環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成27年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>平成26年度 環境の状況  平成26年度 循環型社会の形成の状況  平成26年度 生物の多様性の状況>第1部 総合的な施策等に関する報告>はじめに

平成26年度 環境の状況
平成26年度 循環型社会の形成の状況
平成26年度 生物の多様性の状況
第1部 総合的な施策等に関する報告

はじめに

 我が国は現在、世界に先駆けて人口減少・超高齢社会を迎えています。さらに、経済のグローバル化の進展に伴う社会経済情勢の変化や財政制約の中で、様々な経済・社会的課題に直面しています。特に、過疎化が進行する地域、脆(ぜい)弱な産業基盤を有する地域においては、地方自治体の財政力の弱さも相まって、その状況は深刻なものとなっています。そこで、急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくべく、我が国では平成26年にまち・ひと・しごと創生法が成立し、地域活性化に向けた施策が行われています。

 一方で、こうした経済・社会的課題は、環境問題とも密接に関係しており、また複合性を有していることから、環境的側面、経済的側面、社会的側面を統合的に向上させることが必要です。環境政策は、我が国が抱える経済的・社会的側面からの深刻な課題に対応するための効果的なアプローチとしての役割を期待されつつあることから、今後、個別分野の環境政策を統合・連携して展開することで、環境、経済、社会の統合的向上の実現を目指す必要があります。なお、これは環境政策のみならず、各地域において多様な主体が実施する環境保全の取組でも同様です。上記の社会経済情勢の変化等も踏まえれば、地域においていかに環境保全の取組を進め、地域活性化と持続可能な地域づくりにつなげていくかが、各地域での課題となっています。特に、過疎化が進行する地域、脆(ぜい)弱な産業基盤を有する地域においては、その地域における強み(域外の資金を獲得できる産業)と課題(域外に流出している資金)を把握し、その地域の特性である地域資源を活用するなどして地域経済の振興を目指す「地域経済循環の拡大」により、地域経済の縮小を克服するとともに、地方と都市、さらに地方間の連携といった「地域間連携」により、資源と資金や人が循環し、互いに必要としているものを補完してお互いが支え合うことで、こうした環境的側面、経済的側面、社会的側面を統合的に向上させ、地域活性化及び持続可能な地域づくりに資することができるものと考えられます。

 また、平成23年3月11日に発生したマグニチュード9.0という日本周辺での観測史上最大の地震と津波により、東北地方の太平洋沿岸を中心に、広範かつ甚大な被害が生じました。そして、この震災により発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故によって大量の放射性物質が環境中に放出されたことは、今なお最大の環境問題となっています。東日本大震災からの復興に向け、被災地域では、環境だけでなく経済・社会的課題の解決に資する新たな地域づくりの取組や、被災地域発の新たな活動・研究などの先進的な取組が行われており、こうした取組を加速させることも重要です。

 さらに、昨年11月には「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」、今年3月には「第3回国連防災世界会議」と、いずれも大きな国際会議が、我が国において開催されました。両会議とも、環境を切り口とした議論も行われ、その結果、持続可能性の重要性について我が国から世界に向けて発信されるなど、大きな契機となる年でした。

 以上を踏まえ、平成27年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書では、「環境とともに創る地域社会・地域経済」をテーマに、我が国が直面する課題に対し多様な主体が取り組み、各地域がそれぞれの特徴を生かした持続可能で自律的な社会を創生するための地域づくりを取り上げます。そして、地域という視点から、環境問題の解決が経済・社会的課題の解決にも資すること、特に過疎化が進行する地域、脆(ぜい)弱な産業基盤を有する地域等では、環境問題への取組が経済・社会的課題の解決の処方箋ともなり得ることなど、環境、経済、社会の統合的向上の重要性を明らかにしていきます。

 第1部の第1章では、我が国における社会経済情勢や生活様式の変化、環境問題の現状について述べるとともに、それぞれの特性を生かした持続可能で自律的な地域づくりの重要性を明らかにします。第2章では、東日本大震災の被災地における復旧・復興の現状を明らかにするとともに、厳しい状況下における持続可能な地域づくりの取組を紹介します。第3章では、環境対策を活用した地域活性化、高齢者や若者を始めとする地域の市民・住民の参加・参画を通じた環境保全活動等、それぞれの特徴を生かした地域づくりの取組と、我が国で2020年(平成32年)に開催される第32回オリンピック競技東京大会・第16回パラリンピック競技東京大会に向けた、東京都市圏を中心とした環境に関する取組について述べています。第4章では、それぞれの特徴を生かした持続可能で自律的な地域づくりを実現していくために、その担い手となる個々人が持続可能性を意識することが重要であることから、そうした個人一人一人に着目し、個々人が営む持続可能なライフスタイルや、持続可能な開発のための教育(ESD)の重要性について記述します。