9月15日(月)から9月26日(金)にかけ開催されていた海洋汚染防止条約締約国会議は、海洋汚染防止条約(MALPOL73/78)に「船舶からの大気汚染防止に関する規則」と題される附属書を新たに追加するための議定書を採択した。
同条約は、これまでに油、有害液体物質、有害物質、船舶からの汚水及び廃棄物の5項目に関して海洋汚染防止のための規定を設けていたが、今回新議定書が採択されたことにより、船舶からの大気汚染物質の排出抑制についても国際的な規定が初めて設けられることとなった。
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今次締約国会議の目的等
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目的
1978年の議定書により修正された1973年の船舶による汚染の防止のための国際条約(通称「海洋汚染防止条約」。MALPOL(マルポール)73/78条約ともいう。)に、「船舶からの大気汚染防止のための規則」と題された附属書 (以下「新附属書」と略記)を追加するための1997年の議定書(以下「新議定書」と略記)の採択。
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開催日時・場所
9月15日~26日
国際海事機関(IMO)本部(在ロンドン)
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会議の結果
締約国会議は、9月26日、新附属書を追加するための新議定書を採択した。
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2. |
新附属書(船舶からの大気汚染防止のための規則)の概要
新附属書は、窒素酸化物、硫黄酸化物等に関し、以下のように規定している。
第1章 総則
・適用範囲………… |
別途定めがある場合を除き、すべての船舶に適用。 |
・一般的適用除外… |
この附属書の規定は次の場合には適用しない。
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船舶の安全確保又は人命救助のために必要な排出。 |
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船舶又はその設備の損傷による排出(要最小化)。 |
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第2章 検査、証書及び規制の方法
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総トン数400t以上の船舶又は掘削リグ等のプラットホームは、次の検査を受ける。
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就航前等検査 |
[2] |
5年を超えない間隔で行う定期的検査 |
[3] |
国際大気汚染防止証書の有効期間内に少なくとも一度行われる中間検査 |
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検査の完了後、総トン数400t以上のすべての外航船及び他の締約国の主権下の水域への航行を行うプラットホームに対し、国際大気汚染防止証書を発給する。有効期間は5年を超えない範囲でその船舶を管轄する国の政府が定めた期間とする。 |
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第3章 大気汚染防止の要件 |
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窒素酸化物…2000年1月1日以降に建造される船に搭載され、又は同日以降に主要な改造が行われる船舶に搭載される出力130kw以上のディーゼルエンジンが対象。規制値は下記のとおり。
[1] |
17g/kWh |
:nが130rpm未満の場合 |
[2] |
45.0×n-0.2g/kWh |
:nが130以上2,000rpm未満の場合 |
[3] |
9.8g/kWh |
:nが2,000rpm以上の場合
(nは一分間当たりの定格回転数) |
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硫黄酸化物…燃料油中の硫黄分の上限値を4.5%とする。また、SOx放出規制海域(バルティック海及び今後IMOが指定する海域)については、より厳しい規制を課する(硫黄分1.5%以下の燃料の使用又は排ガス洗浄装置の設置が必要)。 |
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船上焼却…2000年1月1日以降に船舶に搭載される焼却炉については、所定の構造・運転要件を満足しなければならない。重金属・PCB等の焼却、所定の構造・運転要件を満たす焼却炉以外でのポリ塩化ビニルの焼却並びに港、停泊所及び入り江内でのボイラによるスラッジオイルの焼却を禁止する。 |
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オゾン層破壊物質…オゾン層破壊物質の故意による排出及びオゾン層破壊物質を含む設備の船舶への新規搭載を禁止する。ただし、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)を含む設備の新規搭載は2020年1月1日まで認められる。オゾン層破壊物質を船舶から取り下ろす際には適切な受入施設に引き渡すものとする。
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3. |
発効要件
新議定書は、15ヶ国以上であってその商船船腹量の合計が総トン数で世界の商船船腹量の50%以上となる国々が締約国となった日の12ヶ月後に発効する。
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4. |
今後の対応
新議定書の批准に向けて必要な国内法の整備等の準備を進める。 |