(参考資料)PCB問題について

(参考資料)
PCB問題について
1.PCBとは
PCB(Polychlorinated biphenyls:ポリ塩化ビフェニール)は、水に溶けない、化学的に安定、絶縁性が良い、沸点が高いなどの性質を持つ、工業的に合成された化合物である。
一方で、PCBは人の健康・環境への有害性が確認され、分解されにくく、後半に環境中に残留していることが知られている。また近年、PCB油中に含まれているコプラナーPCBによるダイオキシン問題も懸念されている。

PCBは、絶縁性等の性質により、主として次の用途に使用。
電気機器の絶縁油(トランス、コンデンサ他) a.高圧トランス(変圧器:発電所、工場・ビルの受電設備、鉄道車両等で使用)
b. 高圧コンデンサ(蓄電池:送配電線等で使用)
c. 低圧トランス・低圧コンデンサ(家電製品の部品等で使用)
d.安定器(蛍光灯、水銀灯の安定器の力率改善用コンデンサの絶縁油として使用(住宅用には使われていない))
e.柱上トランス(配電用)
熱媒体(熱媒油)、潤滑油
化学製品などの製造工場の熱媒体、機械の高温用の潤滑油として使用
感圧複写紙(PCBが塗布されている)

2.PCB規制までの経緯
PCBは、国内では昭和29年から昭和47年にかけて生産され、約54,000トンのPCBが国内で使用された。 昭和43年、西日本各地で発生したいわゆる「カネミ油症事件」によりPCB問題が社会的な問題となり、昭和49年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づく特定化学物質(現在は第一種特定化学物質)に指定され、新たな製造・使用が原則禁止された。

3.過去の処理事例
昭和62年~平成元年に、環境庁等の指導のもとで、兵庫県高砂市の鐘淵化学工業が、回収・保管していた5,500トンの液状PCBを高温焼却処理した。
しかし、その他のPCB処理計画は、地方自治体や地域住民の同意が得られなかったこともあり、いずれも挫折した。

4.最近までの環境汚染の状況
PCBは、一般環境中(水系や大気)で広範囲に検出されており、生物(魚類、貝類、鳥類)中のPCB濃度は、一時期よりは減少しているものの、近年は概ね横ばいで推移している(別紙1)。

5.PCB含有廃棄物保管状況等
製造・使用の中止後、PCBやそれを含むトランス・コンデンサなどは回収又は保管され、平成10年の厚生省の調査結果によると、高圧トランス・コンデンサの保管台数は約22万台。
しかし、紛失・不明のものも見られる状況にある。また、現在でも多くの古いPCB含有機器が継続して使用されている。

6.新たな処理方法
これまで、環境庁、厚生省、通産省(平成13年1月6日以降は環境省及び経済産業省)においては、PCB処理を安全かつ早期に実施すべく、連携して新処理技術の評価等を進めている。
PCBの処理方法は、これまで高温で焼却する方法のみが認められていた(昭和51年~)が、平成10年6月以降、廃棄物処理法に新たな処理方法として認められているものは以下のとおり(別紙2)。

[1]脱塩素化分解法
化学反応によりPCB中の塩素を水素等に置き換えてPCBではない物質に分解
[2]還元熱化学分解法
還元雰囲気の高温(約1400℃)の溶融金属(Ni-Cu)中に酸素とPCBを入れ、高温溶融金属の持つ炭素を脱離させる触媒作用により、CO、H2、HClに分解
PCBを無酸素水素雰囲気中、常圧下850℃以上に加熱することで、PCBが分解・脱塩素化され、HCl、メタン、CO、CO2、H2、ベンゼンに分解
[3]水熱酸化分解法
化学的反応性が高い超臨界状態(高温、高圧の特殊な状態)の水により、PCBを二酸化炭素、水、塩化水素に分解
酸化剤又は炭酸ナトリウム等を混合し、高温高圧(超臨界又はそれに近い状態)水中にPCBを吹き込み、二酸化炭素、水、塩酸に分解
[4]光分解法
PCBとアルカリ剤等を約60℃、常圧で混合し、紫外線を照射することでPCBの塩素基が脱離し、1塩化、2塩化ビフェニルやビフェニル等になり、さらに、1塩化、2塩化ビフェニルは約75℃に加熱した後、パラジウム/カーボン触媒によりビフェニルまで脱塩素化、又は、PCB分解菌による生物処理により無機化され、二酸化炭素、水、塩素イオンに分解

7.最近の処理事例
平成11年末から、民間企業3社が脱塩素化分解法を用いて、各々自社保管しているPCBの処理を開始した。この他、三菱重工業がH13.1から、東京電力がH13夏から処理を開始することを予定している(別紙3)。

8.今後の課題
大量のPCB含有廃棄物が保管されているとともに、その一部が紛失していることから、抜本的な処理対策が必要となっている。