滋賀県立琵琶湖博物館の飼育・増殖施設(バックヤード)
滋賀県立琵琶湖博物館の飼育・増殖施設(バックヤード)
淡水魚類の飼育・増殖には、たくさんの大型水槽が必要なため、展示施設の裏側には十分な飼育・増殖用の水槽と、それを支える多くの技術者がいます。


タンチョウの卵と孵化したヒナ
タンチョウの卵と孵化したヒナ


植物の栽培技術者
植物の栽培技術者
ステップ3 飼育・栽培と増殖
施設の中で、生きものの「自然の性質」を失わせないように育てて増やします。
主に、動物園・水族館・植物園などの飼育・栽培専門の施設でおこないます。



 ステップ2で確保された個体は、全国の動物園・水族館・植物園などの専門の大型施設を中心に、専門の技術者たちによって飼育・栽培や増殖の取り組みが慎重におこなわれています。絶滅危惧種は飼育・栽培や増殖が難しいものが多いため、各分野の専門家が連携して技術開発に取り組んでいます。

生きものの「自然の性質」を保つ

 絶滅危惧種を育てることは、ペットの飼育や園芸植物の栽培とは全く異なります。 ペットや家畜、園芸植物や農作物などは、人間が野生生物から有用なものを選び、さらには育てやすいように品種改良してきた歴史を持ちます。
 しかし、絶滅危惧種を育てる場合は、いつでも生息地に戻せるよう、それぞれの生きものがもつ「自然の性質」を失わせないようにすることがとても重要です。このため、人慣れさせない配慮や遺伝的多様性(全ステップ共通参照)の維持などに取り組んでいます。

計画的な増殖

 野生生物はオスとメスによる繁殖で子孫を残し、種を維持しています。この繁殖を施設の中でおこなって数を増やすことを「増殖」といいます。 増殖は、生きものによっては比較的簡単なものから、技術開発が必要な難しいものまで様々です。特に、哺乳類や鳥類では、オス・メスの相性などペアリングが難しいものも多く、様々な方法で増殖に挑んでいます。 また、動物ではメスの卵子(または卵)とオスの精子を取り出して受精をおこなう人工授精、植物では花粉をめしべに受粉させる人工授粉など、自然の状態に任せずに人の手で、効率よく増殖させる技術もあります。
 増殖は技術さえ確立すれば、多くの個体を増やすことができるようになりますが、増やしすぎて管理できなくなることのないよう、施設の広さや人手を考えて計画的におこなう必要があります。

専門の施設と技術者

 「自然の性質」を保ちながら野生生物を育て続けるには、広いスペースで十分な個体数を維持することが重要です。例えば、狭い施設で動物を飼育していると運動不足で弱い個体ばかりになったり、飼育・栽培している数が少なすぎると近親交配による死亡率の上昇や奇形の増加が知られています。 このため、十分な数を収容できる広い飼育・栽培施設や多くの技術者が必要となります。
 動物園・水族館・植物園では展示スペースの裏に、とても広い「バックヤード」と呼ばれる飼育場や水槽、温室などを持っています。絶滅危惧種の飼育・栽培や研究の取り組みは、普段は我々が目にすることのないバックヤードで多くの技術者によって支えられています。



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