自然環境・生物多様性

今回の改正に至った背景

○国立・国定公園特別保護地区は、優れた景観や自然環境の維持を図るため環境に影響のある様々な行為を制限し、厳正な保護が実施されている地域です。新・生物多様性国家戦略の策定(平成14年3月)以降、国立・国定公園に対して生物多様性の保全の役割を担うことが求められるようになってきており、平成14年の自然公園法改正により、国等の責務として生物多様性の保全が位置づけられました。このような中、国立・国定公園内において、人為的な植物の植栽や動物の放出により国立公園等の優れた景観や自然環境に影響を及ぼしている事例が問題として認識されるようになってきました。人為的に生物の分布を変えてしまうことは、長い年月をかけて生物が獲得してきた進化と分布の歴史を否定することにもつながりかねないのです。

例えば、支笏洞爺国立公園(北海道)の羊蹄山(ようていさん)や樽前山(たるまえさん)には、もともとコマクサは自生していませんでしたが、愛好家(?)と思われる人物が種を撒いたことによりコマクサが分布するようになりました。コマクサは、高山植物の女王とも呼ばれ、本来の自生地では手厚く保護すべき植物ですが、羊蹄山や樽前山では、本来自生しないはずの植物として除去作業が実施されています。

写真:コマクサ(羊蹄山に移入・定着した個体)
コマクサ(羊蹄山に移入・定着した個体)

写真:樽前山での除去作業の様子
樽前山での除去作業の様子

○国会における附帯決議等において、自然公園への外来生物の持ち込みや、在来種の国内移動による生態系等への被害防止について規制強化が求められています。

  • 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 国会附帯決議(抜粋)
     (平成16年6月、衆議院環境委員会)
     「国内由来の外来生物の問題については、自然公園法等の既存法令を活用した規制の強化などを行うこと。」
  • 自然公園法の一部を改正する法律 国会附帯決議(抜粋)
     (平成14年4月、参議院環境委員会。衆議院においても同趣旨の附帯決議あり。)
    「自然公園内の生態系に著しい悪影響を及ぼすおそれのある種の個体を外部から持ち込むことを制限するなど、適切な移入種対策を講ずること。」