報道発表資料
1.背景・経緯
・2010年に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で、TEEB(生態系と生物多様性の経済学)の最終報告書が公表されるなど、生物多様性や生態系サービスの価値を経済的に評価することの重要性が注目されている。
・様々な主体が生物多様性及び生態系サービスの価値を認識し、その保全や利用に際して適切な意思決定が行われることを促進するため、環境省においても経済価値評価の検討を進めている。
・平成26-27年度※は、生物多様性の第2の危機(自然に対する働きかけの縮小による危機)にも位置づけられている里地里山を対象に、アンケート調査による評価手法を用いて、里地里山の生物多様性の経済的価値を算出した。
※平成26年度は下記の対象にアンケートによる評価(CVM)を行い、平成27年度には有識者による検討会において、評価結果のフォローアップ及び分析を行った。
2.評価対象
■里地里山の保全活動により維持される生物多様性の経済的な価値
生き物が棲める環境が保全されるという効果(生物多様性保全)が発揮されるよう、全国において里地里山を維持する取組を行うことについて、1世帯あたりの年間の支払意思額を確認。
3.評価手法
・WEBアンケートを用いたCVM※により評価。
・CVMでは、不適切なシナリオ設定や回答者がシナリオを正しく理解できていない場合などには調査結果にバイアスが生じ、正しく評価されない場合があるため、今回の評価は、可能な限りこうしたバイアスが生じないようまた過大評価とならないよう工夫しながら、有識者からの指摘・コメントを踏まえつつ実施した。
※CVM(Contingent Valuation Method:仮想評価法) アンケート調査等により支払い意思を聞き取ることにより、対象とする環境の持っている価値を評価する手法。回答者に環境改善のシナリオを示し、そのシナリオを実現することに対する支払意思を確認する。 |
4.評価結果
支払意思額に評価範囲(受益範囲)である全国の世帯数(51,950,504 世帯)を乗じて評価額を算出。
評価対象 |
有効回答数※1 |
支払意思額 (1世帯あたり年間※2) |
評価額(年間) |
全国的な里地里山の保全活動により |
312/432 |
中央値※3:1,411円 平均値※4:2,657円 |
約 733億円 約1,380億円 |
※1 有効回答数は、抵抗回答を除いた回答数
※2 アンケートでは里地里山を維持する取り組みが行われている間、毎年継続して支払うものとして質問した結果
※3 統計的にYES とNO の回答が半々となる値。政策を実行する際に過半数の支持が得られるかどうかの境界値
※4 統計的に算出した支払意思額の平均値
5.生物多様性・里地里山に対する認知度と支払意思額の関係
生物多様性、または里地里山に対する認知度別(それぞれ、各言葉を知っているかどうかでサンプルを区分)に支払意思額(1世帯あたり年間)を算出した。
生物多様性という言葉を |
里地里山という言葉を |
全体 |
|||
知っている |
知らない |
知っている |
知らない |
||
有効回答数 |
167 |
145 |
99 |
213 |
312 |
中央値 |
1,705円 |
1,123円 |
2,021円 |
1,193円 |
1,411円 |
平均値 |
2,981円 |
2,286円 |
3,345円 |
2,359円 |
2,657円 |
6.評価結果に関する留意事項
・今回の結果は、仮想的なシナリオを設定し、そのシナリオを実現することの価値を評価したものである。
・また、里地里山の保全活動による効果に対する経済的価値の中でも、その一部である生物多様性が保全されることのみを対象とした調査結果※であり、里地里山の保全活動によって生み出される経済的価値評価の全てを評価したものではない。
※生物多様性のほかに、里地里山が維持されることによって期待される効果として、「木材利用など資源価値の増加」、「文化・生活面での効果」「二酸化炭素吸収等環境保全効果」「レクリエーション機会の提供」等が挙げられる。
・生物多様性、または里地里山という言葉を知っている回答者ほど、支払意思額が高く、特に、里地里山という言葉を知っている人(全体の3分の1)では中央値:2,021円、平均値:3,345円という結果が得られており、価値の向上には、里地里山の認知度を高めることが必要と考えられる。
添付資料
- 連絡先
- 環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性施策推進室
直 通:03-5521-9108
代 表:03-3581-3351
室 長:堀上 勝(内線6660)
室長補佐:速水 香奈(内線6665)