環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第1章>第3節 地球温暖化に関する国内対策

第3節 地球温暖化に関する国内対策

 平成25年3月15日に、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)に基づき設置された、地球温暖化対策推進本部において、「当面の地球温暖化対策に関する方針」が決定されました。この方針において、平成25年度以降、気候変動枠組条約の下でのカンクン合意に基づき、2020年(平成32年)までの削減目標の登録と、その達成に向けた進捗の国際的な報告・検証を通じて、引き続き地球温暖化対策に積極的に取り組んでいくこととされました。

 平成25年11月15日に開催された地球温暖化対策推進本部においては、2020年度(平成32年度)の我が国における温室効果ガス排出削減目標として、2005年度(平成17年度)比で3.8%減とすることを環境大臣が報告し、本部員の理解を得ました。この目標は、原子力発電の活用の在り方を含めたエネルギー政策及びエネルギーミックスが検討中であることを踏まえ、原子力発電による温室効果ガスの削減効果を含めずに設定した現時点での目標であり、今後、エネルギー政策やエネルギーミックスの検討の進展を踏まえて見直し、確定的な目標を設定することとしています。

 これを踏まえ、従来の1990年(平成2年)比25%削減目標に代わる目標として、気候変動枠組条約事務局に登録するとともに、同年12月には本目標を踏まえた対策・施策を盛り込んだ隔年報告書を気候変動枠組条約事務局へ提出しました。

 地球温暖化対策推進法第8条に基づく地球温暖化対策計画については、今後、エネルギーミックスの検討が進展し、確定的な目標を設定できるようになった時点において、地球温暖化対策推進本部決定、閣議決定することとしています。

 また、2020年(平成32年)以降の温室効果ガス削減目標案の検討を加速化するため、平成26年10月に、中央環境審議会地球環境部会2020年以降の地球温暖化対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ合同会合を立ち上げました。2020年(平成32年)以降の温室効果ガス削減目標案については、各国の動向や将来枠組みに係る議論の状況、エネルギー政策やエネルギーミックスに係る国内の検討状況等を踏まえて、できるだけ早く取りまとめることを目指して、検討を深めました。

1 温室効果ガスの排出削減、吸収、気候変動の影響への適応等に関する対策・施策

(1)エネルギー起源二酸化炭素に関する対策の推進

ア 低炭素型の都市・地域構造や社会経済システムの形成

 政府は、地球温暖化対策推進法と相まって、都市の低炭素化を図り、もって都市の健全な発展に寄与することを目的として、都市の低炭素化の促進に関する法律案を提出し、平成24年8月に都市の低炭素化の促進に関する法律(平成24年法律第84号)が成立、同年12月に施行されました。

 環境負荷の小さいまちづくりの実現に向け、公共交通機関の利用促進、未利用エネルギーや自然資本等の面的活用を支援するため、CO2削減効果評価ツールの開発に向けた検討を行いました。

 都市整備事業の推進、民間活動の規制・誘導などの手法を組み合わせ、低炭素型都市構造を目指した都市づくりを総合的に推進しました。

 低炭素なまちづくりの一層の普及のため、温室効果ガスの大幅な削減など低炭素社会の実現に向け、高い目標を掲げて先駆け的な取組にチャレンジする23都市を環境モデル都市として選定しており、平成20年度に選定した13都市について、各自治体の平成25年度の取組評価及び平成24年度の温室効果ガス排出量等のフォローアップを行いました(表1-3-1)。


表1-3-1 環境モデル都市一覧

 また、都市の低炭素化をベースに、環境・超高齢化等を解決する成功事例を都市で創出し、国内外に展開して経済成長につなげることを目的として、平成23年度に被災地域6都市を含む11都市を環境未来都市として選定しており、それぞれが掲げる未来都市計画につき、平成25年度の進捗状況等の評価を行いました(表1-3-2)。さらに、地域特性・資源を踏まえた低炭素で災害に強い地域づくりの実証事業や、地域の主導する防災拠点への自立・分散型エネルギーの導入支援を行いました。


表1-3-2 環境未来都市一覧

 平成23年度に選定された国内4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)において、幅広い住民の参画を得ながらスマートコミュニティの基盤的な技術等を構築すべく、CEMS(コミュニティ単位のエネルギー需給管理システム)やディマンドリスポンス(ピーク時に電気料金を値上げすることで、各家庭や事業者に電力需要の抑制を促す「電気料金型ディマンドリスポンス」や、電力会社との間で予めピーク時に節電する契約を結んだ上で、電力会社からの依頼に応じて節電した場合に対価を得る「ネガワット取引」)等の様々な実証を行いました。

 交通システムに関しては、公共交通機関の利用促進のための鉄道新線整備の推進、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、適切な経路選択に効果的な高度道路交通システム(以下「ITS」という。)の推進による道路ネットワークを賢く使う取組等、交通流対策等を行いました。

 再生可能エネルギーの導入に関しては、地域の住民等のステークホルダーで構成する協議会が主体となって地域主導による再生可能エネルギーの導入に向けた検討を行う取組や、再生可能エネルギーの導入ポテンシャル調整等を実施しました。また、平成24年度に設置した100kWの浮体式の風車では、台風への耐性や効率的な発電などの成果を得ました。これを踏まえ、平成25年10月には、国内初の本格的な2,000kWの浮体式洋上風力発電の運転を開始しました。

イ 部門別(産業・民生・運輸等)の対策・施策

(ア)産業部門(製造事業者等)の取組

 産業界の地球温暖化対策の中心的な取組である自主行動計画について、平成24年度までの成果を総括し、平成26年7月に地球温暖化対策推進本部において取りまとめられた「京都議定書目標達成計画の進捗状況」において「これまで十分に高い成果を上げている」と評価しました。また、平成25年度以降の新たな計画である「低炭素社会実行計画」の平成25年度実績について、審議会による厳格な評価・検証を実施するとともに、一部の省庁において、審議会開催前の事前質問プロセスの導入や開示情報の増強などの改善を行いました。さらに、各産業の計画や実績データ等の情報を集約したポータルサイト(http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/kankyou_keizai/va/(別ウィンドウ))を日英両語で開設し、国内外への情報発信を強化するとともに、平成26年9月には欧米の著名な研究者や在京の21か国の外交団を招いた国際シンポジウムを東京で開催し、自主的取組が地球温暖化対策として重要な役割を果たす政策手法であるという認識を共有しました。そのほか、2020年(平成32年)以降の我が国の約束草案の決定に先立って、平成26年7月に一般社団法人日本経済団体連合会が2030年(平成42年)を目標年限とする低炭素社会実行計画の策定を宣言し、政府としても各業界の計画策定を慫慂(しょうよう)してきました。平成26年度末までに73業種が計画を策定し、平成24年度の国内のエネルギー起源CO2排出量に占める割合は、産業部門・エネルギー転換部門の8割、日本全体の4割に達しています。

 産業分野等の事業者に対して、温室効果ガス排出削減に有用なCO2削減ポテンシャルの診断の実施、L2-Tech(先導的な低炭素技術)情報の収集とリスト化、既存ストックからCO2削減効果の高い設備へ更新するための補助などの取組を行いました。

 中小企業におけるCO2排出削減対策の強化のため、中小企業のCO2削減ポテンシャルの診断や低炭素機器導入における資金面の公的支援の一層の充実や、大企業等の資金等を提供して中小企業等が行った温室効果ガス排出抑制のための取組による排出削減量を認証し、低炭素社会実行計画等の目標達成のために活用するJ-クレジット制度、さらにCO2排出低減が図られている建設機械の普及を図るため、世界で初となる建設機械の燃費基準値を策定し、燃費基準値を達成した建設機械を認定する制度を創設しました。

 農林水産分野においては、バイオマスの利活用や食品産業の自主行動計画の取組を推進しました。また、施設園芸、農業機械等における二酸化炭素排出削減対策を推進しました。

(イ)業務その他部門の取組

 エネルギー消費量が増加傾向にある住宅・ビルにおける省エネ対策を推進するため、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)を改正(平成25年5月公布)し、建築材料等に新たにトップランナー制度を導入し、平成25年12月に断熱材、平成26年11月に窓(サッシ、複層ガラス)の基準が示されました。また、建築物の省エネ基準について、断熱性能に加え、設備性能を含め総合的に評価する基準を策定するとともに、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく、低炭素建築物の認定基準を策定しました。さらに、環境関連投資促進税制により、省エネ効果の高い窓、空調、照明等の設備から構成される高効率ビルシステムの普及の推進を行うとともに、建築物等に関する総合的な環境性能評価手法(以下「CASBEE」という。)の充実・普及、省CO2の実現性に優れたリーディングプロジェクト等に対する支援のほか、環境不動産の形成を促進するための官民ファンドの設置等を行いました。トップランナー制度については、更に個別機器の効率向上を図るため、基準の見直しについて検討を行いました。また、既存の事業場について、ストック全体の低炭素化のため、省エネ・低炭素改修や運用改善への支援、CO2削減ポテンシャルの診断、エネルギー消費データの利活用等の促進を図りました。

 政府実行計画に基づく取組に当たっては、平成19年11月に施行された国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号)に基づき、環境配慮契約を実施しました。

(ウ)家庭部門の取組

 消費者等が省エネルギー性能の優れた住宅を選択することを可能とするため、CASBEEや住宅性能表示制度の充実・普及、「住宅事業建築主の判断の基準」に適合していることを表示する住宅省エネラベルの情報提供を実施しました。また、平成22年6月から「低炭素社会に向けた住まいと住まい方推進会議」を開催し、住宅・建築物における取組について、住まいの在り方や住まい方を中心に、低炭素社会に向けた広範な取組と具体的施策の立案の方向性等の検討を進め、平成24年7月に中間取りまとめの提示を行いました。また、住宅の省エネ基準について、断熱性能に加え、設備性能を含め総合的に評価する基準を策定するとともに、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づく、低炭素建築物の認定基準を策定しました。一定の省エネ基準を満たす住宅の新築・リフォーム等に対し、様々な商品等と交換できるポイントを発行する復興支援・住宅エコポイント事業やゼロエネルギー住宅の建設に対する支援等を実施しました。加えて、平成23年度より、各家庭のCO2排出実態やライフスタイルに合わせた、きめ細やかなアドバイスを行う家庭エコ診断制度の創設に向けた基盤整備を行い、平成26年度より、制度の運営が始まりました。さらに、ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)等の利活用や削減アドバイスにより、需要側にとって負担のないCO2削減に向け、検討を実施しました。

(エ)運輸部門の取組

 自動車単体対策として、自動車燃費の改善、車両・インフラに係る補助制度・税制支援等を通じたクリーンエネルギー自動車の普及促進等を行いました。また、環状道路等幹線道路ネットワークをつなぐとともに、適切な経路選択に効果的なITS等の推進による道路ネットワークを賢く使う交通流対策やLED道路照明灯の整備を行いました。また、環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に向け、共同輸配送、モーダルシフト、大型CNGトラック導入、物流拠点の低炭素化の取組について支援を行いました。また、国際貨物の陸上輸送距離の削減にも資する港湾の整備等を推進するとともに、グリーン物流パートナーシップ会議を通じて、荷主と物流事業者の連携による優良事業の表彰や普及啓発を行いました。

 海上輸送については、国際的枠組み作りと技術研究開発・新技術の普及促進を一体的に推進するため、国際海事機関(IMO)において船舶の燃費規制(2011年(平成23年)7月採択、2013年(平成25年)1月発効)の段階的強化及び燃費報告制度等の議論を主導するとともに、船舶の省エネ技術の開発支援や省エネ船の普及促進に取り組みました。また、次世代内航船(スーパーエコシップ)の普及促進等に取り組みました。

 また、航空分野については、国際民間航空機関(ICAO)において国際航空分野の温室効果ガス排出削減に向けた国際的な枠組みづくりの議論を主導するとともに、飛行経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)の導入等の航空交通システムの高度化や環境に優しい空港(エコエアポート)等を推進しました。

(オ)エネルギー転換部門の取組

 太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマス等の再生可能エネルギーは、地球温暖化対策に大きく貢献するとともに、エネルギー源の多様化に資するため、国の支援策によりその導入を促進しました。また、ガスコージェネレーションやヒートポンプ、燃料電池など、エネルギー効率を高める設備等の普及も推進してきました。さらに、二酸化炭素回収・貯留(以下「CCS」という。)の導入に向け、技術開発や貯留適地調査等を実施しました。

エネルギー対策特別会計

 エネルギー対策特別会計は、エネルギー対策に関する経理を明確にすることを目的として、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)に基づき、エネルギー対策に関する経理を明確にするために設置された特別会計です。エネルギー対策特別会計は、エネルギー需給勘定、電源開発促進勘定及び原子力損害賠償支援勘定に区分経理されています。

 環境省では、低炭素社会を実現するため、エネルギー需給勘定のうち「エネルギー需給構造高度化対策」として、「地球温暖化対策のための税」を活用して[1]再生可能エネルギーなどのプロジェクトに民間資金を呼び込む環境ファイナンスの拡大、[2]大幅な省エネにつながる先進的な設備や再生可能エネルギーの導入加速化、[3]二国間クレジット制度を活用した環境技術の国際展開等、補助事業及び委託事業の実施を通じて、再生可能エネルギーの導入及び省エネ対策というエネルギー起源二酸化炭素の排出抑制対策を戦略的に展開しています。


エネルギー対策特別会計を用いて環境省が実施している主な事業
(2)非エネルギー起源二酸化炭素、メタン及び一酸化二窒素に関する対策の推進

 廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の推進により化石燃料由来廃棄物の焼却量の削減を推進するとともに、有機性廃棄物の直接最終処分量の削減や、全連続炉の導入等による一般廃棄物焼却施設における燃焼の高度化等を推進しました。

 また、下水汚泥の焼却に伴う一酸化二窒素の排出量を削減するため、下水汚泥の燃焼の高度化を推進しました。さらに、農地からの一酸化二窒素等の排出量の削減に向け、有機質資材の施用に伴う一酸化二窒素発生量の調査等を行いました。

(3)代替フロン等3ガスに関する対策の推進

 代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)は、オゾン層は破壊しないものの強力な温室効果ガスであるため、京都議定書の対象とされています。その排出抑制については、産業用途で削減が進んだことなどから大幅に目標を強化し、平成20年3月に改定された京都議定書目標達成計画においては基準年総排出量比1.6%減の目標を設定しました。

 この目標に向け、業務用冷凍空調機器からの冷媒フロン類の回収を徹底するため、特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(平成13年法律第64号。以下「フロン回収・破壊法」という。)に基づき、フロン類の回収及び破壊を進めました。また、特定家庭用機器再商品化法(平成10年法律第97号。以下「家電リサイクル法」という。)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)に基づき、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機、ルームエアコン及びカーエアコンからのフロン類の適切な回収を進めました。

 産業界の取組に関しては、自主行動計画の進捗状況の評価・検証を行うとともに、行動計画の透明性・信頼性及び目標達成の確実性の向上を図りました。

 また、先導的な排出抑制の取組に対する補助、低温室効果冷媒、低温室効果冷媒を用いた省エネエアコン、省エネ性能の高いノンフロン型断熱材等の技術開発、冷媒にフロン類を用いない省エネ型自然冷媒冷凍等装置の導入を促進するための補助事業等を実施しました。

 この結果、2008年(平成20年)から2012年(平成24年)での代替フロン等3ガスの排出量は、平均で2,400万CO2トン(基準年比52%減)となり、京都議定書目標達成に大きく貢献しました。

 しかし、HFCについては、冷凍空調機器の冷媒用途を中心に、CFC、HCFCからHFCへの転換が進行していることから、排出量が増加傾向にあります。現状では、冷凍空調機器の廃棄時のみではなく、使用中においても経年劣化等により冷媒フロン類が機器から漏えいするため、今後は、代替フロン等3ガスの排出量が、冷媒HFCを中心に急増することが見込まれます(図1-3-1)。


図1-3-1 代替フロン等3ガス(京都議定書対象)の排出量推移

 このため、平成25年3月の中央環境審議会・産業構造審議会の合同会議報告「今後のフロン類等対策の方向性について」において、フロン類の製造から製品への使用、回収、再生・破壊に至るライフサイクル全体にわたる排出抑制に取り組むことが必要とされたことを踏まえ、特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第39号)が同年6月に公布され、平成27年4月1日に完全施行されました。

 同改正では、新たに[1]フロン類製造・輸入業者に対し、フロン類の転換・再生利用等により、新規製造・輸入量を計画的に削減することを求める判断基準の設定、[2]フロン類使用製品(冷凍空調機器等)の製造・輸入業者に対しては、製品ごとに目標年度までにノンフロン又は低GWP(温室効果)の製品へ転換することを求める判断基準の設定、[3]業務用の冷凍空調機器ユーザーに対しては、定期点検等によるフロン類の漏えい防止等を求める判断基準の設定や、冷媒フロン類の漏えい量の報告・公表を行う制度を導入します。また、[4]新たに冷媒の充填(てん)について、登録された業者による適正な実施を求めるとともに、[5]フロン類の再生行為の適正化のための許可制度を導入し、フロン類の一部再生利用を進め、回収率の向上に資するようにします(図1-3-2)。また、同改正により、法律の名称もフロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(平成13年法律第64号)(フロン排出抑制法)と改めました。


図1-3-2 フロン排出抑制法の概要

 平成26年度は、産業構造審議会製造産業分科会化学物質政策小委員会フロン類等対策ワーキンググループ及び中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会の合同会議において議論を行い、具体的な基準等について検討を行い、政省令・告示の策定を行いました。また、全国で説明会を実施する等により、制度の周知を行いました。フロン回収・破壊法の改正により、短期的には市中の冷媒フロン類使用機器からのフロン類排出を抑制するとともに、長期的・抜本的なフロン類の使用・排出の低減を推進していきます。

(4)温室効果ガス吸収源対策の推進

 京都議定書目標達成計画で目標とされた森林による吸収量1,300万炭素トン(基準年度総排出量比約3.8%)の確保を図るため、健全な森林の整備、保安林等の適切な管理・保全等の推進、木材及び木質バイオマス利用の推進等の総合的な取組を内容とする森林吸収源対策を展開しました。また、2013年度(平成25年度)以降については、引き続き、森林吸収源が我が国の地球温暖化対策に最大限貢献するべく、京都議定書第二約束期間における国際的算入上限値3.5%(1990年度(平成2年度)総排出量比)(2020年度(平成32年度)においては2.8%以上(2005年度(平成17年度)総排出量比))の確保を目指すこととし、2013年(平成25年)5月に改正延長した、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法(平成20年法律第32号)に基づき年平均52万haの間伐等を推進しています。

 また、都市における吸収源対策として、都市公園整備や道路緑化等による新たな緑地空間を創出し、都市緑化等を推進しました。

 さらに、農地土壌の吸収源対策として、炭素貯留量の増加につながる土壌管理等の営農活動の普及に向け、炭素貯留効果等の基礎調査、地球温暖化防止等に効果の高い営農活動に対する支援を行いました。

 なお、吸収量については、他分野と同様にIPCCが作成したガイドラインに基づいて各国が算定・報告し、気候変動枠組条約事務局による検証が行われています。

(5)気候変動の影響への適応策の推進

 温室効果ガスを削減するための緩和策に加え、既に現れている、もしくは今後中長期的に避けることのできない温暖化による様々な分野への影響に対処するため、影響の評価及び影響への適切な対処(=適応)を計画的に進めることが必要です。そのため、我が国では、平成27年夏頃をめどとして、政府全体の適応計画策定を予定しています。適応計画の策定に向けて、中央環境審議会地球環境部会気候変動影響評価等小委員会において、既存の研究による気候変動予測や影響評価等について整理し、気候変動が日本に与える影響の評価等について審議が進められ、平成27年3月に中央環境審議会より「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について」として意見具申がなされました。意見具申では、気候変動による影響を「農業・林業・水産業」、「水環境・水資源」、「自然生態系」、「自然災害・沿岸域」、「健康」、「産業・経済活動」、「国民生活・都市生活」の7つの分野に分類し、さらに30の大項目、56の小項目に分けて、現在の状況や将来予測される影響について整理しています。また、重大性、緊急性、確信度の評価も行われており、重大性が特に大きく、緊急性・確信度が高いと評価されたものは、9項目となっています(表1-3-3)。


表1-3-3 気候変動による主な影響

 平成26年(2014年)9月に開催された国連気候サミットにおいて安倍総理から、途上国において人材育成や適応計画の策定や実施等の支援を行う「適応イニシアチブ」を発表しました。

 また、同年10月にはマレーシアでアジア太平洋気候変動適応ネットワーク(APAN)がアジア太平洋気候変動適応フォーラム2014を開催し、各国の取組を共有しました。

2 横断的施策

(1)地方公共団体実行計画(区域施策編)の策定・実施

 地球温暖化対策推進法に基づき、都道府県及び市町村は、地球温暖化対策計画を勘案し、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとされ、特に特例市以上の地方公共団体は、4つの法定事項(再生可能エネルギーの利用促進、省エネルギーなどの事業者又は住民の活動の促進、公共交通機関の利用者の利便の増進等の地域環境の整備及び改善、循環型社会の形成)を盛り込んだ地方公共団体実行計画の策定が義務付けられています。

 このため、自治体職員向けの研修会を実施するなどして、より多くの自治体が実効的な計画を策定・実施するよう取り組んでおり、平成26年10月1日時点で、特例市以上では94%、特例市未満では15%の自治体が計画を策定しました。また、地域の計画推進を後押しするため、「実行計画(区域施策編)策定支援サイト」(http://www.env.go.jp/policy/local_keikaku/kuiki/(別ウィンドウ))や自治体職員向けの掲示板、自治体メーリングリスト等を活用した定常的な情報発信を行っています。

(2)温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度

 地球温暖化対策推進法に基づく温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度により、フランチャイズチェーンも含む全国の一定規模以上の事業者による自らの温室効果ガス排出量等の算定・報告に向けて説明会等で周知を図るとともに、報告された排出量等を集計し公表しています。

 全国の1万1,086事業者(1万3,561事業所)及び1,381の輸送事業者から報告された平成23年度の排出量を集計し、平成26年5月23日に結果を公表しました。今回報告された排出量の合計は6億3,749万CO2トンで、我が国の平成23年度排出量の約5割に相当します。

(3)排出抑制等指針

 地球温暖化対策推進法により、事業者が事業活動において使用する設備について、温室効果ガスの排出の抑制等に資するものを選択するとともに、できる限り温室効果ガスの排出量を少なくする方法で使用するよう努めること、また、事業者が、国民が日常生活において利用する製品・サービスの製造等を行うに当たって、その利用に伴う温室効果ガスの排出量がより少ないものの製造等を行うとともに、その利用に伴う温室効果ガスの排出に関する情報の提供を行うよう努めることとされています。こうした努力義務を果たすために必要な措置を示した、排出抑制等指針を策定・公表することとされており、これまでに、業務部門、廃棄物処理部門、産業部門(製造業)、日常生活部門において策定しました。

(4)国民運動の展開

 平成25年度に開始した気候変動キャンペーン「Fun to Share」では、豊かな低炭素社会づくりに向けた知恵や技術を各主体の協力を得て、様々なイベントや公式ウェブサイト(http://funtoshare.env.go.jp/(別ウィンドウ))等を通じて情報発信しました。

 夏期には、冷房時の室温を28℃にしても快適に過ごせるライフスタイル・ビジネススタイル「クールビズ」を推奨しました。特に6月から9月の期間については、「スーパークールビズ」として、更なる軽装、勤務時間のシフトなどワークスタイルの変革等を呼び掛けました。また、スーパークールビズの一環として、一人一台のエアコン使用をやめ、涼しい場所をみんなで共有する「クールシェア」も呼び掛けました。

 冬期には、暖房時の室温を20℃にしても快適に過ごせるライフスタイル・ビジネススタイル「ウォームビズ」を推奨しました。暖房に頼り過ぎずに快適に暖かく過ごす取組を広く提案するとともに、みんなで暖かいところに集まったり、家庭の暖房を止めて、街に出掛けたりすることでエネルギー消費を削減する「ウォームシェア」も呼び掛けました。

 さらに、通年の取組として、“「移動」を「エコ」に。”をテーマに、よりCO2排出量の少ない「移動」にチャレンジする「smart move(スマートムーブ)」を提案し、エコなだけでなく、便利で快適に、しかも健康にもつながるライフスタイルを呼び掛けました。

 加えて、エコドライブの取組を更に広げるため、「エコドライバープロジェクト」も推進しました。エコドライブは、CO2排出量を減らす運転であるとともに、燃費もよく、安全で、同乗者や周りから信頼されるドライブマナーに優れた運転と位置付け、そのようなドライブマナーに優れた運転をする人を「エコドライバー」と呼び、「エコドライバー」であることが“これからのドライブマナー”であるとしてエコドライブへの賛同を呼び掛けました。

 これらの取組のほか、6月21日から7月7日までの間に「ライトダウンキャンペーン」として、全国のライトアップ施設や家庭等の照明を消し、地球のことや未来のことを考えるよう呼び掛けました。特に夏至、七夕(クールアース・デー)を特別実施日とし、多くのライトアップ施設がライトダウンを行いました。

(5)「見える化」等の推進

 温室効果ガス排出量の「見える化」とは、商品やサービスの製造等に伴う温室効果ガスの排出量を定量的に可視化することなどを言います。政府では、商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通しての温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、当該商品・サービスに簡易な方法で分かりやすく表示する「カーボンフットプリント制度」の構築・普及等の取組を進め、平成27年3月末現在でPCR(商品種別算定基準)の数は104、認定商品数は1,059となっています。また、事業者において、原料調達・物流・製造・使用・廃棄などサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の見える化を促進するため、当該排出量の算定方法に関するガイドラインに基づき、算定支援・優良事例収集、業種別解説、パンフレットの拡充を行いました。加えて、中小ビルの省エネ改修によるCO2削減余地を分析すること等により、低炭素化に向けた中小ビル改修をモデル的に支援し、民間主体による改修促進のための環境性能評価が可能となる基盤の構築を目指しています。さらに、前述した家庭エコ診断等において、家庭におけるCO2排出量の「見える化」を推進しています。

(6)公的機関の率先的取組

 政府における取組として、地球温暖化対策推進法及び京都議定書目標達成計画に基づき、自らの事務及び事業から排出される温室効果ガスの削減を定めた「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画(政府の実行計画)」において、平成19年度から平成24年度までの期間を対象とし、平成22年度~平成24年度の平均温室効果ガス排出量を、平成13年度比で8%削減することを目標としています。

 平成24年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は157万トン(平成13年度値の21.3%減)でした。また、平成22年度~平成24年度における平均の温室効果ガス排出量の実績は、平成13年度比で23.2%減少しており、目標を達成しました。

 また、地球温暖化対策推進法に基づき、引き続き都道府県や指定都市等において、地域における普及啓発活動や調査分析の拠点としての地域地球温暖化防止活動推進センター(地域センター)の指定や、地域における普及啓発活動を促進するための地球温暖化防止活動推進員を委嘱し、さらに関係行政機関、関係地方公共団体、地域センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民等により地球温暖化対策地域協議会を組織することができることとし、これらを通じパートナーシップによる地域ごとの実効的な取組の推進等が図られるよう継続して措置しました。

(7)税制のグリーン化

 「地球温暖化対策のための税」の導入や車体課税のグリーン化などの税制全体のグリーン化は、地球温暖化対策のための重要な施策です。

 税制のグリーン化の詳細については、第6章第2節を参照。

(8)国内排出量取引制度

 国内排出量取引制度については、2005年度(平成17年度)から2013年度(平成25年度)まで、確実かつ費用効率的な削減と取引等に係る知見・経験を蓄積するため、自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)を実施し、合計389者の参加を得て41万9,243CO2トンの排出枠が取引され、全体で221万7,396CO2トンの排出削減を達成し、制度参加者が掲げた124万5,454CO2トンの削減約束を97万1,942CO2トン上回りました。

 また、2008年度(平成20年度)から2013年度(平成25年度)まで「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」における試行排出量取引スキームを実施した結果、192者が参加し、そのうち147者がそれぞれの参加期間において目標を達成、45者は目標未達成となりました。参加者全体では、削減目標に対して2億5,486万CO2トンの削減不足になりました。

 平成22年12月には、地球温暖化問題に関する閣僚委員会において、国内排出量取引制度を含む地球温暖化対策の主要3施策についての政府方針を取りまとめ、国内排出量取引制度について、地球温暖化対策の柱としつつ、我が国の産業に対する負担やこれに伴う雇用への影響、海外における排出量取引制度の動向とその効果、国内において先行する主な地球温暖化対策(産業界の自主的な取組など)の運用評価、主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みの成否等を見極め、慎重に検討を行うこととしました。

 これを踏まえ、環境省では、平成24年3月「国内排出量取引制度の課題整理報告書」で報告されているように、産業に対する負担や雇用への影響等の課題について整理するとともに、平成25年5月には排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策について国内排出量取引制度も含め分析する「排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策検討について」を作成するなど、検討を進めています(ただし、「国内排出量取引制度の課題整理報告書」や「排出削減ポテンシャルを最大限引き出すための方策検討会」における国内排出量取引制度に係る検討は、関係省庁を含めた政府全体としての見解を取りまとめるものではなく、国内排出量取引制度の導入に関する議論等の方向性について何ら予断を与えるものではありません)。

(9)カーボン・オフセット、カーボン・ニュートラル

 「カーボン・オフセット(以下「オフセット」という。)」とは、市民、企業等が、[1]自らの温室効果ガスの排出量を認識し、[2]主体的にこれを削減する努力を行うとともに、[3]削減が困難な部分の排出量を把握し、[4]他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等(クレジット)の購入や、他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動の実施等により、[3]の排出量の全部又は一部を埋め合わせることにより、幅広い主体の自主的な温室効果ガス排出削減を促す仕組みです。「カーボン・ニュートラル」は、オフセットの深化版として、より広い範囲の排出量を対象とし、排出量の全部を埋め合わせる仕組みです。適切なオフセットの普及促進のため、「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」(平成26年3月)に基づき、以下を含む様々な取組を行っています。

・平成24年5月から、「カーボン・ニュートラル認証制度」と「カーボン・オフセット認証制度」を1つの制度として統合した「カーボン・オフセット制度」を開始しています。平成26年12月末現在までに144件の取組がオフセット認証を受けています。

・平成24年11月から、算定されたCFPの値を活用してオフセットを行い、専用のマーク(どんぐりマーク)を添付する「CFPを活用したカーボン・オフセット制度」を開始し、平成26年12月末までに49事業者107製品・サービスの参加を得ました。また、平成25年11月から、消費者への訴求力を高めるため、CFPを活用したオフセット製品等に、環境に配慮した製品等と交換が可能なポイントを付けて流通させる「どんぐりポイント制度」を開始し、平成26年12月までに30事業者48製品・サービスの参加を得ました。

・『「我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)」の見直しに関する検討会』を平成25年12月より開催し、平成20年2月の策定時からオフセット制度を取り巻く社会的状況の変化を踏まえ、社会全体でオフセットに取り組む仕組みへと発展させるために同指針の見直しを行いました。

・オフセット制度の普及啓発と、主に地方都市におけるオフセットの推進を目的として「地方発カーボン・オフセット認証取得支援事業」及び「カーボン・ニュートラル認証モデル事業」を実施しました。

・平成25年4月から、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として認証する「J-クレジット制度」を開始しています。

・平成27年3月31日現在、J-クレジット制度の対象となる方法論は60種類あり、これまで10回の認証委員会を開催し、太陽光発電設備の導入や森林の整備に関するプロジェクトを中心に102件のプロジェクトを承認しました。J-クレジット制度の活用により、中小企業や農林業等の地域におけるプロジェクトにオフセットの資金が還流するため、地球温暖化対策と地域振興が一体的に図られました。

(10)金融のグリーン化

 温室効果ガスの大幅削減を実現し、低炭素社会を創出していくには、必要な温室効果ガス削減対策に的確に民間資金が供給されることが必要です。このため、金融を通じて環境への配慮に適切なインセンティブを与え、資金の流れをグリーン経済の形成に寄与するものにしていくための取組(金融のグリーン化)を進めることが重要です。

 金融のグリーン化の詳細については、第6章第2節を参照。

3 基盤的施策

(1)排出量・吸収量算定方法の改善等

 気候変動枠組条約に基づき、温室効果ガス排出・吸収目録(インベントリ)の報告書を作成し、排出量・吸収量の算定に関するデータとともに条約事務局に提出しました。また、これらの内容に関して、条約事務局による審査の結果等を踏まえ、インベントリの算定方法の改善等について検討しました。

(2)地球温暖化対策技術開発・実証研究の推進

 地球温暖化の防止や地球温暖化への適応に資する技術の高度化、有効活用を図るため、再生可能エネルギーの利用、エネルギー使用の合理化、エネルギー消費の大幅削減、燃料電池、蓄電池、そしてCCS等に関連する技術の開発・実証、普及を促進しました。

 農林水産分野においては、農林水産省地球温暖化対策総合戦略に基づき、研究及び技術開発を強化しました。

 温室効果ガスの排出削減・吸収機能向上技術の開発として、温室効果ガスの発生・吸収メカニズムの解明を進め、温室効果ガスの排出削減技術、森林や農地土壌などの吸収機能向上技術の開発を推進しました。また、低投入・循環型農業の実現に向けた生産技術体系の開発として、有機資源の循環利用や、微生物を利用した化学肥料・農薬の削減技術、養分利用効率の高い施肥体系、土壌に蓄積された養分を有効活用する管理体系等の確立を推進しました。さらに、高精度なレーザー計測技術により、アジア熱帯林の資源量と動態を把握するとともに、土地利用変化予測モデル等の開発を推進しました。

 農林水産分野における温暖化適応技術については、精度の高い収量・品質予測モデル等を開発し、気候変動の農林水産物への影響評価を行うとともに、温暖化の進行に適応した生産安定技術の開発を推進しました。また、ゲノム情報を最大限に活用して、高温や乾燥等に適応する品種の開発を推進しました。

(3)観測・調査研究の推進

 地球温暖化に関する科学的知見を充実させ、一層適切な行政施策を講じるため、引き続き、環境研究総合推進費等を活用し、現象解明、影響評価、将来予測及び対策に関する調査研究等の推進を図りました。また、環境研究総合推進費では、平成22年度から戦略プロジェクトである「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」を実施しています。

 また、地球温暖化対策に必要な観測を、統合的・効率的なものとするため、「地球観測連携拠点(地球温暖化分野)」の活動を引き続き推進しました。加えて、平成21年1月に打ち上げられた温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(以下「GOSAT」という。)は、設計寿命を超えた後も運用データを発信し続けており、その観測データの検証、解析を進め、全球の温室効果ガス濃度分布、吸収・排出量の推定結果、濃度の三次元分布推定データの一般提供を行いました。観測データの解析により、世界の大都市等においてその周辺よりも二酸化炭素濃度が高い傾向が見られることを明らかにしました。さらに、平成29年度打ち上げを目指し、観測精度と密度を飛躍的に向上させたGOSATの2号機の開発を平成24年度から実施しています。

4 フロン等対策

(1)国際的な枠組みの下での取組

 オゾン層の保護のためのウィーン条約及びモントリオール議定書を的確かつ円滑に実施するため、我が国では、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号。以下「オゾン層保護法」という。)を制定・運用しています。また、同議定書締約国会合における決定に基づき、「国家ハロンマネジメント戦略」等を策定し、これに基づく取組を行っています。

 さらに、開発途上国によるモントリオール議定書の円滑な実施を支援するため、議定書の下に設けられた多数国間基金を使用した二国間協力事業、開発途上国のフロン等対策に関する研修等を実施しました。

 また、国際会議等において、ノンフロン技術やフロン回収・破壊法の改正等、日本の技術・制度・取組を紹介しました。

(2)オゾン層破壊物質の排出の抑制

 我が国では、オゾン層保護法等に基づき、モントリオール議定書に定められた規制対象物質の製造規制等の実施により、同議定書の規制スケジュール(図1-3-3)に基づき生産量及び消費量(=生産量+輸入量-輸出量)の段階的削減を行っています。HCFCについては2020年(平成32年)をもって生産・消費が全廃されることとなっています。


図1-3-3 モントリオール議定書に基づく規制スケジュール

 オゾン層保護法では、特定物質を使用する事業者に対し、特定物質の排出の抑制及び使用の合理化に努力することを求めており、特定物質の排出抑制・使用合理化指針において具体的措置を示しています。ハロンについては、国家ハロンマネジメント戦略に基づき、ハロンの回収・再利用、不要・余剰となったハロンの破壊処理などの適正な管理を進めています。

(3)フロン類の管理の適正化

 我が国では、主要なオゾン層破壊物質の生産は、大幅に削減されていますが、過去に生産され、冷蔵庫、カーエアコン等の機器の中に充てんされたCFC、HCFCが相当量残されており、オゾン層保護を推進するためには、こうしたCFC等の回収・破壊を促進することが大きな課題となっています。また、CFC等は強力な温室効果ガスであり、その代替物質であるHFCは京都議定書の削減対象物質となっていることから、HFCを含めたフロン類の排出抑制対策は、地球温暖化対策の観点からも重要です。

 このため、家庭用の電気冷蔵庫・冷凍庫、電気洗濯機・衣類乾燥機及びルームエアコンについては家電リサイクル法に、業務用冷凍空調機器についてはフロン回収・破壊法に、カーエアコンについては自動車リサイクル法に基づき、これらの機器の廃棄時に機器中に冷媒等として残存しているフロン類(CFC、HCFC、HFC)の回収が義務付けられています。回収されたフロン類は、再利用される分を除き、破壊されることとなっています。平成25年度の各機器からのフロン類の回収量は表1-3-4図1-3-4のとおりです。


表1-3-4 家電リサイクル法対象製品からのフロン類の回収量・破壊量(平成25年度)

図1-3-4 業務用冷凍空調機器・カーエアコンからのフロン類の回収・破壊量等(平成25年度)

 また、フロン回収・破壊法には、機器の廃棄時にフロン類の回収行程を書面により管理する制度、都道府県知事に対する廃棄者等への指導等の権限の付与、機器整備時の回収義務等が規定されているほか、フロン回収・破壊法の改正により、業務用冷凍空調機器の使用時におけるフロン類の排出抑制対策が機器の管理者に義務付けられることとなります。これらに基づき、都道府県の法施行強化、関係省庁・関係業界団体による周知等、フロン類の管理の適正化について、一層の徹底を図っています。