報道発表資料

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2015年10月09日
  • 自然環境

改正鳥獣法に基づく指定管理鳥獣捕獲等事業の推進に向けた全国のニホンジカの密度分布図の作成について(お知らせ)

 環境省では、改正鳥獣法に基づく指定管理鳥獣捕獲等事業の推進に向けて、都道府県による科学的・計画的な鳥獣の管理を支援するため、昨年度実施した都府県別の個体数推定及び生息分布の拡大状況調査を踏まえ、平成26年度当初における全国のニホンジカの密度分布図を作成しました。

1.背景

 近年、ニホンジカ等の鳥獣については、急速な生息数の増加や、生息域の拡大により、自然生態系、農林水産業及び生活環境に深刻な被害を及ぼしており、積極的な捕獲による個体群管理が不可欠となっています。このため、環境省と農林水産省は「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」(平成25年12月)を共同で取りまとめ、「ニホンジカ、イノシシの個体数を10年後(平成35年度)までに半減」することを当面の捕獲目標としました。

 これを達成するため、平成27年5月29日に施行された鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第46号)において、集中的かつ広域的に管理を図る必要がある鳥獣を、国が指定管理鳥獣に指定して、都道府県等が主体となって捕獲を行う「指定管理鳥獣捕獲等事業」を創設するとともに、この事業を実施する都道府県を交付金により支援することとしました。なお、指定管理鳥獣については、全国的な生息状況や被害状況を勘案して、ニホンジカ及びイノシシを指定しました。

 環境省では、全国的な観点から指定管理鳥獣の生息状況を把握し、都道府県における科学的・計画的な指定管理鳥獣の管理を強力に推進するため、平成25年度補正予算により甚大な被害を及ぼしている鳥獣の生息状況等緊急調査事業として、統計手法を用いて都府県別のニホンジカの個体数推定等を実施するとともに、生息分布の拡大状況調査を実施して分布図を作成し、生息密度指標調査として糞塊密度調査を実施しました。

 今般、これらの結果に基づき、平成26年度当初における全国のニホンジカの密度分布図を作成しましたので、公表します。

2.概要

 ニホンジカの密度分布図については、別紙1(全国)及び別紙2(広域ブロック版)をご覧ください。密度分布図の作成方法については、別紙3をご覧ください。

 ニホンジカの生息密度は、関東山地から八ヶ岳、南アルプスにかけての地域や近畿北部、九州で高い状態であると推定されました。また、ブロック別でみると、近畿地方や九州地方では、ほぼ全域で密度が高い状態ですが、東北地方や関東地方、中部地方、中国地方などでは、密度の高い地域と低い地域がありました。都府県内においても、密度が高い場所と低い場所があり、地域的な密度の濃淡があることが分かります。

 なお、密度分布図に使用した個体数推定及び生息分布図については、平成27年4月28日に公表していますので、過去の報道発表資料をご覧ください。

※ 環境省による都府県別ニホンジカの個体数推定を実施していない、北海道、青森県、秋田県、山形県、茨城県、佐賀県、沖縄県については、密度分布図を作成していません。

3.結果の活用について

 本結果については、都府県において、ニホンジカの科学的・計画的な管理に活用いただき、指定管理鳥獣捕獲等事業の積極的な実施につながることを期待しています。

 具体的には、以下のような活用が考えられます。

①ニホンジカの捕獲を強化すべき地域の抽出

 視覚的にニホンジカの密度勾配を把握できるため、捕獲を強化すべき地域の抽出に活用できます。さらに、自然環境や社会環境に関するデータを重ね合わせることにより、それらも考慮して捕獲を強化すべき地域を抽出することができ、より効率的、効果的に捕獲を推進することができます。

 例えば、都府県でメッシュあたりの捕獲数データを整理し、その分布図を作成した場合は、それと重ね合わせることにより、生息密度に対し捕獲が十分に行われていない地域が分かります。また、分布密度が高い地域の自然的・社会的特性を分析することもできます。


②ニホンジカの密度管理の目標設定

 都府県において農林水産業や生態系等への被害に関するデータと組み合わせて分析することにより、被害軽減のために必要な密度管理の目標の設定に活用できます。

 例えば、下層植生の衰退状況など、ニホンジカによる自然植生への影響に関するデータと生息密度との関係に相関関係が見られた場合は、ニホンジカによる自然植生への影響の軽減を目的とした、地域の実情に応じた生息密度の目標を設定できます。

③広域管理に向けた情報共有

 全国の生息密度分布を一律に評価したことにより、近隣都府県との生息密度の繋がりが視覚的に把握できるようになりました。ニホンジカは長距離を移動するため、広域的に連携して対策を行う際の基礎資料としても活用できます。

※1 密度分布図に使用した個体数推定については、捕獲数等の既存のデータをもとに「階層ベイズモデル」を用いた統計的な手法による推定方法により実施しました。既に生息状況調査等を基に個体数推定を実施している都府県独自の推定結果と本調査の推定結果は、推定方法や使用するデータの種類等が異なるため、一致しません。密度分布図の作成にあたっては、個体数推定結果の中央値を使用しています。

※2 密度分布図に使用した生息分布図については、1978年の調査は自然環境保全基礎調査、2011年の調査は都道府県等から報告のあった狩猟登録及び捕獲許可による捕獲位置情報による新たな分布メッシュの把握調査、2014年の調査は都道府県、市町村及び森林管理署等へのヒアリング等による目撃情報(捕獲位置情報を含む)による新たな分布メッシュの把握調査によります。

密度分布図の凡例においては、環境省による都府県別ニホンジカの個体数推定を実施している地域であり、かつ前述の生息分布調査で生息分布が確認されていないメッシュについては、分布確認なしと表記しています。環境省による都府県別ニホンジカの個体数推定を実施していない地域等については、調査対象外と表記しています。

※3 密度分布図の作成にあたっては、平成26年度に実施した糞塊密度調査結果、分布状況調査結果及び個体数推定結果のデータを使用しており、既に他の調査を基に密度分布図を作成している都府県独自の密度分布結果と本密度分布結果は、使用するデータの種類等が異なるため、一致しません。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室
代表:03-3581-3351
直通:03-5521-8285
鳥獣保護管理企画官:東岡 礼治(内線6475)
     室長補佐:道明 真理(内線6471)
     担  当:山崎 貴之(内線6473)

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