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研究課題別評価詳細表

I. 中間評価

中間評価  1. 第1研究分科会<全球システム変動>

研究課題名: 【A-1101】 地球温暖化対策としてのブラックカーボン削減の有効性の評価(H23〜H25)
研究代表者氏名: 近藤 豊(東京大学)

1.研究計画

研究のイメージ 本研究の目的は、地球温暖化対策としてのBCエアロゾル削減の有効性を評価することである。すなわち、各種の排出源から排出される BCや他の人為起源物質の排出量を削減した場合、アジアやグローバルスケールにおいて、放射強制力、気温、降水量がどのように変化するのか、直接・間接効果を含めて総合的に評価することである。


図 研究のイメージ        
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■ A-1101  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/pdf/A-1101.pdfPDF [PDF 214 KB]

2.研究の進捗状況

(1)BC観測による領域モデルの検証 
BCの地上長期観測、BCを含むエアロゾル・雲の航空機観測、雨水中のBC濃度と粒径分布の測定を行い、詳細なデータ解析からアジア域のBCの排出量や輸送・変質・除去過程を明らかにした。タグ付き3次元領域モデルの開発・計算を行い、地上長期観測や航空機観測を用いてBC濃度の空間分布の検証を行った。BCの混合状態を表現したモデルとエアロゾルの数濃度を詳細に計算する数値モデルを開発し、観測による検証を行った。また、放射伝達モデルを開発した。
(2)BCの電子顕微鏡観測と全球エアロゾルモデルによるBC削減の有効性評価
全般的には予定通りの進捗を達成している。具体的には、①新型の透過型電子顕微鏡を用いて、(a)自動多点分析や元素マッピング機能を用いたBC内部混合粒子の個別粒子解析、(b) BC粒子の3次元形態再現及びその数値解析、(c) 個別粒子分析結果をモデルへ組み込むためのデータベースの開発を進めた。②気象研究所の気候モデルMRI-CGCM3を用いたBC削減の有効性評価のための予備実験では、BCは全球平均での地表気温を0.01℃上昇させるが、その傾向は地域ごとに大きな差が見られた。③詳細な微物理過程に基づくエアロゾルボックスモデルを用いて、全球モデルで使用可能かつ本質を損なわないBCの混合状態の変化のパラメタリゼーションを開発した。また、BCを含むエアロゾルの化学組成、粒径分布、混合状態の時間発展を記述する動力学モジュールを開発し、全球気候モデルと結合した領域3次元化学輸送モデルに新たに組み込み、東アジア域のエアロゾル無機化学成分の粒径分布、混合状態の動態を明らかにした。成果の一部は、国際誌に本サブ課題メンバーの筆頭論文として3編掲載された。
(3)気候モデルによるBC全球気候影響評価
数値モデル計算を用いたBC削減効果(BCの直接・間接効果)の推定においては、BCの混合状態の変化過程の予測が大きな不確定要因となっていた。このためサブテーマ(2)と(1)で共同開発されたBCの混合状態の変化を表現するパラメタリゼーションを、全球モデルMIROC+SPRINTARSに導入した。この新しいモデルを使った計算を実施した結果、他の気候モデルで従来一般的に用いられているBCの表現方法と比較したところ、従来のモデル計算は、今回導入したモデル計算結果に比べて、吸収量が過小評価されていることが明らかとなった。この結果、エアロゾルの気候影響で重要な指標となる全天での大気上端における全球年平均値での放射強制力の値も過小評価されていることが明らかとなった。
(4)雲凝結核数濃度に及ぼすBCの寄与
BCを含むエアロゾルの粒径分布を評価するため、ワイドレンジパーティクルスペクトルメータを用いて、沖縄辺戸ステーションで粒径分布の観測を行ったところ、粒径200nm付近に個数濃度のピークがあった。COSMOSやエアロゾル質量分析計による化学組成分析から、BCを含む粒径200nmの粒子の主要成分は硫酸塩や酸化された有機物であることが分かった。親水性の化学物質が主要成分であることから、粒径200nmの粒子は過飽和度が0.1%程度であれば雲凝結核として作用することが明らかになった。
(5)BC放射影響の観測
放射観測ネットワークSKYNETの観測所である辺戸岬及び福江島サイトにおいて、短波放射の連続観測を実施した。放射伝達モデルに基づいた解析アルゴリズムを用いてこの放射観測データを解析することにより、大気カラム中のBCの光吸収量などのエアロゾル光学パラメータの推定を行った。解析は波長別天空輝度分布計測と放射束密度(フラックス)計測という2つの放射観測において実施し、その整合性を調べた。この解析に基づき、解析アルゴリズムの改良を行うとともに、BCの光吸収のより厳密な評価のために必要となる正確な機器検定を実施した。このようなハード・ソフトの両方の改善により、エアロゾルの放射影響評価が改善された。

3.環境政策への貢献

二酸化炭素やエアロゾルなどの人為起源物質の増加による気候変動を正確に予測することは、気候変動に対する対策の立案に重要である。この中で、人為起源のエアロゾルの変動とその気候影響の不確定性が、この対策の立案の大きな不確定性要因となっており、エアロゾルの気候影響の早急な解明が必要とされている。その中でもブラックカーボン(BC)エアロゾルは二酸化炭素の約1/3 の正の放射強制力を持つと推定されており、BCを削減することが有効な地球温暖化対策の可能性として注目されつつある。
BCの削減効果を精度よく見積もるためには、全エアロゾルやBCの粒径分布・混合状態・化学組成を把握する必要がある。本研究では、これらを地上・航空機観測に基づいて明らかにし、その精密観測を表現できる領域3次元モデルの開発・計算を行う。また、これを拡張してグローバル・長期的な削減効果を評価するために気候モデルを用いた計算を行う。このようなモデル結果に基づいて、BCの削減効果について初めて俯瞰的で定量的な政策判断の根拠を示すことが可能となる。

4.委員の指摘及び提言概要

BCという実態把握の難しいエアロゾルについて、様々な角度から観測、解析を進めている研究手法は評価でき、全体として計画通りに研究が進んでいる。放射効果について、これまでの不確実性の原因を観測とモデルの開発・検証により明らかにしつつあり、科学的意義も政策的意義も高い。進展が期待される。

4.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a
  サブテーマ(1):a
  サブテーマ(2):a
  サブテーマ(3):a
  サブテーマ(4):a
  サブテーマ(5):a


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研究課題名: 【A-1102】「いぶき」観測データ解析により得られた温室効果ガス濃度の高精度化に関する研究(H23〜H25)
研究代表者氏名: 森野 勇(独立行政法人 国立環境研究所)

1.研究計画

研究のイメージ  3年以上の長期間検証データを用いた季節変動成分や経年変動等の大気化学的視点を考慮した検証を実施する。また、重点サイトにおける地上温室効果ガス高精度観測と同期して巻雲・エアロゾル光学特性の観測体制の構築、データ取得、解析を行う。このようにして得られた地上温室効果ガスデータ、「いぶき」温室効果ガスデータ、巻雲・エアロゾル光学特性との相関解析を行い、不確かさを明らかにすると同時にその原因を特定する。この検証結果を解析アルゴリズムの改良と初期値の改訂に反映させ、「いぶき」観測データの再解析を実施する。この解析による温室効果ガス濃度を検証して高精度化の確認を行う。


図 研究のイメージ        
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■ A-1102  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/pdf/A-1102.pdfPDF [PDF 370 KB]

2.研究の進捗状況

(1)長期間検証データの評価、「いぶき」データ検証とアルゴリズム改良に関する研究
地上設置高分解能FTSデータ、CONTRAILデータ、NOAAデータの解析を行いデータ質の評価を行った。この結果、「いぶき」データのデータ質を評価するために必要な長期検証データの確保とそのデータ質を確認することができ、二酸化炭素とメタンのカラム平均濃度を大気化学的視点で検証解析ができる目処が立った。
また、前バージョンのアルゴリズムを用いた「いぶき」の二酸化炭素カラム平均濃度は、バイアス −9 ppm程度(−2 %程度)、バラツキ 4 ppm程度(1%程度)であるが、本研究における解析アルゴリズムと参照値の改良により、バイアス−1 ppm程度(−0.3 %程度)、バラツキ2 ppm程度(0.5 %程度)が達成できる見通しがついた。
(2)重点サイトにおける巻雲・エアロゾル光学特性観測に関する研究
 重点サイトにおける巻雲・エアロゾル光学特性を観測できる体制を構築し、データを取得し、解析を行いデータ質の評価を行った。
(3)重点サイトにおける高精度温室効果ガス観測に関する研究
 重点サイトにおける高精度温室効果ガスを継続的に観測できる体制を構築し、データを取得し、解析を行いデータ質の評価を行った。
(サブテーマ横断研究)重点サイトTsukubaにおけるケーススタディ
重点サイトの1つであるつくばにおける高精度温室効果ガスと巻雲・エアロゾル光学特性の観測結果を用いたケーススタディを行った。エアロゾルの高度分布としてSPRINTARSのシミュレーション値を先験値として、またToonの太陽スペクトルを用いて、バンド1、バンド2に加えてバンド3の観測スペクトルに対してエアロゾルと巻雲も同時推定した結果、二酸化炭素カラム平均濃度は地上設置高分解能FTSデータに対してバイアス0.17 ppm(0.04 %)と改善することが確認できた。この知見はサブテーマ(1)の解析アルゴリズム改良と参照値の改良に活用した。

3.環境政策への貢献

GOSAT後継機への反映事項を提言することを目的にGOSAT中間総括会議が2012年1月〜3月にかけて3回開催された。本会議では、本研究の成果である解析アルゴリズム改良と参照値の改良による「いぶき」データの改善の見通しを示し、GOSAT後継機を推進する環境省、宇宙航空研究開発機構(JAXA)及び国立環境研究所(NIES)に重要な知見を与えることができた(GOSAT中間総括会議の最終報告書に本成果が記載される予定である)。
 本研究の成果である解析アルゴリズムと参照値の改良結果を反映した「いぶき」データの再処理が行われ、そのデータ質の大幅な改善が確認された。この結果「いぶき」データはVer. 02.xxデータとして2012年6月に一般に公開された。
 GOSATプロジェクトから得られる成果をさらに豊かに有効なものとするため、一般からの研究公募を実施している。研究公募で採択された課題代表者が集まる会合が、2012年6月に米国カルフォルニア工科大学で、環境省、NIES、JAXAの主催で行われた。本会合で、本研究の成果である解析アルゴリズムと参照値の改良結果を用いて再処理された「いぶき」データの改善結果が報告され、GOSATプロジェクトの国際的アピールに貢献した。

4.委員の指摘及び提言概要

エアロゾル光学特性の改良がデータ導出確度向上に最も影響を与えることなどを明確にし、
解析アルゴリズムの改良がおこなわれ、その検証についても順調に進んでいる。誤差の大幅な改善が行われた点は高く評価できる。地上観測・航空機観測の空白域で、CO2フラックス変動の大きな南米・南アジアなどのデータ精度向上を期待する

4.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a
  サブテーマ(1):a
  サブテーマ(2):a
  サブテーマ(3):a


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研究課題名: 【A-1103】統合評価モデルを用いた世界の温暖化対策を考慮したわが国の温暖化政策の効果と影響(H23〜H25)
研究代表者氏名: 増井 利彦(独立行政法人 国立環境研究所)

1.研究計画

研究のイメージ 本研究課題は、日本及び世界を対象に、低炭素社会の構築に資する新しい技術の普及過程やその効果を、これまでのスケールより詳細に定量的に把握することが可能となるモデルを開発し、温室効果ガス排出削減の中長期目標の効果と影響を定量的に評価するとともに、そうした目標を実現した社会像を家計消費、物質ストック・フローの面から具体的に描写することである。
(1)世界モデルを用いた気候安定化目標の実現可能性とその評価
 国際的な温室効果ガス排出量の削減目標について、これまでに開発してきた個々の世界モデル(技術選択モデル、応用一般均衡モデル、簡易気候モデルを含んだ動的最適化モデル)について、技術普及過程や再生可能エネルギー導入のポテンシャル、サービス需要量導出のためのモジュールなどを新たに開発し、これらを連携させた将来シナリオを定量化する。
(2)わが国における温室効果ガス排出削減策の効果とその影響
 わが国を対象としてきた技術選択モデルや経済モデルの各部門における対策をさらに詳細に分析可能となるようなモジュールの開発を行い、国際的な削減に対するわが国の温暖化対策目標を実現するための方策とその影響を定量的に明らかにする。
(3)社会の構成要素を記述するモデルの開発と将来シナリオへの適用
 温暖化対策を実現させるような社会像の検討とシナリオの叙述が可能となるような家計消費、物質ストック・フローの分野を対象にモデル開発を行い、それらを用いて将来像についての詳細な記述を行う。

図 研究のイメージ        
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■ A-1103  研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/13895/pdf/A-1103.pdfPDF [PDF 379 KB]

2.研究の進捗状況

(1)世界モデルを用いた気候安定化目標の実現可能性とその評価
世界技術選択モデルの入力となる各モジュールの開発作業を行うとともに、EMF(エネルギーモデリングフォーラム)などの国際プロジェクトに結果を提供した。低炭素技術導入のためのモジュールを世界経済モデルに組み込み、EMFやIAMC(統合評価モデリングコンソーシアム)、SSPs(共通社会経済シナリオ)の定量化などの国際プロジェクトに結果を提供した。
(2)わが国における温室効果ガス排出削減策の効果とその影響
日本技術選択モデルについては、各部門を対象とした個別モジュールの開発、改良を行い、日本技術選択モデルに反映させた。日本経済モデルについては、再生可能エネルギーの供給過程や新たな製品、技術を反映するための情報を収集するとともに、日本を9地域に分割したモデルに拡張するためのデータセットの作成、モデル開発、将来シナリオの検討を行った。また、これまでに開発してきたモデルを用いて、震災後に対する温暖化対策の検討を行った。
(3)社会の構成要素を記述するモデルの開発と将来シナリオへの適用
人口・世帯モデル、家計生産モデル、物質ストック・フローモデルの開発に必要なデータを収集し、モデル化に資するようにデータベースを整備し、各モデルの開発を進めた。

3.環境政策への貢献

① 審議会への情報提供を通じたわが国の温暖化対策への貢献:日本を対象とした技術選択モデル及び経済モデルの結果については、環境省中央環境審議会 地球環境部会 2013年以降の対策・施策に関する検討小委員会、経済産業省 総合資源エネルギー調査会 基本問題委員会、エネルギー・環境会議に対して結果を提供してきた。
② 地域の温暖化対策への貢献:地域詳細モデルを用いた分析結果は、気候や経済活動が多様な自治体において地域特性にあった温暖化対策を検討する際に重要な役割を担うことが可能であり、気候変動緩和策の実現に向けて大きく貢献することにつながる。
③ 温暖化緩和策の試算結果の提供を通じた環境政策への貢献:前述の中央環境審議会小委員会に設置されたワーキンググループに対しても試算結果を提供してきた。また、道路特定財源の廃止による影響や、国内排出量取引に関する分析結果を環境省に提供することを通じて、環境政策の推進に貢献してきた。さらには、2011年3月に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故により、わが国の温室効果ガス削減目標をエネルギー計画とともに再考することとなり、単一の対策に大きく依存する計画の問題点を踏まえて、原子力の将来の想定等様々なシナリオの検討を行うとともに、発電部門において電力供給の安定性を犠牲にすることのない温暖化対策を検討するための基礎的情報を提示してきた。
④ アジア途上国の研究者の人材育成:アジア主要国の研究者に対して開発したモデルのトレーニングを行い、アジアにおける環境政策の底上げ、気候変動緩和策の実現にも貢献してきた。
⑤ IPCC等国際研究コミュニティでの活動を通じた貢献:様々な国際比較研究プロジェクトへの参画を通じて、将来の多様なシナリオを描くことが可能となり、わが国における温暖化対策の議論に対して様々な情報を提供することが可能となる。

4.委員の指摘及び提言概要

政策評価の基本的分析ツールとして研究開発が継続的に必要と考えられるが、技術と社会のモデルを総合した世界および日本モデルの成果が進展している。特に日本において地域による差を出している点や、東日本大震災により行政から要求されたパーツの開発も進んだことは評価できる。今後も社会状況やライフスタイルの変化などを反映させつつ実施するべきである。ただし、研究としての意味をどこまで出せるかという課題もある。

4.評点

   総合評点: A    ★★★★☆  
  必要性の観点(科学的・技術的意義等): a  
  有効性の観点(環境政策への貢献の見込み): a  
  効率性の観点(マネジメント・研究体制の妥当性): a
  サブテーマ(1):a
  サブテーマ(2):a
  サブテーマ(3):a


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