海洋環境モニタリング調査

海洋環境モニタリング調査

東日本大震災に係る海洋環境モニタリング調査(平成23年度~)

東日本大震災に係る海洋環境モニタリング調査 令和5年度調査結果について

 

令和6年3月28日

 環境省は、東日本大震災を受け、平成23年度から毎年度、被災地における海洋環境モニタリング調査を実施しています。本調査は、震災に伴い流出した化学物質及び廃棄物並びに福島第一原子力発電所から漏出した放射性物質に起因して海洋環境中で汚染が生じる可能性のある項目について、その現状及び経年変化を把握することを目的としています。
 今般、東日本大震災に係る海洋環境モニタリング調査検討会での検討結果を踏まえ、令和5年度の調査結果について、以下のとおり取りまとめました。
1. 表層堆積物を用いたモニタリング調査
 堆積物中の化学物質及び放射性物質の経年変化の把握を主たる目的として、宮城県及び福島県の4測線において「モニタリング調査」を実施しました(調査期間:令和5年8月29日~9月2日)。
 環境基準又は暫定除去基準が設定されている項目(ポリ塩化ビフェニル(PCB)及びダイオキシン類)は、いずれも平成23年度以降継続して、基準値等より1桁以上低い値でした。
 多環芳香族炭化水素(PAH)の濃度は、平成23年度の調査開始以降、測点 ごとに濃度変動の傾向は異なりますが、近年は全体として横ばい傾向でした。
 臭素系難燃剤(PBDE及びHBCD)の濃度は、震災直後には、一部測点で相対的に高い濃度で検出されました が、現在は低減しており、近年は全体として横ばい傾向でした。
 有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)は、平成23年度の調査開始以降、測点ごとに濃度変動の傾向は異なりますが、 全体として低い値で推移しています。
 堆積物中の放射性物質については、平成23年度の調査開始以降、多くの測点において経年的に濃度が減少する傾向が見られました。
 
2. 履歴確認調査
 震災以降の化学物質による汚染の履歴を確認することを目的として、宮城県の1測点において「履歴確認調査」を実施しました(調査実施日:令和5 年 8月30日)。
 令和5年度に採取した堆積物については、以下の特徴が見られました。
  1. 中央粒径、水分含有率、全有機態炭素は、多少のばらつきはありますが、いずれの 層も概ね同程度の値でした。
  2. PCB 及びダイオキシン類は表層から8-10cm 層にかけて濃度が増加してピークと なり、下層にかけて濃度が減少する傾向がみられました。一方、PBDE、PFOS、PFOA、 セシウム 137 は、概ね表層から下層にかけて濃度が減少する傾向がみられました。 過去に実施した他の測点での結果から、調査対象物質には複数の異なる起源がある ことが示唆されており、上記の対象物質による傾向の違いは起源の違いを表してい る可能性があります。
  3. 前回のいわき-3 における柱状堆積物を用いた履歴確認調査(令和元年度)の結果と 比較すると、0-2cm 層以外については中央粒径が大きく異なることから、前回の 柱状堆積物の上に新たな堆積物が堆積して今回の柱状堆積物となったとは言えず、 その比較には注意が必要です。検出された最高値を比較すると、PCB、ダイオキシ ン類、PBDE については概ね同等でした。PFOS 及び PFOA については今回の値の 方が高くなっていましたが、過年度の表層堆積物の値と比べると概ね同等でした。 セシウム 134 及び 137 は今回の値の方が低くなっていました。
 
3. 重点調査項目の調査
 平成23年度第3次調査以降、高濃度のPAHが検出されている海域のうち、岩手県及び宮城県の5測点において、堆積物中のPAHの分布の経年変化の把握を目的とした「重点調査項目の調査」を実施しました(調査期間:令和5年9月5日~7日)。
 堆積物中の PAH は、いずれの測点においても、過年度調査結果の範囲内でした。震 災直後には、高い濃度の PAH が検出されましたが、現在は低減しており、近年は全体 として、横ばい傾向です。 堆積物中の放射性物質の検出範囲は、セシウム 134 で検出限界値未満~0.37 Bq/kg(dry)、セシウム 137 で 0.31~13 Bq/kg(dry)でした。
 
4.まとめ
 令和5年度調査結果では、環境基準又は暫定除去基準が設定されている項目(PCB及びダイオキシン類)は、いずれも基準値より1桁以上低い値でした。
 その他の化学物質等のうち、PAHについては、平成23年度の調査開始以降、測点 ごとに濃度変動の傾向は異なりますが、近年は全体として横ばい傾向です。臭素系 難燃剤については、震災直後には、一部測点で相対的に高い濃度で検出されました が、現在は低減しており、近年は全体として横ばい傾向です。有機フッ素化合物に ついては、平成23年度の調査開始以降、測点ごとに濃度変動の傾向は異なりますが、 全体として低い値で推移しています。 堆積物中の放射性物質については、平成23年度の調査開始以降、多くの測点におい て経年的に濃度が減少する傾向が見られました。
 環境省ではこれらの結果も踏まえ、今後も継続してモニタリングを実施する予定です。

別紙1:令和5年度東日本大震災に係る海洋環境モニタリング調査結果(概要版)[PDF 275 KB]
別紙2:令和5年度東日本大震災に係る海洋環境モニタリング調査結果(詳細版)[PDF 1.4 MB]

 
環境省水・大気環境局海洋環境課
直通 03-5521-9023
課長   大井 通博  
課長補佐 堀野上 貴章(内線25523)