自然環境・生物多様性

平成19年度第3回自然再生専門家会議議事概要

日時

平成20年3月19日(水) 13:00~15:10

場所

経済産業省別館10階1020号室

出席者

委員
池谷 奉文  (財)日本生態系協会会長
辻井 達一  (財)北海道環境財団理事長
吉田 正人  江戸川大学社会学部環境デザイン学科教授
鷲谷 いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
和田 恵次  奈良女子大学理学部生物科学科教授
主務省庁
環境省、農林水産省、国土交通省から関係課室長等出席

議事

会議は公開で行われた。(傍聴者約20名)

議題 「自然再生推進法施行後5年を経過した場合の検討」を踏まえた「必要な措置(案)」等について

 環境省より、資料1~3及び別紙1~4に沿って、「自然再生推進法施行後5年を経過した場合の検討」を踏まえた「必要な措置(案)」について説明がなされた。
 委員からの主な意見は次のとおり。

  • 法制定時に海外の取組事例を国会等で説明した経緯がある。国内だけでなく、国際的な自然再生の情報も各種情報提供の中で充実し盛り込むべきである。
    また、我が国で自然再生が必要となっている理由は、土地利用が十分に調整されてこなかったことが原因である。これからの5年においては、この点についても関係省庁が連携して取り組むことが必要である。
  • 自然再生については、これまでも計画的な実施が必要と主張してきた。しかし現状をみると5年前とほぼ同じ状況にあることから、生物多様性総合評価など全国的な生態系の状況を調査し、これに基づき自然再生を実施することが必要である。各地域の自主的な取組と合わせ、自然再生を進展させるためには生態系の分断や劣化の原因を考慮することが必要である。
  • 全国的、広域的な視点に基づく自然再生の推進については、生物多様性国家戦略では大まかな方針が示されており、これをより具体的に示す科学的な裏付けを持った計画が必要と考える。
    また、2010年には生物多様性条約締約国会議(COP10)が我が国で開催されることから、日本のアプローチの仕方をこの1~2年で検討し、それを踏まえて全国的な自然再生のあり方を考えることが重要である。
  • 今日の検討結果の中で、自然再生事業の評価のあり方に関し、「生態系サービスの機能」という表現が分かりにくい。また、生態系の評価自体が難しいのではと考える。
  • 環境省
    生態系の評価については、生態系そのものの質の改善と合わせ、社会経済的な便益を想定しているものである。今後、自然再生の評価の仕方について、専門家の方々の意見を踏まえて検討したい。
    また、全国的、広域的な視点に基づく自然再生の推進については、地域の自主性によるものと合わせ、自然再生が必要な箇所を抽出して生態系の回復を図るものとの両者を結びつけて取り組むことが、この5年間で重要な課題であると考えている。特に、後者については、現在得られるデータをもとに2010年までに生態系の総合的な評価を実施し、その結果を踏まえて、自然再生が必要な地域での再生事業を実施する仕組みを構築したい。
    さらに、国際的な取組に関する情報提供については、各省で把握している情報のほか、専門家の把握している情報も合わせて、自然再生に取り組む各地域に提供していきたい。
  • 自然再生は息長く取り組むことが重要である。また、自然再生事業地については、小中学生の環境学習の場となることはもとより、最近では大学や大学院における研究対象にもなりつつある。この中で引き受け先等の問題はあるが、インターンシップを検討したらどうか。
  • 文部科学省
    現在、総合的な学習の時間と合わせ、週末体験活動の一環として博物館の活用などを通じ、生きる力を育むことが重要と考えている。
  • 博物館について、これまでの博物展示のみならず、環境教育の中でその活用を図ることはよい考えである。
  • 自然環境学習に子供たちに参加してもらうためには、道具の準備、荒天時の緊急避難体制の整備、トイレの確保等の課題がある。このため、最低限のハード整備を含んだ施設の整備、指導者の確保等が重要である。
  • 大学との連携については、現在、科学研究費等の活用できる資金があるが、研究者の中には、地域のニーズに応えたいと考えているにもかかわらず、地域との接点がないため実現できないという方がいる。このため、地域と大学の連携をコーディネートする仕組みがあるとよい。
  • 生物多様性について国民の認知度が低いことが問題である。2010年開催のCOP10に向けて、1,000ha規模の自然再生を行って弾みをつけたらどうか。
  • 今年の環境サミットにおいても、現在、我が国で取り組まれている自然再生の内容等をPRすべきである。また、今年10~11月にはラムサール条約締約国会議が韓国で開催されるため、これも大きな機会となる。
  • 順応的管理においては、当該年度の調査結果を次年度の事業実施に反映していくことが基本である。しかし、現在の予算制度では、一昨年度の調査結果に基づき次年度の事業の予算要求を行わなければならないことが課題と考える。
  • 順応的管理とは、仮説を立てて科学的に進めることを意味するが、予算は単年度主義であり順応的管理の実態とそぐわない面がある。現在、科学研究費は繰り越しが可能となっており、自然再生の予算についても科学的側面が重視されるのであれば、このような形態とならざるを得ないと思う。