自然環境・生物多様性
第65次南極地域観測隊同行日記12
第12回:自然保護官(レンジャー)、日本に帰る
2024年2月29日(木)
みなさまこんにちは。お元気にしていますか?
南極観測船しらせは今、昭和基地を離れつつあります。
外来種調査から帰った翌日、私は昭和基地を離れることになりました。
本当はもう少し残る予定だったのですが、二日後のブリザードが予想より大きくなる可能性があったので、おそらく避難も兼ねて、南極観測船しらせに帰ることになったのです。
<しらせから見る夕焼けの昭和基地>
そしてブリザードが明け、すべての撤収がひと段落ついたころ、ついにしらせは昭和基地を立つことになったのです。
しらせはゆっくりとスクリューを回し、昭和基地のわきを通ります。
オングル海峡に、万感の思いを込めた汽笛が響きました。
昭和基地がオングル島の陰に消えていきます。基地を一周し、福島ケルンを調査した日が思い出されます。
私は南極で大きな怪我もなく、大きく調子を崩すこともなく過ごすことができました。この基地での生活はひとえに、南極地域観測隊の長年にわたる不断の努力の積み重ねのうえにあったのでしょう。そして埋立地をはじめ、これからも昭和基地の環境はどんどんと改善されていくことでしょう。
<しらせから見る昭和基地>
しらせはオングル諸島をまわり海峡を抜けます。
島内を巡視した際に見た景色を、今度は船から望みます。
船首からはラングホブデの露岩が見えます。今回、ラングホブデ方面には四度訪れました。
氷河、雪鳥沢、ぬるめ池…、訪れる場所によって様々な景色を見せたラングホブデ、重点的に調査が行われてきたことも頷ける場所でした。
その奥にはペンギン調査に同行したスカルブスネスの露岩が見えます。
ペンギン村はどうなったでしょうか。ペンギンもオオトウゾクカモメも、そろそろ巣立ちなのでしょうか?きっと来年も、これからもあの生命の営みは繰り返されていくのでしょう。
<ラングホブデ、スカルブスネスが見える>
今回訪れた場所を巡るかのようにしらせは進み、やがて沖に舵を向けました。
このまましらせは南極地域観測隊の夏隊と64次の越冬隊を乗せ、アムンゼン湾、トッテン氷河沖にて調査観測を行いながら帰路につきます。
私は日本に帰った後もしばらくは南極環境保護法の担当者として、そして南極の自然に直接触れた南極自然保護官(レンジャー)のひとりとして、今回の経験を胸に業務を進めて行くことになります。
しかし、おそらく、もう二度と自然保護官として南極を訪れることは叶わないでしょう。
さらば南極よ。さらば昭和基地よ。
遠ざかる大陸を、南極保護官はずっと、ずっと眺めていました。
<遠くなるラングホブデ>