報道発表資料

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2016年07月01日
  • 総合政策

福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来)に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、1日、福島県いわき市で計画されている「福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来)に係る環境影響評価準備書」(東京電力ホールディングス株式会社及び常磐共同火力株式会社)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、常磐共同火力株式会社勿来発電所構内及びその隣接地に世界最新鋭の石炭ガス化複合発電設備(出力54万kW)を新たに設置し、実証を行うとともに、実証終了後も継続して運転するものである。
 環境大臣意見では、省エネ法に基づくベンチマーク指標の遵守、取組内容の評価書への記載、達成状況及び更なる取組の検討と自主的公表、達成できないと判断した場合の事業見直しの検討、原則、局長級取りまとめに基づく枠組の参加事業者への電力供給等を求めた。
 また、経済産業省に対して、全ての発電事業者に対する確実な省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標遵守、電力業界に対する自主的枠組み参加事業者の拡大と目標達成の取組促進、小売電気事業者に対する高度化法の遵守、省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置の適切な運用等を通じた、電力業界全体の取組の実効性の確保等を求めた。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kW以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された環境影響評価準備書について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。本件は、この手続に沿って意見を提出するものである。
 今後、事業者である東京電力ホールディングス株式会社及び常磐共同火力株式会社には、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続と環境保全措置の実施が求められる。

※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測、評価及び環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。

2.事業の概要

 本事業は、東京電力ホールディングス株式会社及び常磐共同火力株式会社が、常磐共同火力株式会社勿来発電所構内及びその隣接地に世界最新鋭の石炭ガス化複合発電設備(出力54万kW)を新たに設置し、実証を行うとともに、実証終了後も継続して運転するものである。

3.環境大臣意見の概要

[1] 前文

 我が国の温室効果ガス削減目標である「日本の約束草案」と整合的なエネルギーミックスについて、2030年度の総発電電力量に占める石炭火力発電の割合に対する2014年度の実績の石炭火力発電の電力量が既にそれを上回っている状況の中で、石炭火力発電所の新設・増設計画が後を絶たず、石炭火力発電の割合の増加は我が国の温室効果ガス削減目標の達成に深刻な支障を来すことが懸念される。
 本事業の事業体制については検討がなされているところであり、ベンチマーク指標(火力発電効率A指標及びB指標)の目標達成を担う事業者が確定していない。現時点において省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成に向けた具体的な方策や行程は示されておらず、目標達成を担う事業者を実証段階については速やかに、商用段階については進捗に応じて可能な限り速やかに明らかにすることを含め、2030年度の目標の達成に向けた努力が必要である。
 経済産業省においては、全ての発電事業者に対して2030年度に向けて、確実に省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標を遵守させること。共同実施の評価の考え方を明確化すること。また、自主的枠組みに関し、電力業界に対して、参加事業者の拡大に取り組み、目標の達成に真摯に取り組むことを促すこと。さらに、本事業者の供給先を含む小売電気事業者に対して、高度化法を遵守させること。省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置を適切に運用すること等を通じて、電力業界全体の取組の実効性を確保すること。

[2] 総論

 本事業の工事の実施、実証及び実証終了後の供用に当たっては、温室効果ガスの排出削減対策をはじめ、大気環境及び水環境の保全対策、スラグ等の廃棄物の適正処理等の環境保全措置を適切に講ずること。
 また、対象事業実施区域周辺で土地区画整理事業が計画されていること及び避難住民がいることも勘案し、地元住民・自治体への説明や意見の聴取等の機会については、現状、十分に確保するよう努めていることも踏まえ、引き続き、地元住民への丁寧な説明等に努めること。

[3] 各論

(1)温室効果ガス

1) 局長級取りまとめの「BATの参考表【平成26年4月時点】」に掲載されているもののうち現時点で石炭火力発電の最高効率である「(C)上記以外の開発・実証段階の発電技術」の発電設備を導入することとしているところ、当該発電設備の運用等を通じて送電端熱効率の適切な維持管理を図ること。

2) 省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成に向けて計画的に取り組み、2030年度に向けて確実に遵守すること。
 また、少なくとも実証段階において目標達成を担う事業者を明確にした上で、その取組内容について、可能な限り評価書に記載し、当該取組内容を公表し続けること。さらに、その達成状況を毎年度自主的に公表すること。目標達成に向けた更なる取組内容を検討し、自主的に公表すること
 本事業者がベンチマーク指標の目標を達成できないと判断した場合には、本事業の見直しを検討すること。さらに、今後、地球温暖化対策関連施策の見直しが行われた場合には、必要な対策を講ずること。

3) 環境負荷の大きい石炭火力発電による電力の供給者として、高度化法では小売段階において低炭素化の取組が求められていることを理解し、原則、自主的枠組み参加事業者に電力を供給し、確実に二酸化炭素排出削減に取り組むこと。

4) 「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」との国の長期的な目標に鑑み、将来の二酸化炭素回収・貯留の導入に向けて、国の検討結果や、二酸化炭素分離回収設備の実用化をはじめとした技術開発状況を踏まえ、本発電所について、二酸化炭素分離回収設備に関する所要の検討を行うこと。

5) 事業者における長期的な二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行い、適切な範囲で必要な措置を講ずること。

(2)大気環境等

1) 騒音及び低周波音について、本発電設備設置予定地に近接して土地区画整理事業が計画されていることも踏まえ、追加の環境保全措置を含めた適切な対応を行うこと。

2) 水銀の大気排出規制に係る今後の動向及び微小粒子状物質(PM2.5)に係る最新の知見を踏まえ、追加の環境保全措置を含めた適切な対応を行うこと。

(3)水環境

 累積的な影響が懸念されることから、温排水の状況について継続的に把握し、適切な環境保全措置を講ずること。

(4)廃棄物等

 本施設の稼働に伴い発生するスラグについては、セメント原料を含め、今後の有効利用について具体的な検討を行い、持続的な有効利用を図ること。


以上について、その旨を評価書に記載すること。

【参考】

○事業概要

・名称 : 福島復興大型石炭ガス化複合発電設備実証計画(勿来)

・事業者 : 東京電力ホールディングス株式会社及び常磐共同火力株式会社

・計画位置 : 福島県いわき市

・燃料 : 石炭

・発電方式 : ガスタービン及び汽力(コンバインドサイクル発電方式)

・出力 : 54万kW

・工事開始時期 : 平成28年(予定)

・運転開始時期 : 平成32年(予定)

○環境影響評価に係る手続

【配慮書の手続き】

・公表 : 平成26年5月16日 ~ 平成26年6月16日

・福島県知事意見提出 : 平成26年7月14日

・経済産業大臣意見 : 平成26年7月31日

【方法書の手続き】

・縦覧 : 平成26年11月11日 ~ 平成26年12月10日(住民意見 14件)

・福島県知事意見提出 : 平成27年3月12日

・経済産業大臣通知 : 平成27年3月30日

【準備書の手続き】

・縦覧 : 平成27年11月26日 ~ 平成27年12月25日(住民意見 49件)

・福島県知事意見提出 : 平成28年5月26日

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
室  長:大井  通博(内6231)
室長補佐:相澤  寛史(内6233)
審査官 :谷本  昌敏(内6253)
担  当:知名 光太郎(内6209)

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