自然環境・生物多様性

自然再生推進法 | 自然再生専門家会議平成27年度第2回議事概要

日時

平成27年11月13日(金)
9:00 ~ 11:00

場所

兵庫県新温泉町民センター 2F 集会室

出席者

(委員) 

 大河内 勇  日本森林学会 会長、(一社)日本森林技術協会 理事

 小林 達明  千葉大学大学院 園芸学研究科 教授

 志村 智子  (公財)日本自然保護協会 自然保護部 部長

 宮内 泰介  北海道大学大学院 文学研究科 教授

 守山 拓弥  宇都宮大学 農学部 農業環境工学科 准教授

 山本 智子  鹿児島大学 水産学部 准教授

 鷲谷 いづみ 中央大学 理工学部 人間総合理工学科 教授

(関係省庁)

 環境省、農林水産省、国土交通省から関係課長等

(実施者)

 特定非営利活動法人上山高原エコミュージアム等

議事概要

 会議は公開で行われた(一般傍聴者1名)。

議題1 自然再生事業実施計画について(上山高原自然再生事業実施計画)

実施者より、資料3、4等により上山高原自然再生事業の実施計画の説明。

委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。

○ 自然再生の取組では、「過去のいつの時点をどのように戻すのか」をイメージすることは難しいと思われるが、上山高原では過去の状況に詳しい地域の方々が取り組まれていてよいと思う。

○ ブナは、更新が難しい植物であり、仮に5年後は枯れていなくても30年後に枯れることもあるので、十分な手入れが必要である。

○ 草原などでは笹が増加しているようだが、ススキ草原の植生はどのようになって

いるか。

→(実施者)刈り取りや火入れにより笹は少なくなってきているが、放置すれば再び笹に戻ってしまうことは間違いない。また、ススキ草原の山頂付近において見られるはずのシラヤマギクなどの植物を、人工的に種をまいてモニタリングすることを検討している。

○ 自然再生の目標が、単に自然環境を再生するだけでなく、地域の人々が草原から受けていた恩恵や豊かな生態系サービスも含めて再生を図っていてよいと思う。

○ 上山高原は、侵略的外来生物の侵入がなく、かつての草原の要素があるので、昭和30年代の自然環境を取り戻す取組はできるのではないかと考える。一方、モニタリングでは、種数での評価が中心となっているが、植物では、取り戻したい種群を設定して簡易なモニタリングを導入してはどうか。

→(実施者)植物については、植物社会学的な調査を取り入れており、種数のみではなく種の組み合わせとしての再生の評価を行っている。

○ イヌワシの生息範囲は広い。上山高原だけでなく、広い地域での取組を要する。上山高原はイヌワシにどのように利用されているのか、といった視点での調査があるとよい。

→(実施者)イヌワシに関しては、近隣地域において冬季の営巣確認がされている。今後は調査の体制を整えたいと考えている。

○ イヌワシのモニタリングでは、イヌワシの餌となるウサギの糞の密度を調査することで、イヌワシの餌場に適した環境を取り戻しているか否かを把握できると考えている。

○ 人の手が入った取組を今後どのように継続していくのか。

→(実施者)生業としての取組は難しいが、ススキの産業化ができるとよいと考えている。ススキの産業化については近隣での取組と連携していきたい。

○ 上山高原の歴史的・文化的なことが、実施計画の中ではあまり触れられていないが、文化の再生や掘り起こし等を事業の中に組み入れて、対外的にアピールして取り組んでいただくとよい。

→(実施者)歴史的・文化的なことは記録に残してアピールしていきたい。

○昭和30年代の姿を目標にしているが、過去にあったことを聞き取って記録に残す取組も重要である。

→(実施者)これまで、過去の記憶を伝えることはあったが、記録には残していない。今後取り組みたい。

○ シカによる獣害は発生しているのか。

→(実施者)ほとんどない。

最後に事務局から本実施計画に対して自然再生推進法に基づく助言は要しないことを説明し、議事概要及び議事録を公表することで、専門家会議での意見を実施者や関係協議会に伝えることとなった。

議題2 自然再生事業の推進について

環境省より、資料5等により説明があった。

委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。

○ 自然再生協議会として大人数で集まることは大変である。テーマごとにもっと絞って議論ができるような小回りが利く体制があるとよい。

○ 景観法に基づく協議会については、国内で65組織が機能している。自然再生も国民運動の取組とする必要がある。

○ 国民に普及啓発を行っていくためには、やってよかったという実感が得られることが非常に重要だと感じている。また、現行制度では固いので、柔軟で利用しやすい仕組みになるとよい。

○ 協議会の運営はとても大変だと思われる。実際に取り組んでよかった面を参加されている方から聞き、協議会の仕組みがあったからこそできたことをアピールすべき。小さな自然再生については、国内での取組を見えるようにすべき(例:小さな自然再生100選といった取組はどうか)。工業用地で自然再生に取り組まれている企業の取組なども見える形でリストアップするとよい。ISO14001にも生物多様性が位置づけられたことから、それら企業の取組も見えるようにするとよい。

○ 自然再生推進法に基づく自然再生はどういったメリットがあるのかを整理する必要がある。自然再生事業を推進することだけが目的ではなく、その地域の自然について、関係する方々が同じ場で話し合いをすることはとても大切であると考えている。一方で、能率よく運営をすることも重要であり、テーマが決まっていれば連絡会(例:三方五湖自然再生協議会では部会が機能している)により議論を効率的に進めることも重要である。

○ 法定協議会が増えることが目的ではなく、国内で自然再生が盛り上がることが重要であって、必ずしも二十数か所で頭打ちになっていることを気にしなくては良いのではないか。法定協議会になることで自然再生が進むことが想定されるのであればそのようにすれば良いが、無理やり法定協議会に持って行かなくてもよいと思う。また、案件ごとに推奨できる仕組みを行政や専門家側が持つとよいと思う。法定協議会は「固い」という印象があるとしても法定協議会の良さもあると思う。

○ パンフレットを作っているという説明があったが、手元に届くことはなく、情報が伝わることが少ないのではないか。

○ 自然再生協議会を立ち上げるインセンティブが欠けているのではないか。協議会の運営のためには事務局が大変であるため、事務局運営を軽減できることがインセンティブになるのではないか。あるいは、他の先進的な事例地と直接情報交換ができることもインセンティブになり得る。

(以上)