2】総論
(1)本事業において新設する発電設備の稼働に伴う環境影響は、公害防止協定等で規定している既設発電設備の稼働に伴う環境影響より減少するものの、既設発電設備が長期計画停止中である現時点の環境影響よりも増加することとなることを踏まえ、今後、本事業に伴う環境影響を回避・低減するため、必要に応じて専門家等の助言も受けた上で、科学的知見に基づく十分かつ適切な調査をし、予測及び評価並びに環境への影響低減のための適切な環境保全措置を検討すること。
(2)地元自治体の意見を十分勘案し、環境影響評価において重要である住民等の関係者の関与についても十全を期すこと。
【3】各論
(1)温室効果ガス
1) 局長級取りまとめの「BATの参考表【平成26年4月時点】」に掲載されている「(B)商用プラントとして着工済み(試運転期間等を含む)の発電技術及び商用プラントとしての採用が決定し環境アセスメント手続きに入っている発電技術」の効率を上回る高効率の発電設備を導入することとしているところ、当該発電設備の運用等を通じて送電端熱効率の適切な維持管理を図ること。
2) 省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成に向けて計画的に取り組み、2030年度に向けて確実に遵守すること。その達成状況を毎年度自主的に公表するとともに、その取組内容を検討し、可能な限り、準備書に記載すること。
本事業者が目標を達成できないと判断した場合には、本事業の見直しを検討すること。さらに、今後、電気事業分野における地球温暖化対策に関連する施策の見直しが行われた場合には、必要な対策を講ずること。
3) 環境負荷の大きい石炭火力発電による電力の供給者として、高度化法では小売段階において低炭素化の遵守が求められていることを理解し、現時点で供給先が未定であることを踏まえ、原則、自主的枠組みの参加事業者に電力を供給し、その旨を準備書において明確にするとともに、自主的枠組み全体の目標達成に取り組むことを通じて、確実に二酸化炭素排出削減に取り組むこと。
4) 「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」との国の長期的な目標に鑑み、将来の二酸化炭素回収・貯留の導入に向けて、国の検討結果や、二酸化炭素分離回収設備の実用化をはじめとした技術開発状況を踏まえ、本発電所について、二酸化炭素分離回収設備に関する所要の検討を行うこと。
5) 事業者における長期的な二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行い、適切な範囲で必要な措置を講ずること。
(2)大気環境
1) 煙突の高さ及び配置等に関して、大気汚染物質の拡散状況、短期高濃度条件の影響について十分考慮した適切な環境保全措置を検討すること。
2) 今後、公害防止協定が見直される場合にはそれを遵守するよう、最良の技術による環境対策設備を採用し、施設の適切な維持管理を図ること。
3) 水銀の大気排出規制に係る今後の動向並びに微小粒子状物質(PM2.5)の予測手法及び対策に係る今後の動向を踏まえ、必要な調査、予測及び評価並びに環境保全措置を検討すること。
(3)水環境
施設稼働に伴う排水による水環境への影響が懸念されることから、必要な調査、予測及び評価並びに適切な環境保全措置を検討すること。
さらに、今後、公害防止協定が見直される場合にはそれを遵守すること。
(4)廃棄物等
石炭灰について、セメント原料等として適切な有効利用が図られるよう、稼働期間における継続的な有効利用方法及び利用先を確保すること。
【参考】
○事業概要 ○環境影響評価に係る手続 |
添付資料
- 連絡先
- 環境省総合環境政策局環境影響審査室
室 長:大井 通博(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
係 長:安陪 達哉(内6208)
担 当:知名 光太郎(内6209)