日時
平成19年3月26日(月) 9:30~12:00
場所
3号館10階共用会議室
出席者
- 委員
- 大和田紘一 熊本県立大学環境共生学部教授
- 小野 勇一 北九州市立自然史・歴史博物館館長
- 近藤 健雄 日本大学理工学部海洋建築工学科教授
- 進士 五十八 東京農業大学地域環境科学部造園科学科教授
- 鈴木 和夫 日本大学生物資源科学部教授
- 辻井 達一 (財)北海道環境財団理事長
- 辻本 哲郎 名古屋大学大学院工学研究科教授
- 広田 純一 岩手大学農学部農林環境科学科教授
- 吉田 正人 江戸川大学社会学部ライフデザイン学科教授
- 鷲谷 いづみ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
- 和田 恵次 奈良女子大学理学部生物科学科教授
- 主務省庁
- (環境省、農林水産省、国土交通省)から関係課室長等出席
※池谷委員は欠席
議事
会議は公開で行われた。(傍聴者約20名)
議題1 自然再生推進法に基づく自然再生協議会の概要
環境省より資料1に沿って、昨年より新たに設置された自然再生協議会と概要について説明がされた。委員からの主な発言は以下のとおり。
- (やんばる河川・海岸自然再生協議会の解散について)解散したところこそ資料を付けるべきである。
議題2 専門家会議の考え方について
事務局より資料2に沿って助言のスキームや専門家会議のあり方について説明がされた。
資料2(助言に当たっての主務大臣の手続き)については意見なし。
議題3 自然再生事業実施計画について
各省より資料3,4に沿って全体構想と各実施計画の概要の説明がなされた。委員からの主な意見は次のとおり。
- 森吉山麓高原自然再生事業実施計画について
- ブナばかりではなくカエデなど侵入木を残し再生して頂きたい。環境学習の際にはブナ林とひとくくりにするのではなく他の樹種も含まれていることを伝えて欲しい。
- 長期間かかる取組なので長期にやっていける仕組みを考える必要がある。
- 大きな面積を対象にする際には、低コストで取り組む必要がある。
- 50年後に検証できるように、目標の設定理由などについて、はっきりした説明が出来るようにするべき。
- 自然の値段、貨幣価値に置き換えられないか。自分は良いアイディアがないが、目標の設定・再生にあたって重要になる。
- クマゲラとブナを結びつけて目標を立てることは大変良いと思われる。生物多様性や生態系の保全というのも良いが、具体的な生物種を出して説明することはおもしろい。
- 地形に関する議論がない。当時改造していかに牧場を作ったのか、プロセスを考えて欲しい。
- 上サロベツ自然再生事業 農業と湿原の共生に向けた自然再生実施計画(緩衝帯・沈砂池)について
- 50年前、30年前、30年後に考えることは異なる。なぜ50年前当時に牧場開発をしたのか、なぜ衰退したのか、なぜ酪農振興しなければならないのか、そういう議論が出来る場を考えて頂きたい。
- 各省庁で視点が違うのもアプローチが多様で良い。この計画は土木事業のように見える。直線水路と沈砂池の設置でよいのか、水路を蛇行化させ、その中で沈砂させるのが本当ではないか。
- 霞ヶ浦田村・沖宿・戸崎地区自然再生事業実施計画[A区間]について
- 矢板を壊して再生することは評価できる。日本の水辺を考えると護岸ばかりで自然海岸が少なくなっている。面積は小さいがいろんな方法で再生に取り組んで欲しい。
- ある部分の再生だけでなく地域全体の再生を考えることは重要で、地域全体の再生目標が必要。その上で今回実施する霞ヶ浦湖岸の再生をどのように位置づけるか検討する必要がある。利根川水系の河川整備計画も5月頃に出てくると思うが、そういった計画の中に全体の自然再生も盛り込んで欲しい。
- 矢板を除去することは、先輩のやったものを壊すことであり大変な努力だと思う。ワンド化させるが、これは流れの速い河川では有効と思うが、果たして霞ヶ浦ではどうなのか。小規模な工事することが理想とは思えない。湖岸景観を考えて緩やかな湖岸に再生させる方がよいのではないか。国が実施するものは国土景観の大きな視点から考える必要がある。
- 野川第一・第二調節池地区自然再生事業実施計画について
- 都市公園でこの再生事業が出てきたことは歓迎すべきことである。周辺の景観も踏まえて欲しい。野川流域は田園景観文化の発祥地的なところ。生物多様性だけの限定的捉え方でなく、市民に親しまれるものとなるように文化的なものも取り入れて欲しい。
議事4 その他
その他の意見として委員から以下の発言があった。
- 環境教育について、具体的に対象・方法等をもう少し示しても良いのではないか。
- 我々は現地を見ないで議論しているので、現地の協議会の専門家も交えて議論し、アドバイスする機会を作ってはどうか。
- 動物のモニタリングは重要と言われているが実施計画には種名が具体的に出てこないものがある。指標種としてモニタリングの際には配慮してほしい。
- 各協議会で議論して出されたもので、身の丈に合った計画となっていると思う。50年間目標に向かって同じ事をするのではなく、その目標をイメージし、今後方向性を変えることが重要。
- 各地域の取組を聞き、目標を何にするか難しいと感じた。今の段階ではとりあえずやってみないとしょうがないのではないか。主務省庁によっても視点が異なる。
- それぞれの協議会にフィードバックする仕組みが欲しい。例えば、森吉山麓では県が牧畜が衰退したのでその跡地を森林に再生するが、一方で農水省ではサロベツで農業を支えつつ自然を守る緩衝帯整備を行うなど、問題の捉え方が異なる。他の協議会で出てくる議論をお互い聞いてもらい自分の協議会にフィードバックしてもらえば良いのではないか。
- 事前に実施計画を送って頂いたが、この実施計画を作ったときにどのような意見が意見が出たか等の経過を詳しく知りたい。経過を詳しくまとめることで実施計画がよいものになると思う。
- 「地域住民、利用者との合意を図る」との記述が多いが合意形成は簡単でない。組織化されていない住民にどのように参加してもらうか具体的に記載してもらっても良いのではないか。
- 社会背景を捉えないと、自然再生は公共事業の単なる代替事業と見られてしまう。
- 日本の海岸は人口海岸がほとんどで、自然海岸が減少している。自然再生の対象として海での取り組みを検討する必要がある。どこの省庁でも良いが海洋の問題は大きい。