報道発表資料

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2015年09月11日
  • 総合政策

道北日本海側エリアにおける風力発電事業(仮称)に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)

 環境省は、11日、北海道で計画されている「道北日本海側エリアにおける風力発電事業(仮称)計画段階環境配慮書」(北海道エネルギー開発株式会社)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業計画は、北海道天塩町、遠別町、初山別村、羽幌町、苫前町、小平町及び増毛町において、1事業当たりの出力が最大60,000kWの風力発電所を10事業程度実施するものである。
 環境大臣意見では、対象事業実施区域の設定にあたり、暑寒別天売焼尻国定公園から可能な限り距離を確保すること、風力発電設備への衝突事故や移動経路の阻害等による重要な鳥類への重大な影響を回避すること等を求めている。

1.背景
 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して意見を言うことができるとされている。
 今後、経済産業大臣から事業者である北海道エネルギー開発株式会社に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要
 本事業計画は、北海道天塩町、遠別町、初山別村、羽幌町、苫前町、小平町及び増毛町に、1事業当たりの出力が最大60,000kW程度の風力発電所を10事業程度実施するものである。事業実施想定区域の周辺は、ラムサール条約湿地であるサロベツ原野、利尻礼文サロベツ国立公園、暑寒別天売焼尻国定公園及び北海道指定鳥獣保護区等が位置している自然環境の保全上、重要な地域である。

3.環境大臣意見の概要
[1]対象事業実施区域の設定
(1)計画段階配慮事項に係る環境影響の重大性の程度を整理し、事業実施想定区域からの絞り込みの検討経緯を明確にし、比較すること。

(2)以下の区域については原則として除外すべき。
  ①自然環境保全基礎調査の現存植生図における植生区分が「自然植生」の区域
  ②富士見ヶ丘公園、金毘羅キャンプ場等の人と自然との触れ合いの活動の場
   なお、①が現存する区域については、科学的・客観的な詳細調査により明らかにした上で、対象事業実施区域から除外すること。

(3)暑寒別天売焼尻国定公園から可能な限り距離を確保すること。

[2]各論
(1)騒音等について
  事業実施想定区域の周辺に、住居地域が存在することから風力発電設備等を住居等から離隔すること等により、騒音等による影響を回避又は極力低減すること。

(2)風車の影について
  事業実施想定区域の周辺に、住居地域が存在することから、風力発電設備を住居等から離隔すること等により、風車の影による影響を回避又は極力低減すること。

(3)地形について
  事業実施想定区域に、「日本の典型地形」が含まれていることから重要な地形への影響を回避又は極力低減すること。

(4)鳥類について
  事業実施想定区域及びその周辺は、ガン・カモ類や海ワシ類等の餌場、越冬地、繁殖地等となっている湿地、池沼、河川、海岸等が広く分布し、また、渡り時期にガン・カモ類の集団飛来地となるラムサール条約湿地のサロベツ原野及び重要野鳥生息地(IBA)が近接していることから、重要な鳥類の生息環境の劣化及び渡りへの影響等が懸念される。このため、風力発電設備への衝突事故や移動経路の阻害等によるこれら鳥類への重大な影響を回避するため、以下について実施すること。
 ① 事業実施想定区域北部の牧草地等は、サロベツ原野及びその周辺に生息するコハクチョウやガン・カモ類等の餌場となっていることから、適切な時期・回数の調査を実施し、餌場の利用範囲及びねぐらからの移動経路を明らかにした上で、それらの範囲や経路下を避けるとともに、可能な限り距離を確保すること。
 ② 多数の海ワシ類の営巣や渡りが確認されており、また、事業実施想定区域内の既設風力発電所ではオジロワシの衝突が確認されていることから、海ワシ類の餌場及び渡りの経路となっている海岸線沿いは適切な時期・回数の調査を実施し、影響が及ぶと判断された場合には、回避するとともに、可能な限り距離を確保すること。
   また、営巣地、ねぐらや餌場等の利用範囲及びその移動経路並びに渡りの経路を明らかにした上で、営巣地の周辺及びそれらの範囲や経路下を避けるとともに、可能な限り距離を確保すること。

(5)動物(鳥類除く。)について
  重要な動物の生息地の改変を回避又は極力低減するとともに、可能な限り当該生息地から距離を確保すること。
  また、工事実施時の土工量を抑制し、土砂の流出を最小限に抑えること等により、重要な水生生物への影響を回避又は極力低減すること。

(6)植物について
  重要な植物種の生育地の改変を回避又は極力低減するとともに、取付道路等の附帯施設の設置や、工事に必要な一時的な施設及び地形改変を含む工事全体による地形改変が最小となるよう配慮すること。

(7)生態系について
  事業実施想定区域には、沢・湖沼等の水域、海浜等の湿地、自然植生及び保安林等に指定された森林並びに森林鳥獣生息地として指定された道指定鳥獣保護区が存在し、豊かな自然環境のまとまりの場となっていることから、既存道路や無立木地等を活用することにより、これらまとまりの場を回避又は極力低減すること。

(8)景観について
  利尻礼文サロベツ国立公園及び暑寒別天売焼尻国定公園における重要な景観資源への影響を回避又は極力低減するとともに、これら以外の主要な眺望点からの重要な眺望景観については、風力発電設備の垂直見込角を可能な限り小さくすること。
 また、日本海オロロンラインから海側への風力発電設備等の設置を回避するよう検討すること。

(9)人と自然との触れ合いの活動の場について
  キャンプ場、海水浴場及び身近な鳥獣生息地として指定された道指定鳥獣保護区の公園等の人と自然との触れ合いの活動の場への影響が懸念されることからこれらの活動の場の直接改変を回避するとともに、それら活動の場の設置目的の資質を低下させないようにすること。

[3]事業計画の見直し
 上記[1](2)並びに[2](4)~(9)により、重要な動植物及びその生息・生育地、生態系、景観並びに活動の場への影響を回避又は十分に低減できない場合は、事業実施区域の見直しや基数の大幅削減を含む事業計画の抜本的な見直しを行うこと。

[4]その他
(1)環境保全措置の検討
  環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。

(2)累積的な影響
  本事業の事業実施想定区域及びその周辺においては、他事業者による複数の風力発電所が設置済又は環境影響評価手続中であることから、本事業との累積的な環境影響について予測及び評価をすること。

(3)方法書以降の環境影響評価図書の作成
  本配慮書においては10事業程度の事業の実施が想定されているところ、方法書以降の環境影響評価図書を作成する場合には、本配慮書の内容を踏まえること。

【参考】

○事業概要
・名称 道北日本海側エリアにおける風力発電事業(仮称)
・事業者 北海道エネルギー開発株式会社
・計画位置 北海道天塩町、遠別町、初山別村、羽幌町、苫前町、小平町及び増毛町
        (事業実施想定区域面積:約84,700ha)
・出力 最大600,000kW(3,000kW級 発電設備を200基設置)
○環境影響評価に係る手続
・平成27年7月27日  経済産業大臣から環境大臣への意見照会
・平成27年9月11日  環境大臣から経済産業大臣に意見提出

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
室長:神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審査官:日下 崇(内6248)
電話:03-3581-3351(代表)
   03-5521-8237(直通)

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