報道発表資料

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2015年07月02日
  • 総合政策

(仮称)釜石広域風力発電事業拡張計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)

 環境省は、2日、岩手県で実施予定の「(仮称)釜石広域風力発電事業拡張計画」(株式会社ユーラスエナジーホールディングス)に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
 本事業は、岩手県釜石市、遠野市、大槌町において、総出力114,000kWの風力発電設備を設置するものである。
 環境大臣意見では、イヌワシへの影響を回避するため、風力発電設備の再配置・基数削減を含めた再検討を実施するとともに、事業着工前に本事業により利用できなくなる餌場と同等の機能を有する代替餌場の確保を確実に講ずること、及びイヌワシのバードストライクが発生した場合の原因解明及び追加的な措置を行った上での稼働等を求めている。

1.背景
 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、事業者から提出された環境影響評価準備書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して経済産業大臣に意見を言うことができるとされている。
 本件は、岩手県の「(仮称)釜石広域風力発電事業拡張計画」に係る環境影響評価準備書について、この手続に沿って意見を提出するものである。
 今後、事業者は、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けた経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続が求められる。

※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測及び評価、環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関する事業者自らの考え方を取りまとめた文書。

2.事業の概要
 本事業は、岩手県釜石市、遠野市、大槌町に、総出力114,000kW (2,000kW×57基)の風力発電設備を新設するものである。対象事業実施区域及びその周辺においては既設の風力発電設備が立地しており、本事業により拡張を計画している。
 当該区域及びその周辺では、希少猛禽類の生息が確認されており、特に国内希少野生動植物種であるイヌワシが当該区域の西側を中心に飛来、採餌行動が確認されている。

3.環境大臣意見の概要
(1)総論

  事業実施に当たっては、以下の取組を行うこと。

① 事後調査及び環境監視を適切に実施し、追加的な環境保全措置を講ずること。
② 追加的な環境保全措置の具体化に当たっては、客観的かつ科学的に検討すること。また、検討のスケジュールや方法、専門家等の助言、検討に当たっての主要な論点及びその対応方針等を公開し、透明性及び客観性を確保すること。
③ 調査の結果について、環境影響を分析し、講ずる環境保全措置の内容、効果及び不確実性の程度について報告書として取りまとめ、公表すること。

(2)各論

[1]動植物(鳥類除く。)について

 対象事業実施区域には各種の湿原や河川の源流域が多く分布し、重要な動植物の生息・生育地となっていることから、土地改変に伴う濁水や土砂の流出による環境影響が懸念される。
 このため、地形の改変量を最小限に抑制するとともに、自然度の高い湿地帯や重要な動植物の生息・生育地等の近隣や上流側で土地の改変を行う場合には、専門家からの助言を踏まえて、濁水対策や土砂流出防止対策に万全を期し、土砂の流出等による環境影響を可能な限り低減すること。

[2]鳥類について

 対象事業実施区域及びその周辺は、国内希少野生動植物種に指定されたイヌワシ3ペア等の生息環境となっているほか、クマタカ、ハヤブサ等の希少猛禽類の飛翔が確認されており、本事業によるこれらの希少猛禽類への重大な影響が懸念される。
 特にイヌワシについては、当該区域の西側を中心に飛来し、採餌行動が確認されている。また、当該区域におけるイヌワシのバードストライクに関して、重大な影響が懸念される。
 以上より、本事業の実施に当たっては、以下の措置を適切に講ずること。

① 本事業による風力発電設備の設置により、将来的に当該区域の西側一帯がイヌワシの餌場として利用できなくなると考えられることから、イヌワシ及びその生息環境への影響を回避するため、西側の風力発電設備について、東側への再配置・基数削減を含めた再検討を実施するとともに、本事業により利用できなくなる餌場と質・量ともに同等の機能を有する代替餌場の確保による環境保全措置を確実に講ずること。また、代替餌場については、次のi)~vi)の条件を事業着工前までに満たすものとすること。

i)買収又は土地所有者との長期協定に基づき、土地を確保できていること。
ii )確保した土地等に係る法律上の規制等に関する手続きが終了していること。
iii)代替餌場を長期的に維持・管理する計画が作成されていること。
iv)他の希少動植物に対し重大な影響を発生させないものであること。
v)3ペアのイヌワシが当該代替餌場を利用することが確認されること。
vi)現在の採餌場所の質の向上を図る場合は、失われる採餌場所の機能と同等以上の質の向上が定量的に示されること。

 なお、以上の条件を満たす代替餌場が確保されない場合は、西側の風力発電設備の設置を取りやめること。

② 前項 iii)の計画策定の際には、有識者及び関連行政機関等による協議会により、計画を検討し、当該計画を公表するとともに、必要に応じ、再配置や基数削減について再検討すること。

③ 供用後も、代替餌場の利用状況を継続的に調査し、その結果を公表するとともに、協議会の意見を踏まえ、追加的な環境保全措置を講ずること。

④ バードストライクの事後調査を適切に実施し、イヌワシのバードストライクが発生した場合には、協議会の助言を踏まえて、衝突する可能性が高い風力発電設備を停止するとともに、バードストライクの原因の解明及び追加的な措置を行った上で稼動再開とすること。また、その他の希少猛禽類についても、供用後においてバードストライクが発生した場合の対応措置について、事故の確認・報告、連絡体制、原因の解明、防止措置、死骸・傷病個体への対処等を定めて実施すること。


4.その他
 本件は、「発電所設置の際の環境アセスメントの迅速化等に関する連絡会議中間報告」(平成24年11月27日、環境省・経済産業省)に基づき、審査期間の短縮に取り組むこととした案件である。

[参考]

○事業概要
・名称 (仮称)釜石広域風力発電事業拡張計画
・事業者 株式会社ユーラスエナジーホールディングス
・計画位置 岩手県釜石市、遠野市、大槌町
・出力 114,000kW (2,000kW×57基)

○環境影響評価手続(環境影響評価法及び電気事業法に基づく手続)
【方法書の手続】
・縦覧 平成24年3月27日~平成24年4月26日(住民意見7件
・経済産業大臣勧告 平成24年11月30日
【準備書の手続】
・縦覧 平成27年2月27日~平成27年3月26日(住民意見4件
・岩手県知事意見提出 平成27年6月30日
・環境大臣意見提出 平成27年7月2日

   ※:環境の保全の見地からの意見の件数

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
室長:神谷 洋一(内6231)
室長補佐:相澤 寛史(内6233)
審査官:生田 雄一(内6239)
電話:03-3581-3351(代表)
   03-5521-8237(直通)

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