第5章 生物多様性の保全及び持続可能な利用 ~私たちのいのちと暮らしを支える生物多様性~

第1節 生物多様性を社会に浸透させる取組(生物多様性の主流化)

1 普及広報と国民参画

(1)生物多様性の普及広報

 生物多様性の認知度を高めるため、「コミュニケーションワード」や「国民の行動リスト」、「地球いきもの応援団」の活用、COP10名誉大使の活動支援等を通じ、生物多様性に関する広報・参画を効果的に推進します。

 国際生物多様性の日(5月22日)を中心に生物多様性条約事務局が呼びかけている、「グリーンウェイブ」について、「グリーンウェイブ2011」として、広くこの活動への参加を呼びかけていきます。

 2011年(平成23年)からの10年間は国連が定める国連生物多様性の10年に当たることから、生物多様性の10年日本委員会を設立し、COP10名誉大使、地球いきもの応援団等と連携しつつ、幅広い主体の参加を得ながら、記念行事等を開催するとともに、多様な主体に対しても、記念行事の開催を促します。

(2)地方公共団体、企業、NGOなど多様な主体の参画と連携

 地方公共団体による生物多様性地域戦略の策定については、生物多様性国家戦略2010で掲げた目標である「COP11(2012年)までにすべての都道府県が地域戦略の策定に着手していること」を達成するため、「生物多様性地域戦略策定の手引き」の活用を促すとともに、地方公共団体による地域戦略の策定に向けた取組を支援していきます。

 企業等については、生物多様性の保全及び持続可能な利用等、生物多様性条約の実施に関する民間の参画を推進するため、経済界を中心とした自発的なプログラムとして設立された「生物多様性民間参画イニシアティブ」の取組に、引き続き協力します。

 地域における生物多様性の保全・再生活動を促進するため、「地域生物多様性保全活動支援事業」を実施し、多様な主体による生物多様性の保全・再生の活動や計画策定の取組を支援します。

 2010年(平成22年)12月に制定された「地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律(生物多様性保全活動促進法)」に基づく基本方針を策定し、着実な施行に努めます。また、市町村による「地域連携保全活動計画」の作成が進むよう手引書の整備など普及・啓発を進めます。

 ナショナル・トラスト活動については、その一層の促進のため、引き続き税制優遇措置、普及啓発等を実施します。

2 自然とのふれあい

(1)自然とのふれあい活動

 「みどりの月間」(4月15日~5月14日)、「自然に親しむ運動」(7月21日~8月20日)、「全国・自然歩道を歩こう月間」(10月)等を通じて、自然観察会等自然とふれあうための各種活動を実施します。

 国立・国定公園の利用の適正化のため、自然公園指導員の研修を実施するとともに、利用者指導の充実を図ります。また、地方環境事務所等においてパークボランティアの養成や活動に対する支援を行います。

 自然体験プログラムの開発や子どもたちに自然保護官の業務を体験してもらうなど、自然環境の大切さなどを学ぶ機会を提供します。

 自然とふれあう機会を増やし、生物多様性への理解を深めるため、国立公園のビジターセンターなどを巡り、自然体験などに参加する「全国自然いきものめぐりスタンプラリー」を実施します。

 国有林野においては、森林教室、体験セミナー等を通じて、森林とのふれあいを楽しみながら理解を深める森林ふれあい推進事業等を実施します。また、学校等による体験学習活動の場である「遊々の森」や、国民による自主的な森林づくり活動の場である「ふれあいの森」などの設定・活用を図り、国民参加の森林づくりを推進します。

 国営公園においては、良好な自然環境や歴史的資源を活かし、自然観察会やプロジェクト・ワイルド等、多様な環境教育プログラムを提供します。

(2)エコツーリズム

 エコツーリズムによる地域活性化のための人材・プログラムづくりと施設整備を含む基盤づくりを一体的に実施します。

 そのうち人材・プログラムづくりとしては、地域の自然や生きものなどの生物多様性を保全しつつ、活用するエコツーリズムを推進するために、地域コーディネーターによるプログラムやルールづくり、ネットワークづくりなどに主体的に取り組む地域を支援します。さらに、自然に関する知識や経験などを備え、その大切さや魅力を伝える人材の育成、協議会への技術的助言、エコツーリズムの実施状況に関する情報の収集・提供などを実施します。

 また、基盤づくりとしては、国立公園のエコツーリズムに意欲的な地域において、エコツーリズムの基盤となる情報提供拠点、自然資源の保全活用に係る施設を集中的に整備します。

(3)自然とのふれあいの場の提供

 ア 国立・国定公園等における取組

 国立公園の保護及び利用上重要な公園事業を環境省の直轄事業とし、利用拠点である集団施設地区における直轄施設の温室効果ガス排出削減やユニバーサルデザイン化と外国人旅行者のための標識等表示の多言語化、利用者が集中する地域における生態系への影響の軽減、適正かつ質の高い利用の推進のための施設、エコツーリズムの基盤となる情報提供拠点、自然資源の保全活用に係る施設等を重点的に整備していきます。

 地方公共団体が行う国定公園等の整備に、自然環境整備交付金を交付し、その整備を支援します。

 イ 森林における取組

 保健保安林等を対象として防災機能、環境保全機能等の高度発揮を図るための整備を実施するとともに、国民が自然に親しめる森林環境の整備を支援します。また、森林環境教育、林業体験学習の場となる森林・施設の整備等を推進します。さらに、森林総合利用施設等において、年齢や障害の有無にかかわらず多様な利用方法の選択肢を提供するユニバーサルデザイン手法の普及を図ります。

 国有林野においては、自然休養林等のレクリエーションの森において、民間活力をいかしつつ利用者のニーズに対応した森林及び施設の整備等を行います。また、国有林野を活用した森林環境教育の一層の推進を図るため、農山漁村における体験活動とも連携し、フィールドの整備及び学習・体験プログラムの作成を実施します。

(4)都市と農山漁村の交流

 全国の小学校における農山漁村での宿泊体験活動「子ども農山漁村交流プロジェクト」を一層推進し、子どもの豊かな心を育むとともに、自然の恩恵などを理解する機会の促進を図ります。

 地域資源を活用した交流拠点の整備、都市と農村の多様な主体が参加した取組等を総合的に推進し、グリーン・ツーリズムの普及を進め、農山漁村地域の豊かな自然とのふれあい等を通じて自然環境に対する理解の増進を図ります。

(5)温泉の保護及び安全・適正利用

 温泉法(昭和23年法律第125号)の運用に当たり、温泉源の保護、温泉の採取等に伴い発生する可燃性天然ガスによる災害の防止及び温泉の適正かつ効率的な利用の増進を図るため都道府県等に対し適切な助言を行います。

3 教育・学習

 第6章第7節1を参照。



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