近年、人間活動の拡大に伴ってCO2、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、代替フロン類等の温室効果ガス(GHG)が大量に大気中に排出されることで、地球温暖化が進行しています。特にCO2は、化石燃料の燃焼等によって膨大な量が人為的に排出されています。我が国が排出する温室効果ガスのうち、2024年度においては、CO2の排出が全体の排出量の92.8%を占めています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2023年3月に公表した第6次評価報告書統合報告書において、「世界全体の温室効果ガス排出量は増加し続けている」ことや「人為的な影響によって大気、海洋及び陸域が昇温したことは疑う余地がない」こと、「人為的な気候変動は、既に世界中の全ての地域において多くの気象と気候の極端現象に影響を及ぼしている」こと等を公表しました。
世界気象機関(WMO)は、2025年の年平均気温が工業化前と比べて約1.43℃高く、観測史上2番目か3番目に暑い年となったことを発表しました。
UNEPが公表する「Emissions Gap Report 2025」によれば、2024年の世界の温室効果ガス総排出量は、前年から2.3%増加し、全体でおよそ577億トンCO2換算となり、過去最高に達しました。
我が国の2024年度のGHG排出・吸収量(GHG排出量から吸収量を引いた値)は、9億9,400万トンCO2換算であり、2023年度から1.9%(1,880万トンCO2換算)減少しています。その要因としては、製造業の生産量の減少によるエネルギー消費量の減少や電源の脱炭素化(電源構成に占める再生可能エネルギーと原子力の合計割合が3割超え)の進展等が挙げられます。また、2013年度からは28.7%(3億9,950万トンCO2換算)減少し、全体としての減少傾向を継続しています。
このうち、CO2排出量については9億7,100万トンCO2(2013年度比26.0%減少)であり、そのうち、発電、熱発生等のための化石燃料の使用に由来するエネルギー起源のCO2排出量は9億700万トンCO2でした。さらに、エネルギー起源のCO2排出量を部門別に分けると、産業部門が3億3,400万トンCO2、運輸部門が1億8,700万トンCO2、業務その他部門が1億6,200万トンCO2、家庭部門が1億4,600万トンCO2でした(いずれも、発電や熱の生産に伴う排出量を、その電力や熱の消費者からの排出として計算した電気・熱配分後の排出量)。
CO2以外のGHG排出量については、CH4が2,790万トンCO2換算(2013年度比14.8%減少)、N2Oが1,480万トンCO2換算(同24.6%減少)、代替フロン等4ガス(ハイドロフルオロカーボン(HFCs)、パーフルオロカーボン(PFCs)、六フッ化硫黄(SF6)及び三フッ化窒素(NF3))が3,220万トンCO2換算(同11.9%増加)でした。
森林、農地土壌、ブルーカーボン等による吸収量については、5,230万トンCO2換算となり、これは2013年度排出量からの削減量(3億9,950万トンCO2換算)の13.1%に相当します。
国連気候変動枠組条約は、地球温暖化防止のための国際的な枠組みであり、究極的な目的として、GHGの大気中濃度を自然の生態系や人類に危険な悪影響を及ぼさない水準で安定化させることを掲げています。
1997年に京都府京都市で開催された国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3。以下、国連気候変動枠組条約締約国会議を「COP」という。)で採択された京都議定書により、2008年から2012年までの第一約束期間において、我が国は基準年(原則1990年)に比べて6%、欧州連合(EU)加盟国全体では同8%等の削減目標が課されました。これに対し、同期間の我が国のGHGの排出量は5か年平均で12億7,800万トンCO2であり、森林等吸収源や海外から調達した京都メカニズムクレジットを償却することでこの削減目標(基準年比6%減)を達成しました。
2012年に行われた京都議定書第8回締約国会合(CMP8。以下、京都議定書締約国会合を「CMP」という。)においては、2013年から2020年までの第二約束期間における各国の削減目標が新たに定められました。しかし、米国の不参加や新興国の排出増加等により、京都議定書締約国のうち、第一約束期間で排出削減義務を負う国の排出量は世界全体の4分の1にすぎないことなどから、我が国は同議定書の締約国であるものの、第二約束期間には参加せず、全ての主要排出国が参加する新たな枠組みの構築を目指して国際交渉を進めてきました。
2011年のCOP17及びCMP7では、全ての国が参加する2020年以降の新たな枠組みを2015年までに採択することとし、そのための交渉を行う場として「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」を新たに設置することに合意しました。
2015年、フランス・パリにおいて、COP21及びCMP11が開催され、全ての国が参加するGHG排出削減等のための新たな国際枠組みである「パリ協定」が採択されました。パリ協定においては、産業革命前からの地球の平均気温上昇を2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)などが設定されました。また、主要排出国を含む全ての国が、国が決定する貢献(NDC)を5年ごとに提出・更新することが義務付けられるとともに、その目標は従前の目標からの前進を示すことが規定され、加えて、パリ協定の下で世界全体の気候変動対策の進捗状況を5年ごとに評価すること(グローバル・ストックテイク)、各国が共通かつ柔軟な方法でその実施状況を報告し、レビューを受けることなどが規定されました。そのほか、二国間クレジット制度(JCM)を含む市場メカニズムの活用、森林等の吸収源の保全・強化の重要性、途上国の森林減少・劣化からの排出を抑制する取組の奨励、適応に関する世界全体の目標設定及び各国の適応計画作成過程と行動の実施、先進国が引き続き資金を提供することと並んで途上国も自主的に資金を提供することなどが盛り込まれました。
パリ協定の採択を受けて、ADPは作業を終了しました。
2016年4月にはパリ協定の署名式が米国・ニューヨークの国連本部で行われ、175の国と地域が署名しました。同年5月には我が国でG7伊勢志摩サミットが開催され、同協定の年内発効という目標が首脳宣言に盛り込まれました。そして同年10月5日には、締約国数55か国及びその排出量が世界全体の55%との発効要件を満たし、11月4日、パリ協定が発効しました。なお、我が国は同年11月8日に締結しました。
2021年10月より、英国・グラスゴーにおいて、COP26・CMP16・パリ協定第3回締約国会合(CMA3。以下、パリ協定締約国会合を「CMA」という。)が開催されました。COP26では、全体決定である「グラスゴー気候合意」として、最新の科学的知見に依拠しつつ、パリ協定に定められた世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える目標の重要性を再確認するとともに、今世紀半ばのネット・ゼロ及びその経過点である2030年までの排出削減の必要性が強調され、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減及び非効率な化石燃料補助金からのフェーズアウトを含む努力を加速することなどを求める内容が盛り込まれました。また、パリ協定第6条の実施指針について合意され、国際枠組の下での市場メカニズム(二国間クレジット制度(JCM)を含む。)に関するルールが完成しました。二重計上の防止については、我が国が提案していた内容(政府承認に基づく二重計上防止策)が打開策となり、合意に大きく貢献しました。この結果、原則としてパリ協定のルール交渉が終わり、更なる実施強化のステージへと移りました。
2023年11月、アラブ首長国連邦・ドバイにおいて開催されたCOP28・CMP18・CMA5においては、グローバル・ストックテイクが初めて行われ、パリ協定の長期目標の達成に向けて、世界全体ではまだ軌道に乗っていないことと、1.5℃目標達成のための緊急的な行動の必要性が強調されるとともに、2025年までの世界全体の排出量のピークアウトの必要性が認識されました。そのための具体的な行動として、全ての部門・全てのGHGを対象としたNDCの策定、2030年までに世界全体での再生可能エネルギー発電容量を3倍及びエネルギー効率の改善率を2倍とすること、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減に向けた取組の加速、エネルギーシステムにおける化石燃料からの移行等が合意されました。これらの成果を踏まえつつ、各国は2025年までに次期NDCを提出することが要請され、我が国も2025年2月に1.5℃目標に整合的で野心的な新たなNDCを国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に提出しました。
2024年11月、アゼルバイジャン・バクーにおいて開催されたCOP29・CMP19・CMA6においては、気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)について、2035年までに少なくとも年間3,000億ドルの途上国支援目標が決定され、また、全てのアクターに対し、全ての公的及び民間の資金源からの途上国向けの気候行動に対する資金を2035年までに年間1.3兆ドル以上に拡大するため、共に行動することを求める旨が決定されました。
2025年11月、ブラジル・ベレンにおいて開催されたCOP30・CMP20・CMA7においては、石原宏高環境大臣から、多国間主義に基づき世界全体での脱炭素に連携して取り組むことの重要性を訴えました。交渉では、NDCの早期提出を促すこと、緩和の実施を加速すること、適応資金を2035年までに少なくとも3倍に増やす努力を呼びかけること及び適応分野の進捗を測るための指標等が決定されました(写真1-1-1)。

気象庁の統計によると、1898年から2025年までの期間において、日本の年平均気温は100年当たり1.44℃の割合で上昇しています。また、文部科学省と気象庁が2025年3月に公表した「日本の気候変動2025-大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書-」によると、20世紀末(1980~1999年)と比較した21世紀末(2076~2095年)の年平均気温は、パリ協定の目標が達成された場合には日本全国の平均で約1.4℃上昇し、目標が達成されず地球温暖化が著しく進行した場合には、日本全国の平均で約4.5℃上昇するとの将来予測が示されています。
また環境省は、2026年2月に「気候変動影響評価報告書」を公表しました。
同報告書では、気候変動の影響について、気温や水温の上昇、降水量・降水パターンの変化等に伴い、農作物の収量や品質の低下、農業用水等の不足、サンゴの白化、土砂災害発生件数の増加、熱中症による死亡者数の増加、電気・ガス・水道等の寸断等が、現時点において既に現れていることとして示されています。また、農作物の栽培適地の変化、渇水の増加、動植物の分布域の変化、洪水の発生地点数の増加、熱中症による救急搬送者数の増加、交通インフラの維持コスト増加等のおそれがあると示されています(図1-1-1)。

気候変動に関する科学的知見を充実させ、最新の知見に基づいた政策を展開するため、引き続き、環境研究総合推進費等の研究資金を活用し、現象解明、影響評価、将来予測及び対策に関する調査研究等の推進を図りました。
加えて、2009年に打ち上げた温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)(第6章第3節2(1)を参照)と2018年に打ち上げた後継機となる2号機(GOSAT-2)により、主たる温室効果ガスであるCO2とCH4の地球全大気平均濃度の変化を継続観測してきました。インドや、日本の支援を受けたモンゴルは、GOSAT観測データを利用した排出推計結果をパリ協定に基づく国連への報告書に掲載しました。さらに、2025年6月には、温室効果ガス観測精度を飛躍的に向上させた3号機に当たる温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)の打ち上げに成功し、同年10月には初期機能確認を終了しました。GOSAT-GWでは、GOSATから続く地球全大気のCO2とCH4の継続モニタリングを実施しています。また、新たな取組として、大規模排出源の監視や、排出量推計技術によるパリ協定に基づく各国の温室効果ガスインベントリ報告の透明性の確保、同技術の国際標準化を進めています。
また、宇宙空間では軌道上にある使用済みとなった人工衛星やロケット上段等のスペースデブリ(宇宙ごみ)の増加が問題となっています。環境省はGOSATがスペースデブリとして宇宙空間に滞留することがないようにするため、2020年10月には「今後の環境省におけるスペースデブリ問題に関する取組について(中間取りまとめ)」を公表しました。現在GOSATは順調に運用を継続しており機能面での問題はありませんが、突然の機能停止等に備えて、軌道離脱・停波運用に向けた作業計画書作成の準備や関係機関との定期的な協議などを通じて、引き続き、スペースデブリ化防止のための検討・調整を進めていきます。
世界の政策決定者に対し、正確でバランスの取れた科学的情報を提供し、国連気候変動枠組条約の活動を支援してきたIPCCは、第6次評価サイクルにおいて1.5℃特別報告書(2018年10月公表)、土地関係特別報告書(2019年8月公表)、海洋・雪氷圏特別報告書(2019年9月公表)及び「2006年IPCC国別温室効果ガスインベントリガイドラインの2019年改良」(2019年5月公表。以下「2019年方法論報告書」という。)を公表し、2021年8月から2022年4月までにかけて第6次評価報告書第1作業部会報告書、第2作業部会報告書及び第3作業部会報告書をそれぞれ公表しました。その後、2023年3月に第6次評価報告書の統合報告書が公表され、第6次評価サイクルは終了しました。これら報告書は、パリ協定において、その実施に不可欠な科学的基礎を提供するものと位置付けられています。
我が国では、IPCC評価サイクルの各種報告書作成プロセスに向けた議論への参画、資金の拠出、関連研究の実施など、気候変動に関する科学的知見の積極的な取りまとめや蓄積に対する国際貢献を行ってきました。我が国の提案により公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)に設置された、温室効果ガス排出・吸収量世界標準算定方式を定めるためのインベントリ・タスクフォース(TFI)の技術支援ユニットの活動を支援し、各国の適切なインベントリ作成に貢献しています。また、第6次評価サイクルにおいて、2019年5月には、前述の2019年方法論報告書の採択を議論するIPCC第49回総会を京都市で開催しました。IPCCのインベントリガイドラインは、パリ協定の実施に不可欠な、各国による温室効果ガス排出量の把握と報告を支えるものですが、2019年方法論報告書は、2006年に作成したガイドラインのうち、衛星データの利用や、改良が必要な排出・吸収カテゴリーに対する更新、補足及び精緻(ち)化を行ったものです。さらに、第7次評価サイクルにおいて、2027年開催予定のIPCC総会を誘致する意向をCOP30にて発表しました。
国連気候変動枠組条約の目標を達成するための我が国の取組の一つとして、環境研究総合推進費による「衛星観測データによる大規模排出源からの二酸化炭素排出量推定モデルの開発と定量的精度評価(2-2403)」等の研究を2025年度にも引き続き実施し、科学的知見の収集・解析等を行いました。これらの研究により明らかとなった知見は、IPCC等にインプットされることになります。
2020年10月26日、第203回国会において、「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言し、第204回国会で成立した地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第54号)では、この目標を基本理念として法定化しました。また、2025年2月18日には、「地球温暖化対策計画」の改定を閣議決定し、2030年度における温室効果ガス削減目標を堅持しつつ、世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、2035年度、2040年度に、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指すこととともに、当該目標及びその実現に向けた対策・施策を位置付けました。また、同日、2035年度及び2040年度の削減目標を記載した「日本のNDC」をUNFCCC事務局に提出しました。
地球温暖化対策計画において、地球温暖化対策は、科学的知見に基づき、国際的な協調の下で、排出削減と経済成長の同時実現を図りつつ、我が国として率先的に取り組むこととしています。排出削減と経済成長の同時実現を図りつつ、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路を弛(たゆ)まず着実に歩んでいくことは、決して容易なものではなく、全ての社会経済活動において脱炭素を主要課題の一つとして位置付け、持続可能で強靱な社会経済システムへの転換を進めることが不可欠です。目標実現のために、フォローアップを通じて従来の対策の柔軟な見直し・強化を図りつつ、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指すGX政策と協調して、脱炭素を軸として成長に資する政策を推進していきます。加えて、これまで築いてきた信頼関係やアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)の枠組み等を基礎として、アジア地域を始めとする世界の排出削減・吸収に最大限貢献していきます。
パリ協定の発効以降、世界各国は脱炭素への取組を加速しており、脱炭素への取組を通じて経済成長や産業競争力の強化を目指す動きが急激に強まっています。GX実現の成否が企業・国家の競争力を左右する時代に突入しており、我が国としても、2022年7月から開催しているGX実行会議において、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換し、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指すGXの議論を進めてきました。
そうした中、2025年2月18日には、地球温暖化対策計画の改定と同時に、エネルギー政策についての今後の方向性を示すエネルギー基本計画が改定され、さらには、脱炭素投資を促すため、2040年頃の目指すべきGX産業構造、GX産業立地政策等の方向性を提示するとともに、カーボンプライシングの具体策などGX市場創造等を位置付けるべく、GX推進戦略を改訂する形でGX2040ビジョンが新たに策定されました。GXの実現に向け、これらの計画に基づき、徹底した省エネルギーの推進、再生可能エネルギーや原子力等の脱炭素電源の最大限活用、脱炭素成長型経済構造移行債等を活用した20兆円規模の先行投資支援や、排出量取引制度の2026年度からの本格稼働等を始めとする成長志向型カーボンプライシング構想の速やかな実現・実行等、引き続きあらゆる施策を総動員していくこととしています。
住宅・建築物における省エネルギー対策を推進するため、2022年6月の建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(平成27年法律第53号。以下「建築物省エネ法」という。)の改正により、2025年度から原則全ての新築住宅・建築物に省エネ基準適合を義務付けました。2024年4月には、省エネ性能が市場において適切に評価されるよう、住宅・建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度を強化し、告示に規定する省エネ性能ラベルを用いて表示するよう見直し、施行しました。あわせて、住宅・建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(CASBEE)の充実・普及を図るとともに、第三者評価BELS(Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)の普及も促進しています。
エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(昭和54年法律第49号。以下「省エネ・非化石転換法」という。)における建材トップランナー制度に基づき、断熱材・窓(サッシ、複層ガラス)等の建築材料の性能向上を図っており、2021年6月から、更なる性能向上を図るため、目標基準値の強化に向けた検討を行った結果、窓については2022年3月、2022年度を目標年度とする目標基準値について、2030年度を新たな目標年度として目標基準値を約40%引き上げることを決定し、断熱材については2022年10月、2022年度を目標年度とする目標基準値について、2030年度を新たな目標年度として目標基準値を約5%引き上げることを決定しました。2024年度には、窓について、これまで対象となっていなかった非木造の中高層住宅や大中規模建築物にも対象を拡大するべく検討を行い、中高層共同住宅用サッシの新しい目標基準値を取りまとめました。
住宅については、2050年ネット・ゼロの実現に向けて家庭部門の省エネルギーを強力に推進するため、大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量を正味でおおむねゼロ以下とし、省エネルギー性能と住み心地を兼ね備えた住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。以下「ZEH(ゼッチ)」という。)の普及に加え、ZEH(ゼッチ)基準の水準を大きく上回る省エネルギー性能を有する「GX志向型住宅」の導入に対する補助を実施しました。また、ZEH(ゼッチ)を超える性能への改修を補助し、一般公開を通じた効果訴求も行い、改修の促進を図りました。さらに、ZEH(ゼッチ)について今後は更なるゼロ・エネルギー化を進める観点から、省エネ性能の大幅な引上げや自家消費型太陽光発電の促進を行うよう、その定義の見直しを行い、新たに「GX ZEH(ゼッチ)」を定義付けました。また、リフォームに関しては、住宅の断熱性の向上に資する改修や高効率給湯器の導入などの住宅省エネ化への支援を強化する必要があることから、経済産業省、国土交通省及び環境省が実施する住宅の省エネリフォームのための補助制度をワンストップで利用可能(併用可)とし、補助事業の利便性の向上に努めることで、より一層の改修の促進を図っています。このほか、各家庭のCO2排出実態やライフスタイルに合わせたアドバイスを行う家庭エコ診断制度において、専門の資格を持った診断士による対面診断やWEBサービスによる「うちエコ診断」を実施、2011年度から2025年度までに約290万件の診断を行いました。
建築物について、高い省エネルギー性能を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指したビル(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル。以下「ZEB(ゼブ)」という。)の普及を進めるため、ZEB(ゼブ)の新築及びZEB(ゼブ)への改修に係る費用の一部を補助するとともに、先進的な技術等の組み合わせによるZEB(ゼブ)の実証事業を行っています。さらに、ZEB(ゼブ)を新築する際に建設から解体に至るまでの建築物のライフサイクルを通じて排出されるCO2等(ライフサイクルカーボン)を算定しその削減を目指す取組に対し、補助率を優遇し支援を行っています。また、外皮の高断熱化を行った上で、高効率空調機器の導入等によって、一定の省エネルギー基準を満たす改修を行う際に、その設備の導入に係る費用に対する補助も行っています。加えて、建材と一体となった太陽光発電設備の導入に係る費用を補助する事業(窓・壁等と一体となった太陽光発電の導入加速化支援事業)を進めています。また、省エネルギー・省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト等に対する支援のほか、ビルオーナーとテナントが不動産の環境負荷を低減する取組についてグリーンリース契約等を締結して協働で省エネ化を図る事業に対する支援や、環境不動産の形成を促進するための官民ファンドの運営支援等を継続的に行っています。こうした規制措置強化と支援措置の組み合わせを通じ、2030年度以降新築される住宅・建築物について、ZEH(ゼッチ)・ZEB(ゼブ)基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることや、2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH(ゼッチ)・ZEB(ゼブ)基準の水準の省エネルギー性能が確保されていることなどを目指します。
更なる個別機器の効率向上を図るため、省エネ・非化石転換法のトップランナー制度においてエネルギー消費効率の基準の見直し等について検討を行っています。さらに、事業場等に対して、CO2排出量削減余地診断に基づいた脱炭素化促進計画の策定及び省CO2型設備への更新に対する補助やScope3削減に取り組む企業が主導し企業間で連携した取組への補助を行いました。また、LD-Tech(先導的な脱炭素技術)情報の収集とリスト化等の取組を行いました。
また、一般消費者に一層の省エネに取り組んでいただくことなどを目的として、エネルギー供給事業者が行う省エネに関する一般消費者向けの情報提供を評価・公表する制度(省エネコミュニケーション・ランキング制度)の運用を2022年度より本格的に開始しました。
太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、地域と共生する案件について、国の支援策により、その導入を促進しました。加えて、近年、FIT/FIP制度の支援によらない太陽光発電事業も含め地域共生上の懸念が生じている事例が見られることを踏まえ、関係省庁の連携の下、太陽光発電事業に関する関係法令の総点検を行い、その結果を踏まえ、2025年12月に大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議において「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」を取りまとめました。今後は同パッケージに基づき、不適切事案に対する法的規制の強化、地域の取組との連携強化、地域共生型への支援の重点化等を進めます。また、再エネ設備導入促進のための措置として、建築物省エネ法に基づき、市町村が地域の実情に応じて再エネ設備の設置を促進する区域を設定(2024年4月施行)できることとしました。2023年9月には本制度のガイドラインを策定・公表し同制度の周知を図っています。
太陽光発電の導入に際して、蓄電池を導入しないよりも蓄電池を導入した方が経済的メリットがある状態(ストレージパリティ)の達成を目指し、初期費用ゼロでの自家消費型の太陽光発電設備・蓄電池の導入支援等を実施しました。また、日本発の技術として開発の進むペロブスカイト太陽電池は、軽量・柔軟という特徴を有し、耐荷重性の低い屋根や建物壁面等、従来の太陽電池では設置が困難だった場所への導入を可能とする次世代技術です。この技術の活用により、太陽光発電が直面する様々な課題を乗り越えながら、再生可能エネルギーの更なる導入拡大につながることが期待されています。2024年11月に取りまとめられた「次世代型太陽電池戦略」に基づき、ペロブスカイト太陽電池の継続的な需要の創出に取り組み、量産化による価格低減、更なる導入拡大につながる好循環を目指しています。2025年2月には、政府実行計画を改定し、政府施設への率先導入を位置付けました。また、導入初期におけるコスト低減と継続的な需要拡大に資する社会実装モデルの創出に向けて、地方公共団体を含む需要家への導入支援を実施しました。
コラム:次世代型太陽電池って何?ペロブスカイトって何?
これまで、太陽電池といえば「シリコン系太陽電池」が普及してきました。この太陽電池は耐久性に優れ、変換効率(照射された太陽光のエネルギーを電力に変換できる割合)も高いという特徴があります。しかし、太陽電池そのものや、屋外での耐久性を持たせるためのガラスの重量があるために設置場所に制限があるため、設置できる適地が少なくなってきているという懸念がありました。この懸念を解決する技術として脚光を浴びているのが「ペロブスカイト太陽電池」です。この太陽電池は、軽量・柔軟などの特徴から、これまで設置が難しかった場所に太陽電池を導入することができるものとして、期待が高まっています。
○置かれる場所を選ばない、どこでも輝く万能選手~フィルム型
軽量で柔軟という特徴を有し、建物壁面など、これまで設置が困難であった場所にも導入が可能な種類です。また、国外と比較して日本は大型化・耐久性といった製品化のカギとなる技術で、大きくリードしています。
○窓から見えるいつもの景色、実は発電機能付き~ガラス型
光透過性を活かし、建物建材の一部として既存の高層ビルや住宅の窓ガラスの代替設置が期待される種類です。フィルム型と比べ、耐水性が高く、耐久性を確保しやすいことが特徴です。
○新旧電池の合わせ技、変換効率最大級~タンデム型
シリコン系太陽電池と組み合わせることで、高い変換効率を発揮する種類です。国内における開発の進捗状況は、フィルム型やガラス型に劣り、引き続き研究開発段階にあります。
○屋内・小型
ペロブスカイト太陽電池は耐久性に難がありますが、短寿命の機器への用途であれば、耐久性の課題は発電用途に比べてハードルが低く、大面積生産技術が確立されることで、小型・高付加価値といった展開が期待されています。
○軽量・フレキシブル型
高い耐久性と歩留まりが求められることから、量産化へのハードルは高いものの、既存の太陽電池ではアプローチできなかった場所に設置でき、太陽光発電の導入量の増加に寄与することが期待されています。
○超高効率化
設置面積の制限などから、高いエネルギーが求められる分野(交通・航空等)では、従来よりも超高効率なタンデム型の開発が必須です。超高効率のメリットに合う価格を実現可能な低コスト化が鍵と言われています。
「ペロブスカイト」は、下図のような形態の結晶構造を指します。ペロブスカイト太陽電池は、この構造を持つ化合物を発電層として用いる太陽電池のことです。また、主な原料である「ヨウ素」について、日本は生産量世界2位のシェアを持っており、エネルギーの安全保障面でも貢献が期待されています。

地熱発電は、発電量が天候等に左右されないベースロード電源となり得る再生可能エネルギーであり、我が国は世界第3位の地熱資源量を有すると言われていることなどから、積極的な導入拡大が期待されています。しかし、地下資源の開発はリスクやコストが高いこと、地熱資源が火山地帯に偏在しており適地が限定的であること、自然環境や温泉資源等への影響懸念等の課題もあります。このような状況を踏まえて、守るべき自然は守りつつ、地域での合意形成を図りながら、自然環境と調和した地域共生型の地熱利活用を促進するため、2021年4月に環境省が発表した「地熱開発加速化プラン」に基づき、自然公園法及び温泉法の運用見直しを行うとともに、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づく促進区域の設定、IoTを活用した温泉モニタリングの実施、地方環境事務所への地熱発電等調整専門官の配置等によって、地域調整の円滑化を図っています。全国の地熱発電施設数の2030年までの倍増と最大2年程度のリードタイムの短縮を目指しています。
また、ガスコージェネレーションやヒートポンプ、燃料電池等、エネルギー効率を高める設備等の普及も推進してきました。加えて、二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入に向け、事業環境を整備するため、技術開発や貯留適地調査等を実施しました。
さらに、経済産業省では2030年に向け安定供給を大前提に非効率石炭火力のフェードアウトを着実に実施するために、石炭火力発電設備を保有する発電事業者について、最新鋭のUSC(超々臨界)並みの発電効率(事業者単位)をベンチマーク目標において求めることとしています。その際、水素・アンモニア等について、発電効率の算定時に混焼分の控除を認めることで、脱炭素化に向けた技術導入の促進につなげていきます。2030年以降を見据えて、CCSについては、「第7次エネルギー基本計画」等を踏まえて取り組んでいきます。
バリューチェーン全体における民間投資も活用した脱炭素経営の実践や、地域・くらしを支える物流・交通、資源循環などサプライチェーン全体の脱炭素移行を促進するとともに、「経団連カーボンニュートラル行動計画」の着実な実施と評価・検証による産業界における自主的取組の推進により、産業部門における2024年度のCO2排出量は、3億3,400万トンCO2となり、2013年度比で27.9%減少するなど、成果を上げています。また、業界や部門の枠組みを超えた社会全体やサプライチェーンを通じた他部門での貢献、優れた技術や素材の普及等を通じた海外での貢献、革新的技術の開発や普及による削減貢献といった各業種の取組についても深掘りし、こうした削減貢献を可能な限り定量化することにより、貢献の可視化とベストプラクティスの横展開等を行いました。2026年1月末までに112業種が2030年を目標年限とする定量目標を設定しており、我が国のエネルギー起源CO2排出量に占める自主的取組に参画する業種からの排出量の割合は5割を超えています。政府の2030年度削減目標との整合性や2050年のあるべき姿を見据えた2030年度目標設定、共通指標としての2013年度比のCO2排出量削減率の統一的な見せ方等の検討を進めるなど、引き続き自主的な取組を進め、温室効果ガスの排出削減をより一層推進していきます。
需要サイドでの事業者による非化石エネルギーの導入拡大の取組を加速させるため、省エネ・非化石転換法では、特定事業者等に対し、使用するエネルギーのうちに占める非化石エネルギーの使用割合の向上及び非化石エネルギーを含むエネルギー全体の使用の合理化を求めることとし、以降、中長期計画書では非化石エネルギーへの転換の目標を、定期報告では非化石エネルギーを含めたエネルギーの使用状況について、特定事業者等より提出されています。
工場等に対して、CO2排出量削減余地診断に基づいたCO2削減計画の策定及び省CO2型設備への更新に対する補助やScope3削減に取り組む企業が主導し企業間で連携した取組への補助を行いました。また、LD-Tech(先導的な脱炭素技術)情報の収集とリスト化等の取組を行いました。
中小企業等におけるCO2排出削減対策の強化のため、省CO2型設備導入における資金面の公的支援の一層の充実を図っています。また、中小企業等の省エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして認証し、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度での排出量調整等に活用するJ-クレジット制度の運営を行っています。さらに、建設施工現場における脱炭素化を目指し建設機械の抜本的な動力源の見直しを図るため、電動建機を対象とした建設機械をGX建設機械として認定しており、2026年3月末までに26型式を認定しました。
中小企業を含むバリューチェーン全体の脱炭素化を進めるため、企業間で連携した削減計画策定支援や、業界の共通ルール策定、CFP(カーボンフットプリント)の算定・表示ルールの策定支援等を行いました。
また、サプライサイドでの脱炭素に資する投資や調達先の選択を推進するとともに、そうした企業活動により生み出されるグリーン製品の消費者選択を促進し、需要を創出していくために必要な施策について議論するため、「グリーン製品の需要創出等によるバリューチェーン全体の脱炭素化に向けた検討会」を計4回開催し、「中間とりまとめ」を公表しました。「中間とりまとめ」を踏まえ、脱炭素価値を有する製品・サービスの価値の見える化に関する検討を開始しました。
農林水産分野においては、「みどりの食料システム戦略」や「農林水産省地球温暖化対策計画」に基づき、緩和策として施設園芸等における省エネルギー対策、バイオマスの活用の推進、我が国の技術を活用した国際協力等を実施しました。
地球温暖化の防止に向け、革新技術の高度化、有効活用を図り、必要な技術イノベーションを推進するため、民間だけでは進まない多様な分野におけるCO2排出削減効果の高い技術の開発・実証、窒化ガリウム(GaN)やセルロースナノファイバー(CNF)の活用によるエネルギー消費の大幅削減、地域資源循環の実現に向けた革新的触媒の開発等、燃料電池や水素エネルギー、蓄電池、二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)等に関連する技術の開発・実証、普及を促進しました。
省エネ・非化石転換法に基づき、輸送事業者に対して貨物又は旅客の輸送に係るエネルギーの使用の合理化、非化石転換に関する取組等を、荷主に対して貨物の輸送に係るエネルギーの使用の合理化に関する取組、非化石転換に関する取組等を推進しています。また、AI・IoTを活用した運輸部門における更なる省エネに向けた取組を進めるため、荷主・輸送事業者・着荷主等が連携してサプライチェーン全体の輸送効率化を図る取組や、車両動態管理システム等を活用したトラック事業者と荷主等の連携による輸送効率化に向けた取組に対する支援を行いました。引き続き、運輸部門における省エネ等を進めていきます。
自動車単体対策としてはGXに向けて、自動車の燃費・電費の向上促進、車両の電動化、充電・水素充てん設備に係る補助制度、税制支援等を通じた次世代自動車の普及促進等を行いました。このうち、省エネ・非化石転換法における乗用車の2030年度燃費基準(2020年3月策定)に関しては、通常の燃費試験では反映されない省エネ技術を評価する制度を、重量車の2025年度燃費基準(2019年3月策定)に関しては、製造事業者等に対し電気自動車等の普及促進のインセンティブを与えるため、電気自動車等を達成判定において評価する制度をそれぞれ策定しました。また、2050年ネット・ゼロの実現に貢献し、道路の脱炭素化の取組を推進するため、道路の脱炭素化の推進に関する基本的な方針である「道路脱炭素化基本方針」を策定、国の道路脱炭素化基本方針に基づき道路管理者が脱炭素化推進計画を策定する枠組みを導入しました。充電・水素充てん設備の整備促進、安全・安心な歩行空間や自転車等通行空間の整備等による自動車交通量の減少等を通じたCO2排出の削減、ダブル連結トラックの利用環境の整備や自動物流道路の実現に向けた検討等による低炭素な物流への転換、渋滞対策等の推進、LEDの道路照明への導入や低炭素な材料の導入促進による道路のライフサイクル全体の低炭素化などにより、道路分野の脱炭素化を推進しました。さらに、改正された物資の流通の効率化に関する法律(物流効率化法)(平成17年法律第85号)に基づく総合効率化計画の認定等を活用し、環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築を促進しました。そして、共同輸配送、モーダルシフト、大型NGVトラック導入、貨客混載等の取組について支援を行ったほか、物流施設への再エネ設備等の一体的導入の支援による流通業務の脱炭素化を促進する支援制度を創設しました。加えて、グリーン物流パートナーシップ会議を通して、荷主や物流事業者等の連携による優良事業の表彰や普及啓発を行いました。
鉄軌道分野については、2023年5月に出された「鉄道分野におけるカーボンニュートラル加速化検討会」の最終とりまとめにおいて、鉄道分野のカーボンニュートラルが目指すべき姿と、それに向けて取り組むべき施策の方向性を整理しました。また、2025年9月に出された「鉄道分野のGXに関する官民研究会」のとりまとめにおいて、主要鉄道事業者を対象とする、省エネの徹底、非電化区間のGX及び再エネの最大限導入について具体的な目標等を示した基本的考え方を整理しました。
国際海運分野については、国際海事機関(IMO)において、2023年に合意された「2050年頃までにGHG排出ゼロ」等の目標達成に向けて、GHG排出削減に関する新たな国際ルールの策定の議論が進められているところ、我が国は各国と連携・協力しながら、その議論の着実な進展に貢献しています。加えて、2021年度より、グリーンイノベーション基金を活用して水素・アンモニアを燃料とするゼロエミッション船の技術開発を行っており、2025年9月には純国産の大型商用アンモニア燃料エンジンが完成しました。また、大型アンモニア燃料船については2026年、水素燃料船については2028年の実証運航開始を目指しています。さらに、2025年6月には、アンモニア燃料船への安全かつ円滑なバンカリングの実施に向けて、設備の要件、離接舷時の気象・海象要件、事故防止対策等をまとめた「アンモニアバンカリングガイドライン」を公表しました。内航海運分野については、2025年3月に公表した内航海運の2040年度温室効果ガス削減目標の達成にむけて、省エネ・省CO2性能の効果の見える化(内航船省エネルギー格付制度)等の普及促進、船舶のバイオ燃料等の活用に向けた環境整備を推進しています。また、LNG燃料船、メタノール燃料船等の導入・実証を行っています。造船・舶用工業分野については、2024年度に引き続き、ゼロエミッション船等の建造に必要となるエンジン、燃料タンク、燃料供給システム等の生産設備及びそれらの機器等を船舶に搭載するための設備等の整備への支援を実施しています。
港湾分野においては、カーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進しており、港湾管理者における港湾脱炭素化推進計画作成に対する費用の補助、水素を燃料とする荷役機械の現地実証、低炭素型荷役機械導入支援、CNP認証、水素・アンモニア等の受入環境整備に係るガイドラインの作成、ASEAN諸国向けCNPガイドラインの作成による国際連携などを行いました。
航空分野において、脱炭素の取組を促進するために航空会社や空港会社による主体的・計画的な脱炭素化の取組を後押しすることが重要であり、航空法(昭和27年法律第231号)等に基づく「航空運送事業脱炭素化推進計画」及び「空港脱炭素化推進計画」の認定等を行っております。また具体的な取組として、航空機運航分野においては、国土交通省は2050年ネット・ゼロの実現に向け、官民協議会の場などを活用して関係省庁や民間事業者と連携しながら、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の導入促進、管制の高度化等による運航の改善、機材・装備品等への環境新技術の導入に取り組んでいます。特にCO2削減効果の高いSAFについては、2030年時点の本邦航空会社による燃料使用量の10%をSAFに置き換えるという目標を設定しており、関係省庁が連携し、国際競争力のある価格で安定的に国産SAFを供給できる体制の構築や、国産SAFの国際認証取得に向けた支援等に取り組んでいます。空港分野においては、2026年3月末時点で51空港の空港脱炭素化推進計画が策定され、空港施設・車両等からのCO2の排出削減、空港の再エネの導入等に取り組みました。また、「空港の脱炭素化に向けた官民連携プラットフォーム」を活用し空港関係者等と情報共有や協力体制を構築するとともに、空港関係者の意識醸成や空港利用者への理解促進を図りました。
農地土壌や家畜排せつ物、家畜消化管内発酵に由来するCH4及びN2Oを削減するため、「みどりの食料システム戦略」や「農林水産省地球温暖化対策計画」に基づき、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援を行うとともに、J-クレジット制度も活用し、水稲栽培における中干し期間の延長や家畜排せつ物の管理方法の変更等を推進しました。
廃棄物の処理プロセス由来の非エネルギー起源CO2、CH4及びN2Oの排出量を削減するため、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進により化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減を推進するとともに、有機性廃棄物の直接最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物処理施設における燃焼の高度化等を推進しました。
下水汚泥の焼却に伴うN2Oの排出量を削減するため、下水汚泥の焼却の高度化や、N2Oの排出の少ない焼却炉の普及、焼却を伴わない汚泥処理方法(コンポスト化等)の拡大を推進しました。
代替フロン等4ガス(HFCs、PFCs、SF6、NF3)は、オゾン層は破壊しないものの強力な温室効果ガスであり、我が国の排出量についてUNFCCC事務局に毎年報告しなければならないとされています。
代替フロン等4ガスの中でも、HFCsについては、排出の約9割が冷凍空調機器の冷媒用途によるものであり、機器の使用時におけるHFCsの漏えい及び廃棄時未回収が排出量に大きく影響しています。
HFCsを含めた業務用冷凍空調機器に使用されるフロン類の排出削減に向けて、フロン類のライフサイクル全体にわたる対策を定めたフロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン排出抑制法」という。)において、フロン類製造・輸入業者及びフロン類使用製品(冷凍空調機器等)の製造・輸入業者に対する低GWP(地球温暖化係数)化の推進、機器ユーザー等に対する機器使用時におけるフロン類の漏えいの防止、機器からのフロン類の回収・適正処理等が求められています。また、冷媒の低GWP化を推進するため、省エネ型自然冷媒機器の導入を促進するための補助事業等を実施しています。
また、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機、ルームエアコン及びカーエアコンからのフロン類の適切な回収を進めました。
産業界のフロン類対策等の取組に関しては、自主行動計画の進捗状況の評価・検証を行うとともに、自主行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。
土地利用、土地利用変化及び林業部門(LULUCF)については、パリ協定に則して、森林経営等の対象活動による吸収量について目標を定めています。具体的には、「地球温暖化対策計画」に基づき、2030年度において約4,770万トンCO2、2040年度において約8,400万トンCO2の吸収量を確保することとしています。
この目標の実現に向け、森林吸収源対策として、「森林・林業基本計画」等に基づき、多様な政策手法を活用しながら、適切な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全を推進するとともに、木材や木質バイオマスの利用を促進しました。
また、都市における吸収源対策として、都市公園整備等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進しました。さらに、農地土壌の吸収源対策として、炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援を行いました。
加えて、ブルーカーボン生態系によるCO2吸収・固定量の拡大に向けた検討を行うとともに、海藻が着生しやすい基質の設置や、浚渫(しゅんせつ)土砂や鉄鋼スラグを活用したCO2吸収源となる藻場等の造成等を実施しました。
途上国では深刻な環境汚染問題を抱えており、2018年に開催された世界保健機関(WHO)の大気汚染と健康に関する国際会議やIPCCの報告書等においても、地球温暖化対策と環境改善を同時に実現できるコベネフィット・アプローチの有効性が認識されています。我が国では2007年12月から本アプローチによる途上国との協力を進めているほか、アジア太平洋クリーン・エア・パートナーシップ(APCAP)やクリーン・エア・アジア(CAA)、アジア・コベネフィット・パートナーシップ(ACP)の活動支援を通して、アジア地域におけるコベネフィット・アプローチを促進しています。
途上国が脱炭素社会へ移行できるよう、我が国の地方公共団体が持つ経験を基に、制度・ノウハウ等を含め優れた脱炭素技術の導入支援を行う都市間連携事業や、アジア開発銀行(ADB)、欧州復興開発銀行(EBRD)、国際連合工業開発機関(UNIDO)等と連携したプロジェクトへの資金支援を実施しています。
加えて、気候変動による影響に脆(ぜい)弱である島嶼(しょ)国に対し、気候変動への適応・エネルギー・水・廃棄物分野への対応に関する支援や、研究者によるネットワーク設立に向けた支援を行っています。その他、国連食糧農業機関(FAO)及び国際熱帯木材機関(ITTO)への資金拠出を通じた、アフリカにおける食料生産等と調和した森林経営の確立やアジアにおける持続可能な木材利用の促進の支援など、様々な取組を行っています。
森林の減少を含む土地利用の変化に伴う温室効果ガス排出量は世界全体の人為的な排出量の約2割を占めるとされており、パリ協定においては、森林を含む吸収源の保全及び強化に取り組むこと(第5条1項)に加え、途上国の森林減少及び劣化に由来する温室効果ガスの排出の削減等(REDD+)の実施及び支援を推奨すること(同条第2項)などが定められました。また、JCMの森林案件(REDD+、植林)を推進するため、実施ルールの検討及び各国との協議を行いました。
2024年12月には新たに政府全体の「インフラシステム海外展開戦略2030」が策定されました。グローバルサウス諸国のニーズを踏まえ、実質的な排出削減につながる脱炭素移行政策誘導型インフラ海外展開を推進し、政策立案から個別案件等まで一体的に支援していきます。あわせて、環境省は2025年8月に「環境インフラ海外展開基本戦略(令和7年版)」を策定しました。これに基づき、グローバルサウスにおける高い生活の質(Well-being)をもたらす環境インフラ市場の形成と、我が国における環境産業の新たな成長を促します。
開発途上国の中には、気候変動影響に対処する適応能力が不足している国が多くあります。このため、我が国では、アジア太平洋地域において気候変動リスクを踏まえた意思決定と実効性の高い気候変動適応を支援するために構築した「アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム」(AP-PLAT)を活用し、[1]気候変動リスクに関する科学的知見の情報共有、[2]政策意思決定用ツールの提供、[3]気候変動適応策実施のための能力強化等の取組を、地域内の各国や関係機関等との協働により推進しています。
また、様々な国際協力スキームや産官学に蓄積されてきた優れた適応ソリューションを活用し、気候変動影響評価ツールの開発と実装を進めています。また、気候変動に脆(ぜい)弱な開発途上国に共通する喫緊の課題と多種多様な技術協力ニーズに応えるため、気候変動による災害、健康、水資源、食料安全保障、都市のレジリエンス、自然を基盤とした解決策(NbS:Nature-based Solutions)など様々な観点から、適応課題に対する能力強化や、技術導入と連動した適応ビジネス支援を推進しています。
さらに、ASEANを中心に、NDC作成支援、企業の温室効果ガス排出量の透明性の向上などの脱炭素政策形成支援を行っています。
環境性能に優れた先進的な脱炭素技術や製品の多くは、一般的に導入コストが高く、普及には困難が伴うという課題があります。JCMでは、我が国の企業や政府は技術や資金の面でパートナー国と協力して対策を実行し、得られたGHG削減・吸収の効果を両国の貢献度に応じて配分します。これにより、我が国はクレジットを獲得し、参加した企業の裨益を実現しつつ、パートナー国の負担を下げながら優れた脱炭素技術や製品等の普及を行っています。2025年2月に改定された「地球温暖化対策計画」では、JCMについて、「官民連携で2030年度までの累積で、1億t-CO2程度、2040年度までの累積で、2億t-CO2程度の国際的な排出削減・吸収量の確保を目標とする」ことが定められました。
具体的な施策として、これまでにクレジットの獲得を目指す「脱炭素移行に向けた二国間クレジット制度(JCM)促進事業」や、大気汚染物質や水質汚濁物質と温室効果ガスの両方を抑制するモデル的な事業の実現可能性調査、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による実証事業を実施しているほか、2023年度からはJCMを通じた事業化の実績のない先進的な技術導入を目的とした実証事業として、モンゴルにおけるグリーン水素の実証事業やタイにおけるペロブスカイト太陽電池の実証事業を実施しています。従来の政府支援に加え、民間資金を中心としたプロジェクト組成を促進するため、2023年3月には「民間資金を中心とするJCMプロジェクトの組成ガイダンス」を策定するなど、民間JCMの取組の普及を進めています。さらに、2024年6月に成立した改正地球温暖化対策推進法に基づき指定実施機関(JCMA)を立ち上げ、プロジェクト管理、パートナー国との各種ガイドライン等の改訂及び合同委員会等によるクレジット化手続に係る運営実施の効率と実効性を高めるべく取り組んでいます。また、パリ協定第6条に沿ったJCMを含む市場メカニズムの構築のため、COP27において我が国が主導して立ち上げた「パリ協定6条実施パートナーシップ(A6IP)」による各国の実施体制の構築支援等にも取り組んでいます。
2025年11月に、日本政府は、JCMにおいて初めて、パリ協定第6条に沿ったクレジットである「国際的に移転される緩和成果(ITMOs)」を、日本のJCM登録簿に発行しました。発行されたクレジットについては、2030年度を目標年度とする我が国のNDCのために適切にカウントします。
引き続き、民間資金を中心としたJCMの拡大、国際機関と連携した案件形成・実施の強化等を通じて、世界の脱炭素化に貢献していきます。
ブラックカーボン、CH4、HFC等の短寿命気候汚染物質については、その対策が短期的な気候変動緩和と大気汚染防止等他分野の双方に効果があるとして国際的に注目されており、2012年2月に米国、スウェーデン等により立ち上げられた「短寿命気候汚染物質(SLCPs)削減のための気候と大気浄化のコアリション(CCAC)」に、2012年4月に我が国も参加しました。
2023年12月にはCOP28の場で64か国が賛同したグローバル・クーリング・プレッジが立ち上げられ、我が国を含む賛同国は、2050年までに冷凍空調機器関連の温室効果ガスの排出量を2022年比で少なくとも68%削減することのほかに、環境省が主導しているフルオロカーボン・イニシアティブ(IFL)等を通じ冷凍空調機器に充塡されたフロン類のライフサイクルマネジメントを追求することなどを誓約しました。
世界全体のメタン排出量を2030年までに2020年比30%削減することを目標とするグローバル・メタン・プレッジについて、我が国は、2021年9月の日米豪印首脳会合において参加を表明しました。我が国としては、「地球温暖化対策計画」に基づき、国内のメタン排出削減に取り組むとともに、国内のメタン排出削減の優良事例を各国と共有していくことなどのイニシアティブが期待されています。
「地域脱炭素ロードマップ」、「地球温暖化対策計画」等に基づき、脱炭素先行地域づくり、重点対策加速化事業を推進するとともに、地域の基盤構築のための積極支援を行います。具体的な施策については、第6章第5節1(2)を参照。
都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)に基づく低炭素まちづくり計画がこれまで26都市(2025年12月末時点)で作成されました。また、都市再生特別措置法(平成14年法律第22号)に基づく立地適正化計画がこれまでに650都市で作成され、計画に基づく都市のコンパクト化を図るための財政支援を行うことにより、脱炭素に資するまちづくりを総合的に推進しました。
低炭素なまちづくりの一層の普及のため、温室効果ガスの大幅な削減など低炭素社会の実現に向け、高い目標を掲げて先駆け的な取組にチャレンジする23都市を環境モデル都市として選定しました。
都市の低炭素化をベースに、環境・超高齢化等を解決する成功事例を都市で創出し、国内外に展開して経済成長につなげることを目的として、2011年度に東日本大震災の被災地域6都市を含む11都市を環境未来都市として選定しており、引き続き各都市の取組に関する普及展開等を実施しました。
2025年度再生可能エネルギー導入拡大に向けた分散型エネルギーリソース導入支援等事業により、既存の系統線を用いることでコストを抑え、非常時には地域内の再生可能エネルギー等から自立的に電力供給をする、いわゆる「地域独立系統(マイクログリッド)」の構築に向けて、2025年度は2件の構築支援を実施しました。
交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線整備等の推進、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、ビッグデータを活用した渋滞対策等の交通流対策を行いました。
再生可能エネルギーの導入に関して、2013年10月に国内初の本格的な2MWの浮体式洋上風力発電を設置、2016年3月より運転を開始し、本格的な運転データ、環境影響・漁業影響の検証、安全性・信頼性に関する情報を収集し、事業性の検証を行いました。また、2016年度からは、洋上風力発電の更なる事業化を促進するため、施工の低コスト化・低炭素化や効率化等の手法の確立及び効率的かつ正確な海域動物・海底地質等の調査手法の確立に取り組みました。2020年度からは、浮体式洋上風力発電の実証を行った経験を活かし、事業性検証・理解醸成事業に取り組み、さらに2024年度からは、エネルギーの地産地消を目指す地域における浮体式洋上風力発電の導入に向けた計画策定支援を実施しています。
海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号)に基づく海洋再生可能エネルギー発電設備の整備促進区域(促進区域)の指定について、2025年7月に経済産業省及び国土交通省は、「北海道松前沖」及び「北海道檜山沖」の2区域を新たに促進区域として指定しました。2025年8月に策定された「洋上風力産業ビジョン(第2次)」では、2040年までに15GW以上の浮体式洋上風力発電の案件を形成するという目標を新たに設定し、産業界においても国内調達比率目標を引き上げ、2040年までに65%とする目標を設定したところです。洋上風力発電設備の設置及び維持管理に利用される港湾(基地港湾)については、2025年5月に、指定済み基地港湾7港のうち、秋田港において2者目となる港湾法(昭和25年法律第218号)に基づく海洋再生可能エネルギー発電設備取扱埠頭に係る賃貸借契約を締結し、洋上風力発電設備の設置工事に活用されています。さらに、農業分野にも再生可能エネルギーの導入を促すため、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(平成25年法律第81号)に基づき、市町村、発電事業者、農業者等の地域の関係者から成る協議会を設立し、地域主導で農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー発電を行う取組を促進しました。
水素は、利用時にCO2を排出せず、製造段階に再生可能エネルギーやCCSを活用することで、トータルでCO2フリーなエネルギー源となり得ることから、脱炭素社会実現の重要なエネルギーとして期待されています。また、水素は再生可能エネルギーを含め多種多様なエネルギー源から製造し、貯蔵・運搬することができるため、一次エネルギー供給構造を多様化させることができ、一次エネルギーのほぼ全てを海外の化石燃料に依存する我が国において、エネルギー安全保障の確保と温室効果ガスの排出削減の課題を同時並行で解決していくことにも大いに貢献するものです。
水素利用については、家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車(FCV)の普及が先行しており、導入拡大に向けた支援を行いました。また、水素充てんインフラについては、整備中5か所を含めて全国161か所(2025年3月末時点)の商用水素ステーションが整備されており、整備拡大に向けた支援を行いました。さらに、燃料電池バス・トラック・フォークリフト等の産業車両への導入支援や水素内燃機関の技術開発実証など、水素需要の更なる拡大に向けた取組を進めました。
水素の本格的な利活用に向けては、コストの低減と利用の拡大を両輪で進めていくことが必要です。このため、大規模に水素を輸送する国際水素サプライチェーン構築実証に取り組んでいます。また、製造時にもCO2を排出しない、トータルでCO2フリーな水素の利活用拡大に向けては、再生可能エネルギーの導入拡大や電力系統の安定化に資する技術として、太陽光発電といった自然変動電源の出力変動を吸収し、水素に変換・貯蔵するPower-to-Gas技術の実証にも福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)等において取り組んでいます。さらに、地域資源(再生可能エネルギー、副生水素、使用済みプラスチック、家畜排せつ物等)を活用した水素の製造、貯蔵、運搬、利活用の各設備とそれらをつなぐインフラネットワークの整備を通じた地域水素サプライチェーン構築を地域特性に応じて、様々な需給を組み合わせた実証モデルの構築を進めています。
一方、水素社会の実現には、技術面、コスト面、インフラ面等でいまだ多くの課題が存在しており、官民一体となった取組を進めていくことが重要です。このような観点を踏まえて決定された「水素基本戦略」(2017年12月再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議決定)では、水素社会実現に向けて官民が共有すべき方向性・ビジョンを示しています。さらに、2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」の中で、「国家戦略の下で、クリーンな水素・アンモニアへの移行を求める」ことが閣議決定されたことを受け、2023年6月に「水素基本戦略」を改定しました。本戦略を具体化する形で、2024年5月に脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(水素社会推進法)(令和6年法律第37号)が成立し、2024年10月に施行されました。2024年11月から2025年3月にかけて、既存原燃料の水素等への転換と自立的な発展に向けて、商用規模のサプライチェーンを組成するため、既存原燃料との価格差に着目した支援を受けようとする計画の申請受付を行い、2025年の9月から年末までに、4件の計画を認定しました。引き続き、条件が整った案件から順次、計画認定をしていきます。加えて、2025年3月から2025年6月にかけて、水素等の輸送又は貯蔵に必要な整備であって、複数の利用事業者が共同で使用する設備に対する拠点整備支援を受けようとする計画の申請受付を行いました。今後、条件が整った案件から順次、計画認定をしていきます。
地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度により、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者に、毎年度、排出量を国に報告することを義務付け、国が報告されたデータを集計・公表しています。
2021年の地球温暖化対策推進法の改正により、2022年度からは、省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)による報告を開始しました。全国の13,279の特定排出者から報告された2023年度の排出量を集計し、2025年11月に結果を公表しました。今回報告された排出量の合計は5億8,900万トンCO2で、我が国の2023年度排出量の約5割に相当します。
地球温暖化対策推進法に基づき、事業者は事業活動において使用する設備について、温室効果ガスの排出削減等に資するものを選択するとともに、できる限り温室効果ガスの排出量を少なくする方法で使用するよう努めること、また、事業者は国民が日常生活において利用する製品やサービスについて、その利用等に伴う温室効果ガスの排出量がより少ないものの製造等を行うとともに、その利用等に伴う温室効果ガスの排出に関する情報の提供を行うよう努めることとされています。国は、こうした努力義務を果たすために必要な措置を示した温室効果ガス排出削減等指針を策定・公表することとされており、2024年6月の地球温暖化対策推進法の改正等を踏まえ、2025年4月に本指針の改正を行いました。加えて、本指針の利便性の更なる向上のため、先進的な対策リスト及び各対策の効率水準・コスト等のファクト情報を拡充しました。さらに、排出削減等指針に基づく上水道・工業用水道部門に係るマニュアル及び下水道部門に係るマニュアルの見直しを行いました。
2050年ネット・ゼロの実現に向けて、国民・消費者の行動変容・ライフスタイル転換を強力に後押しするため、「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)において、組織(自治体・企業・団体)、個人単位でデコ活宣言の呼びかけを行い、18,163件(2026年3月末時点。国・自治体:413件、企業:3,096件、各種団体:418件、個人:14,236件)のデコ活宣言が行われました。
また、「デコ活」の開始と同時に発足したデコ活応援団(官民連携協議会)には、3,896者を超える自治体・企業・団体等の参画をいただき、このデコ活応援団とともに国民・消費者の豊かな暮らしを後押しするための官民連携プロジェクトを組成・実施・検討するとともに、引き続き連携協働型の社会実装に向けたプロジェクトに対する補助金の公募を行い、住宅の断熱改修や衣類の回収・アップサイクルといった9件の事業を採択しました。
さらに、国民・消費者の行動変容・ライフスタイルの転換を促進し、脱炭素につながる新しい豊かな暮らしと、我が国の温室効果ガス削減目標を実現するために必要な方策・道筋を示す「くらしの10年ロードマップ」の進捗把握のため、取組状況に関する消費者アンケート調査(第3回)を実施しました。
国内の多様な主体による省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用等による排出削減対策及び適切な森林管理による吸収源対策を引き続き積極的に推進していくため、カーボン・オフセットや財・サービスの高付加価値化等に活用できるクレジットを認証するJ-クレジット制度の更なる活性化を図りました。具体的には、J-クレジットの対象となるプロジェクトの拡充として、2025年にはCO2吸収型コンクリートの使用及びバイオ炭使用型コンクリートの使用に関する新規方法論等を追加しました。2025年12月末時点で、J-クレジット制度の対象となる方法論は74種類あり、省エネ・再エネ設備の導入、森林管理や農業分野等に関するプロジェクトを累計1,359件登録し、累計1,333万トンCO2のクレジット認証をしました(前身制度からの移行プロジェクトを含む)。J-クレジット制度の活用により、中小企業や農林業等の地域におけるプロジェクトにカーボン・オフセットの資金が還流するため、地球温暖化対策と地域振興が一体的に図られました。また、カーボン・クレジットの取引の流動性を高めるとともに、適切な価格公示を行うことで、脱炭素投資を促進する観点から2023年10月に開設された、東京証券取引所によるカーボン・クレジット市場では、開設以降、2026年1月時点で約108万トン、総額43.5億円が取引されました。
「カーボン・オフセット」とは、市民、企業等が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、排出削減・吸収量(クレジット)の購入や、他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動の実施等により、排出量の全部又は一部を埋め合わせるという考え方です。2024年3月に改訂した『我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)』及び『カーボン・オフセットガイドライン』に基づき、国内で信頼性の確保されたカーボン・オフセットの取組を促進しています。
脱炭素社会を創出し、気候変動に対して強靱で持続可能な社会を創出していくには、必要な温室効果ガス削減対策や気候変動への適応策に的確に民間資金が供給されることが必要です。このため、ESG金融等を通じて環境への配慮に適切なインセンティブを与え、資金の流れをグリーン経済の形成に寄与するものにしていくための取組(金融のグリーン化)を進めることが重要です。
詳細については、第6章第2節を参照。
2050年ネット・ゼロの実現に向けて、中小企業は、我が国の企業数の9割超、雇用の約7割、GHG排出量のうち約2割程度を占めており、中小企業によるGHG排出量の削減に向けた取組や脱炭素経営の促進は重要となります。その際、普段から地域の中小企業との接点を持っている地域金融機関や商工会議所を始めとする経済団体等のプッシュ型支援が効果的となります。他方で、企業の脱炭素経営の取組ステップ(「知る」「測る」「減らす」)のうち、各支援機関によって得意とする支援メニューの取組やステップが異なることから、地域ぐるみでの脱炭素経営支援体制を構築することが有効となります。こうした状況を踏まえ、地域金融機関・商工会議所等の経済団体等と地方公共団体が連携し、各地域の特性を活かした地域ぐるみでの中小企業に対する脱炭素経営支援体制の構築を図るモデル地域事例の構築を36件(2023年度16件、2024年度10件、2025年度10件)行いました。また、モデル事業で得られた知見を踏まえ、支援体制の構築から実際の支援までのノウハウや具体例をまとめたガイドブック等を公表しています。
国連気候変動枠組条約に基づき、我が国の温室効果ガスインベントリ報告書を作成し、排出量及び吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関して、条約事務局による審査の結果等を踏まえ、その算定方法の改善等について検討しました。
農林水産分野においては、「農林水産省地球温暖化対策計画」及び「農林水産省気候変動適応計画」に基づき、地球温暖化対策に係る研究及び技術開発を推進しました。
温室効果ガスの排出削減・吸収技術の開発として、農地土壌の炭素貯留能力を向上させるバイオ炭資材等の開発、東南アジアの小規模農家のための経済性を備えた温室効果ガス排出削減技術の開発、畜産分野における温室効果ガスの排出を低減する飼養管理技術等の開発を推進しました。
また、地球温暖化緩和に資するため、炭素貯留能力に優れた造林樹種を効率的に育種する技術の開発、針葉樹樹皮から化石由来プラスチックの代替品として利用できる樹脂原料等の開発を推進しました。
農林水産分野における気候変動適応技術については、高温に強い品種や温暖化に適応した生産技術の開発に取り組み、また、高温環境に適した品種・品目への転換、適応技術の普及や、発生リスクの上昇が予想される赤潮の被害軽減技術等の開発を推進しました。
政府における取組として、地球温暖化対策推進法に基づき、自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスの削減等を定めた「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の削減等のため実行すべき措置について定める計画(政府実行計画)」を2025年2月に閣議決定しました。この計画では、2013年度を基準として、政府全体の温室効果ガス排出量を2030年度までに50%、2035年度までに65%、2040年度までに79%削減することを目標とし、太陽光発電の最大限導入、庁舎等における省エネの徹底、新築建築物のZEB(ゼブ)化、電動車の導入、LED照明の導入、再生可能エネルギー電力の調達、フロン類の排出抑制、GX製品の率先調達等の措置を講ずることとしています。
各府省庁は温室効果ガスの削減に取り組み、調整後排出係数に基づき算出した場合、2023年度は基準年度である2013年度に比べ21%削減しています。
また、「公共部門等の脱炭素化に関する関係府省庁連絡会議」を開催し、政府保有施設等への太陽光発電の導入に向けた議論や公共部門等の脱炭素化に資する取組の情報共有等を実施しました。
さらに、この計画に基づく取組に当たっては、2007年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を実施しました。
地球温暖化対策推進法に基づき、全ての地方公共団体は、自らの事務・事業に伴い発生する温室効果ガスの排出削減等に関する計画である地方公共団体実行計画(事務事業編)の策定が義務付けられています。また、都道府県、指定都市、中核市及び施行時特例市は、地域における再生可能エネルギーの導入拡大、省エネルギーの推進等を盛り込んだ地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定が義務付けられているほか、その他の市町村においても区域施策編の策定が努力義務とされています。さらに、市町村が、住民や事業者などが参加する協議会等で合意形成を図りつつ、環境に適正に配慮し、地域に貢献する再生可能エネルギー事業を促進する区域を定める、「地域脱炭素化促進事業制度」が設けられています。同制度については、2025年4月に改正地球温暖化対策推進法が施行され、これまでは市町村のみが定めるよう努めるものとされていた再生可能エネルギーの促進区域等について、都道府県及び市町村が共同して定めることができることとし、その場合、複数市町村にわたる地域脱炭素化促進事業計画の認定を都道府県が行うこととするなど、地域脱炭素化促進事業制度が拡充されました。
加えて、環境省は、地方公共団体の取組を促進するため、地方公共団体実行計画の策定・実施に資するマニュアル類の公表や、「自治体排出量カルテ」を始めとした、温室効果ガス排出量の現況推計に活用可能なツールを提供しています。さらに、地域における再生可能エネルギーの最大限の導入を促進するため、「地域脱炭素実現に向けた再エネの最大限導入のための計画づくり支援事業」を通じて、地方公共団体における再生可能エネルギーの導入計画の策定や円滑な再生可能エネルギー導入のための促進区域設定等に向けたゾーニング等の取組支援を実施しました。
地球温暖化対策推進法に基づき、引き続き都道府県や指定都市等において、地域における「デコ活」等の普及啓発活動や調査分析の拠点としての地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)の指定や、地域における「デコ活」等の普及啓発活動を促進するための地球温暖化防止活動推進員を委嘱し、さらに関係行政機関、関係地方公共団体、地域センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により地球温暖化対策地域協議会を組織することができることとし、これらを通じパートナーシップによる地域ごとの実効的な行動変容を促進する取組の推進等が図られるよう継続して措置しました。