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2016年05月27日
  • 総合政策

鹿島火力発電所2号機建設計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について

 環境省は、27日、茨城県鹿嶋市で計画されている「鹿島火力発電所2号機建設計画に係る環境影響評価準備書」(鹿島パワー (株))に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、茨城県鹿嶋市の新日鐵住金株式会社鹿島製鐵所構内において、石炭を燃料とする鹿島火力発電所2号機(出力64.5万kW)を新たに建設するものである。
 環境大臣意見では、省エネ法に基づくベンチマーク指標の遵守、取組内容の評価書への記載、達成状況及び更なる取組の検討と自主的公表、達成できないと判断した場合の事業見直しの検討、原則、局長級取りまとめに基づく枠組の参加事業者への電力供給等を求めた。
 また、経産産業省に対して、全ての発電事業者に対する確実な省エネ法に基づくベンチマーク指標の遵守、電力業界に対する自主的枠組み参加事業者の拡大と目標達成の取組促進、小売電気事業者に対する高度化法の遵守、省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置の適切な運用等を通じた、電力業界全体の取組の実効性の確保等を求めた。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力11.25万kW以上の火力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された環境影響評価準備書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して意見を言うことができるとされている。本件は、この手続に沿って意見を提出するものである。
 今後、事業者である鹿島パワー株式会社には、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続と環境保全措置の実施が求められる。

※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測、評価及び環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。

2.事業の概要

 本事業は、鹿島パワー株式会社が茨城県鹿嶋市の新日鐵住金株式会社鹿島製鐵所構内において、石炭を燃料とする鹿島火力発電所2号機(出力64.5万kW)を新たに建設するものである。


3.環境大臣意見の概要
(1)前文
 我が国の温室効果ガス削減目標である「日本の約束草案」と整合的なエネルギーミックスについて、2030年度の総発電電力量に占める石炭火力発電の割合に対する2013年度の実績の石炭火力発電の電力量が既にそれを上回っている状況の中で、石炭火力発電所の新設・増設計画が後を絶たず、石炭火力発電の割合の増加は我が国の温室効果ガス削減目標の達成に深刻な支障を来すことが懸念される。
 現状のままでは、本事業者単独では、2030年度における火力発電効率B指標の目指すべき水準を下回っている状況である。現時点では、共同実施により当該指標の目標達成に努めるとするにとどまり、その達成に向けた具体的な方策や行程は示されておらず、目標の達成に向けた努力が必要である。
 経済産業省においては、全ての発電事業者に対して2030年度に向けて、確実に省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標を遵守させること。共同実施の評価の考え方を明確化すること。また、自主的枠組みに関し、電力業界に対して、参加事業者の拡大に取り組み、目標の達成に真摯に取り組むことを促すこと。さらに、小売電気事業者に対して、高度化法を遵守させること。省エネ法及び高度化法の指導・助言、勧告・命令を含めた措置を適切に運用すること等を通じて、電力業界全体の取組の実効性を確保すること。


(2)総論
 本事業の工事及び施設の供用に当たっては、温室効果ガスの排出削減対策をはじめ、大気環境の保全対策、水環境の保全対策、石炭灰等の廃棄物の適正処理等の環境保全措置を適切に講ずること。

(3)各論
①温室効果ガス
1) 局長級取りまとめの「BATの参考表【平成26年4月時点】」に掲載されている「(B)商用プラントとして着工済み(試運転期間等を含む)の発電技術及び商用プラントとしての採用が決定し環境アセスメント手続きに入っている発電技術」について採用の検討を行った上で「(A)経済性・信頼性において問題なく商用プラントとして既に運転開始をしている最新鋭の発電技術」以上の高効率の発電設備を導入することとし、当該発電設備の運用等を通じて送電端熱効率の適切な維持管理を図ること。

2) 省エネ法に基づくベンチマーク指標の目標達成に計画的に取り組み、2030年度に向けて確実に遵守すること。
 また、その取組内容について、可能な限り評価書に記載し、当該取組内容を公表し続けること。さらに、その達成状況を毎年度自主的に公表すること。目標達成に向けた更なる取組内容を検討し、自主的に公表すること。
 本事業者がベンチマーク指標の目標を達成できないと判断した場合には、本事業の見直しを検討すること。さらに、今後、地球温暖化対策関連施策の見直しが行われた場合には、必要な対策を講ずること。

3) 環境負荷の大きい石炭火力発電に基づく電力の供給者として、高度化法では小売段階において低炭素化の取組が求められていることを理解し、原則、自主的枠組みの参加事業者へ電力を供給し、確実に二酸化炭素排出削減に取り組むこと。

4) 「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」との国の長期的な目標に鑑み、将来の二酸化炭素回収・貯留の導入に向けて、国の検討結果や、二酸化炭素分離回収設備の実用化をはじめとした技術開発状況を踏まえ、本発電所について、二酸化炭素分離回収設備に関する所要の検討を行うこと。

5) 事業者における長期的な二酸化炭素排出削減対策について、所要の検討を行い、適切な範囲で必要な措置を講ずること。

②大気環境
 本施設の稼働に伴う大気質への影響をできる限り低減するため、施設の維持管理を図ること。また、水銀の大気排出規制に係る今後の動向及び微小粒子状物質(PM2.5)に係る最新の知見を踏まえ、追加の環境保全措置を含めた適切な対応を行うこと。

③水環境
 温排水の状況について継続的に把握し、必要に応じて、適切な環境保全措置を講ずること。

④廃棄物等
 石炭灰についてセメント原料等への持続的な有効利用を図ること。また、工事の実施に伴い発生するコンクリート等の廃棄物についても可能な限り有効利用を図ること。

【参考】

○事業概要
・名称: 鹿島火力発電所2号機建設計画
・事業者: 鹿島パワー株式会社
・計画位置: 茨城県鹿嶋市
・燃料: 石炭
・発電方式: 汽力
・出力: 出力64.5万kW
・CO2排出原単位: 0.767kg-CO2/kWh
・工事開始時期: 平成28年11月(予定)
・運転開始時期: 平成32年 7月(予定)

○環境影響評価に係る手続
【方法書の手続】
・縦覧: 平成26年 9月25日~平成26年10月24日(住民意見 19件)
・茨城県知事意見提出: 平成27年 2月18日
・経済産業大臣通知: 平成27年 3月 9日
【準備書の手続】
・縦覧: 平成27年10月 1日~平成27年11月 2日(住民意見 25件)
・茨城県知事意見提出: 平成28年 4月 1日
・環境大臣意見提出: 平成28年 5月27日

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代  表:03-3581-3351
直  通:03-5521-8237
室  長:神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審査官 :谷本 昌敏(内6253)
担  当:知名光太郎(内6209)

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