自然環境・生物多様性

自然再生推進法 | 自然再生専門家会議平成28年度第1回議事概要

日時

平成29年1月10日(火)
13:00 ~ 15:00

場所

中央合同庁舎2号館低層棟共用会議室2A2B

出席者

(委員) 

 今村  信大  (公財)日本生態系協会 副会長

 大河内 勇   (一社)日本森林技術協会 業務執行理事

 近藤  健雄  日本大学 理工学部 海洋建築工学科 特任教授

 志村  智子  (公財)日本自然保護協会 自然保護部長

 辻本  哲郎  名古屋大学 名誉教授

 中村  太士  北海道大学大学院 農学研究院 教授

 宮内  泰介  北海道大学大学院 文学研究科 教授

 守山  拓弥  宇都宮大学 農学部 農業環境工学科 准教授

 鷲谷  いづみ 中央大学 理工学部 人間総合理工学科 教授

 和田  恵次  奈良女子大学 名誉教授

(関係省庁)

 環境省、農林水産省、国土交通省、文部科学省から関係課長等

(実施者)

 森吉山麓高原自然再生協議会、久保川イーハトーブ自然再生協議会よりそれぞれの実施者等

議事概要

 会議は公開で行われた。

議題1 自然再生事業実施計画について(森吉山麓高原自然再生事業実施計画 第3期)

始めに森吉山麓高原自然再生協議会より計画内容及び意見交換会で出された意見への対応について説明があり、次に事務局から本実施計画に対して自然再生基本方針に即したものとなっているか確認した結果、事務局としては自然再生推進法に基づく助言は要しないとの考えが説明された。

その内容について、委員から特に質問及び意見はなく、また主務大臣による助言が必要との意見もなかったため、主務大臣からの助言は不要という結論となった。

議題1 自然再生事業実施計画について(久保川イーハトーブ自然再生事業 耕作放棄地等における生物多様性の保全・再生事業実施計画)

続いて久保川イーハトーブ自然再生協議会より計画内容について説明があり、次に事務局から本実施計画に対して自然再生基本方針に即したものとなっているか確認した結果、事務局としては自然再生推進法に基づく助言は要しないとの考えが説明された。

委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。

○対策を行う外来種について、その名前等が記載されていないが、具体的にどこまで確認しているのか。

→(実施者)外来種として有名なブルーギルやミシシッピアカミミガメなどはいまだ確認されていないが、オオクチバスは約600のため池のうち10カ所程度で確認しており、アメリカザリガニは数カ所で確認している。

○計画の実施区域で、保全すべき固有の地域種として具体的に何を想定しているか?

→(実施者)淡水魚ではシナイモツゴや、植物では野生のラン等を想定している。

○発表資料の中では、昆虫類については系統保存の対象に含めないとあるが、地域固有の種については、他の植物や魚類同様に保護してもらいたい。

○計画の実施区域周辺の集落の状況はどうなっているか。

→(実施者)区域周辺については自治区が6つあり、戸数としては約130戸。主に水田稲作を行いながら、シイタケ栽培等も行っている農家が多い。

○里歩きコースの利用者は、誰を想定しているか。

→(実施者)知勝院の樹木葬を利用している人は都市の人が多いため、利用者の想定の多くは、地域外の都市から来る人々である。

○自然再生事業に協力してくれている耕作放棄地の所有者達は、自分たちの耕作放棄地が今後どのように変化していくことを想定して、協力しているのか。

→(実施者)彼らは、いつでも復田出来るようにして欲しいとの意向がある一方で、放棄されたままよりは、自分たちの開拓した農地が何かに活用されることの方が嬉しいと聞いている。

○事業予算はどうなっているのか。

→(実施者)費用については、現在助成金と知勝院からの援助でやりくりしている。資金を独自に得られる仕組みが必要と考えているが、現状難しい。

○樹木葬は、自然再生事業に含まれているのか。

→(実施者)樹木葬が行われている場所は、生業として知勝院が管理していて、自然再生事業を試験的にやる場合、その場所を活用させてもらうことはある。

○事業の実施地域の中で、順次取り組む地域と書かれている場所があるが、この事業は、どの範囲まで拡大していけるものなのか。この事業の対象となり得る地域について、整理されているのか。将来的にどこまで対象地域を広げられるかについても、図の中に示せればよりよいのではないかと思う。久保川添いの地質(沖積土等)の情報を整理すると良い。

(実施者)区域は基本的に図面の赤線部分で、6自治区からの了解も得ている。地質については、そういった整理はこれまで行っていなかったので、貴重なご意見として、協議会の中でも議論したい。

○せっかく自然再生推進法という素晴らしい法律があっても、各自治体担当者まで広く伝わっていない。もっと自然再生の制度について国を挙げてPRをしていくべき。また、いかに一般人を巻き込めるかというのも、事業の持続性においては重要な点と考えられる。

○久保川イーハトーブ協議会の取組は、新しいビジネスモデルとして良い事例であると考えるので、是非事業を継続して頂きたい。

久保川イーハトーブ自然再生協議会の計画についても、主務大臣からの助言が必要だとの意見はなかったため、主務大臣からの助言は不要という結論となった。

議題2 自然再生事業の推進について

環境省より資料6を用いて、全国の自然再生事業の取組状況について報告した。

委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。

○議題1でも申し上げたが、もっと自然再生推進法や制度についてPRをすべき。国は、自然再生ができそうな土地を買い取るか自然に戻す等の施策が必要である。国民に自然がどのくらいの価値があるかは、認識させるべきであり自然資本にお金を投入すべきではないか。

○一度どこかのタイミングでしっかりとレビューをした方が良い。この法律ができた当時の目標の達成状況等を確認すると共に、法律の仕組みがきちんと機能しているかも含め制度の見直しも考えてはどうだろうか。地元が取り組みやすいもっと違う制度があっても良い。小さな自然再生などを取り組むに当たっては、現行制度はやや重いと考える。自然再生を推進することによって、日本の国土がどのように変わったかが、納税者の立場からは見えてこない。この制度のボトムアップの部分は良いのだが、国としてはっきりと目標を持ち、時にはトップダウン的な要素も必要ではないかと考える。

○自然再生のような取組は、地元の人たちが経済的なメリットを感じなければ、続かない。例えばこれを教育のみと結びつけてしまうと、お金は出ていくのみなので、地域の資源として、エコツーリズム等の産業と結びつくようにしていくことが重要だ。

○自然再生の成果がきちんと見えるようにすべきでないか。各協議会の数だけで無く、自然再生の取組面積、生物種の種類もどうなったのか見るべきだ。ふるさと納税等と関連づけて、自然再生で経済の何か仕掛けを作っていくことが大事と考える。

○この制度のボトムアップの部分は継続してあった方がよいが、各協議会の計画がどのように全体の目標に寄与しているか、自然再生にどんなポシビリティがあるか、これらを示すためにも、制度の中に、ボトムアップで足りないところをトップダウン的な要素で補う必要がある。3省はしっかり今後のビジョンを示す必要がある。

○この制度において、市民の活動が国に認識してもらえることは、自然再生推進法のメリットだろう。また、国によるサポートのやり方としては、これからの民主導のあり方を考えると、ただ自然再生事業に補助金を配るのではなく、クラウドファンディング等の他に適切なものもあるだろう。例えばふるさと納税の例で言うと、環境保全活動もその対象となり得るため、地域で自然再生事業を行っているのであれば、その自治体が自然再生事業をふるさと納税の対象として、新たな項目をHP上に設けることができるのではないか。自然再生について各自治体にも応援要請をして、さらなるPRや普及啓発を図ることが良いだろう。