日時
平成21年3月23日(月)13:00~14:30
場所
農林水産省第1特別会議室
出席者
- 委員
- 池谷 奉文 財団法人日本生態系協会会長
小野 勇一 北九州市立自然史・歴史博物館館長
進士 五十八 東京農業大学地域環境科学部造園科学科教授
鈴木 和夫 独立行政法人森林総合研究所理事長
辻井 達一 財団法人北海道環境財団理事長
辻本 哲郎 名古屋大学大学院工学研究科教授
鷲谷 いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
和田 恵次 奈良女子大学共生科学研究センター教授 - 主務省
- 環境省、農林水産省、国土交通省から関係課長等出席
議事
会議は公開で行われた。(傍聴者約10名)
議題1 自然再生事業の推進に向けた取組状況について
環境省より、資料1に基づいて説明。
議題2 自然再生事業実施計画について
農水省より資料2、環境省より資料3-1及び3-2、巴川流域自然再生協議会より資料4-1及び4-2に基づいて、それぞれ説明。
委員からの主な質問及び意見は以下のとおり。
石西礁湖自然再生事業実施計画
- モニタリング調査について、サンゴ礁生態系を構成する魚類や無脊椎動物、造礁サンゴ等の生物層に関する情報はどの程度あり、どのような方法でモニタリングがなされるのか。(和田委員)
→春から夏及び秋から冬にかけての2期間にわたり、魚類の種数と個体数を調査しているが、サンゴの被度との関連づけは難しい状況。(環境省石垣自然保護官事務所) - サンゴ礁は地球規模で危機的な状況にある中で、日本でモニタリングに重点を置いた上で総合的な対策を立てることは、国際的にも意義が大きい。(鷲谷委員)
- サンゴ礁の白化減少や病気は、様々な要因の相乗的な複合影響によって起こると考えられる。そのため、要因の中でもコントロールが難しい海水の温度上昇や酸性化ではなく、コントロールが容易な陸域からの負荷等に着目する方法も有効ではないか。問題構造、及びその中で実施計画において取り組むべき課題を明確にするという科学的な枠組みを設けて事業を進めていくことが重要。(鷲谷委員)
- 環境省が担当している自然再生事業であると割り切らず、観光としての国交省、農地をもつ農水省とが連携して取り組むことが重要。(進士委員)
- 自然再生の目標の評価について、森林を作って海の生態系を保全するというような、陸域とリンクしたものが必要ではないか。(鈴木委員)
- 赤土対策や下水道整備、観光開発等の課題があるが、今後の予算や対策等はいかに措置するのか。(池谷委員)
→環境省では、国立公園の自然再生事業として、計画的に事業を実施している。それと連携して様々な施策が動くことが大切で、関係行政機関を含めた全体像も把握していきたいと考えている。
陸域との統合的な取組については大きな課題だと考えており、関係省庁が連携してサンゴ礁保全行動計画を今後策定する予定。(環境省自然環境計画課) - サンゴ礁がどのようにダメージを受けているか、あるいはどのように修復できるかを科学的仕組みとして考えていくことが重要。サンゴ礁そのものや、サンゴ礁の劣化に直接関係のある生物だけではなく、全体構造を理解すべき。(辻本委員)
巴川流域麻機遊水地自然再生事業実施計画
- ルールを作るとあるが、その中身は何か。(小野委員)
→具体的には決まっていないが、麻機遊水地以外の土を持ち込まないことや、レクリエーション等の人間の活動が重視されるゾーンと自然が重視されるゾーンを区別すること等を定めたいと考えている。(巴川流域麻機遊水地自然再生協議会) - 自然の中には幾何学的な曲線や直線というものは無い。水田等機械を必要とするものは四角形でもやむを得ないが、できるだけ曲線や直線を避けるべき。また、事業に用いる材料は地産地消にする等のルールが必要。(小野委員)
- 生態系を戻すことに加えて、地元への利益をいかに誘導するかも重要。(鈴木委員)
- 治水効果の高い遊水地に湿地性の動植物等の生息環境を再生する取組は大変意義深いが、専門家の科学的なアドバイスがなされているか懸念。(鷲谷委員)
- 土木事務所が生物に配慮して事業を行うには限界があり、遊水地というのは治水事業からくる土木側の発想。静岡市からも近く、賤機山という良い山もあるのだから、自然公園とすべきではないか。(進士委員)
- 自然再生事業の実施にあたっては、目標の達成だけを重視するのではなく、事業がその地域に与える影響など、有意義性を説明及び評価するべきではないか。(鈴木委員)
- 対象となる遊水地については、事前に治水計画として水入れの開始水位や遊水地レベルを決めていると考えられるが、遊水地あるいは自然公園として整備するのであれ、自然再生の対象地としての水位等の設計を行うようにすべき。(辻本委員)