自然環境・生物多様性

第1回世界自然遺産候補地に関する検討会の概要

日時

平成15年3月3日(月) 13:25~16:20

会場

三田共用会議所

出席委員

岩槻邦男放送大学教授、上野俊一国立科学博物館名誉研究員、
大沢雅彦東京大学教授、小泉武栄東京学芸大学教授、
土屋誠琉球大学教授、三浦慎悟森林総合研究所東北支所地域研究官、
吉田正人日本自然保護協会常務理事

概要

  • 座長には岩槻委員が選出された。
  • 事務局から提案された、候補地選定の考え方(案)、母集団(案)、詳細検討対象地域の絞り込み手順(案)は概ね了承された。
  • 3月25日に開催予定の第2回検討会では、今回決定された手順により選定された詳細検討対象地域(案)について議論される予定。
  • 主な質疑・意見は以下の通り。

総論

  • マスコミなどの一般的な関心は何処が世界遺産に選ばれるかに限定されるが、世界遺産の候補地にならないからといって、国内的にも重要でないということにはならない。自然地域については、その保護がおろそかにならないよう配慮すべき。選考の過程で、国内的な重要性への認識が深まるよう、国民に対する普及啓発が必要。
  • 世界遺産は国際的な目に触れることも多いので、登録後の保護管理やモニタリングにも尽力して欲しい。
  • 暫定リストは、推薦の前提条件であるだけでなく、自然遺産の登録の(地域間などの)不均衡解消の意味もある。

選定の考え方

  • 世界遺産として登録されるためには、かなり説得力のあるダイナミックな説明が必要。国際的な比較も踏まえて、特異性や普遍性を証明していくことが必要。
  • 文化的景観は取り扱わないのか。
    (事務局)文化的景観は文化遺産の概念であるので本検討会では直接の対象としない。ただし、絞り込みの段階で自然遺産としては無理でも、そうした価値が認められるのではないかといった御意見があれば伺いたい。
  • 学術的観点で検討する場合にも、推薦候補地の十分な保護が担保されていることは重要な要件と考えるがどうか。
    (事務局)候補地が絞られてきた段階では、保護区の要素も分析の中に含めてご報告することになる予定。推薦するのであれば保護の充実を、というご意見と解釈したが、その点は十分留意したい。
  • 母集団の中には検討するまでもないものもあり、初めから適当な地域を限定し、その詳細検討をした方が良いのではないか。
    (事務局)母集団を広く取った上で手順を定め、絞り込んでいくことにより客観的な幅広い検討としたい。ある程度の絞り込みを事務局で行った上で、第2回、第3回で詳細検討の時間をとる考え。
  • 自然の質から見た絞り込みを機械的に行うことの問題はないのか。
    (事務局)詳細検討を行うにはある程度絞り込む作業を行わざるを得ない。抽出したものを見ていただき、専門的な見地から追加すべきところがあれば、次回以降に、検討委員の御意見を反映し追加をしていきたい。
  • 地形・地質や動植物など個々の要素のみを別々に判断するのではなく、世界的な視野からの日本の自然の特徴は何かを念頭に置き、気候、地形・地質、動植物など色々な要素の重要性を重ね合わせていけば、自ずと候補が絞られてくるのではないか。
  • 世界自然遺産申請地の評価を行うIUCNでは世界的な生物地理区などの代表性や海外の類似地域との比較等により評価を行うので、例えば、北海道、本州、小笠原、南西諸島などの地理区分ごとにとりまとめることが必要。
  • 地形地質の母集団には、国土地理院が作成した各県毎の典型地形のリストを使ってみてはどうか。
  • 母集団から最初に絞込む段階で、植生の観点からのデータだけでなく、希少動物といった動物のデータももっと用いるべきではないか。
    (事務局)希少種データは、詳細検討対象地域を絞り込む最後の段階で「重みづけ」の材料として使うことを考えていたが、今後スクリーニングを試行する中で更に先生方のご意見を伺いたい。

委員会の進め方

  • 各地からの要望が増えると思うが、その聴取や国民への情報公開をどのように行うのか。 また、学会などの意見を聞かないのか。
    (事務局)学術的な見地からの検討なので、あらためて国民の意見を聴く予定はない。国民の関心の高さに応えるために、会議や検討会資料は全て公開する。なお、学会から学術的な意見が出されれば、検討の参考としたい。

その他

  • 今回の選考過程とは別の機会に、ユネスコのMAB地域への新規指定も検討して欲しい。
問い合わせ先
環境省自然環境局自然環境計画課(代表03-3581-3351)
課長 田部和博(内線6430)
課長補佐 奥田直久(内線6481)
審査官 堀内 洋(内線6436)