自然再興の実現に向けた民間等の活動促進に関する小委員会(第1回)議事録

開催日時

令和5年 10 月 13 日(金)9:30~12:00

議事次第

1 開会 
2 議事 
 (1) 本小委員会の検討事項等について 
 (2) 関係団体からのヒアリングについて 
     ・キリンホールディングス株式会社 
     ・一般社団法人 more trees 
     ・神戸市 
     ・自然共生サイト認定者からの書面ヒアリング結果 
 (3) 活動促進に向けた論点について 
 (4) その他 
3 閉会 

議事録

午前9時31分 開会
○武藤補佐 定刻となりましたので、ただいまより、中央環境審議会自然環境部会自然再興の実現に向けた民間等の活動促進に関する小委員会第1回を開会いたします。
 本日はお忙しい中、ご出席いただき、ありがとうございます。
 本委員会につきましては、中央環境審議会自然環境部会第47回にて設置が決定され、同自然環境部会長からご指名いただきました17名の方に委員をお願いしております。
 本委員会の委員長につきましては、中央環境審議会議事運営規則第八条第三項に基づき、自然環境部会長よりご指名いただきました石井実委員にお願いしております。
 また、本日の委員会には14名の委員にご出席いただいております。このうち、定足数の対象となる委員、臨時委員10名中、Web会議システムでの参加を含め、9名がご出席され、定足数を満たしていますので、本委員会は成立しています。
 本日の会議運営についてご説明いたします。本委員会の様子は、YouTubeチャンネルによりライブ配信を行っておりますので、ご了承ください。
 本日、オンラインでご参加の委員の皆様におかれましては、マイク、ビデオは、各自発言の際のみオンとするようお願いいたします。また、ご発言の際はチャット欄に書き込みいただき、ご発言する旨をお知らせください。委員長からご指名後、マイクのミュートを解除していただき、議事録の円滑な記録のため、お名前をおっしゃってからご発言いただきますようお願いいたします。なお、挙手ボタンは気がつかないこともございますので、挙手ボタンは使用せず、チャット欄をご活用いただければ幸いです。
 本日、会議室でご参加の委員の皆様におかれましては、ご発言の際は、名札を机の上に立てていただき、委員長からのご指名後、マイクをオンにしてご発言ください。発言終了後はマイクをオフにしていただくようお願いいたします。
 本日ご説明する資料につきましては、委員の皆様には事前に電子データにて送付しております。本日は事務局が画面上に資料を投影し、進行させていただきますので、お送りした資料は必要に応じ、お手元でご参照いただきますようお願いいたします。
 傍聴されている方につきましては、本日の資料を環境省ホームページの自然環境部会のページにアップロードしておりますので、そちらをご確認いただきますようお願いいたします。
 それでは、白石自然環境局長よりご挨拶を申し上げます。
○白石自然環境局長 おはようございます。
 委員の皆様方、ご多用のところ、リアルでご出席いただきましてありがとうございます。また、Webでご出席いただいている委員の皆様も本当にご多忙のところ、ありがとうございます。
 さて、本日でございますが、8月下旬の中環審の自然環境部会におきまして設置されました小委員会の第1回目でございます。
 今年の3月に策定いたしました生物多様性国家戦略におきまして、2030年までのネイチャーポジティブの実現を国内目標として実現するために、ネガティブを減らしていくというものと、ポジティブを生み出す施策の両方というものを生み出していくということを求められているわけでございます。
 その施策として、いわゆる30 By 30という国際的目標に沿って、場所に即した生物多様性保全の取組というものを進めていく必要があるわけでございます。既に国の取組ということで、保護地域、各種、それこそ自然公園法でありますとか、鳥獣保護区でありますとか、森林関係の生態系保全地域でありますとか、様々な取組を行ってはおりますが、さらにそこの取組に加えて、民間による貢献、こういったものが期待されるということでございます。
 本委員会におきまして、その生物多様性の保全に資する活動促進を通じて、一つでも多く、そのポジティブを生み出す施策を深掘りいただきたいというふうに考えてございます。
 今、同時並行的に制度の在り方を本委員会で検討いただくわけでございますが、同時並行的に今年度から自然共生サイトという取組も進めております。先週、122か所を認定いたしました。さらに企業からも強い関心が示されているというところでございます。
 こういう試行的な取組を発展させて、きちっとした何か法制度の枠組みに載せるための法制度の検討を進めていくということが必要となっているわけでございます。
 そういう意味では、生物多様性国家戦略を定めて、このような取組に取りかかるという意味で、今年2023年がネイチャーポジティブの元年というふうにも言えるんじゃないかと思っております。
 単に、国の制度でネイチャーポジティブを実現する、国だけがやるというわけではありません。ネイチャーポジティブというのは国だけではない、様々な主体、多くの国民様、企業、自治体、そういったものが関心を持っていただいて活動に広く参画いただくという国民運動的な広がりが不可欠だろうと思っております。
 本検討にご参加いただきます委員の皆様におかれましては、このネイチャーポジティブの実現に向けた民間等の活動促進のための措置につきまして、忌憚のないご意見、ご議論をお願いしたいというふうに考えてございます。
 本日はよろしくお願いいたします。
○武藤補佐 本日は初回の開催となりますので、本日出席の自然環境局幹部をご紹介いたします。
 大臣官房審議官の堀上です。
○堀上審議官 よろしくお願いいたします。
○武藤補佐 自然環境計画課長の則久です。本日、オンラインにて参加しております。
 生物多様性主流化室長の浜島です。
○浜島室長 よろしくお願いいたします。
○武藤補佐 大臣官房環境経済課市場メカニズム室長で、自然環境局に併任しております山本です。
○山本室長 よろしくお願いいたします。
○武藤補佐 続きまして、委員の皆様をご紹介させていただきます。本日は時間が限られることから、事務局より委員、臨時委員、専門委員の順にご欠席の委員も含めまして、お名前のみご紹介させていただきます。
 小泉透委員。勢一智子委員。中村太士委員。藤田香委員。石井実臨時委員。中静透臨時委員。西澤敬二臨時委員。広田純一臨時委員。深町加津枝臨時委員。山野博哉臨時委員。浅野正富専門委員。一ノ瀬友博専門委員。大下英和専門委員。角谷拓専門委員。佐藤留美専門委員。土屋俊幸専門委員。森田香菜子専門委員。
 以上です。
 これよりの議事進行につきましては、石井委員長にお願いいたします。
 また、石井委員長からは、委員長代理のご指名をお願いいたします。
○石井委員長 皆さん、おはようございます。
 委員長を仰せつかっております、石井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議に当たりまして、一言ご挨拶させていただきたいと思います。
 OECMですけれども、愛知目標で提示されていましたが、2018年のCOP14で定義が決まると、30 by 30目標、その達成のツールとして注目されてまいりました。
 我が国でも、自然環境保全基本方針の改正時に盛り込まれまして、2020年度に始まった通称OECM検討会の中でESG金融、あるいはTNFDなどの動向を意識しながら、制度化の検討がなされてきたわけでございます。
 昆明・モントリオール生物多様性枠組の柱であるネイチャーポジティブが、この3月に作成された新国家戦略の2030年目標となりまして、OECM検討会で検討されてきた自然共生サイトの本格運用が始まっております。本当に多くの応募がありまして、多様な主体から期待されているということが分かります。
 本日から始まるこの小委員会では、この自然共生サイト等の地域に根差した自然環境保全の活動をさらに促進するために、民間等による自主的な取組を認定する法制度を検討するというのがミッションだと理解しています。
 3回の会議でこのミッションを達成するということで、なかなか難しいかもしれませんが、委員の皆様には、活発なご議論をお願いしたいと思います。
 事務局から指名依頼がありました委員長代理でございますけれども、生物多様性国家戦略検討小委員会の委員長も務められた中静委員にお務めいただきたく思います。中静委員、どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、会議録ですけれども、後ほど事務局で作成しまして、本日ご出席の委員の了承をいただいた上で公開することとなります。議事要旨につきましては、事務局で作成したものを、私、小委員長が了承した上で公開するということをご了承いただきたいと思います。
 なお、会議資料につきましても公開となります。
 本日は審議時間が限られております。時間内にご発言いただけなかった質問につきましては、後日、文書での質問、回答とさせていただく場合がございますので、この点、ご了承いただきたいと思います。
 それでは、早速ですけれども、議事(1)です。本小委員会の検討事項等についてということで、事務局からご説明をお願いいたします。小林補佐、お願いします。
○小林補佐 おはようございます。環境省の小林です。よろしくお願いします。
 私から資料1-4に沿って説明させていただきます。
 第1回目ですので、この議事(1)で、この小委員会でご検討いただきたい事項、検討いただきたい対象範囲、スコープ、これらについてご説明をさせていただければと思います。
 この小委員会では、場所とひもづいた民間などの活動を促進するための方策についてご議論いただきたいと、そう考えております。背景的なことも含めて説明いたします。
 まず、我が国の生物多様性は、過去50年損失し続けているとされています。そのような中で、生物多様性の損失を止め、反転させるという、ネイチャーポジティブ目標が掲げられました。
 そして、このネイチャーポジティブの達成に向けては、エリアベースの取組、つまり場所とひもづいた取組が重要です。それについては、国の取組に加えて、企業、団体、個人、地方公共団体、いわゆる民間等の取組が非常に重要になってくるだろうと。そのためにこの小委員会では、場所にひもづいた民間等の生物多様性保全に貢献する活動を促進するための方策について、ご議論いただきたいと考えております。
 国際的にも、国内的にもこのネイチャーポジティブの実現に向けた取組みが動き出しています。冒頭、局長からもありましたように、今年がネイチャーポジティブ元年になっていくだろうと、そのような中でございます。
環境省では、今年度からの自然共生サイトの認定制度を開始したところです。先ほどありましたように、122か所、今回の第1回目で認定することができたということです。そして、2023年中に100か所以上を認定するという目標については、この第1回目で達成することができました。
自然共生サイトの運用を開始したというところですが、まだまだ課題は多いと感じております。
 この自然共生サイトで対応できていない課題として、例えば、生態系の回復とか、新たに緑地を創出するような、こういった活動の後押しも重要ではないかと。また、そうなってくると多様な生態系、多様な目標への対応が必要ですので、それぞれに応じた望ましい活動の在り方というのを示していくということも重要ではないか。
 また、そのためには、農地、都市の緑地といった場を所管する農林水産省、国土交通省との連携、例えばみどりの食料システム戦略、グリーンインフラ、まちづくりGXなど、関連施策との連携強化、シナジーを発揮していくということが非常に重要であると考えております。
 このような課題に対応するために、法制化していきたいということです。法制化する観点で、今申し上げたような課題に対応するためには、活動により注目していきたいと思っています。そのため、場所とひもづいた活動を促進するような計画を認定するような制度に発展させていただきたいと思っています。
 これによってネイチャーポジティブの実現、そして、国民運動としての広がり、生態系ネットワークの構築や継続性の向上、価値の明確化や生態系サービスの発揮、地域づくりにもつながっていきたいと。
 進め方ですけども、令和2年度からこのOECMの自然共生サイトの検討は進めてきました。そういった背景、知見も踏まえながら、今般、8月にこの小委員会の設置が決まりまして、今回が第1回です。
本日、多様なご意見、ご指摘をいただきながら、第2回目に答申案についてご議論いただきまして、パブリックコメントを経て、答申の取りまとめを第3回目にできればというふうに思っております。
 以上です。
○石井委員長 ご説明、ありがとうございました。
 ここは大事な部分だと思います。委員の皆さんからご質問、ご意見、賜りたいと思います。
 会場の皆さんは、名札を立てるような形で発言の意思を示してください。それから、オンライン参加の皆さんは、チャットを使いまして質問があるということで意思表示をお願いしたいと思います。それでは、いかがでしょうか。
 特によろしければ、後で戻ってもいいかと思うのですが、会場の皆さん、よろしいですか。オンラインから何か意見、届いてますでしょうか。
(なし)
○石井委員長 それでは、オンラインの委員からもないということで、先に進ませていただきます。また後で、ご意見をいただいてもよろしいかと思います。
 では続きまして、議事(2)です。関係団体からのヒアリングでございます。ヒアリングは大きく分けて二つのパートがございます。まず、キリンホールディングス株式会社、一般社団法人more trees、神戸市のご担当者にお越しいただいておりますので、それぞれから10分ずつご説明いただきたいと思います。
 その後で、事務局から自然共生サイト認定者に行った書面ヒアリングの結果について、説明していただきたいと思います。
 その後でまとめて委員の皆さんからご質問、ご意見をいただきます。
 それでは、まず、キリンホールディングスさんからお願いいたします。よろしいでしょうか。
○キリンホールディングス(藤原氏) キリンホールディングスCSV戦略部の藤原でございます。
 本日、私共の自然共生サイトの取組についてお話をさせていただく機会をいただきましてありがとうございます。
 私のほうから、認定いただきました椀子ヴィンヤードの概要と、この取組の効果、その取組の中で気づきました、二つ課題についてお話をさせていただきます。
 このプレゼンシートは、我共の事業と自然資本との関係を表しております。私どもの食領域、ヘルスサイエンス領域、医薬領域という三つの領域は、全て原料が生物資源と水資源になっております。つまり、自然資本に付加価値をつけて事業利益を得るというのが我々の事業でございます。自然資本について取り組んでいる理由はここにあるということになっております。
 こちらが椀子ヴィンヤードでございます。椀子ヴィンヤードは、長野県上田市陣馬台地というところにございます。以前は、桑畑だったところが遊休荒廃地になったところを、地権者の皆様と上田市、それからメルシャンで、日本ワインのためのヴィンヤードとして回復したという場所になっております。地続きのヴィンヤードとしては、本州最大の30ヘクタールございます。2014年から農研機構の研究者の皆様のご協力を得て、生態系調査を行っております。
 その結果、レッドデータブックに載るような希少種も含めて非常に多様な生き物が育まれているということが分かりました。ワイン用のヴィンヤードというのは、実は垣根栽培という形を取ります。ですので、下草を生やすわけですけれども、事業の必要性に応じて年に数回、草刈りを行います。このことによって、実はヴィンヤード全体が非常に良質で広大な草原になっていると。それによって生態系が育まれるということが、農研機構との共同研究で分かっております。
 そういったことで自然共生サイトのほうに申請をさせていただきまして、今回、認定を受けたということでございます。取組、いろいろありますけども、時間がありませんので省かせていただきますが、今回、10月6日に認定が決定したのが、たしか122か所だったと思いますけれども、椀子ヴィンヤードは、その中でも唯一、事業のために農産物を生産している畑として認定をされたというふうに考えております。また、自然保護をしようと思ってやっているわけではなくて、事業を行っている中で自然にネイチャーポジティブを実現しているという非常に珍しい例というふうに考えております。
 その結果、効果でございます。まず右側のESGでございますけれども、昨年、キリングループはTNDFのLEAPによる試行開示というものを世界に先駆けて行っておりますけれども、この対象として椀子ヴィンヤードも含めております。また、9月18日に正式版が出ましたけれども、その中でもTNDFのLEAPのパートでご紹介をいただいております。そういう効果がございます。
 そういったこともあり、今年はたくさんの投資家の皆様に椀子ヴィンヤードに訪問していただいております。先日、PRI in Person (国連責任投資原則に署名している機関投資家や有識者が集う年に1度の国際会合で今年初めて東京で開催された)が開催された関係で、参加される投資家の方々にも見ていただいております。やはり目で見て、手触り感をもって感じていただくということは非常に重要だったなというふうに思っております。
 プレゼンシートの右側のコミュニティと書いてある場所に記載しておりますが、今回の申請で実は一番大きなハードルは150名ほどおられる地権者の皆様の合意を頂くというところでございました。この点につきまして、環境省の皆様、非常に多くの支援をいただきましてありがとうございます。やはりこういった申請をすると、自分の土地に何らかの規制がかかるんじゃないかということで、地権者の皆様でご懸念を持たれる方もおられました。しかし、30 by 30の意味合いというのを粘り強くご説明をしまして、最終的には、世界目標に自分の土地が貢献できるということで非常に誇りに思えるという言葉をもらったりと、全員の合意を得ることができました。こういう過程を踏むことで、地権者の皆様には単なるヴィンヤードということではなくて、自然を守れる場所なんだということでご理解をいただきまして、地権者とメルシャンの間に、更に非常に強固な関係を築けたというふうに思っております。
 また、今年からSDGsツアーというヴィンヤードの自然への効果をご説明するワイナリーツアーも行っております。ワイナリーですので、通常、ワイナリーツアーをやっていますが、一番値段が安いのは4,000円ですけれども、このSDGsツアーというのは実は1万円になっています。私もそれを聞いたときは、ちょっとチャレンジングな価格設定だなと思ったんですけれども、実は毎回定員を充足しております。ですので、エコツアーとしても成り立つなというふうに考えているところでございます。 
では、その取組の過程の中で気づいた課題についてご説明させていただきます。
 一つは、やはり自然共生サイトの適地が見えるようにするということが必要かなというふうに思っております。我々、トップランナーでございましたので、いろいろと関係者に説明しなくてはいけなかったというのは、仕方ないことだと思っているんですけども、これからも広げていく際には、あらかじめ適地だということが分かるようにしておくと進めやすいんじゃないかなというふうに思っております。
 自治体で自然災害用のハザードマップみたいなのがございますけれども、その逆で、ネイチャーポジティブのマップみたいなものがあると非常にいいのかなというふうに思っております。
 現在、SDGs未来都市という制度もございますが、残念ながら中身を見ますと、ほとんどはGHG関係になっておりまして、自然資本は入っていないという事例が多いかなというふうに感じております。こういったものにも、自然共生サイトを取り込んでいただくということが必要だと思います。
 WWFジャパンが以前、再生可能エネルギーのゾーニングのガイドラインを出していますが、なかなか活用ができていないというところがございますので、これは自治体が主体となって動きますので、ここも支援するような国の制度といったもの、それから、後押しをするような政策といったものがあるといいなというふうに考えております。
 最後の課題は、自然共生サイトの価値が見えるようにするということでございます。今回、多分、申請された皆様は強い意志を持って申請をされたというふうに思っておりますが、自然共生サイトはやはり10年、20年と保全をしていくことが必要でございます。そうなると、私も含めてですけれども、今回申請をした人間はどんどん年取っていきますので、居なくなり、人が入れ変わってきます。ここは、実は最大の課題じゃないかなというふうに思っているんです。人が入れ替わっても自然共生サイトが継続的に維持されるためには、やはり価値が見えるようにするということは必須でございます。
 四つほどテーマがあるかなというふうに思っております。一つは生態系が豊かになるということを示すということです。我々の場合は農研機構さんと組んでやっておりますので、科学的なエビデンスを持っておりますけれども、多くの自然共生サイトで同じようなことをするのは大変敷居が高いのではないかと思っております。また、我々の場合は、そういう専門家が見て、学術的に固まった方法でエビデンスを示すのですが、そのエビデンスも一般の方が見るとなかなか分かりにくいということがございます。私もアイデアがあるわけじゃないんですけれども、こういったところを解決する、示せるようにするというのは非常に重要なところかなというふうに思っています。
 二つ目が、いわゆる気候変動対応です。畑からはGHGが出ておりますけれども、それを抑える方法も出てきております。森林の場合はGHGを吸収するという効果がございます。Jクレジットも始まって、経済的な手法でやるという方法もあるかと思うんですが、排出量取引制度的なものでやりますと厳格になりますので、なかなか敷居が高くなるかなというふうに思っております。もう少し敷居を下げたものも含めて、自然共生サイトがGHGを吸収する効果があるということが示せるようにするという方法も一つ重要なことかなというふうに思っております。
 3番目が水でございます。水というと、我々もやっておりますが、日本の場合は森林の水源涵養機能というワードが頭に浮かんで来ると思います。しかし、SBTでもそういう議論になっていますが、最近は水問題を「流域」で捉えて考えるという考え方が定着しつつあります。そうしますと、自分の工場とか、自然共生サイトで水の使用量を下げるということだけではなくて、同じ流域の中にある農園、もしくは事業所に資金投入をいたしまして、水の使用量を下げる、そのことを自分たちの節水の効果として表明するということも可能になってきておりまして、実際にグローバルIT企業は既にこういったことを始めております。
 日本の場合、我々のTCFDのシナリオ分析の結果からも、水ストレスがそんなに大きくはないので、ここで経済的な手法を持ち込むのはちょっと違うかなというふうに思います。そうではない何らか違う方法で、流域での負荷低減といったことが示せるような形というのがあってもいいかなというふうに思います。
 ここまでが検討できますと、ネイチャーポジティブ、カーボンのネットゼロ、ウォーターニュートラルという重要な3つのテーマに自然共生サイトが効果的であることを示せることになります。しかし、一番重要なのは、次に説明する「にぎわい」じゃないかなと思っております。我々の椀子ヴィンヤードにはワイナリーツアーがありますし、年に数回、マルシェもやっておりまして、地域の方の特産物を、そこでご紹介することもしております。
 先ほど投資家をお招きしたという話をしましたが、来ていただいて見てもらって、その価値を理解していただくことが非常に重要です。10年、20年やるとなりますと、やはりその自然共生サイトの周りのコミュニティが、その場所の価値を認識するということが必須だというふうに思っております。ただ、これを進めるのはやはりその地域の自治体のご協力が必要になってくる中で、なかなかまだご理解いただけていない地域もあるのかなというふうに思っています。
 ですので、こういったことを進める上での体制の整備であるとか、仕組みづくり、そういったところについて、国としてご支援をいただければいいのかなというふうに考えております。
 以上、短くて早口になって申し訳ございませんでしたけれども、私のほうからのご説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○石井委員長 コンパクトにまとめていただきありがとうございます。
 では、続きましてmore treesさん、お願いいたします。
○more trees(岸氏) ありがとうございます。more treesの岸と申します。本日はよろしくお願いします。
 我々のほうからは、我々が活動している多様性のある森づくりという活動の内容を中心にご説明させていただければと思います。
 我々、more treesのことはご存じない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にご説明、自己紹介をさせていただきますと、音楽家の坂本龍一が創立した森林保全団体になっております。本年3月に他界されてしまったこともありまして、代表は新たに隈研吾氏をお迎えして3月から活動を新たにしておる団体でございます。
 都市と森をつなぐということをキーワードに活動しておりまして、お示しさせていただいているような日本国内19か所、海外2か所の地域と協定、主に自治体と協定を結んで活動をしております。
 具体的な活動内容としては森林保全活動を中心としながらも、普及啓発の活動ですとか、ものづくりですね。木材利用というところ、先ほどお示しした地域産材を使っていくというところのお手伝い、あとは、カーボンオフセットの活動なんかも行っております。
 中でも最近注力をしているのは、この多様性のある森づくりという活動です。
 日本国内では約7割が森林に覆われた森林大国である一方で、その植えられた樹種というのがスギ、ヒノキを中心とした針葉樹が単一的に植えられたということで、森林全体の樹種構成の偏りが出てきているということから、生物多様性、もしくは保水力の低下というところも指摘されておるところでございます。
 植林されてから五、六十年経過して、木材としても利用期を迎えておりまして、こちらの写真にあるような形で皆伐される土地というのも近年増加しておるところです。
 一方で、木材価格が低迷しているということもあって、再造林の費用がなかなか捻出できずに皆伐をそのまま放置された、いわゆる再造林放棄地も増えているところです。実にこのパーセンテージですが、皆伐された面積に対して約65%が再造林されてないというような現状にあります。
 決して我々として皆伐をすることがよくないということでは考えておりません。なぜ植えられていないかということを考えますと、その多くは例えばアクセスが悪かったりとか、林業としてなかなか成り立たない土地だったりしますので、この皆伐したというタイミングを転換期と捉えて、またスギ、ヒノキを植えるのではなくて、今後自然に戻していくような、その土地、土地に根差した在来種を、主に広葉樹を植えて転換していくというのも選択肢にあってもいいのではないかなというのが根本的な背景にございます。
 今、お話ししたのは森側、地域側のお話ですけれども、一方、企業側に関しましても、脱炭素とかネイチャーポジティブという文脈から、森林に対する関心がかなり高まっていることを感じております。
 こちらも釈迦に説法でございますが、ネイチャーポジティブ実現に向けて最近のTNFDの最終版がつい先日公表されたばかりでありますけれども、これ、TNFDはTCFDに6年ほど後れを取って最終版が公表されているわけですけれども、一方で、賛同企業の増加スピードは明らかにTCFDを超えているというところで、かなり関心の高まりも感じられるところです。
 こちら、我々の個人的な協賛企業数の変化なので、かなり情報としては少ない部分ではあるんですけれども、こちら、ご覧いただいても分かるとおり、2020年頃から明らかに協賛企業さんの数も増えております。
 加えて、数のみならず、質という言い方が合っているか分かりませんけれども、担当者の方からも、それこそ2019年の頃はSDGsというワードすら知らないこともしばしばあったんですけれども、近年では、そういった担当者の方から、TCFD、TNFD、OECMというワードがちらほら出てくることも増えてきたなというところで、質の面もかなり高まっていることを感じております。
 そういった森側、地域側の課題と、ネイチャーポジティブに寄与していきたいという企業様のニーズをマッチングする機能として、我々として企業の森というプランを新たに構築しました。これは、特定の地域で植林の活動、我が社の森ということで掲げていただくようなプランになっておりまして、本格的に2019年からスタートしたんですけれども、既に11地域、15企業の皆様にご参画いただいているというような状況になります。
 具体的に多様性のある森づくりにどんな活動をしているのかという具体例を三つほどご紹介させていただければと思います。
 まず一つ目が、奈良県の天川村という地域でございます。こちらは約28ヘクタールの国内では比較的大規模なスギ林の伐採が行われました。その跡地に対して、キハダですとか、ミズメ、アカシデ、ウリハダカエデといった複数の広葉樹を植林しております。特に、この植栽樹種の一つであるキハダという樹種は、1300年以上前の歴史がある和漢薬の陀羅尼助丸という地域の特産品がございまして、これの原料になっております。かつては村内でキハダを伐採して、それを陀羅尼助丸として加工してという地産地消の形が取られていたんですけれども、やはりスギ、ヒノキに置き換わって、キハダが村内からは姿を消してしまったということで、そういった村のアイデンティティともいえるキハダを含めた樹種を再生していこうということで、経済的にも、また環境的にもプラスの影響がある取組になっております。
 二つ目が高知県の梼原町という地域なんですけども、こちらも梼原の梼という字は、実はイスノキ、これが別名梼の木と呼ばれていまして、ここから取られたというふうに言われています。こちらも先ほどと同様に、かつては梼の木、イスノキが生えていたんですけれども、今はスギ、ヒノキに置き換わってしまって、ほとんど町内にもないということで、そういったアイデンティティを取り戻すということで、梼の木を含めた複数樹種の植栽を行っております。
 三つ目が北海道の美幌町という地域なんです。こちら、水源の機能がかなり求められる地域だったんですけど、もともとカラマツの造林地で、こちらを多種多様な樹木で構成される森に転換していこうということで、有識者の方のご意見もいただきながら斜面上部にはシラカンバ、中腹にはミズナラ、沢沿いにはヤチダモというような形でゾーニングをしながら、より適した形で植林をしているという事例になっております。
 我々としてこうした多様性のある森づくりの活動を自然共生サイトに申請をさせていただいたところなんですけれども、今回は認定が見送りとなりました。
 その理由としては、現行の自然共生サイトでは既に生物多様性の保全が図られている区域という認定要件がありまして、我々の活動はまだ途上にあるというところで、認定に至らなかったという経緯があります。
 この理由に対して、我々も理解を示すところでありますけれども、ぜひネイチャーポジティブ、今後実現していくために、我々からご提案させていただきたい内容がございます。現行の施策では、これまでに実施した活動による生物多様性を評価する制度となっているわけですけれども、もう少し、それこそ30 by 30のさらにその先の将来に向けた視点が必要なのではないかなというふうに考えております。
 また、我々の活動、植林してから、生物多様性に寄与するという観点でいうと、10年以上要する活動です。ただ一方でせっかくの取組ですので、その間に企業さんが継続するモチベーションが損なわれてしまうというのは機会損失ではないかと考えております。ですので、我々としては、例えば準自然共生サイト、もしくはプレ自然共生サイトのような形で、現時点では生物多様性の保全が充実していないものの、回復のために適切な処理を施しているというようなところを認めていただく制度があってもいいのではないかなと思っております。
 これ、一事例をご紹介させていただくと、オーガニックコットンというものがあるかと思いますが、こちら、プレオーガニックコットンという、いわゆるオーガニックコットンに認定するまでに様々な障壁がありますので、そこを乗り越えるための制度というものもあります。ですので、これを自然共生サイトに置き換えると、まさに障壁となっているのは、その時間ですね。どうしてもかかってしまう時間というところですので、そこを解決する手段になるのではないかなと思っております。
 最後になりますけども、こちら、申請エリアの一つである北海道の美幌町というエリアです。創立者の坂本龍一も実は植林をしておりまして、以前、5年たって現地を訪れたところ、もう既に4m以上を超えるような状態になっております。まだこれでも生物多様性の保全に寄与するとは言い切れない部分はありますが、ぜひここから生物多様性に寄与していくエリアということで認定をしていただけますと幸いでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
○石井委員長 はい。どうも、ありがとうございました。
 それでは、続きまして、神戸市さん、お願いいたします。
○神戸市(岡田氏) 神戸市環境局自然環境課の岡田と申します。
 私のほうからは、自治体の立場から見た生物多様性保全の取組及び課題、そして、今後、自然共生サイトにおいて何が求められるかというようなことをお話ししたいと思います。
 神戸市のほうでは、従来からこのような条例・計画・制度などございまして、例えば2017年に生物多様性条例を制定し、独自で、例えば種の保存法からは漏れるけど、神戸市内で重要だと思われるような希少な野生動植物の捕獲等を禁止したり、指定した外来種の野外放逐等を禁止したりしております。
 また、生物多様性地域戦略として、生物多様性神戸プランを策定しておりまして、2011年に策定して、2016年に改定しています。これは地域連携促進法に基づく地域連携保全計画としても位置づけております。
 レッドデータは2010年から2回改定しておりまして、また、額は安いんですけども補助事業として、生物多様性保全活動を行う市民団体等に10万円上限の補助制度や、独自制度として、アカミミガメの捕獲数に応じて最大5万円を補助する制度についても、2016年からやってございます。
 また、身近に見られる動植物の写真や解説を季節ごとに60ページにまとめた「きせつの生きものさがしガイド」というものを毎年改定して、いわゆる市立の小学校の3年生全員に配布して、毎年20校程度の小学校に出前授業を行う、そういったこともやってございます。
 今、新たな取組ということで里山保全の取組なんですけれども、神戸市が所有する放置里山林や、その周辺の民有地を対象として、耕作放棄地を含む棚田が自然共生サイトとして、認定が決定したところです。例えば市の所有林では、明るい森の再生とか、セトウチサンショウウオがすみやすくなるためのため池の再生に向けた、そういった活動を神戸大学とか森林整備ボランティア等と一緒に3年ぐらい前から始めたところでございます。
 また、棚田の周辺の民有地のところでは、市民団体が生物多様性保全のための草刈りとか、ため池整備とか、あと、棚田の耕作等の取組を十数年以上続けています。これが民有地であるのにもかかわらず、地元の理解が一定得られて、民有地である里山も申請できたということにつながってございます。
 また、神戸大学の生態学を研究する研究室が、この場所をもともとこの市民団体から紹介されてフィールドとしており、様々な植物の多様性を維持する、そういう効果等の研究をしておられます。2年前からは学生ボランティア団体が、一部の不耕作地で地権者より畑を借りて耕作して手が入るようになってきたということも出てきております。
 この場所に限らず、神戸市内では様々な里山で様々な主体がその保全活動をやっているということで、この1月に神戸里山SDGs戦略を策定して、戦略を、里山を「知る」、里山を「まもる」、里山活動を「つなぐ・ひろげる」といった三つの戦略を定めて、戦略ごとに事業をまとめて神戸市の取組を市民や企業に知ってもらうためのツールとしても活用しているといったところです。
 外来生物問題についても市民理解を深めることが重要であるということで、去年の8月に恐らく自治体初であろう外来生物問題に特化した常設の展示、啓発拠点として、外来生物展示センターを開設しております。これは、過去のゴミ焼却施設として使用されていたクリーンセンターの遊休スペースを活用しております。まだゴミを集約する機能が残っており、月曜日から金曜日は業務日なので、土曜日と日曜日に一般公開するというようなことをやっており、生きた個体や剥製を見て専門員が解説して、なぜ外来生物が生物多様性の脅威になっているのかとか、そういったことを、駆除がなぜ必要なのかということを考える場として活用しているところです。
 また、ニホンジカについても、神戸市においては恐らく過去には分布していなかったようですが、近年、兵庫県の中央部から次第に南下し、低密度ながら定着するようになってしまっております。特に六甲山というのは貴重な自然観光地であるために、こういうニホンジカの侵入を許した後の捕獲等の実施は極めて困難であるということから、六甲山系におけるシカの侵入、定着を防止するため、そういう侵入路となり得る場所にセンサーカメラをかなりの数を仕掛けて、踏査による痕跡調査等も2018年ぐらいからやっているところでございます。
 あとは、環境DNA調査は結構活用しておりまして、特にレッドリストで要調査種であるもの、例えばヒダサンショウウオであったりとかニホンウナギだったり、そういうものに使っておったり、近年は豊かな海の再生ということで、海域で魚種を調べるような取組を去年から行っております。
 また、自然共生サイトのほうでも活用しておりまして、放置里山林の埋もれかかっているため池でも、希少種であるセトウチサンショウウオが確認されたということで、これを保全できるようなやり方を試験的に整備しようというふうに考えておるところです。
 また、株式会バイオームと連携して、AIにより動植物種、日本のほぼ動植物全種を判定するスマホアプリ「Biome」を活用して、里山の豊かな環境の指標となる生き物とか、神戸市で確認された外来種などを対象に、夏休み期間に市民にこういった調査をしてもらって、いろいろ外来種対策の参考にしているというところでございます。
 自治体による生物多様性保全の意義ということで、我々としてもやはり自治体としてこれにはしっかり取り組んでいかなければいけないというふうに考えています。生物多様性保全への機運が、10年、20年前に比べても格段に高まっていると思いますし、やはり市民や企業の保全活動の支援というのはやはりしていかなければならないと考えております。特に市民団体については、マンパワーとか資金面では活動に限界があるであろうと。最近では大手企業さんを中心にふるさと納税という形で申出を受けることもありますが、やはりマンパワーとか、そういった面で自治体が関わっていくことが重要であろうし、そういった自治体の自然環境系の部署が、地域の生態系とか、地域団体の活動等を把握しているということで、こういった情報をしっかり活用していくのは必要ではないかと考えております。
 また、都市のブランド力向上といいますか、豊かな自然がやっぱり残っておって、これをしっかり守っているというのは、非常にPRできるんではないかなという、そういう面も感じております。
 地域連携促進法と保全活動計画なんですけれども、国のお墨つきをいただけるとか、特例措置を受けられるというメリットがあるんですが、ただ、課題としてちょっと考えておりますのが、計画策定の労力に見合うメリットがない。メリットがないというのは、恐らくそういった盛り上がりといいますか、こういったすごいお墨つきをもらっているんだとか、そういうのがあれば、もっといいのかなと思っています。これは、自然共生サイトにも共通する課題であるかなというふうに考えております。
 地域の活動推進のために必要な施策ということで、やはり市民団体の活動をいかに支援していくか、特に次の世代、大分高齢化しているところが多い一方、市民団体も誰でも入ってきてもいいということはなくて、やはり思考といいますか、考え方が一致するような方が入ってきてほしいというのがあって、そういったマッチングも必要ではないかと考えております。
 あとは、先ほど申し上げたように、民有地での活動、環境整備も、例えば道とか入っていくのもしんどいとか、そういったものの、なかなか行政として民有地に直接支援をするのが難しい点もあるんです。これは課題の一つかなと思っております。
 あとは、実は、これが実は一番早道かなと、思っているんですけど、幼少期の自然観察体験の促進ということで、こういった経験をさせるのも大事かなというので、これも自治体中心に取り組んでいったらどうかというふうに考えています。自然共生サイトについては、団体同士のネットワーキングなんかも面白いかなと、盛り上げるために、いろいろアイデアが出てくるのかなと思っています。
 あとは大学との連携、地域の大学との連携による共同研究とか、神戸市もやっておりますが、そういったことも大事かなと思っております。
 自然共生サイトについてです。先ほど来、ちょっと説明してしまったので、こういう場所で神戸のほうは、ため池でも、こういうかなり希少種が残っている、水草が残っておって、トンボが飛び交ってサンショウウオがいる、いろんなカエルがいるというようなため池から、里山林、こういったものの再生を目指して取り組んでいるところです。
 神戸市としてなぜ認定申請をしたかということですが、先ほどから同じような意見もあったと思うんですけれども、やはり国際的に生物多様性が豊かな場所と認定されるというのは、特に活動団体の方にとって、非常に大きなモチベーションになるし、1回こういうことをしておくと、神戸市もしっかり支援してくれるだろうと、国際的に認められてしまうとやってくれるだろうという思いもあって、結構協力してくれたというのもあります。やはりそういったことで保全活動に弾みがつく、盛り上がりへの期待と、特に市民・企業等からの注目により人材とか、資金確保につながるのではないかというのも期待しております。
期待と課題ということで、ふるさと納税に限らずなんですけれども、やはりこういう特に認められた生物多様性豊かな場所であるというようなことで活動もしっかりやるということであれば、企業等の呼び水となるかなと。特にTNFDと関連した形で関心を持ってもらいたいと。
 あと、課題としては盛り上げる仕組みが必要かなと考えております。例えば、いろんなサイトがあると思うんですけれども、神戸市が今申請している場所はど真ん中といいますか、結構、生物多様性が豊かな場所で、活動団体、大学、学生が入ってがっつりやっている場所であるので、サイトの、例えば性質とか、活動が比較できるような見せ方をしていただけるとありがたいなというふうに考えているところでございます。
 神戸市からは以上でございます。ありがとうございました。
○石井委員長 はい、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、自然共生サイトの認定者、あるいは認定団体への書面ヒアリング、この結果を事務局からお願いいたします。
○事務局(和田) 自然環境計画課の和田と申します。
 私からは9月に取りました自然共生サイト認定者への書面ヒアリングの結果についてご紹介させていただきます。
 生物多様性保全をどう捉えているか、自然共生サイトの活用、そして、課題や期待について聞き取っていますのでご紹介させていただきます。
 まず、ヒアリングの大枠についてご説明いたします。ヒアリングは9月の後半に行いました。限られた期間で、任意のヒアリングだったんですけれども、122者あるうちの86者からお答えをいただくことができました。内訳は半分以上、企業となっておりまして、そのほか地方公共団体ですとか、NPO、教育機関、その他法人と幅広い団体からお答えをいただいたところでございます。
 ヒアリングの結果についてご説明いたします。まず、生物多様性保全の重要性が高まっているところですが、それがチャンスですか、リスクですかというところを聞いてみました。
 その結果、多くの団体の方がチャンスと捉えていまして、リスクも答えてくださった方もいるので、その理由について主なものをご説明いたします。
 まず、企業についてチャンスと捉えている方は、そもそも自分の所有地で自然資本を有していて、その有効な利用の機会になるとか、ESG経営面でアピールになる。また、これまでずっと生物多様性保全の取組も進めてきたので、それを改めて社内外で評価される機会だというご意見もありました。
 一方でリスクとしては、今後管理コストが増大するのではないか、原材料調達が難しくなるのではないか、また、開発がしにくくなるのではないかというご意見がございました。
 地方公共団体からについては、やはり今までもお話がございましたが、企業の投資等も含めて、あとは人的リソースも含めて、そういったものを獲得できるんじゃないかと。または、これまで進めてきた取組をさらに推進するよい機会だという意見がありました。
 その他NPOや教育法人からのご意見ですと、活動の重要性が改めて説明しやすい。企業と地方公共団体の参入が期待できる。一方で、様々な者が、様々な方が生物多様性保全に取り組むことで、一方で科学的知見に基づかない保全手法が望まない結果につながるんじゃないかというご意見もありました。
 次に、ここ数年、生物多様性保全に係る取組の重要性の変化について伺いました。その結果、多くの方々が、その重要性が増してきているとのご意見をいただきました。
 簡単にご説明すると、企業の方々からはTNFDの動きがある、企業の中でも生物多様性というワードを聞く、耳にする機会が増えたという意見がありました。
 地方公共団体の方々も同じように、基本計画で生物多様性のワードが目立つようになったと。事業者からの相談が増えたというお話がありました。
 その他の団体については、企業も自治体も、生物多様性保全への参入が増えて、これまで以上に専門知識を持ったNPOによる支援の重要性が増したというご意見がございました。
 次に、自然共生サイトに認定されたことを今後どういうふうに活用していきたいかということを伺いました。多かったのは、地域に発信して、サイトの価値を知ってもらうと。これまであまり地域で有名じゃなかったけれども、改めてサイトの価値を知ってもらうよい機会だと。
 二つ目も同じようなところですね。三つ目のところも地域貢献、社会貢献というところ。
 あと、企業の方々からはTNFDと環境関係情報の開示に使っていきたいですとか、数は少なかったんですけれども、社内教育として使っていきたいというご意見もございました。また、地方公共団体からは自治体の中のOECMの施策のモデル地として使っていきたいというご意見もございました。
 次に、自然共生サイトとして認定されたところにプラスして、どのようなところを評価すればさらに自然共生サイトの認定を使っていきやすいかということを伺いました。まず、企業の方々のご意見をご説明すると、まず、生物多様性そのものの評価ですね。価値を客観的に評価したりですとか、あとは、行われている管理水準について評価してほしい、あとは、もう少し広域的な目線で生態系ネットワークにどのように貢献しているのかということを評価してほしいとか、自然共生サイト、生物多様性の価値の基準、9つありますけれども、その該当基準についても評価してほしいというご意見がございました。
 生物多様性以外のところについてもご意見がございました。カーボンニュートラルと連動してCO2吸収源としての評価ですとか、生態系サービスの部分、水源涵養、防災、観光、そして地域貢献や環境教育、地域への自然のふれあいの場の提供というところも自然共生サイトのサービスの部分として評価してほしいというご意見がございました。
 三つ目のところ、重ねてになりますが、金融や投資家のような開示側から求められる対応について、その他として、一般の消費者もしっかり分かりやすいような評価手法にしてほしいというご意見もございました。
 次に地方公共団体です。生物多様性の評価については同じところだったんですけれども、保全以外の貢献の部分で企業以外のところをかいつまんでご説明すると、この辺りは企業の方々と同じようなところなんですが、市民協働で管理に取り組んでいるということはもっと評価してほしいですとか、これも広域的な目線ですが、サイトやその周辺の歴史や経緯も含めた保全の意義についても評価してもらえるとありがたいというご意見がございました。
 最後にNPOなどの団体についてご説明いたします。生物多様性の評価については、周辺地域と比較したときの生物多様性保全上の価値、都市の緑地と里山と森林と、周辺と比較することによってどんな価値があるのかというのを評価してほしいですとか、生物多様性以外の貢献ですと、自治体と同じように、地域関係者との連携であるとか、生物多様性に配慮した農林水産業や公園社寺としての価値。また、そこの保全に関わってくる方々の努力ですね。関わる人がどのくらい多いとか、どのくらい管理をしているのかとか、そういったところも評価してもらえればいいんじゃないかというご意見がございました。
 また、そのほかにもナショナルトラストのように、これまで、今後ずっと保全が永続されるという担保の観点から、土地の所有権をしっかり持っているということも評価してもらえばいいんじゃないかとか、あと、企業にもありましたが、一般の人にも分かりやすい評価の手法が必要なんじゃないかというご意見がございました。
 五つ目に、現行の自然共生サイトの制度への要望、期待についてご説明いたします。
 まず、企業についてはもっとPRを頑張れと、自然共生サイトの価値をアピールしてほしいとか、幾つかの企業さんだと、複数のサイトを全国各地に持たれている方がいらっしゃるので、そういったところを一括申請してほしいとか、今後、自然共生サイトが増えていくに当たって、優れた活動が埋没しないように認定の仕方を工夫してほしいとか、長年モニタリングを実施したかったんだけれども、経済的負担が大きくてなかなかできていない部分がある。そのために経済的な助成が必要なんじゃないかとか、申請が結構、専門知識がないと難しいので、担当者のスキルアップについても課題であるというご意見がございました。
 次に地方公共団体です。企業と同じように認知度向上を頑張れというご意見。二つ目はインセンティブの設置・充実を期待したいというご意見がございました。
 その他団体については、優良事例であるとか、ベストプラクティスを公表してほしい。また、人的、経済的支援をさらに期待したいとか、里地・里山の保全ですと、やはり過疎化であったりとか高齢化が最も大きな課題なので、そういったところに手当てできるような人材確保につながる施策を設けてほしいというご意見がございました。
 六つ目、今後、生物多様性保全を推進するために必要な施策について伺いました。ここに書いてあるものが結構幅広くご意見をいただきました。経済的な観点だとインセンティブ付与であるとか、税制優遇。サポートの面ですと、専門家であったりとか、環境省の地方環境事務所による助言や申請の補助のような伴走支援。そして、今、保全している方と、一方で保全活動を支援したい方とのマッチング。また、望ましい保全活動であるとか、手法に関するガイドライン、そういったものの作成とか、お話もありましたが、認定サイト同士のネットワーキングというご意見がございました。そのほか、生物多様性の社会的評価の向上、また、企業の方々からだと自治体への浸透、また、一般の方にも納得してもらえるような、簡単で平易な議論をしてほしいというご意見がございました。
 最後に、保全活動を進めていく上で関連する法令の手続が何かありますかということをお聞きしました。
 三つ個別の法令をご説明すると、国立公園・国定公園の中ですと自然公園法、モニタリング機器の設置であるとか、木竹の伐採について、手続が必要。
 外来生物法ですと、特定外来生物の駆除に係る手続であるとか、個体の処理、生きたまま運搬することが禁止されているというところがございました。
 また、希少種の保護を目的としている種の保存法ですと、捕獲の許可ですとか、保護増殖事業計画がない種の保全活動というのもあるということをお聞きいたしました。
 またそのほか、関係法令や条例についても伺ったところです。
 以上です。
○石井委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、本日は、農水省、それから国交省の方にオブザーバーで参加していただいています。生物多様性保全の全般で結構なんですけれども、取組等について何かございましたら、ご意見を伺いたいと思います。
 それでは、まず、農水省さん、いかがでしょうか。
○農林水産省(古林課長補佐) 農林水産省でございます。ありがとうございます。みどりの食料システム戦略グループの古林でございます。
 先ほど、皆様からいただいたご発表にも農地であったり森林、含まれていたんですけれども、ご承知のとおり、農林水産省は自然に立脚している産業ですので、こうした中でネイチャーポジティブな活動の促進は大変重要と認識しております。
 ちょっと紹介させていただきますと、今現在、弊省で「食料・農業・農村地方法」という私どもの基本的な法律の検証を行っておりまして、その中で環境についてというところでは、これまで農業がやり方によっては環境に負の影響を与えることがあったというのをしっかり認識しまして、環境負荷軽減を図る農業というものを主流化していこうといった方向で議論しています。既に現在も緑の食料システム戦略に基づいて、農薬、化学肥料の低減ですとか、いろんな形での環境負荷活動といったところを具体的に推進・拡大を図っているところですし、こういったことが消費者にも伝わるようにといったことで、その取組の程度を農産物で見える化するといったことも進めております。
 あとは、将来にわたっての農地の利用といった点では、地域で地域計画といって、これまで人の力と呼んでいたものなんですけれども、これを策定いただくといったことを進めております。こうした取組、今回のネイチャーポジティブの検討とも同じ方向と思っておりますので、活動の効果をより深めて広げていくといったことと、また、それぞれ取組、矛盾がないようにといったことで、環境省さんをはじめとしまして、引き続き関係省庁で連携協力させていただきたいと思っておりますので、ご意見・ご指導のほど、どうぞよろしくお願いします。
○石井委員長 はい。どうもありがとうございました。
 では、続きまして国交省さん、いかがでしょうか。
○国土交通省(一丸課長補佐) 国交省の総合政策局環境政策課の一丸と申します。よろしくお願いいたします。
 国交省でも先月9月8日にグリーンインフラ推進戦略2023というものを策定して公表したところでございます。その推進戦略の中でもネイチャーポジティブに資するということで紹介させていただいておりまして、官民両輪となって、グリーンインフラに取り組むことによって、ネイチャーポジティブに資するんですよということを紹介させていただいているところでございます。
 なかなか自治体の方々もグリーンインフラに取り組みたいけども、その目的ですとかがなかなか明確にならないという問題意識があるところでございまして、ネイチャーポジティブの実現に向けてグリーンインフラというものを取り組むことによって、あらゆる課題を解決してくれるんだということで、ネイチャーポジティブとグリーンインフラというものが結びつくように、今、我々も頑張っていろいろと周知活動等を行っておりますので、引き続き、環境省さんをはじめ、連携して推進していければと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
○石井委員長 はい。どうもありがとうございました。
 そうしましたら、ここまでのところで委員の皆さんからご意見、ご質問を受けたいと思います。今回は、キリンホールディングスさん、それからmore treesさん、それから神戸市さん、この3者へのご質問を中心にいただけますと幸いでございます。
 では、先ほどと同じように、会場の皆さんは名札を立てていただき、オンラインの皆さん、チャットで書き込みをしていただければと思います。よろしくお願いします。
 それでは、小泉委員、お願いいたします。
○小泉委員 はい。小泉といいます。ワイルドライフ・マネジメントを専門にしております。
 キリンホールディングスさんと、それからmore treesにお伺いしたいことがあります。
 キリンホールディングスさんですが、私、「環境報告2023」を読ませていただきました。椀子ヴィンヤードだけではなくて山梨県でも大変先進的な取組をされているということを読ませていただきました。
 今回、椀子ヴィンヤードで申請をされたというのは、現在の申請の仕組みが個別申請になっているからでしょうか。もし一括申請という方法が可能になれば、キリンホールディングスさん自身として、例えば山梨のほうも含めて申請するとか、それから上田市のほうでも、ほかのワイン園をされている方々を取り込んで、ヴィンヤードエリアみたいなもので一括申請できるのかなという気がするんですけれど、その辺、どうお考えかというのが一点と、農研機構と協働されているわけですけれども、何かと分かりにくい生物多様性というものを、こういう専門家が入っていただくことで見える化されるというメリットが大きいと思いますが、農研機構と研究協定か何かを結ばれて、比較的長期間、お互いギブ・アンド・テイクというような感じで進めていくというふうな仕組みになっているんでしょうか。
 それから、more treesさんなんですが、私、専門がシカ対策なんで、プレゼンを見せていただいて、恐らくかなり苦労されているのではないかというふうに思います。現在、民間企業が独自にシカの管理計画を立てて実行するという仕組みにはなっていないんですが、やはり森林の保全や修復を考えていく上では、民間が独自に計画を立てて、侵入してくるシカを独自の考え方で取り除いてというような仕組みが必要かなとも思うんですが、その辺、いかがお考えでしょうか。
 以上です。
○石井委員長 はい。それでは、お答えお願いします。
○キリンホールディングス(藤原氏) ご質問いただいた件、まとめて回答させていただきます。
 農研機構さんとは、2014年から共同研究という形でやらせていただいております。3年、5年といった中期の契約を更新しながら方向性を決めていくという形をしております。その関係もありまして、実は、椀子だけではなく、山梨県にあるシャトー・メルシャンの複数のヴィンヤードについても、既に調査は実施済みです。
 今回、なぜ椀子だけ先にやったのかと言いますと、やはり最大の我々のハードルは地権者の合意を得るというところだからでございます。150名の方から合意を得るというのは大変な作業でございまして、我々だけではなくて、例えば上田市であったりとか、農業関係者の皆さんのご協力を得ながらやったということでございます。別のヴィンヤードについても、もちろん申請を考えておりますけれども、ほとんどの場所には地権者の方がおられますので、今後一つ一つ解決する必要があります。そこがあって個別に申請をさせていただいているというところでございます。以上でございます。
○石井委員長 はい。では、more treesさん、お願いします。
○more trees(岸氏) はい。ありがとうございます。
 ご認識のとおり、獣害対策にはかなり手を煩っておりまして、必ず植えた後、そのまま植えればいいということではなくて、必ずセットで獣害対策、ネットの設置とかを施しておるところです。
 正直、これが絶対にいいというのがまだ確立はできておらず、各地域、手法というのは様々ございます。簡単に言うと3通り大きくあるんですけども、ゾーンディフェンスといって、それこそ1ヘクタール、2ヘクタールという規模で大きく囲うという手法ですとか、パッチディフェンスといって、例えば10m画とかで比較的小さい枠で覆うというパターンと、あとは、もう単木で1本1本、ネットを設置していくという手法、様々あるんですけれども、もう本当にここは各地域でシカもいろいろと学んで、単木で最初守れていたものが守れなくなってしまったりとかという形がありますので、もうここは対処処方的にやっていくしかないのかなと思っています。
 今後の対策としては、その防護柵を設置するというのは、いわゆる守りなわけですよね。なので攻め、要するに駆除するというところもやっていく必要性を感じております。これも一自治体がやったとしても、その町からいなくなるだけで、別のところに避難をシカはしてしまいますので、これを全国的に進めていく必要があるのかなというふうに感じています。
○石井委員長 はい。どうもありがとうございました。
 では続きまして、藤田委員、お願いします。
○藤田委員 はい、ありがとうございます。ちょっと今日は11時15分ぐらいに退室しなければいけないので、先に意見を言わせていただきます。
 キリンとmore treesとか神戸市さんへのコメントも含めてですけども、コメントというよりもこの後の論点に絡むようなお話になるかと思います。
 私からは、今回のOECM以外の場所、OECMに相当するような場所の法制化をしていくという、このことは大変賛成しています。その際に、ぜひ先ほどのキリンや皆さんの事例、あるいは、その後のいろんなOECM認定を受けられたところのコメントにもありましたけど、2点、ぜひご検討いただきたいと思っています。
 一つは、やはり皆さんから出ていたこの成果を、ネイチャーポジティブの定量化みたいなことを示していく必要があると思います。ただサイト数が増えました、認定を受けた団体数が増えましたというだけでは、日本のネイチャーポジティブが増えていったということを国際的にアピールしたり、あるいは企業さんとか、自治体さんがそれをアピールするのにはちょっと不十分かなと思っています。例えば絶滅リスクの減少とか、生息数とか、あるいは、先ほど神戸市さんからも出ていましたが、何か測定の指標、環境DNA調査みたいな何か評価手法の標準化みたいなものを日本としてはこういうふうなものでやっていきますというふうにして、ある意味、標準化手法みたいなものを示して、それでどれだけ増えたかというようなことを出していく必要があるのではないか、というのが1点です。
 それから、もう一点は、インセンティブなんですけども、キリンの藤原さんも、例えばCO2吸収量に換算してというようなこともおっしゃっていたと思うんですが、Jブルークレジットみたいなものですと、カーボンだけれども、特記事項として生物多様性のことも書けるみたいになっています。例えば、海だけではなくて土地のほうも、Jクレジットのほうに何か書いていくような、CO2吸収量だけどプラス生物多様性の特記事項として書いていくようなことができるというようなことも一つあるのかもしれないなと思いました。
 もう一つは、自治体へのインセンティブについてです。やっぱり先ほど神戸市さんからブランド力が向上したとかと、お話がありましたけど、これ、神戸市さんだからなんかすごくやれた部分ってあると思います。もっと名もない小さな自治体がこういうサイトに認定されたことのメリットって何なのかとか、それに力を入れて人材や経済、お金をつけていくことのメリットをやはり感じにくいというところがあると思います。例えばですけど、キリンさんがやっていたSDGsツアーがすごく今人気だったというお話ありました。体力のある企業さんや自治体であれば、こういうSDGsツアーというのを自力で計画できるんでしょうけれども、そういったことに対する国の支援とか補助、例えばこういうサイトに認定されると、文科省からSDGsツアーの何か補助金が出て、生物多様性の環境教育のツアーが組みやすくなるとか、あるいは企業とのマッチングをしてもらえるとか、地域にとっても何か価値を認識しやすいような制度というものもぜひ考えていただきたいなというふうに思います。もちろん、今、OECMで検討していらっしゃる支援証明書ですか、こちらも大変有効だというふうに感じています。
 私からは以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。
 そうしましたら、コメントを伺ったということにさせていただきたいと思います。
 では、土屋委員、お願いいたします。
○土屋委員 はい、土屋です。
  後で意見のほうでも言おうと思っていたのですが、私は、基礎自治体としての市町村と連携というのはすごく重要だというふうに認識していまして、それを何とかこれから促進していくような方策を取らないといけないのではないかと思っています。
 それを踏まえて、キリンさんとmore treesさんには、それぞれサイトのところでどのように市町村と連携されているのか、連携に当たってのいろんな難しいところなど、ありましたらお聞かせいただきたい。
 神戸市さんは、自ら市町村ですが、今回認定された自然共生サイト122か所を見ていると、意外というか、自治体が少ないと思っています。これは、自治体がやろうとすると何か問題点、課題、乗り越えなきゃいけないところがあるのではないか。これは神戸市さんの立場というよりは、ほかの市町村の立場で言うと、神戸市さんは乗り越えられたけど、ほかのところはなかなか難しいかなと思われるような課題等がもしもありましたらお聞かせ願いたいところです。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 では森田委員、お願いします。
○森田委員 ありがとうございます。森林総研の森田です。
 私のほうからは一つコメントと、民間の方々に質問と、最後に環境省のほうに質問したいと思います。
 まずは、ご発表ありがとうございました。皆さんの事例の中で今後の議論、ネイチャーポジティブの取組にインセンティブをどうやって与えるかということに関しても様々な示唆があったと思います。
 キリンホールディングスさんのお話からは、科学的エビデンスが非常に重要である一方、科学的にきっちりやるとなると、新しく取り組む人たちにはなかなか難しいということと、活動を持続的に行うことの難しさを感じました。
more treesさんに関しては、生物多様性の移行途上の取組を、いかに応援するかというところ、これは脱炭素の移行でも同じような話があって、その中では、しっかり成果が出るか分からないものに先にお金を出すことでグリーンウォッシュにつながってしまうのではないかという懸念もあります。そういった中で、本当に生物多様性を守ることにつながるという、しっかりとした筋道をつけた移行途上のものを応援する仕組みというものも考える必要があるのかと思いました。
 また、神戸市さんに関しては、神戸市の取組は、企業と市民も巻き込んだ、いろいろなステークホルダーを巻き込んだ先進的な事例だと思いました。
 キリンホールディングスさんとmore treesさんに質問です。いろいろな自然共生サイトをぽつぽつと幾つか実施するだけではなくて、これからもっと面として広げていく中では、横のつながりが非常に重要となってくると思います。これまで長年いろいろな経験の蓄積があって、生物多様性の評価であったり、ステークホルダーの参画のモデルとか、いろいろなことを試行錯誤されてやってこられたりしたと思います。ただ、苦労して考えられた取組をほかの企業の人たちに、はいどうぞと全部、提示するというのは民間の立場から、結構難しいと思うのですが、どういったインセンティブがあれば、そういった経験や取組を共有できるのか、どこまで共有できるのということを少しお聞かせいただければと思います。
 最後に、環境省さんへの質問なのですけれども、冒頭に、小林補佐のほうからネイチャーポジティブ経済の取りまとめとのリンクの話がちらっとあり、和田さんのほうからも経済的インセンティブについて少し広めのお話がありました。この委員会で話すような自然共生サイトなどをベースとした経済的インセンティブの話と、このネイチャーポジティブ経済の話との関係性、今日のキリンホールディングスさんやmore treesさんも、サプライチェーンの関係でも生物多様性に関していろいろ取組をされていると思うのですが、そういった観点にリンクした経済的インセンティブの話をどこまでしていくのかということを教えていただければと思います。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 では、続きまして、勢一委員、お願いします。
○勢一委員 はい。西南学院大学の勢一です。
 今日は貴重なお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。
 それぞれ少しずつ質問させてください。まず、キリンホールディングスさんで地権者の合意を取り付けるのが大変だし、しかし重要だというご指摘、非常に大切な論点だと思いました。
 中・長期的な保全を担保していくためには、地権者に中・長期的に協力をしていただくことが必要になろうかと思います。確かに、今の段階では世界目標への貢献ということで賛同いただいたということですけれども、それをより長く協力いただくためには、地権者にとっても何らかのインセンティブが必要ではないかと感じているのですが、この点について何かお考えがあったら教えてください。
 もう一点、中・長期的な担保のために、価値の見える化が必要であるというご指摘をいただいて、その点も非常に重要だと思いました。法的な認定制度は、一つの価値の見える化の方法だとは思うのですが、特に既存の知名度のある民間の認証制度があるところ、こちらの活用とは違う部分がどこかあるかについて、現時点でのお考えがあったら教えていただきたいと思います。
 次、more treesさんの、非常に多様性のある森づくり、すばらしい活動をされているなというのを改めて今回教えていただきました。
 日本の自治体との連携というのは、既にご質問がありましたけど、私も非常に大事だと思っています。林業の成り立たない地域については、自治体も、今、森林環境譲与税を活用して、いろいろ取組をしているんですけれども、そのような資金をうまく自治体と活用している取組は、実際、現場でこれまでやっておられるんでしょうか、取り組み例があったら教えてください。
 あともう一点、ご指摘いただいた途上にある活動の促進、これも非常に重要だと思いました。準自然共生サイトとかプレ自然共生サイトというようなご提案をいただきました。もし仮にこのような認定の仕組みがバリエーションとしてあった場合に、認定されたらどのようなメリットがありそうかというようなところ、また、認定されたことによって何らかの特定の措置とか支援というようなものがあると便利だなというようなバリエーションがあったら、その点も教えていただければと思います。
 最後、神戸市さんです。自治体の取組を非常に積極的にやっていただいていて心強いなと思いました。
 神戸市さんには既存の制度との関係について少し教えていただきたいと思います。ご報告の中に、生物多様性の地域連携促進法に基づく活動計画、これを取り組んでいるんだけれども、計画策定労力に見合うメリットがないというご指摘がありました。どのようなものがあれば、策定に見合うメリットが生じるとお考え、お感じになられますでしょうか。
 また、新たな認定制度ができた場合には、この今行っている活動計画のものと何らか違ってくるような部分はあり得るんでしょうかというところ、このあたり、自治体の制度を見ている側として何かお気づきの点があったら教えていただきたいと思います。
 あともう一点、自治体との関わりとしては、民間の活動を認定する制度ができた場合、それに対して、自治体としてどのような関わり合い方が可能になるでしょうか。直接活動を支援するというのはなかなか難しい部分がこれまであったかと思いますけれども、このあたりの期待感みたいなことをもう少しお知らせいただければと思います。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。
 それでは、続いて中静委員、お願いいたします。
○中静委員 はい。中静です。
 more treesさんに質問です。私も途上にある生態系に対して何らかのシステムを作っていくというのはとても賛成ですが、その場合に、例えば、今、キハダを植えているとか、イスノキを植えているとか、ということでしたが、最終的にどういう森林の姿を目指していらっしゃるのか、例えば、そこで林業をされようと思っているのか、あるいは、最終的に持続可能性の高いやり方でそれを維持していこうとしているのかで、結構、話が違うなというふうに思っています。その辺をどう考えるかということについてのご意見を伺いたいなと思いました。
 それから、神戸市さんにもご質問があって、今日、ご紹介になったのは市民活動としての里山ということでしたが、先ほど国交省さんが説明されたようなグリーンインフラを意識した共生サイトというのも、僕は十分あると思っています。神戸市さんが六甲山の周辺でこれまで営々としてやられてこられた緑化についても、大きな生態系サービスをもたらしていますから、そういうところでの共生サイトというのもあり得るんじゃないかと思ってますが、その辺に対するお考えを聞かせてください。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 それでは、最後に角谷委員、お願いいたします。
○角谷委員 国立環境研究所の角谷です。
 私も中静委員と同様の質問でmore treesさんに対してですが、私も、再生途上の地域を対象にする場合には準サイトとかプレサイトといった形で、自然共生サイトとは別の仕組みを想定するのは、非常に重要だなと思いました。現場で取組をされている感想でも構わないので教えていただきたいのですが、果たして自然共生サイトで評価されるような軸を目指しているのか、あるいは、自然再生を始めたということで、別の評価軸を持つような仕組みが必要と考えているのか、どういった想定でそういうご意見を言われていたかという点を教えていただければと思いました。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。
 それでは、キリンホールデイングスさんから順番にお願いします。
○キリンホールディングス(藤原氏) はい。土屋様と森田様のご質問に回答いたします。まず、共通してあるのが、今回の取組みは、日本ワインのためヴィンヤードということです。日本ワインのヴィンヤードだからできているというところが、実はございます。というのは、日本の中でワイン文化を根づかせるということで、100年ぐらいやってきているわけですけれども、いわゆる契約農家さんを中心に進めておりまして、ここと一緒になって障害を越えてきたという歴史がございます。例えば、桔梗ヶ原のほうで、本格的なワインのためのブドウ栽培を始めたら、寒さに耐え切れなくて苗が全部死んでしまった、いうような困難を共に乗り越えてやってきたということがございまして、メルシャンの場合は、必ず地域と一緒にやっていくというところが根づいております。これがベースにあるというところが、非常に大きいところかなというふうに思っております。
 土屋様のご質問についてご回答いたします。二つございます。
 一つは、遊休荒廃地を活用してシャトーメルシャンの椀子ヴィンヤードを作る前に、実は地権者様、当時は100名様ぐらいでしたけれども、が、上田市と一緒に陣馬台地研究委員会という団体をつくっておられまして、活用していただくところを探しておられました。そことメルシャンが出会ってブドウ畑に再生する、という形になっておりますので、地権者様が陣馬台地研究委員会という形で一つに纏まっていただいているというところが、一つ、大きいポイントになっているというふうに思っております。
 もう一つは、地域でやっていくということで、メルシャン、キリンホールディングスと上田市の3者で協定を結んでおりまして、地域の振興というものを、一緒になってやっております。こういった二つのベースを基にして、取組を進めてきたという形になっております。
 森田様のご質問についてお答えいたしますと、これも実は、ワインの歴史の影響がございます。ビール業界では、どのビール会社の人間も他社のビールは絶対飲まない、という人が多いんですけれども、ワイン業界では他社のワインを飲みます。つまりワインというのは、ワイン文化を広めていこうという、世界中共通の考え方がございます。今回は上田市ですけれども、山梨県の勝沼では、メルシャンが世界に打っていけるようなワインメーカーになるためには「シャトーメルシャン」だけでは難しい。ワインの場合は、地域名で打ち出していきますので、勝沼全体のワインが向上して、勝沼の名前で世界に売っていけるようにしなきゃいけないということで、実はシャトーメルシャンが持っている技術のほとんどを、勝沼の他のワイナリーに共有してきております。こういった歴史もございますので、椀子ヴィンヤードの場合も、長野にはワインバレー構想というのがございますので、そこで新たにヴィンヤードをやろうとしていらっしゃる方を受け入れて研修をしたりもしております。
 こういう背景もあり、農研機構の先生方とは始めた時から合意をしておりますけれども、生態系調査の成果は、多くのヴィンヤードにぜひ共有をしていきたいというふうに思っています。今日の説明資料には入れておりませんでしたが、そういう知見を共有していくところについては、実は支援をしていただくと非常にありがたいなと思っております。つまり、日本のヴィンヤードはこれだけ生態系に対して良い。しかも、二次的自然というものが非常に重要であるということを示すのに、ヴィンヤードは非常に良い例じゃないかなというふうに思っておりますので、これについては、ご支援をいただければなというふうに思っているところでございます。
 地権者の皆様へのインセンティブについては、非常に悩ましいところでございます。今、言いましたように、自然共生サイトであることに誇りを持っていただくというのがメインだと思っております。例えば、Jクレジットみたいな形で、畑で削減した分を価値に換算するということも可能ではあるんですけども、我々も畑全体でGHG削減効果を訴える必要がある中で、それを売ってしまうと価値がなくなってしまうので、非常に悩ましいところがございます。
 以上でございます。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 それでは、more treesさん、お願いします。
○more trees(岸氏) はい。ありがとうございます。
 まず、土屋さんからご質問いただいた、地方自治体とどう連携していくか、または困難な点はというところですけども、森林の所有が自治体にあるのか、もしくは個人の方にあるのかというところでも、連携の仕方が変わってきます。例えば自治体が所有していた場合は、もちろん所有者でありますので、どのように森づくりをしていくのかという計画の部分ですとか、あとそこから派生して、企業さんが実際に現地を見たいとか、その地域を知りたいということで現地に赴くケースも多くありますので、そういった関係人口をつくるという観点からも、地方自治体の皆様にはご協力をいただいているところでございます。
 困難な点というところで言いますと、特に、皆伐されている土地はたくさんあるという説明をさせていただきましたが、実は、その土地の整理があまりしっかりとできていないというところがございます。じゃあ、広葉樹に適した土地はありますかと聞くと、実は、あまり出てこないんですよね。なので、そういったところのゾーニングとか、ここは経済として回していこう、ここは広葉樹に転換してもいいよねといったところがしっかりと判別できると、非常にやりやすくなるかなと思っています。
 森田さんからご質問いただいた、経済的なインセンティブがあれば、民間と共有できるかという点につきまして、経済的な観点からいいますと、先ほどお話もあったとおり、Jクレジットのような形で、生物多様性を評価して、それをクレジット化するような制度があってもいいのかな、もしくは既存のJクレジット制度に対して、生物多様性の評価も付与するという手法もあるかなと思います。その辺、いろいろと制度が多様化してしまうと、ダブルスタンダードになってしまったりとか、ダブルカウントになってしまったりという懸念もありますので、その辺は、検討していく必要があるのかなと思っております。
 あと、民間の企業さん、特に巻き込むには、単純に自然共生サイトに認定されましたというのも、もちろんメリットではありますが、プラスアルファでより上を目指していこうということで、例えばSランク、Aランク、Bランクみたいな感じで評価を分けるですとか、もしくは、脱炭素の面で言いますと、脱炭素へチャレンジということで評価制度がありますので、そういった評価制度があると、企業さんのモチベーションにもつながるかなと思っております。
 あと、勢一さんからご質問いただいた、森林環境譲与税を活用した事例があるかという点につきましては、実際の森林のサイトに対しての森づくりについては、最大で68%の補助金が出ます。そのため、その補助裏の部分を企業さんにご負担いただいて、森づくりをしているというのが基本になっています。もちろん補助金が得られなかったら、全額を負担というパターンもありますが、これまでは森林環境譲与税をそこに使ったという事例はほとんどありません。それよりも、例えば、それに関わる苗木の生産の部分で森林環境譲与税を使ったりとか、それこそゾーニングのところで、我々は関わっていないんですけれども、自治体独自に活用しているというような事例はあります。
 あと、プレ自然共生サイトのような制度があった場合のメリットと、またそれにひもづいた補助はということなんですけれども、これもう、まさに企業さんにとっては、やはり、モチベーションにつながるというのが一番のメリットになるのかなと思っております。
 どのような補助があるとよいかというところで言うと、やはり生物多様性に寄与するまでの10年間を、より認知度を高めるために、先ほどありましたけれども、現地にお連れするツアーとかを開催する、モチベーションをさらに高めるために、そういったところに補助をつけていただくとか、認知拡大に向けた補助をつけていただくというのは、非常に意義があるかなと思っております。
 中静さんからご質問いただいた、森林の最終的な活用方法という点につきましては、基本的には、環境に重きを置いて、現状は植林をしております。ただ、経済的な面を決して諦めたわけではなくて、将来的に択伐のような形で、例えば、今だったらミズナラが需要があるから、ミズナラをちょっと択伐しようかという形で、経済的に回していくということがあってもいいのかなと思っています。これ要するに、スギ、ヒノキ、今、ほとんど植えられているわけですけども、スギ、ヒノキそれらの財価が下がってしまうと、山全体の価値が下がってしまうわけですけれども、その選択肢を増やすということにもつながるのかなとは思っております。
 角谷さんからご質問いただいた、プレのような評価、どのような評価を求めているかというところですけども、こちら評価軸としては、基本的にプレだろうとそうじゃなかろうと、一緒でいいのかなと思っています。ただ、将来的になかなか予測がつかない部分を評価するものになりますので、内容の部分については、もうちょっと不確実性が高くなってしまいますので、そこをどうまとめていくかというのを考えていく必要があるかなと思っています。
 以上です。
○石井委員長 はい。どうもありがとうございました。
 それでは、神戸市さんお願いします。
○神戸市(岡田氏) まず土屋委員からいただいたOECM、自然共生サイトに申請する自治体、少ないのではないかという点については、まず一つは、そこまでまだ知られていないというのが一つあるのかなと。分かっていても、言葉は知っていても、内容が分かっていないというのが一つ。あとはやっぱり、里山の話で言いますと、ほとんどが民有地ということで、仮にそういったいい場所があっても、そもそも活動団体がいるのかどうかという問題はあるんですけども、地権者の方に、こういうことをやりたいといっても、そんなことに労力を使うよりも、もう少し地元の利益になるようなことをやってほしいという、そういう話に往々にしてなるので、心理的に、なかなかしんどい面もあってですね。だから、この自然共生サイトなり、こういう生物多様性の盛り上がりが、今、どんどん高まっていると思いますので、そういうのが出てきたら、まあ、いけるようになるのかなということは思います。ただ、今、里山なんか、どんどんジャングル化していっていますので、早くやらなければいけないというジレンマもあるというのは思います。
 また、勢一委員からいただいた、既存の制度との地域連携促進法の活動計画の話なんですけども、なかなか正直言って、メリットがあるという、あまり認識をされていないというのが正直なところです。私も何年か前に着任して、つい最近、自然共生でやっている活動ってそのような活動計画に位置づけられていたんだというのを知ったところです。ですので、新たに認定制度ができたら、今の制度はどうなるかという話はあるんですけれども、やはり、自然共生サイト、OECMにつながって世界で盛り上がっていく、また認定されるという、そういう認知度が高まっていくという期待感もあるし、ここ数年で、その期待感や、重要性に対する関心が高まっているところ、今、期待しているところです。
 民間の認定制度なんかができたら、やはり、まずそこに活動している市民団体の方のモチベーションにつなげて、幾らか金銭的にインセンティブもあればいいと思うんですけれども、まずそこからかなというふうな気はします。
 あと、中静委員からいただいたグリーンインフラ、六甲山の話については、国立公園にかかっているところでもあります。ちょっと話がずれるかもしれないんですけど、緑化とかそういう話については、今、特に農村地域で、ため池がどんどん使われなくなって、廃止するようなところも増えています。一部を、たしか50センチまで水を残しておけば、廃止として見てもらえるということで、そのような自然系の耕作放棄地でのビオトープといいますか、そういったものに活用しようかという話もあります。そのような地域では、例えばコウノトリがやってくるような場所があって、地域としても、そのような生き物が来るようになるのであれば、そういう場所を、無農薬の農法にするとか、在来の動植物種がいるような、そういうビオトープ的なため池にしてはどうかみたいな話もあったりはします。まだ実現はしていないんですけれども。答えにはなってないかもしれないですけど、以上です。
○石井委員長 はい。どうもありがとうございました。
 そうしましたら、キリンホールディングスさん、more treesさん、神戸市さん、どうもありがとうございました。
 では、続きまして議事の3でございます。「活動促進に向けた論点」についてということで、まず事務局からご説明をお願いします。小林補佐お願いします。
○小林補佐 小林です。先ほど、キリンさん、more treesさん、神戸市さんの話、質疑応答で見えてきた実態、ニーズ、課題、それから書面ヒアリングの結果、農水省さん、国交省さんとの連携強化、こういったことを踏まえて、この小委員会のスコープである、場所とひもづいた民間等による自主的な取組を、認定という手法によって法制化する。これを進めていく上で、今日、論点を5つほどお持ちしました。
 まず論点1、国による認定について、国が認定するスキームが効果的かどうかです。
 現行の自然共生サイト、環境大臣が認定する仕組みです。国全体としての実施状況、その結果の一元的な把握、さらに国際的な信頼性の確保や統一的な基準での客観的な枠組みという観点からも、事務局としては、国が認定するスキームが効果的ではないかと考えておりますが、これについてのご指摘、ご意見をいただければというのが論点1です。
 続いて、論点2、認定対象の範囲や認定基準をどのようにすべきかです。先ほどご指摘いただいたご意見にもありましたように、現状、豊かな場所だけでなくて、今後、生態系を回復していくような場所とか、新たな緑地を創出していくような、現在から未来に向けての取組も、同様に対象にすべきではないか。また、そうなってくると、国土全体、様々な場所において、生物多様性の保全をいろいろな目的のために進めていくことが重要になってきます。生態系タイプや場の状況に応じて、必要となる活動の内容は異なってくると考えておりますので、活動のあるべき姿を整理していくことが必要ではないかと考えております。この辺りについてのご指摘、ご意見いただきたいというのが論点2です。
 論点3は、促進的な手法を中心として、活動の継続性や質の担保を図るためにはどういった措置が効果的かです。例えば、更新時の確認の観点、それから国や専門家による助言、伴走支援、また、見える化できるようなシステムでの情報発信、いろんなそういうサポート的な観点が必要かなとは考えておりますが、この点いかがかどうかというのが論点3です。
 論点4、関連施策との連携をどのように進めるべきかです。例えば、生物多様性の施策としては、自然公園、希少種保全、自然再生、鳥獣管理、外来生物などありますが、こういった施策とうまく連携することで、保全効果を高めることがどうしたらできるかどうか。また、活動を促進する法としては、現行、生物多様性の地域連携促進法がございます。こちらは市町村がNPOなどと連携しながら、市町村が計画を策定するというものです。一方で、個別の企業による活動が進んでいる中で、このような既存施策とどう連携するか。また、生物多様性の保全、そこから生まれてくるような地域の活性化、地域循環共生圏、地球温暖化、サーキュラーエコノミー、こういった各種施策との連携をどうすべきか。また、多様性保全だけでなくて、それが有するほかの目的、防災・機能、そういったところとの両立をどう図っていくか。こういう意味での連携のあるべき姿についてが論点4です。
 論点5、インセンティブを含めた活動を促進するための方策です。別途、経済的インセンティブ検討会でもいろいろ議論を進めているところですが、TNFD、手続的な観点からも、どのような観点で申請認定を促し、活動を促進するということが効果的かどうか、ご指摘いただければと思っています。
 以上、事務局からは、論点を五つ提示させていただきます。よろしくお願いいたします。
○石井委員長 はい、ありがとうございました。
 ということで、論点が五つ、提示されております。委員の皆さんには論点1から5のいずれに対するご質問か、ご意見か分かるようにご発言をお願いしたいと思います。
 では、まず浅野委員、お願いいたします。
○浅野委員 論点の1と2、4ですかね、あたりにかかってくるかと思うんですけれども、国が認定するという基本的な仕組みについて、これはこれでいいかといます。一方、自治体をどの程度までこの全体の仕組みの中に関わらせるのかというところについては、私、小山市の市長をやっておりますけれども、あくまでも、その認定を申請する側だけの立場で考えればいいのか、それともこの仕組みの中で、ある意味、国と一緒に、民間からの認定申請を促進するような立場を取るべきなのかというところが、ちょっと見えてこないのかなというところがあります。このネイチャーポジティブというのは、基本的に、従来やってきた、点としての保全というものとは全く違う、面的な保全の問題だと思うんですよね。そうすると、サイトの数でいったときに、どの程度のものがあればネイチャーポジティブが実現できるんだろうといったときに、1,700自治体あって、各自治体1か所ずつやればネイチャーポジティブが実現するのかといったら、決してそんなことではなくて、多分もう、小山市で自然共生サイト候補地を考えたときに、やはり、8つとか10とかというようなぐらいで、候補地を考えるわけですけれども、その中から自然共生サイトの場合であれば、当然、1、2か所、指定を目指すということになるんですが。ネイチャーポジティブということで、今まで損失していたものを反転させるということになると、恐らく、小山市で考えている候補地、8つとか10とかというものを、全部その認定していくぐらいにならないと、ネイチャーポジティブは実現できないんだろうと考えると、万単位の話になってきてしまうわけです。そうすると、あくまでも点としての、そのサイトを中心とした仕組みがいいのか、それとも、ある意味、そのサイトを幾つか抱えるような、面的なものとして、認定を考えたほうがいいのかという、やっぱり根本的な問題もあるのかなと思います。そして、面的なものを考えたときに、実情を一番知っているのは基礎的自治体ですから、その基礎的自治体のほうで、やはりネイチャーポジティブを実現するために、この程度のことはやんなきゃなんないんだというものを、自治体のほうで、まずは基本的に持ってもらった上で、民間に頑張ってもらうという仕組みにしていかないと、民間だけということであると、非常に大企業が積極的にやるところはいいんですけれども、地方の都市で、民間が率先して、生物多様性で私たちこういうことがやりたいんで、ぜひ行政に支援してもらいたいというところが、どれだけあるだろうかと考えますと、例えば小山市の場合であれば、やはり小山市のほうが話を持ちかけていかない限り、なかなか手を挙げてくれないんじゃないのかなという感じを持っています。そのあたりの、国の認定制度ではありながらも、どれだけ面的保全をするのか。そして、その自治体をどれほど関与させるのか。先ほどの論点4のところで、生物多様性地域連携促進法に基づく地域でというのが、17ですよね。ですから17の地域で連携促進をやっていても、とてもネイチャーポジティブには程遠いわけで、全国の自治体の8割ぐらいが連携促進していかなきゃいけないぐらいになってくると、やっぱり、今までの取組とは、桁違いに量的な面も拡充させないと、難しいのかなと考えております。
 今回の立法でどこまで盛り込めるかは別にしても、将来的にはそこまでのことをカバーしていかないと、ネイチャーポジティブというのはなかなか難しいんだという、その前提の中で、今回の法制度でどこまで整えるのか、整備するのかということを、やはり基本的に議論しておくべきなのかなと思います。
○石井委員長 はい。どうもありがとうございました。
 それでは、今回もまとめて、まず、ご意見、ご質問を伺います。土屋委員、お願いします。
○土屋委員 はい。今、浅野委員からのご発言、ご意見に、非常にうんうんうなずていたところです。先ほども質問のほうで、市町村、基礎自治体の関与が非常に重要だということはお話したところなんですが、それは裏返せば、非常になかなか今の状況では、市町村が関わっていくのは大変だということでもあるわけです。論点3に関わって、その辺のところを、この取組の中で何とか工夫していかないと、おっしゃったように、かなり点的な企業等の取組だけに終わってしまう可能性があって、それはそれでも、少しは進歩はしているわけですけども、やはり面的に進めていく必要があり、これからネイチャーポジティブをやっていくためには、市区町村が、しっかり取り組めるようなサポートを、これは財政面だけではなくて、人的な支援、もしくは専門性の支援、そのような伴走支援が、様々な形で必要なんじゃないかというのが、まず言いたかったことの大きいところです。
 あと、論点1および4に関連して、国の認定についてなのですが、自然共生サイトをひとまず環境省が認定するということには賛成なのですけれども、私は実は、今回議論している法制度については共管にすべきだと思っています。環境省だけではなくて、今日もお話があった国交省や農水省、それから場合によってはほかの省も含めて、共管にするということによって、失礼ながら、環境省は後発のこともあって、様々な権限の面で、やっぱり限界がある部分があって、特に土地を監督する官庁が入るか入らないかというのは、かなり大きいと思います。その辺のところを、何とか乗り越えていただきたいと思います。環境省の場合、私は一ついい例があると思っていまして、エコツーリズム推進法をつくったときに、あれは4省共管ですよね。ですから、国交省と、それから農水省と、それから文科省も入っているのかな。あのような形を、ある意味で言うと英断でつくられたという前例があるわけで、そういったことを今回もやるべきではないかと思っています。
 あと、私以外にも、森林に関係した委員の方は何人かいらっしゃるのですけれども、やはり森林地域を何とか巻き込むということは非常に重要で、林野庁のほうでもいろいろ検討されているようなんですけど、まだ少し、環境省がどう出るのか分からないというところで、待機しているという状態があると思うんですね。やはり、この辺のところを少し突破して、森林地域を入れることが必要かと思っているのですが、そのときに実は、例えば制度でしたら、森林経営計画制度の特認のような形でやっていくということがありうるのですけども、モニタリングがかなり大変そうで、つまり、モニタリングというのは、アウトカムを評価するということになるのですけども、より簡単なアウトプット、つまり事業量で、ある程度評価しちゃうということができると、かなり楽になるのかなと思っていまして、その辺のところの検討ができればいいかなと思っています。もう長くなりましたので、おしまいにします。
 以上です。
○石井委員長 はい。ご協力ありがとうございます。
 続きまして、山野委員、お願いします。
○山野委員 はい。ありがとうございます。
 4と、あと2に関連するところなんですけども、2で、活動を広げて、これからのところも入れていくということは、私も非常に賛成です。
 そうしたときに、論点4との絡みでは、今、論点4は、何となくシナジーのある施策という観点で書かれているように思うんですが、例えば何か新たなことをやりたくても、何らかの計画、例えば国土利用計画とかほかの規制にかかってできないみたいな、コンフリクトというと、ちょっと言葉がきついですけど、そういう調整を図っていかないといけない施策もあると思うんですね。ですので、そういった観点もしっかり入れていただいて、シナジーだけじゃなくて、コンフリクトも解消するような方向性を見せていただきたいということと、それには、やっぱり、これは全体、空間計画ですので、どこの土地がどういう規制がかかっているかというのを、しっかり可視化することが必要と思っています。そういった意味で、先ほどの国土利用計画ですと、国交省さんがやられているLUCKYというデータベースがあったりしますので、やっぱりデータ連携をしっかりして、そういったエリアベースの活動をもっと推進するような、やりやすくなるようなことを考えていただければなと思っております。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 勢一委員、お願いします。
○勢一委員 はい。ありがとうございます。勢一です。
 まず論点1に関して、そもそも国が認定を与える目的はどこなのかというところを、クリアにする必要があるだろうと思います。場所にひもづいた民間等の活動の認定ということですけれども、特定の活動が一定範囲の生物多様性の一定の水準アップに結びつくわけではないので、ここのロジックをどうするかというところは、最初に考えていただくということが必要かなと思います。
 またそれに合わせて、認定の目的に沿った法効果、認定の法的効果として何を発生させる想定なのかというところも決めることになろうかと思いますし、それが決まったら、それに応じた認定基準をどうするか、さらに認定後、認定時の基準が遵守されているかをどのように監督していくのか、国が認定するということになりますと、この監督義務は、当然出てくることになります。これをどのように確認し、もし基準が守られていない場合には、どのような措置を取るのかということです。確認、監督をするためには、一定の科学的エビデンスであるとか、標準的な評価手法とか、そういったモニタリングをしっかりやっていくのか、こういうところを詰めておかなければ、認定制度が成り立たないであろうと思います。
 また、既存制度との関係は整理する必要がありますし、先ほど出た、生物多様性地域連携促進法との関係をどうするのかとか、あとは農水省、国交省が所管している制度との、先ほど、矛盾がないようにとかいうふうに言っていただいておりますけれども、それを法制度としてどのように担保するのかというところは、しっかり考えていただくというのが必要かなと思います。
 また、論点2に関しましては、やはり国際的に生物多様性が豊かなところであるという一定のお墨つきを、国の認定として与えるという、これが取組のモチベーションになるということを、先ほど、ヒアリングで教えていただきましたけれども、その場合には、相応の高い水準が必要になってきますので、これを満たす場合というのは、限定的な数の認定にしかならないであろうと、この辺りはジレンマだと思います。準とかプレをどのように、そこの枠組みの中で位置づけていくのか。位置づけていった場合には、クオリティーにばらつきがありますので、区分をして管理をしていくという、やや複雑な制度になります。また数が大幅に増えますので、法的な認定のフォローが行えるのかどうかという、これは実地の課題ということになろうかと思います。
 論点4のところで、関連分野との連携、先ほど土屋委員が指摘をされましたけれども、私も共管というのは非常に大事なことだと思います。さらに、横断的に共通の基準で認定をしていくというような、制度としての共通性を担保していかなければ、現場ではばらばらの基準や認定の仕組みに変わってくる。土地の管理に関わってくるということになると複雑になりますので、ぜひ制度設計の段階から、制度の形として連携をしていただきたいというのが、法律家としての希望になります。
 また、既存の自然共生サイトとの関係というか、整合性をどう図るのか。こちらのほうは場所に着目した認定だったはずなので、今回、活動に着目した認定ということになりますと、この辺りのずれをどうするのかというところ、これも最初の段階で整理が必要であろうと思います。
 最後に論点5ですけれども、これは、今回、活動を認定するということになりますと、サイトではなく活動ですから、その土地を巻き込むというのがやや難しくなります。先ほど少しコメントと質問をさせていただきましたが、中長期的に担保するためには、地権者をどのように巻き込むかというところを考えていかないといけない。だから、活動の認定での場合は、土地の巻き込み方というのを制度として担保するということが重要であろうと思います。
 私からは以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。
 続きまして、西澤委員、お願いいたします。
○西澤委員 どうもありがとうございます。経団連自然保護協議会の西澤でございます。
 私からは経済界の立場で少しコメントをさせていただきたいと思います。
 まず制度全般ですけれども、本制度はネイチャーポジティブの実現、特にOECMに向けた企業の具体的な取組を促進する効果が期待できると考えておりまして、ぜひ実現をしてほしいと思っております。また本制度の認定に当たりましては、参加企業の拡大といった点や、質の担保、こういったバランスという観点から、どのような視点やレベル感で認定をしていくのかという点ですとか、あと認定後、これも大事だと思いますけど、実効性というものをどのように担保していくのか、そういった、どのような仕組みでそれをフォローしていくのか、こういった点について、十分な論議が必要ではないかと感じております。
 次に、経済界として2点要望させていただきたいと思います。
 1点目は論点4についてですけれども、まず申請手続ですとか、事務面でのワンストップ対応ですね。あるいはインセンティブの検討、こういった点につきましても、他省庁との連携というものをぜひお願いしたいと思います。
 また本制度を通じたESG投資の拡大、あるいは情報開示の促進という観点からしますと、金融庁あるいは経済産業省との連携というものも非常に重要だと考えております。ぜひ、引き続き、関係省庁との連携協議というものをよろしくお願いいたします。
 そして最後になりますが、論点5についてですけれども、支援策につきましては、どの規模の企業を対象として考えるのかということで、異なる場合があると考えております。例えば、私ども経団連が中心となる大企業にとりましては、数百万円規模の一時的な財政支援というようなものよりも、本制度の認定が、金融市場ですとか、あるいはグローバルマーケットに広くどのように評価されていくかという観点のほうが非常に重要でございます。したがって、本制度の認知度とか信頼性、こういったものを高めるという施策について、国としても今後しっかりと検討していただきたいというふうに考えております。一方で、最終的にOECMの基準を満たした場合には、対象場所の固定資産税を減免するといったような支援策につきましては、企業自身も、環境や経営陣の交代、いろんな変化がございますので、取組の継続性という観点からも非常に有効だというふうには思っております。
 私からは以上でございます。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。
 続きまして、中村委員、お願いします。
○中村委員 ありがとうございます。
 既にいろんな方から出ているように、私は論点4で、環境省の施策のみが出ているのが気になります。例えば、国土形成計画とか、国土強靱化の基本計画、今年決まった閣議決定レベルの計画にも、ネイチャーポジティブは書かれていて、やはり他省庁も全体としてネイチャーポジティブを目指すという方向性が、一番大事じゃないかなと思います。
 例えばグリーンインフラの議論が国交省から出たときに、これも、ここでの議論のネイチャーポジティブに十分寄与するものだと思いますので、そこをしっかりやっていただかないと、広がっていかないのではないかと思っています。
 それと同時に、国による認定についても、例えばSIPのグリーンインフラ、サブテーマでグリーンインフラがあるんですが、そういう中でも、この認証制度の議論がされていますので、ダブってもいいのかも含めた、うまく整合性が取れたシステムを、省庁協力でつくっていただければありがたいと思います。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。
 では、大下委員、お願いいたします。
○大下委員 日本商工会議所、大下です。
 日商は、全国の主に市にあります515の商工会議所の連合体で、その大半の会員企業が中小企業でございますので、地域の中小企業の立場から、少し発言させていただきたいと思っております。
 この制度、面的に広がりを進めていくという上で、日本の企業の大半を占めます中小企業の関与を進めていくことが、非常に重要と思っております。例えば、土壌管理、あるいはリサイクル等では、多くの中小企業が関わっている分野でもありますし、また、例えば各地の酒造メーカーなど、水源や森林資源によって成り立っているビジネスも多くございます。中小企業においても、技術面や資金面、あるいは、人手の面でも貢献できるところは多いと思っています。
 その上で、2点申し上げたいと思います。
 1点は、連携や協働の取組をしっかり評価していただきたいという点です。地方の中小企業は、単独でこうした取組やサイトを運営していくことはなかなか難しいと思っております。各地域において、大企業や自治体あるいはNPO等による取組みの認知度がこの仕組みより拡大され、地元の中小企業をさらに巻き込む形で取組が進んでいくといった仕掛けが重要かと思っております。
 2点目は、経済との両立の視点であります。認定の仕組みを通じて、資金面での支援、あるいは税の減免等、経済的なメリットがもたらされるということも非常に重要と思いますけれども、加えて、地域の自然に注目が集まって、環境と経済を両立させる形で、観光やビジネスの発展につながるといった流れが望ましいと思っております。こうした点もしっかり取り入れた内容にしていただければと思っております。
 私からは以上です。ありがとうございます。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。続きまして、中静委員、お願いします。
○中静委員 はい。ありがとうございます。
 私は2番目ですね。先ほど質問させていただいたように、同じ二次林でも、里山的な使い方をするのか、あるいはもう原生林に持っていくかというような、最終的に目標とするような生態系のことを考えた活動になっているか、あるいは、そのような計画がきちんとできているかどうかというのが、僕は重要だと思います。
 それから4番目に関してなんですけど、皆さんおっしゃっているように、各省庁の連携って非常に必要で、防災減災もそうですし、農林水産業もそうですし、あとは教育とかですね、厚生労働省関係なんかも、一緒に組めると思います。いわゆる生態系サービスを中心としたモニタリングも考えて、補助金なんかも利用するということが、できるようになるんではないかなというふうに思います。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 では、広田委員お願いします。
○広田委員 はい。一つ目は論点2に関することで、これから自然再生に取り組むような地域も含めていくということには、私も賛成です。特に、農村環境について言えば、中山間地域で既に耕作放棄地が多くありますし、平地でも今後ますます増えていくと予想されます。このような農地を自然再生の対象としていくことは当然ありえます。
 もう一つは、平地に広がる、既に基盤整備された水田の自然再生です。農地基盤というのは、建築物がそうであるように、その時代の生産様式に合わせて改良していくことが必要となります。その際、ちょっとした工夫で生物の生息・生育場所を確保・創出することはできるし、そうした手法は、この20年ぐらいの間にかなり開発されてきています。ということで、将来的には、基盤整備された農地についても、自然再興の対象に含めていくのがいいのではないかと思います。
 それから、論点4にも関わることですが、農水省も、そのような環境配慮的な施策を随分やってきていまして、制度としても、中山間地域の直接支払とか、多面的機能支払いといった仕組みがあります。ただ、自然再興という文脈では、それだけでは不十分で、そこをさらに補強するような連携の在り方が求められると思います。
 ただ、産業用地もそうだと思いますが、農地についても、こういう施策が、将来の自分たちの土地利用の制約になることについては、当然懸念もあります。先ほどもご発言がありましたけども、将来的に制約になるんじゃないかという不安を持たれること自身が、自然再興の推進のネックになると思うので、その辺の折り合いのつけ方も、しっかり議論していく必要があります。
 さらに、論点1に関わるところで、市区町村の関与を促進する件についても工夫が必要になるでしょう。中小の市町村だと、単独でこうした取り組みに挑戦するのは大変かもしれないということです。その場合は、広域の市町村圏のような主体を想定するのはありうると思いますし、その際には、自治体だけではなく、この分野に精通しているNPO等の団体との連携がも考えるべきでしょう。
 最後に、論点3に関わる活動の継続性、質の担保に関してです。一番重要なのは、やはり人材の確保、マンパワーの確保だと思います。こういう分野に関心のある人材、特に若い人材は結構いますが、それが仕事にはならないというところに、ギャップがあります。なので、そういった人材の人件費を継続的に保障するような仕組みを用意かが非常に重要となると思います。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 それでは、小泉委員、お願いします。
○小泉委員 はい。ありがとうございます。
 まず論点2です。今回、認定されました122ですか。ざっと見せていただきましたが、今後、ある程度の区分、整理が必要だと思います。ただ、区分するときに、やはりその区分の根拠というのが、生物多様性国家戦略の中に書かれた基本戦略、状態目標、行動目標といったものとうまくリンクするような区分をして、この自然共生サイトはここを推していますという、それで、結局、ネイチャーポジティブにつながりましたというような説明が成り立つようにお願いしたいと思います。
 それから、論点3に関しては、私は、地域循環共生圏というキーワードをもう一度見直してはどうかというふうに思います。都市から農山村への人とお金の投資というのが、この3の中でつくられるといいのではないかなというふうに思います。
 それから論点4に関しては、生物多様性基本法、特に第6条の事業者の責務という辺りの記述について、せっかくこういう動きが出てきているんですから、修正していいんじゃないかなと思います。
 それから論点5に関しては、キリンホールディングスさんは、大変多くの地権者がいらっしゃるということで、椀子ヴィンヤードだけ申請しましたというお話ですけれども、場合によっては、所有と管理が同一になっている会社で、日本全国いろんなところに持っているというところはあると思いますので、そこが一つの統一した意思、計画でもって、一括申請するというのも、ありではないかなというふうに思いますので、ご検討いただきたいと思います。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 それでは、森田委員、お願いします。
○森田委員 ありがとうございます。
 まず、論点2の認定対象に関して、今後、陸域だけじゃなくて沿岸とか海洋とかもいろいろ広がってくると思います。幅広い分野の活動や、異なる段階の活動も含められるような方法というのを考えていく必要があると思います。その上でも、いろな省庁も巻き込む必要があると思います。
 また、論点4の関係する話ですが、先ほど質問したネイチャーポジティブ経済との関係の質問が埋もれてしまったのですが、その観点で、ネイチャーポジティブの言葉のイメージは、使っている人によって大分異なると思っています。ここでのネイチャーポジティブは、現場ベースで、劣化地などを回復していくという話がベースにあって、それにお金をつけていくという話だと思いますが、ネイチャーポジティブ経済の議論はもっと広いと思っています。先ほど藤原さんのほうからお話があった、PRI in person、責任投資原則の会議にも参加しましたが、本当に大きな機関投資家や企業などが、経済全体をネイチャーポジティブに貢献するようなものにしていこうということで、そちらでは、どちらかというと、途上国へのサプライチェーンのインパクトの話、途上国の生態系を破壊することの問題というのが非常に大きく取り上げられていました。ここでは国内に閉じた話なので、国が認定したり、国がリードしたりすることはすごく大事だとは思うのですが、ネイチャーポジティブの言葉の使い方について、あれ、ネイチャーポジティブってこういう話だったのかなと思われないように、しっかりと整理することが非常に重要になってくると思います。特に、企業さんというのは国内の自然共生サイトのような取組とサプライチェーンに関わる取組の両方を行っていると思いますので、本当のネイチャーポジティブ経済を考えるのであれば、経済産業省、財務省、金融庁、こういったところも巻き込む必要があるのではないでしょうか。また、企業の取組全体が、どう生態系に影響を与えるのか、どう生態系を改善していくのかですとか、金融システムそのものも変えていこうという話になっているので、そういった大きな議論に、しっかりこの制度がはまるよという絵がないと、多分、この認定をしているうちに、だんだん企業さんも、例えば、TNFDのほうでもっとやらなくてはいけないことがあるので、まあ、自然共生サイトの方はもういいかということになってしまうかもしれないので、初めにしっかりその絵を描いておくということは大事だと思います。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございます。
 それでは最後ですけれども、角谷委員、お願いいたします。
○角谷委員 国立環境研究所の角谷です。
 論点1についてですが、私は、経済インセンティブ等の議論にも関わっておりますけれども、私が思っていた以上に、国際的に通用する統一的な基準というのが、ビジネスも含めていろんな活動を、国民運動みたいな形で展開する上での、非常に重要な起点になるというふうに感じていますので、国による認定というのは賛成です。
 一方で、論点3に関わりますが、それを見える化していくというのも重要だと考えています。その点では、基準の評価可能性というところと常に対話しながら、検討していくのが必要かなというのは一方で思っています。
 それから論点2に関わるところですが、回復途上あるいは創出というところも含めていくというところは、これも私も賛成です。一方で、先ほど質問のところでも述べさせていただきましたが、単に自然共生サイトの評価軸を延長していくという方向だけじゃない評価軸というのも検討していく必要があるかなと、思っています。例えば再生地だと、既存の保全上の価値が高い場所のとの位置関係など空間計画上での文脈がより重要になるなど、すでに保全上の価値が高い場所を評価するのとは別の観点が必要になると思いますので、その点は留意して検討いただけるとよいかなと思いました。
 以上です。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。たくさんのご意見ありがとうございます。
 環境省から、次回、回答がいただけるのかなと思いますけども、今のところで何かありましたらお願いいたします。
○小林補佐 小林です。ありがとうございます。
 この制度は場所とひもづく取組ということで、特に場を所管する農林水産省さん、国土交通省さんとの連携というのを進めていくことが重要だということを、改めて認識しました。もちろん、この制度そのものでの連携、それから、みどりの食料システム戦略やグリーンインフラ、まちづくりGXなどの施策との連携、それから、他の計画、既存制度との整合、そういったこともしっかり考えていく必要があるということを、改めて認識いたしました。
 また、点の取組、面の取組の重要性、これは、実態を踏まえると、やはり点も面も両方進めていくことが必要かなと考えております。この両方を見据えながら考えていきたいと思っています。
 また、法制度としての在り方、またこの法制度とのうまくリンクする形での様々なインセンティブ、メリット、データ連携、見える化、認知度の向上など、様々考えていきたいと思っています。
 本日、貴重なご指摘、ご意見、アドバイス、様々いただき、ありがとうございます。いただいたご指摘、ご意見を踏まえまして、制度設計を進めていければと思っていますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 以上です。
○石井委員長 はい、ありがとうございました。主流化室長、お願いします。
○浜島室長 生物多様性主流化室の浜島でございます。ネイチャーポジティブ経済の関係、それから、自然共生サイト等のインセンティブの関係を担当しております関係から、少し補足をさせてください。
 森田先生から、ネイチャーポジティブ経済との関連のご質問がございました。また、浅野委員からも、自然共生サイトや、今ご議論いただいた法制化後の活動認定で、どのぐらいのボリューム感があるとネイチャーポジティブは実現できるのかと、こういったご指摘もございました。本日、こちらからのご説明に入っていなくて、少し混乱を来してしまったかもしれないんですが、我々ネイチャーポジティブに関して必要な、5色の図というのをよく使っておりまして、一番下に緑があって、そのほかに気候変動とかサーキュラーの取組も全部やって、初めてネイチャーポジティブというものが実現するんだと、こういう図でございます。
 本日ご議論いただいているのは緑のところで、しかも、森田先生おっしゃったとおり、国内のところでございます。本日は、国内の緑のところの法制化に関してのご議論をいただいているというふうに理解しています。
 そして、我々、今ここの法制化だけではなくて、政策手段として考えておりますのは、前半で藤田先生からご言及いただいた支援証明書ですとか、あるいは、認定自体、サイトに認定されること自体を、TNFDなど、どう企業の情報開示に生かすか、すなわち、企業に本業として取り組んでいただくにはどうしたらいいか、こういったことの検討を行っています。場としては、角谷座長の下で行っておりますインセンティブ検討会、また、そのインセンティブ検討会の下にTNFDメンバーでもある原口先生を座長とする投資家目線ワーキングを設置して検討しております。本日の議論は、それらの検討にもぜひ生かさせていただきたいと思っております。
 あと、そちらでも議論になっており、また国家戦略にも位置づけられているのですが、今日、神戸市さん、いらしていただいていますけれども、その中で、生物多様性地域戦略とか、あるいは地域の取組方針というのも、企業が関わっていく上で、非常に重要になってくるということも認識してございます。そういった点も、よくよく全体の中で、本日の議論を生かさせていただきたいと思っております。
 もう一つだけすみません。サプライチェーンマターというお話もありましたが、そちらも含めて、現在各省連携でネイチャーポジティブ経済移行戦略というものをつくっております。経産省、金融庁、国交省、農水省さんにも議論に入っていただいています。こういったところで、全体像を、ビジネスとか経済の観点から意識してつくるということをやっていきたいと思っております。
 以上でございます。
○石井委員長 はい。どうもありがとうございました。
 多分、委員の皆さん、いろいろな意見がおありかと思いますけれど、冒頭で言いましたように、また文書でお寄せいただければというふうに思います。それでは、その他について、事務局、お願いします。
○浜島室長 時間がない中ですみません。先ほど行われました環境大臣の定例会見におきまして、大臣からネイチャーポジティブに関連する発表を2件行いましたので、こちらでもご報告させてください。
 一つ目、ネイチャーポジティブのイメージキャラクターの決定でございます。こちらでございますが、この春に公募をかけまして、全83件のご応募の中から、環境省職員等による投票の結果、滋賀県在住の本山清数さんが作成されたこちらの「だいだらポジー」が選ばれております。「だいだらぼっち」がモチーフでございます。様々なイベントで活用したり、あるいは自然共生サイトの認定者の方含めて、幅広い方々に活用していただこうと思ってございます。
 二つ目は、経団連会長をヘッドとします、産官学民のネットワークJ-GBFにおいて、ネイチャーポジティブ宣言の発出、登録を本日から呼びかけを開始いたしました。今年2月にJ-GBF自身がネイチャーポジティブ宣言というのを出したんですけれども、今般は民間企業とか自治体さんなど、多くの方々にネイチャーポジティブを目指す宣言というのをしていただくことで、機運醸成を図ってまいりたいと思っております。
 以上でございます。
○石井委員長 はい。ありがとうございました。
 ほかはよろしいでしょうか。では、特になければこれで、全ての議事を終了したということにさせていただきたいと思います。
 では進行を事務局にお返しいたします。
○武藤補佐 石井委員長、議事進行をありがとうございました。委員の皆様におかれましても、長時間にわたりご審議いただきありがとうございました。本日はウェブ会議システムに不具合があり、また時間の延長もあり、委員及び関係者の皆様にはご不便をおかけして誠に申し訳ありませんでした。
 次回は11月27日月曜日の9時半から開催を予定しております。本日はありがとうございました。
午後12時15分 閉会