報道発表資料

この記事を印刷
2015年10月02日
  • 地球環境

「エネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム(MEF)第23回会合」の結果について(お知らせ)

9月29、30日、米国・ニューヨークにて開催されました。標記会合の結果は以下の通りです。

1.日程・参加国

 世界の排出の大部分をしめる主要経済国(15の国と機関:日、米(議長)、英、仏(COP21議長国)、独、伊、加、中、印、韓、豪、墨、南ア、伯、EU(ルクセンブルク(議長国)及び欧州委員会(EC)))及びオブザーバー14カ国(NZ、ペルー(COP20議長国)、シンガポール、マーシャル、トルコ(G20議長国)、ノルウェー、スイス、エジプト、アンゴラ(LDC議長国)、アルジェリア、ガンビア、セントルシア、サウジアラビア、UAE)の計29カ国の環境大臣や気候変動特使に加え、国連気候変動枠組条約事務局、国連事務局及びADP共同議長他が参加した。全体の議長はアトキンソン米大統領次席補佐官が務め、セッション毎にファシリテーターをたてた議論が行われた。

2.外務大臣セッション(29日午後3時~4時30分)

 各国外務大臣(19名)その他の参加を得て開催され、我が国からは岸田外務大臣が出席した。

 ケリー国務長官より、米中共同声明に象徴されるように先進国と途上国の間でもかつてのような厳しい対立はなくなりつつある、気候変動の影響は極めて深刻であり安全保障上の問題にすらなっている、全ての国が言い訳なしに緊急に行動する必要があるとの発言があった。

 さらに、ファビウス仏外相から、気候変動は安全保障上の問題でもあり人道上の問題でもある、2015年合意については慎重ながら楽観的な見方をしている、既に世界の排出量の75%以上を占める国々から約束草案の提出があったがこれは前例を見ないことである、各国外務大臣は、財務大臣や交渉担当者をしっかり説得して欲しいとの発言があった。

 岸田大臣より以下を述べた。

  • COP21における、全ての国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みの合意に向けて積極的に貢献する。
  • 2015年合意においては、各国が長期的視野に立って公平で野心的な目標を示すとともに、その実施が有効に担保されるレビュー制度を構築し、継続的に削減に向けた野心を向上させていく仕組みを作る必要がある。
  • COP21の成功を目指す上でも、途上国、特に脆弱国への支援は重要であり、日本は、2013年から2014年末までの2年間で、官民合わせて約200億ドルの支援を実施したほか、緑の気候基金(GCF)に対する15億ドルの拠出決定など貢献してきている。

3.議論の概要

(1)透明性(ファシリテーター:フックセン・クウォク・シンガポール気候変動大使)

  • 2015年合意における緩和、適応、支援各々についての透明性制度のあり方について議論され、各要素の特性に応じた透明性を確保するシステムとすべき点については一致があったが、途上国からは支援の透明性を強調する声が多かった。
  • 透明性確保のための報告制度のあり方については、能力の限られる途上国にいかに柔軟性を適用するか議論された。多くの国が柔軟性への理解を示し、報告の頻度の柔軟性や移行期間の設定等の対応が可能との考えを述べる一方、移行期間の必要性については、報告に際して支援を必要とする国々を対象とすべきであり、基本的には新たな透明性制度は2020年から開始されるべきとの意見も多かった。また、2020年からの制度開始にあたり、途上国の報告能力構築への支援が重要との意見が多く出され、支援の具体案を説明する国も見られた。
  • 我が国は全ての国が共通の透明性制度に参加しつつも、IPCCの階層アプローチを模した制度とすることで、各国が自主的に自国の階層を選択する案を説明し、階層を現行の国別報告書や隔年報告書のガイドラインに沿ったものとすれば途上国に過剰の負担を課すことなく制度設計が可能、2020年までに新たな制度の詳細をCOP決定で規定すべきと主張した。

(2)長期目標(ファシリテーター:フックセン・クウォク・シンガポール気候変動大使)

  • 過去のCOP決定で採択された2度目標に加えて更なる長期目標が必要か、その場合いかなる目標が考えられるか議論された。
  • 一部の国から、IPCCによる最新の科学に基づく見解や、脱炭素化、炭素中立といった形で温度目標を具体化した定量的な目標の必要性が主張される一方、パリ合意までの限られた交渉の時間内で、2度目標を超える新たな長期目標に合意するのは困難との反対も多く表明された。こうした定量的な目標の議論のほか、低炭素成長や適応に関する長期目標を各国・地域のレベルで策定すべきと述べる国もみられた。

(3)差異化(ファシリテーター:マイケル・クタイアル元UNFCCC事務局長)

  • 各国の異なる状況に照らしたCBDR-RC(共通だが差異ある責任と各国の能力)との原則(COP20決定)を、特に緩和に関する取組においていかに適用すべきかが議論された。
  • 一部の途上国は、CBDR-RCは気候変動枠組条約の附属書にある伝統的な先進国と途上国の間での義務の二分論に基づくと主張したが、多くの国は、各国の異なる状況を反映して提出する約束草案が2015年合意における取組の基盤となるので、自ずと差異化されるとの主張を支持した。
  • 総括としてファシリテーターから、CBDR-RCの原則は先進国に率先して行動することを求めるが、途上国が行動しないことの言い訳とはならない、自ら将来の行動を決定することは、経済発展の度合の異なる各国が、2015年合意の下で課される義務や取組を、国内の関係者に説明し理解を得る上で重要との側面があるとの指摘があった。

(4)資金(ファシリテーター:エリオット・デリンジャー気候・エネルギー研究所(C2ES))副所長)

  • 2015年合意の下で経済の低炭素化を促進するための各国の取組のあり方、公的資金や民間資金等様々な資金の果たす役割、途上国への気候変動に資する投資を促す規制・投資環境の改善の方途が議論された。

 多くの国が2020年以降の国際社会は気候変動枠組条約締結当時の1992年とは大きく異なる、気候変動対策には官民を含む多様な資金動員が必要であり、その額も億(ドル)の単位ではなく兆(ドル)となるとの認識を述べ、全ての国が低炭素化に向けた経済の移行を進める必要があると述べた。

 日本は上記の点に加え、支援のニーズに合わせて無償資金、円借款、民間投資等、適切な資金を振り向けることの重要性を強調しつつ、民間投資が流れにくいとされる適応についても、防災や水、農業等の分野では民間部門の関心もある旨述べた。

  • 続いて、2015年合意の下で、資金に関する定量目標の設定の是非、将来に向けた資金に関する戦略策定の要否、策定の主体・内容・頻度が議論された。多くの国が、各国がこれまでに提出した約束草案に示された資金ニーズを、低炭素投資の機会のシグナルとみるべきとの見解に賛同したが、定量目標の要否については議論が分かれた。

 途上国は、自国が野心的な約束草案を策定・実施するには予見可能な資金フローが不可欠であるため、先進国による定量的目標が不可欠、2020年までに官民あわせて年間1000億ドルを動員するとの目標を起点とする資金動員の拡大が必要、資金を含む各国の取組の進捗を定期的に確認すること(ストックテイキング)が必要と述べた。

 それに対し先進国は、2020年以降の国際社会では全ての国からの資金フローが拡大するため定量的な目標の計測・設定自体が不可能、資金動員の方策については「戦略とアプローチ」を各先進国が二年毎に提出しており、その取組の継続は一案だが、これを定量目標設定の義務づけとリンクさせることは、予算制度上及び効率的資金動員の観点から受け容れられない旨述べた。日本は、これに加えて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」でも開発資金動員のための国際的パートナーシップの推進が基本であり、気候資金についてもドナー層の拡大が基本であるべき、2015年合意において先進国の義務と結びつける形で年間1000億ドルの動員を起点とすることは、多くの途上国がドナーとなる国際社会の現実を反映しない、と反論した。

連絡先
環境省地球環境局国際地球温暖化対策室
代表:03-3581-3351 直通:03-5521-8330
室  長:大井 通博(内線6772)
室長補佐:増田 大美(内線6773)
係  員:影山 凡子(内線6789)