自然環境・生物多様性
第3回世界自然遺産候補地に関する検討会の概要
日時
平成15年4月22日(火)10:00~12:15
会場
環境省第1会議室
出席委員
岩槻邦男放送大学教授、上野俊一国立科学博物館名誉研究員、
大澤雅彦東京大学教授、小泉武栄東京学芸大学教授、
土屋誠琉球大学教授、三浦慎悟森林総合研究所東北支所地域研究官、
吉田正人日本自然保護協会常務理事
議事
- (1)詳細検討対象地域の個別検討について
- (2)その他
概要
- 前回(第2回)検討会で詳細に検討すべき対象地域とされた17地域に、海岸景観の代表地域が含まれていなかったため、三陸海岸、山陰海岸の2地域を加えた19地域を対象とすることとなった。この対象地域について詳細検討が行われた。
- 具体的には、
[1]クライテリアの適合可能性と
[2]国内外の既存登録済み地域(既存世界自然遺産)等との比較
について、学術的見地から検討がなされた。
また、自然遺産としての完全性という観点から、現状の担保措置についても議論があった。 - 主なコメントは以下のとおり。
- 遺産の登録基準に定める顕著な普遍的価値への適合性をきちんと検討すべき。
- 北海道の各地域はロシアの既存登録地(シホテーアリン)と似ているが、知床は海岸部や流氷との関係が独特。
- 知床と阿寒・屈斜路・摩周、大雪山と日高山脈は一体的に検討してもよいのではないか。
- 規模が小さいからというだけで単純に複数地域を統合するのではなく、それぞれの地域の価値を検討すべき。また、日高山脈と大雪山は地史的にも生物的にも一体的ではない。
- Udvardyの夏緑樹林の区分では、飯豊・朝日連峰に代表される多雪環境は世界的に見てもユニーク。ただし、この区分には、既に白神山地が登録されている。
・富士山については、保護の担保がある5合目以上は生物的に見るべきものはない。学術的に重要なのは1合目から3合目であるが、開発が進んでいる。 - 祖母山・傾山・大崩山、九州山地とその周辺山地に見られる常緑広葉樹林は世界的に見ても価値は高いが、大面積でまとまって残っていない。たとえば、大森岳中心の綾付近などについて、もう少し検討を深めることができないか。
- 小笠原諸島、南西諸島は固有種が多く、学術的価値は高い。このうち、小笠原諸島については、固有種の保全に向けた取り組みが不可欠。また、南西諸島を列島弧として評価するならば、生物学的には屋久島・種子島も一体的に検討してもよいのではないか。
- 我が国には人手の入った自然地域も多く、このようなところは文化的景観としての評価等も将来的な課題として検討してみてはどうか。
- 次回検討会(第4回)は、5/26(月)午後に開催予定。
今回の議論をふまえ、特に完全性の条件への適合性の検討など、さらなる検討資料の収集、分析作業を行うよう、事務局に対して指示があった。 - 次回検討会においては、追加作業結果も踏まえた総合評価を行い、検討会としての最終取りまとめを行う予定。
詳細検討対象地域・・・全19地域
- 利尻・礼文・サロベツ原野
- 知床
- 大雪山
- 阿寒・屈斜路・摩周
- 日高山脈
- 早池峰(はやちね)山
- 飯豊・朝日連峰
- 奥利根・奥只見(おくただみ)・奥日光
- 北アルプス
- 富士山
- 南アルプス
- 祖母山(そぼさん)・傾山(かたむきやま)・大崩山(おおくえやま)、九州中央山地と周辺山地
- 阿蘇山
- 霧島山
- 伊豆七島
- 小笠原諸島
- 南西諸島
- 三陸海岸
- 山陰海岸