環境省では、環境研究総合推進費において、環境政策への貢献をより一層強化するため、環境省が必要とする研究テーマ(行政ニーズ)を明確化し、その中に地方公共団体がニーズを有する研究開発テーマも組み入れました。また、気候変動に関する研究のうち、各府省が関係研究機関において中長期的視点から計画的かつ着実に実施すべき研究を、地球環境保全等試験研究費により効果的に推進しました。
(ア)国立水俣病総合研究センター
国立水俣病総合研究センターでは、水俣病発生の地にある国の直轄研究機関としての使命を達成するため、水俣病や環境行政を取り巻く社会的状況の変化を踏まえ、2025年5月に今後5年間の実施計画「中期計画2025」を策定しました。「中期計画2025」における調査・研究分野とそれに付随する業務に関する重点項目は、[1]水銀曝露の健康影響評価と治療への展開、[2]水銀の環境動態、[3]地域・福祉向上への貢献、[4]国際貢献とし、中期計画1年目の研究及び業務を推進しました。
特に、地元医療機関との共同による脳磁計(MEG)・磁気共鳴画像診断装置(MRI)を活用した水俣病患者の慢性期における臨床病態の客観的評価法の確立に関する研究、メチル水銀中毒の予防及び治療に関する基礎研究を推進するとともに、国内外諸機関と連携し、環境中の水銀モニタリング及び水俣病発生地域の地域創生に関する調査・研究を進めました。
水銀に関する水俣条約(以下「水俣条約」という。)締約国会議の結果及び成果等を踏まえ、水銀分析技術の簡易・効率化を進め、分析精度向上に有効となる標準物質の作成と配布等を行い、また、熊本県水俣市において「水銀に関連する環境問題を抱える国々における公衆衛生の向上」をテーマに研究会議「NIMD FORUM」を主催するなどの国際貢献を進めるとともに国立水俣病総合研究センターの研究成果及び施設を積極的に活用した地域貢献を進めました。
これらの施策や研究内容について、国立水俣病総合研究センターウェブサイトや水俣病情報センターにおいて、具体的かつ分かりやすい情報発信を実施しました。
(イ)国立研究開発法人国立環境研究所
国立研究開発法人国立環境研究所では、環境大臣が定めた中長期目標(2021年度~2025年度)に基づく第5期中長期計画が2021年度から開始されました。中長期計画に基づき、環境研究の中核的研究機関として、[1]重点的に取り組むべき課題への統合的な研究、[2]環境研究の各分野における科学的知見の創出等、[3]国の計画に基づき中長期目標期間を超えて実施する事業(衛星観測及び子どもの健康と環境に関する全国調査に関する事業)及び[4]国内外機関との連携及び政策貢献を含む社会実装を推進しました。
特に、[1]では、統合的・分野横断的アプローチで取り組む戦略的研究プログラムを設定し、「気候変動・大気質」、「物質フロー革新」、「包括環境リスク」、「自然共生」、「脱炭素・持続社会」、「持続可能地域共創」、「災害環境」及び「気候変動適応」の8つの課題解決型プログラムを推進しています。
また、環境の保全に関する国内外の情報を収集、整理し、環境情報メディア「環境展望台」によってインターネット等を通じて広く提供しました。さらに、気候変動適応法(平成30年法律第50号)に基づき地方公共団体等への技術的援助等の業務を推進しました。
文部科学省では、科学研究費助成事業等の研究助成を行い、大学等における地球環境問題に関連する幅広い学術研究・基礎研究の推進や研究施設・設備の整備・充実への支援を図るとともに、関連分野の研究者の育成を行いました。あわせて、「Future Earth」等の国際協働研究を通じた人文学・社会科学を含む分野横断的な課題解決型の研究の振興により、SDGsの進展に貢献しました。
地方公共団体の環境関係試験研究機関は、監視測定、分析、調査、基礎データの収集等を広範に実施するほか、地域固有の環境問題等についての研究活動を推進しました。これらの地方環境関係試験研究機関との緊密な連携を確保するため、環境省では、地方公共団体環境試験研究機関等所長会議を開催するとともに、全国環境研協議会と共催で環境保全・公害防止研究発表会を開催し、研究者間の情報交換の促進を図りました。
環境省では、2050年ネット・ゼロに向けて、分野やステークホルダーの垣根を越えた地域共創による開発・実証を支援するため、「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」を実施しています。本事業では、亜鉛をエネルギー貯蔵媒体として用いるフロー型亜鉛空気電池技術の開発等に取り組むとともに、スタートアップ企業の事業化検討に必要な概念実証(POC)や実現可能性調査(FS)を支援し、2025年度において全体で40件の技術開発・実証事業を実施しました。また、徹底したエネルギー消費量の削減を実現するため、高品質窒化ガリウム(GaN)について、種結晶からEV用インバータまでの一気通貫の開発・実証や、蓄電池用高効率インバータの開発等を実施しました。そのほかに、二酸化炭素の回収・有効利用・貯留(CCUS)技術の社会実装に向け、CO2分離・回収技術の高度化に加え、清掃工場等の排ガス中のCO2から燃料や化学原料を製造する技術の開発・実証を進めました。特にCCU技術の一つである人工光合成については、CO2からCOを製造する装置の開発に取り組むとともに、社会実装に向けたロードマップを取りまとめました。また、貯留ポテンシャルが高いとされる浮体式洋上圧入CCS技術の検討や安全・適正なCCS事業に必要なモニタリング技術の開発・実証、制度検討等を実施しました。
文部科学省では、2050年ネット・ゼロを支える超省エネ・高性能なパワーエレクトロニクス技術の創出に向けて、窒化ガリウム(GaN)等の次世代パワー半導体やパワエレ回路システム、受動素子等の研究開発を推進しました。あわせて、省エネ・高性能な半導体集積回路の創生に向けた新たな切り口による研究開発と将来の半導体産業を牽引する人材の育成を推進するため、アカデミアにおける中核的な拠点形成を推進しました。また、2050年ネット・ゼロ実現等への貢献を目指し、従来の延長線上にない非連続なイノベーションをもたらす革新的技術を創出するため、革新的GX技術創出事業(GteX)及び先端的カーボンニュートラル技術開発(ALCA-Next)を実施しています。GteXでは「蓄電池」、「水素」、「バイオものづくり」の三つの重点領域を設定し、材料等の開発やエンジニアリング、評価・解析等を統合的に行うオールジャパンのチーム型研究開発を推進するとともに、ALCA-Nextでは幅広い領域でのチャレンジングな提案を募り、大学等における基礎研究の推進により様々な技術シーズを育成する探索型の研究開発を推進しました。さらに、未来社会創造事業「地球規模課題である低炭素社会の実現」領域において、2050年の社会実装を目指し、温室効果ガスの大幅削減に資する革新的技術の研究開発を推進しました。加えて、未来社会創造事業大規模プロジェクト型においては、省エネ・低炭素化社会が進む未来水素社会の実現に向けて、高効率・低コスト・小型長寿命な革新的水素液化技術の開発を、また、Society 5.0の実現に向けて、センサ用独立電源として活用可能な革新的熱電変換技術の開発を推進しました。さらに、理化学研究所においては、植物科学、ケミカルバイオロジー、触媒化学、バイオマス工学の異分野融合により、持続的な成長及び地球規模の課題に貢献する「課題解決型」の研究開発を推進するとともに、強相関物理、超分子機能化学、量子情報エレクトロニクスの3分野の有機的な連携により、超高効率なエネルギーの収集・変換や、超低エネルギー消費のエレクトロニクスの実現に資する研究開発を推進しました。また、気候変動予測先端研究プログラムにおいて、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」等を活用して、気候モデルの開発等を通じた、気候変動メカニズムの解明や全ての気候変動対策の基盤となる高精度な気候予測データの創出などの研究開発を推進しました。また、気候予測データや地球観測データ等の地球環境データを蓄積・統合・解析・提供する「データ統合・解析システム(DIAS)」を活用し、地球環境データを利活用した気候変動、防災等の課題解決に貢献する研究開発を実施しました。加えて、大学の力を結集した、地域の脱炭素化加速のための基盤研究開発において、人文学・社会科学から自然科学までの幅広い知見を活用し、大学等と地域が連携して地域のカーボンニュートラルを推進するためのツール等に係る分野横断的な研究開発等を推進しました。あわせて、「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」を通じて、各大学等による情報共有やプロジェクト創出を促進しました。
経済産業省では、省エネルギー、再生可能エネルギー、原子力、分離回収したCO2を地中へ貯留するCCSやCO2を資源として有効利用するCCU/カーボンリサイクルに関わる技術開発を実施しました。
国土交通省では、2050年ネット・ゼロの実現に向けて、運輸部門におけるCO2排出量の約4割を占めるトラック・バスに関して、産学官連携の下、重量車の電動化技術及び水素、合成燃料を始めとするカーボンニュートラル燃料における内燃機関分野等の開発促進の強化を図るための調査研究を実施しました。
(ア)統合的な研究開発の推進
第6期「科学技術・イノベーション基本計画」では、我が国が目指す社会として、Society 5.0を具体化し、「国民の安全と安心を確保する持続可能で強靱な社会」、「一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会」の実現を掲げています。その実現に向けて、本計画では、経済・社会が大きく変化し、国内、そして地球規模の様々な課題が顕在化する中で、2030年を見据えて、[1]デジタルを前提とした社会構造改革(我が国の社会を再設計し、地球規模課題の解決を世界に先駆けて達成し、国民の安全・安心を確保することで、国民一人ひとりが多様な幸せを得られるようにする)、[2]研究力の抜本的強化(多様性や卓越性を持った「知」を創出し続ける、世界最高水準の研究力を取り戻す)、[3]新たな社会を支える人材育成(日本全体をSociety 5.0へと転換するため、多様な幸せを追求し、課題に立ち向かう人材を育成する)の三つを大目標として定め、科学技術・イノベーション政策を推進することとしています。
2025年6月に閣議決定した「統合イノベーション戦略2025」においても、重点的に取り組むべき事項の一つとして「地球規模課題の克服に向けた社会変革と非連続なイノベーションの推進」を掲げ、第6期「科学技術・イノベーション基本計画」における目標である、「我が国の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロとし、世界のカーボンニュートラルを牽引するとともに、循環経済への移行を進めることで、気候変動をはじめとする環境問題の克服に貢献し、SDGsを踏まえた持続可能性が確保される。」ことを踏まえ、関係府省庁、産学官が連携して研究開発から社会実装まで一貫した取組の具体化を図り推進していくこととしました。
内閣府では、2023年度から開始した戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期のエネルギー・環境関連の課題として採択した「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築」及び「サーキュラーエコノミーシステムの構築」の推進を図りました。前者は、再生可能エネルギーを主力エネルギー源とするため、従来の一つの建物や一つの地域における電力マネジメントの枠を超えて、熱・水素・合成燃料なども包含するエネルギーマネジメントシステムを構築して次世代の社会インフラを確立することを目指し、後者は、素材・製品開発といった動脈産業とリサイクルを担う静脈産業が連携して素材、製品、回収、分別、リサイクルの各プレイヤーが循環に配慮した取組を通じてプラスチックの循環経済(サーキュラーエコノミー)バリューチェーンを構築することを目指すもので、両者とも社会実装に向けた研究開発を行うものです。
環境省では、「第六次環境基本計画」に基づき、今後5年程度の間で取り組むべき環境研究・技術開発の重点課題やその効果的な推進方策を提示するものとして、「環境研究・環境技術開発の推進戦略」(2024年8月環境大臣決定)を策定し、研究開発を推進しています。
総務省や国立研究開発法人情報通信研究機構等では、電波や光を利用した地球環境のリモートセンシング技術や、環境負荷増加を抑制しつつ飛躍的に情報通信ネットワーク設備の大容量化を可能にするフォトニックネットワーク技術等の研究開発を実施しました。
農林水産省では、農林水産分野における気候変動の影響評価、脱炭素や温暖化に適応する技術の実用化等の環境に配慮した研究開発について推進しました。さらに、これらの研究開発等に必要な生物遺伝資源の収集・保存や特性評価等を推進しました。また、福島国際研究教育機構(F-REI)では、遠隔監視・デジタルマップ等を活用し、複数台のロボット農機を同時運用する自動走行システムの開発・実証を進めるとともに、土壌環境と植物栄養の相互作用や土壌の物質循環の仕組みの解明を通じ、低環境負荷・低コスト農業の実現に資する研究開発を推進しました。さらに、森林・林業の再生を図るため、放射性物質対策に資する森林施業等の実証等を行うとともに、木材製品等に係る放射性物質の調査・分析及び木材製品等の検査体制の整備を支援しました。
経済産業省では、生産プロセスの低コスト化や省エネ化の実現を目指し、植物機能や微生物機能を活用して工業原料や高機能タンパク質等の高付加価値物質を生産する高度モノづくり技術の開発及びバイオものづくりの製造基盤技術の確立に向けた実証事業を実施しました。
国土交通省では、地球温暖化対策にも配慮しつつ、地域の実情に見合った最適なヒートアイランド対策の実施に向けて、様々な対策の複合的な効果を評価できるシミュレーション技術の運用や、地球温暖化対策に資するCO2の吸収量算定手法の開発等を実施しました。低炭素・循環型社会の構築に向け、下水道革新的技術実証事業(B-DASH)等による下水汚泥の有効利用技術等の実証と普及を推進しました。
2025年12月、第16回気候中立社会実現のための戦略研究ネットワーク(LCS-RNet)年次会合を開催しました。世界適応ネットワーク(GAN)の地域ネットワークの一つである、アジア太平洋適応ネットワーク(APAN)を他の国際機関等との連携により支援しました。2025年10月には、アジア太平洋地域で最大規模の適応関連の国際会議であるアジア太平洋気候変動適応フォーラム(APANフォーラム)を開催しました。また、気候変動、生物多様性など各分野横断型研究に関する国際共同研究及び能力強化プロジェクトを実施する、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)を支援し、アジア太平洋地域内の途上国を中心とする研究者及び政策決定者の能力向上に大きく貢献しました。
エネルギー・環境分野のイノベーションにより気候変動問題の解決を図るため、世界の学界・産業界・政府関係者間の議論と協力を促進する国際的なプラットフォーム「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」の第12回年次総会を2025年10月に開催しました。
CO2大幅削減に向けた非連続なイノベーション創出を目的とした、G20の研究機関のリーダーによる「Research and Development 20 for Clean Energy Technologies(RD20)」の第7回会合を2025年10月に開催しました。
先進的な環境技術の普及を図る環境技術実証事業では、気候変動対策技術領域、資源循環技術領域などを対象とし、対象技術の環境保全効果等を第三者が実証し、結果の公表等を実施しました。また、環境スタートアップ企業のロールモデルの創出に寄与し、環境分野でのビジネスの創出及びイノベーションの促進に向けて、成長ステージに応じた、研究開発・事業化支援、優れた環境スタートアップ企業の表彰を実施しました。
事例:環境スタートアップ大賞環境大臣賞(Eサーモジェンテック)
環境省では将来有望な環境スタートアップへの表彰等による、新たなロールモデルの創出や事業機会の拡大の支援を目的として、2020年度より環境スタートアップ大賞を実施しています。
2024年度に環境スタートアップ大臣賞を受賞したEサーモジェンテックは、低温排熱から効率よく電力を回収できるフレキシブル熱電発電モジュール及び、それを使った発電ユニットを提供しています。工場や発電所等におけるIoT用、省エネ用の自立電源として広く利用が期待されており、省エネへの多大な貢献や、日本発の技術として国際的に普及できる可能性が高く評価されました。

環境研究総合推進費及び地球環境保全等試験研究費に係る研究成果については、学術論文、研究成果発表会・シンポジウム等を通じて公開し、関係行政機関、研究機関、民間企業、民間団体等へ成果の普及を図りました。また、環境研究総合推進費ウェブサイトにおいて、研究成果やその評価結果等を公開しました。
地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業については、成果報告会を通じた情報発信などを行いました。
環境省では、環境研究総合推進費において終了した課題を対象に追跡評価を行いました。
データを基盤とするプラットフォームビジネスについては、データの質と量がその価値や競争優位性に直結し得ることから、環境ビジネスにおいても製造・輸送等のサプライチェーンの各段階で生まれる価値あるデータを最大限に活用するため、企業や業種の垣根を越えて国内の関係者がデータを連携し、流通させる仕組みを構築しました。
「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム」(EEGS)においては報告義務のない中堅・中小企業が排出量算定・公表を容易にできる環境を整備しました。
さらに、取引先企業と連携した削減目標・計画の策定や脱炭素設備投資の推進に当たり、業界団体におけるScope3算定ルールの共通化等に向けたモデル支援を実施しました。そして、利用者のニーズに対応し、事業者の市場アクセスや消費者の便益向上に貢献しました。
また、我が国からも拠出してきた自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のデータファシリティの立ち上げに向けた取組については、日本の企業や研究機関等も参画したパイロットプログラムの結果も踏まえ、2025年11月に自然関連のデータバリューチェーンの改善に向けた勧告がまとまりました。また、特にASEAN諸国における原材料調達地の現地調査や衛星データ等を活用し、サプライチェーンの透明性を確保する技術の研究開発を行いました。
我が国が強みを有する環境技術の活用・普及等のため、国際的な枠組みへの貢献や多国間・二国間協力等を通じて、環境課題に関する国際連携を推進しました。環境技術に関連する国際標準化や国際的なルール形成については、「第六次環境基本計画」において、環境分野の新たな国際ルールづくりを我が国が主導できるよう国際標準化を推進することとされました。また、2025年6月3日に知的財産戦略本部で決定された「新たな国際標準戦略」においても、国際社会にとって重要であり、かつ、国際標準が主要な課題解決策となる17の重要領域の中から、対応の緊要性を踏まえて選定された8つの「戦略領域」の一つとして「環境・エネルギー」が挙げられました。これらを踏まえ、環境省では、内閣府のシステム改革型標準活用加速化支援事業(BRIDGE)も活用しながら、気候変動、サーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブに関する環境ルール形成の取組を推進しました。
監視・観測については、国連環境計画(UNEP)における地球環境モニタリングシステム(GEMS)、世界気象機関(WMO)における全球大気監視計画(GAW計画)、全球気候観測システム(GCOS)、全球海洋観測システム(GOOS)等の国際的な計画に参加して実施しました。さらに、「全球地球観測システム(GEOSS)」を推進するための国際的な枠組みである地球観測に関する政府間会合(GEO)に参画し、執行委員会のメンバー国を務めています。また、気象庁は、GCOSの地上観測網の推進のため、世界各国からの地上気候観測データの入電状況や品質を監視するGCOS地上観測網監視センター(GSNMC)業務や、アジア地域の気候観測データの改善を図るためのWMO関連の業務を、各国気象機関と連携して推進しました。
気象庁は、WMOの地区気候センター(RCC)を運営し、アジア太平洋地域の気象機関に対し基礎資料となる気候情報やウェブベースの気候解析ツールを引き続き提供しました。さらに、域内各国の気候情報の高度化に向けた取組と人材育成に協力しました。
温室効果ガス等の観測・監視に関し、WMO温室効果ガス世界資料センターとして全世界の温室効果ガスのデータ収集・管理・提供業務を、WMO品質保証科学センターとしてアジア・南西太平洋地域における観測データの品質向上に関する業務を、さらにWMO全球大気監視較正センターとしてメタン等の観測基準(準器)の維持を図る業務を引き続き実施しました。超長基線電波干渉法(VLBI)や全球測位衛星システム(GNSS)を用いた国際観測に参画し、地球規模の地殻変動等の観測・研究を推進しました。
東アジア地域における残留性有機汚染物質(POPs)の汚染実態把握のため、これら地域の国々と連携して大気中のPOPsについて環境モニタリングを実施しました。また、水俣条約の有効性の評価にも資する水銀モニタリングに関し、現地の既存地域ネットワーク等と連携してアジア太平洋地域及びアフリカ地域の国を中心に技術研修を開催し、地域ネットワークの強化に取り組みました。
大気における気候変動の観測について、気象庁はWMOの枠組みで地上及び高層の気象観測や地上放射観測を継続的に実施するとともに、GCOSの地上及び高層や地上放射の気候観測ネットワークの運用に貢献しています。
さらに、世界の地上気候観測データの円滑な国際交換を推進するため、WMOの計画に沿って各国の気象局と連携し、地上気候観測データの入電数向上、品質改善等のための業務を実施しています。
温室効果ガスなど大気環境の観測については、国立研究開発法人国立環境研究所及び気象庁が、温室効果ガスの測定を行いました。国立研究開発法人国立環境研究所では、波照間島、落石岬、富士山等における温室効果ガス等の高精度モニタリングのほか、アジア太平洋を含むグローバルなスケールで民間航空機・民間船舶を利用し大気中及び海洋表層における温室効果ガス等の測定を行うとともに、陸域生態系における炭素収支の推定を行いました。これら観測に対応する国際的な標準ガス等精度管理活動にも参加しました。また、気候変動による影響把握の一環として、サンゴや高山植生のモニタリングを行いました。気象庁では、GAW計画の一環として、温室効果ガス、クロロフルオロカーボン(CFC)等オゾン層破壊物質、オゾン層、有害紫外線及び大気混濁度等の定常観測を東京都南鳥島等で行っています。また、日本周辺海域及び北西太平洋海域における洋上大気・海水中のCO2等の定期観測を実施しています。これらの観測データについては、定期的に公表しています。また、黄砂及び有害紫外線に関する情報を発表しています。
海洋における観測については、海洋地球研究船「みらい」等の船舶や観測機器等を用いて、海洋の熱循環、物質循環、生態系等を解明するための研究、観測技術開発を推進しました。また、国際協力の下、自動昇降型観測フロート約4,200個による全球高度海洋監視システムを構築する「アルゴ(Argo)計画」にハード・ソフトの両面で貢献し、計画を推進しました。南極地域観測については、「南極地域観測第X期6か年計画」(2022~2027年度)に基づき、南極氷床融解メカニズムと物質循環の実態解明など、南極地域における調査・観測等を実施しています。また、宇宙天気予報、気象予報、全球測位衛星システム(GNSS)などの我々の日常生活に不可欠な情報の基礎データとなる観測を日々継続し、公開しています。また、北極域に関しては、「北極域研究強化プロジェクト(ArCSIII)」(2025~2029年度)において、国立極地研究所を代表機関、JAMSTECと北海道大学を副代表機関とする共同運用体制の下、北極域を観測する研究船や、これまでのプロジェクトで整備された国際連携拠点、北極域シミュレーションシステム及び北極域データアーカイブシステム(ADS)などの研究基盤を駆使し、北極域の環境変化の実態把握とプロセスの解明、その影響についての定量的な予測と対応策等の検討を進めています。ADSでは、観測データに基づく高精度な海氷予測を、北極海航路の安全運航に不可欠な情報として作成・提供しています。さらに、将来の北極域研究をリードする人材の育成を行うとともに、人文・社会・自然科学の垣根を越えた分野横断的な総合知の創出に資する取組を実施しています。特に、ArCSIIIでは次世代の北極域研究を担う若手研究者の育成にも積極的に取り組んでいます。アジアで初めて北極科学委員会(IASC)の若手キャリアフェローシップ(Early Career Fellowship)に採択されたほか、海外研究機関との国際共同研究も進展しており、若手研究者が活躍する機会は着実に広がっています。さらに、建造中の北極域研究船「みらいII」の就航後の国際研究プラットフォームとしての活用に向けた取組を進めました。
GPS装置を備えた検潮所において、精密型水位計により、地球温暖化に伴う海面水位上昇の監視を行い、海面水位監視情報の提供業務を継続しました。また、国内の影響・リスク評価研究や地球温暖化対策の基礎資料として、温暖化に伴う気候の変化に関する予測情報を「日本の気候変動2025―大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書―」によって提供しており、情報の高度化のため、大気の運動等を更に精緻(ち)化させた詳細な気候の変化の予測計算を実施しています。
衛星による地球環境観測については、全球降水観測(GPM)計画主衛星搭載の我が国の二周波降水レーダ(DPR)や水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)搭載の高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)、気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)搭載の多波長光学放射計(SGLI)から取得された観測データを提供し、気候変動や水循環の解明等の研究に貢献しました。また、DPRの後継ミッションである降水レーダ衛星(PMM)について、NASAが計画している国際協力ミッション(FALCON)への参画を前提に開発に着手しました。さらに、環境省、国立研究開発法人国立環境研究所及び国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構の共同プロジェクトである温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)や後継機である「いぶき2号」(GOSAT-2)の観測データの解析を進め、主たる温室効果ガスの全球の濃度分布、月別・地域別の吸収・排出量の推定結果等の一般提供を行いました。さらに、インドや、日本の支援を受けたモンゴルは、GOSAT観測データを利用した排出推計結果をパリ協定に基づく国連への報告書に掲載しました。加えて、2025年6月、温室効果ガス観測精度を飛躍的に向上させるとともに、「しずく」の後継となる高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)を搭載した、3号機に当たる温室効果ガス・水循環観測技術衛星「いぶきGW」(GOSAT-GW)の打上げに成功し、同年10月には初期機能確認を終了し、定常運用へ移行しました。GOSAT-GWでは、GOSATから続く地球全大気のCO2とCH4の継続モニタリングを実施しています。さらに、新たな取組として、大規模排出源の監視や、排出量推計技術によるパリ協定に基づく各国の温室効果ガスインベントリ報告の透明性の確保、同技術の国際標準化の取組を進めています。また、GOSAT-GW観測データを、これまで利用されることのなかった民間セクターで利用することにより、排出削減への貢献を目指します。
また、「今後の環境省におけるスペースデブリ問題に関する取組について(中間取りまとめ)」を2020年10月に公表し、GOSATシリーズスペースデブリ化防止対策の検討に着手しました。
2025年11月のCOP30において、企業・国際機関によるGOSATシリーズのデータ活用や、国による排出量算定への活用を国際的に拡大することに関するセミナーを実施するとともに、長期間の全球データを立体的に可視化したモニタを展示するなど、観測成果を国際的に発信しました。
また、観測データ、気候変動予測、気候変動影響評価等の気候変動リスク関連情報等を体系的に整理し、分かりやすい形で提供することを目的とし、2016年に構築された気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)において、気候変動の予測等の情報を充実させました。
2025年1月に、文部科学省の地球観測推進部会において取りまとめられた、「今後10年の我が国の地球観測の実施方針」等を踏まえ、地球温暖化の原因物質や直接的な影響を的確に把握する包括的な観測態勢を整備するため、地球環境保全等試験研究費において、2025年度は「民間航空機を利用した大都市から全球までの温室効果ガス監視体制の構築」等の研究を継続しています。
環境測定分析機関(自治体、民間機関)の測定分析精度の維持・向上を図るため、環境汚染物質を調査試料として、「環境測定分析統一精度管理調査」を実施するとともに、最新の技術動向等を踏まえて公定法を含む分析方法等の見直しを実施し、2025年4月に告示改正しました。
新しい技術の開発や利用に伴う環境への影響のおそれが予見される場合や、科学的知見の充実に伴って、環境に対する新たなリスクが明らかになった場合には、予防的取組の観点から必要な配慮がなされるよう適切な施策を実施する必要があります。「第六次環境基本計画」に基づき、上記の観点を踏まえつつ、各種の研究開発を実施しました。