第2節 地域における人と自然の関係を再構築する取組

1 絶滅のおそれのある種の保存

(1)レッドリスト

 レッドリストについては、平成24年度までを目途に、それぞれの種の最新の生息状況や絶滅確率などを踏まえ、掲載種のランクの変更や削除、新たな種の追加など、内容の見直しを進めます。

(2)希少野生動植物種の保存

 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成4年法律第75号。以下「種の保存法」という。)に基づき、希少野生動植物種を指定し、個体の捕獲・譲渡し等の規制、器官・加工品の譲渡し等の規制を引き続き実施します。国内希少野生動植物種については、生息・生育状況を把握するための現状調査や、生息地等保護区の指定を推進し、生息・生育環境の保護管理を行うとともに、種の保存法に基づく保護増殖事業計画に基づき、野生生物保護センター等を中心として、ツシマヤマネコ、ヤンバルクイナ、アホウドリ、ミヤコタナゴ等の生息環境の改善・整備や繁殖の促進のための事業を推進します。また、国内希少野生動植物種に指定された種について、順次、保護増殖事業計画を策定します。トキについては、今後とも野生復帰に向けて野生順化訓練と放鳥に関する事業を継続します。サシバ等の希少な猛禽類については、保護方策の調査・検討を引き続き行います。

 また、種の保存法の施行状況を評価し、その結果を踏まえ、必要な対策を講じます。

(3)生息域外保全

 動物園、水族館及び植物園など関係者との連携を深めるとともに、「絶滅のおそれのある野生動植物種の生息域外保全に関する基本方針」や「絶滅のおそれのある野生動植物種の野生復帰に関する基本的な考え方」に沿って生息域外保全の取組を推進します。

2 野生鳥獣の保護管理

(1)科学的・計画的な保護管理

 「鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針」に基づき、鳥獣保護区の指定、被害防止のための捕獲及びその体制の整備、違法捕獲の防止等の対策を総合的に推進します。

 鳥獣保護管理の担い手を育成及び確保するため、鳥獣保護管理に係る人材登録事業を実施するほか、狩猟者等を対象とした研修事業を行うとともに、都道府県等と連携し、地域における人材育成事業の取組を支援します。

 特定鳥獣保護管理計画(以下「特定計画」という。)の技術研修会を開催し、都道府県における特定計画作成を促します。関東地域、中部近畿地域におけるカワウについては広域協議会を、白山奥美濃地域のツキノワグマ及び関東山地のニホンジカについては連絡会議を開催し関係者間の情報の共有を行うとともに、関東カワウ広域協議会においては一斉追い払い等の事業を引き続き実施します。

 適切な狩猟が鳥獣の個体数管理に果たす効果等にかんがみ、都道府県及び関係狩猟者団体に対し、事故及び違法行為の防止を徹底し、適正な狩猟を推進するための助言を行います。

 出水平野に集中的に飛来するナベヅル、マナヅルの保護対策として、生息環境の保全、整備を実施するとともに、越冬地の分散を図るための事業を実施します。また、渡り鳥の生息状況等に関する調査として、鳥類観測ステーションにおける鳥類標識調査、ガンカモ類の生息調査等を実施します。

 ラムサール条約湿地に登録されている国指定濤沸湖鳥獣保護区において、水鳥・湿地センター(仮称)の整備を推進します。

 鳥獣の生息環境が悪化した鳥獣保護区の生息地の保護及び整備を図るため、浜頓別クッチャロ湖(北海道)、宮島沼(北海道)、片野鴨池(石川県)、漫湖(沖縄県)、谷津(千葉県)、浜甲子園(兵庫県)において保全事業を実施します。

 野生生物保護についての普及啓発を推進するため、愛鳥週間行事の一環として東京都において「全国野鳥保護のつどい」を開催するほか、小中学校及び高等学校等を対象として野生生物保護の実践活動を発表する「全国野生生物保護実績発表大会」等を開催します。

(2)鳥獣被害対策

 防護柵等の被害防止施設の設置、効果的な被害防止システムの整備、捕獲鳥獣の食肉利用の促進等の対策を推進するとともに、鳥獣との共存にも配慮した多様で健全な森林の整備・保全等を実施します。

 農山漁村地域において鳥獣による農林水産業等に係る被害が深刻な状況の中、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成19年法律第134号)に基づき市町村が作成する被害防止計画により、生息環境管理、被害防除、個体数調整の地域一体で取り組む対策を総合的に支援し、鳥獣被害対策の体制整備等を推進します。

 近年、トドによる漁業被害が増大しており、トドの資源に悪影響を及ぼすことなく、漁業被害を防ぐための対策として、被害を受ける刺網等の強度強化を促進します。

(3)鳥インフルエンザ等感染症対策

 「野鳥における高病原性鳥インフルエンザに係る都道府県鳥獣行政担当部局等の対応技術マニュアル」に基づき、高病原性鳥インフルエンザウイルス保有状況調査を全国で実施し、結果を公表します。更に、平成17年度から行っている人工衛星を使った渡り鳥の飛来経路に関する調査を継続するとともに、国指定鳥獣保護区への渡り鳥の飛来状況についてホームページ等を通じて情報提供を行います。また、その他の感染症について情報把握・分析等を行い、対応を強化します。

3 外来種等への対応

(1)外来種対策

 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)に基づく特定外来生物の輸入、飼養等の規制を引き続き実施します。また、同法施行後5年後の法の施行状況の検討を進めた上で必要に応じて所要の措置を講じます。さらに、外来種の適正な飼育に係る呼びかけ、ホームページ(http://www.env.go.jp/nature/intro/)等での普及啓発を引き続き推進します。

(2)遺伝子組換え生物への対応

 カルタヘナ議定書を締結するための国内制度として定められた遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号。以下「カルタヘナ法」という。)に基づき、遺伝子組換え生物等の使用等の規制に関する措置を講じ、生物の多様性の確保を図ります。また、日本版バイオセーフティクリアリングハウスhttp://www.bch.biodic.go.jp/)を通じて、法律の枠組みや承認された遺伝子組換え生物に関する情報提供を行うほか、遺伝子組換えナタネの生物多様性への影響監視調査などを行います。

4 動物の愛護と適正な管理

(1)動物の愛護と適正な管理

 動物の愛護及び管理に関する施策を推進するための基本的な指針に基づき、引き続き犬猫の引取り数の半減を目指し、適正飼養に関する普及啓発、収容動物の返還・譲渡促進の支援等を進めます。同じく基本指針に基づき犬猫の所有明示の実施率の倍増に向け、マイクロチップ装着に対する理解の促進に資するための普及啓発を行います。また、基本指針に基づく取組及びその実施状況の評価等を行うとともに、現行の動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号)の施行から5年を目途に行うこととされている法の見直しに向けた調査・検討を進めていきます。

 ペットフードの安全性の確保においては、引き続き、ペットフードによる健康被害等について関係機関における情報共有を図り、連絡会議の開催等により連携体制を整備していきます。また、引き続き、犬猫以外のペットフードについても安全・健康保持のために飼い主が「やってはいけないこと」と「やるべきこと」をまとめたガイドラインを作成するとともに、法の対象を犬猫以外にも拡大する必要性の検討を行います。

5 遺伝資源等の持続可能な利用

(1)遺伝資源の利用と保存

 農林水産分野では、農業生物資源ジーンバンク事業などにより、関係機関が連携して、動植物、微生物、DNA、林木、水産生物などの国内外の遺伝資源の収集、保存、評価等を行っており、植物遺伝資源24万点をはじめ、世界有数のジーンバンクとして利用者への配布・情報提供を行います。また海外から研究者を受け入れ、遺伝資源の保護と利用のための研修を行います。

(2)微生物資源の利用と保存

 独立行政法人製品評価技術基盤機構を通じた資源保有国との生物多様性条約の精神に則った国際的取組の実施などにより、資源保有国への技術移転、わが国の企業への海外の微生物資源の利用機会の提供などを引き続き行います。

 わが国の微生物などに関する中核的な生物遺伝資源機関である独立行政法人製品評価技術基盤機構生物遺伝資源センターで、生物遺伝資源の収集、保存などを行うとともに、これらの資源に関する情報(分類、塩基配列、遺伝子機能などに関する情報)を整備し、生物遺伝資源とあわせた提供を引き続き行います。

(3)バイオマス資源の利用

 第2部第3章第4節(8)を参照。



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