報道発表資料

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2015年12月21日
  • 総合政策

(仮称)宮古岩泉風力発電事業に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)

 環境省は、21日、岩手県で実施予定の「(仮称)宮古岩泉風力発電事業」(株式会社グリーンパワーインベストメント)に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、岩手県宮古市及び岩泉町において、総出力199,500kWの風力発電設備を設置するものである。
 環境大臣意見では、工事計画の見直しにより、残土の発生を最小限に抑え、土捨場を原則廃止すること、イヌワシの重要な餌場への移動ルートを確保するため、一部の風力発電設備の設置の取りやめを含む抜本的な見直しを行うこと、及びイヌワシのバードストライクが発生した場合の原因解明及び追加的な措置を行った上での稼働等を求めている。

1.背景
 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、事業者から提出された環境影響評価準備書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して経済産業大臣に意見を言うことができるとされている。
 本件は、岩手県の「(仮称)宮古岩泉風力発電事業」に係る環境影響評価準備書について、この手続に沿って意見を提出するものである。
 今後、事業者は、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続が求められる。

 ※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測及び評価、環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。

2.事業の概要
 本事業は、岩手県宮古市及び岩泉町に、総出力199,500kW(2,850kW×70基)の風力発電設備を新設するものである。
 本事業の工事計画は、切土を主体として多くの改変が行われる計画となっている。また、対象事業実施区域及びその周辺では、希少猛禽類の生息が確認されており、特に国内希少野生動植物種であるイヌワシが当該区域及びその周辺に飛来、採餌行動が確認されている。

3.環境大臣意見の概要(詳細は別紙1参照)
 環境大臣意見の概要は、以下のとおりである。なお、環境大臣意見の取りまとめに当たっては、一般社団法人東北地域環境計画研究会の由井会長から助言をいただいた(別紙2参照)。

[1]総論

(1)工事計画の見直しについて

 本事業の工事計画は、風力発電設備の設置及び工事用・管理用道路の新設・拡幅により多くの改変が行れ、水環境、動植物の生息・生育環境等への影響が懸念される。
 そのため、以下の事項を念頭に、風力発電設備の設置位置、建設手法等を見直すとともに、改変区域等の大幅な変更がある場合には、調査、予測及び評価を再度実施し、その結果に応じて必要な環境保全措置を講ずること。

① 既存道路をできる限り活用すること。
② 切土高、盛土高の最小化を図ること。
③ 残土の発生を最小限に抑え、土捨場は原則廃止すること。
④ やむを得ず土捨場を設置する場合においては、盛土の安定性を確保できる場所、工法を選択するとともに、希少な動植物の生息地・生育地や自然度の高い植生を極力回避すること。

(2)上記の措置を講ずることを前提として、事業実施に当たっては、以下の取組を行うこと。

① 事後調査及び環境監視を適切に実施し、追加的な環境保全措置を講ずること。
② 追加的な環境保全措置の具体化に当たっては、客観的かつ科学的に検討すること。また、検討のスケジュールや方法、専門家等の助言、検討に当たっての主要な論点及びその対応方針等を公開し、透明性及び客観性を確保すること。
③ 調査の結果については、環境影響を分析し、講ずる環境保全措置の内容、効果及び不確実性の程度について報告書として取りまとめ、公表すること。

[2]各論

(1)騒音について

 工事用資材等の搬出入に伴う騒音影響について、追加的な環境保全措置により騒音を一層低減するよう努めるとともに、その効果について確認すること。

(2)鳥類について

 対象事業実施区域及びその周辺は、イヌワシ4ペア等の生息環境となっているほか、営巣が確認されており、本事業による重大な影響が懸念される。
 特に、対象事業実施区域の西側を中心に採餌行動が確認されており、本事業は餌場への移動ルートを遮断し、その利用を大幅に制限する可能性が高い。
 以上より、以下の措置を講ずること。

① イヌワシの重要な餌場への移動ルートを確保するため、30~33、41号機について、設置の取りやめを含む抜本的な見直しを行うこと。
② ブレード塗装等鳥類からの視認性を高める措置を稼働前に講ずること。また、今後効果が確認されたバードストライク対策の導入を検討すること。
③ 事後調査を適切に実施し、イヌワシのバードストライクが発生した場合には、専門家の助言を踏まえて、衝突する可能性が高い風力発電設備を停止するとともに、原因の解明及び追加的な措置を行った上で稼働再開すること。また、その他の重要な鳥類についても、供用後においてバードストライクが発生した場合の対応措置について、事故の確認・報告、連絡体制、原因の解明、防止措置、死骸・傷病個体への対処等を定めて実施すること。

4.その他
 本件は、「発電所設置の際の環境アセスメントの迅速化等に関する連絡会議中間報告」(平成24年11月27日、環境省・経済産業省)に基づき、審査期間の短縮に取り組むこととした案件である。

【参考】

○事業概要
・名称 (仮称)宮古岩泉風力発電事業
・事業者 株式会社グリーンパワーインベストメント
・計画位置 岩手県宮古市、岩泉町
・出力 199,500kW(2,850kW×70基)

○環境影響評価手続(環境影響評価法及び電気事業法に基づく手続)
【方法書の手続】
・縦覧 平成24年5月15日~平成24年6月14日(住民意見3件
・経済産業大臣勧告 平成24年11月30日
【準備書の手続】
・縦覧 平成27年7月1日~平成27年8月14日(住民意見17件
・岩手県知事意見提出 平成27年12月18日
・環境大臣意見提出 平成27年12月21日

※:環境の保全の見地からの意見の件数

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
代表:03-3581-3351
直通:03-5521-8237
室長:神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審査官:生田 雄一(内6239)

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