屋久島町は、鹿児島県大隅半島の佐多岬から南方約60kmに位置する屋久島と口永良部島から構成されています。屋久島は、面積約504㎢、周囲約130kmのほぼ円形の島で、約12,000人が生活しています。島の面積の約9割は森林に覆われ、その一部が森林生態系保護地域に指定されているとともに、標高1,200mを超える地域には、樹齢千年を超えるスギの森が生育し、屋久島スギ原始林として特別天然記念物にも指定されています。
一方、口永良部島は、面積約35㎢、周囲約50kmの島で、約100人が生活しています。口永良部島は、現在も活発な活動を続ける火山の島であり、海岸部には切り立った海食崖や海食洞窟など変化に富んだ地形を有しています。また、山麓一帯が照葉樹林とリュウキュウチク群落に覆われていることから、緑の火山島と呼ばれています。
両島は我が国でも傑出した自然の風景地といえ、屋久島は昭和39年(1964年)3月に、口永良部島は平成19年(2007年)3月に国立公園に指定されました。
また、縄文杉に代表される樹齢数千年に及ぶスギの巨木群の景観、亜熱帯から冷温帯までの顕著な植生の垂直分布、多くの固有種や希少種等を含む約1,900種類以上の植物に代表される多様な生物相がみられます。こうした特異な生態系や自然景観が評価されて、平成5年(1993年)12月、日本ではじめての世界自然遺産に登録されました。さらに、北太平洋地域で最大のアカウミガメの産卵地として、平成17年(2005年)11月には、永田浜がラムサール条約湿地に登録されました。また、平成28年(2016年)3月に屋久島・口永良部島ユネスコエコパークとして拡張登録されました。
屋久島では、世界自然遺産登録やそれに先立つ交通の改善を契機に、縄文杉登山をはじめとした登山やエコツアーを目的とした観光客が増加しましたが、現在では減少傾向にあります。世界自然遺産地域をはじめ多くの自然資源に触れることができる場であることに変わりはないものの観光客数が減少しているのは、他の島嶼や豊かな自然資源を有した国内の他地域の観光業の活性化により、屋久島町の価値ある観光資源の情報が観光客に届けられていないことが一因であると思われます。来島者の意識、島内観光業の品質の評価など早急に分析・対策をする必要があります。
また、世界遺産、縄文杉をはじめとする屋久杉の森、百名山「宮之浦岳」、ラムサール条約湿地「屋久島永田浜」とウミガメなど、貴重な価値を有する多くの資源があります。
この多様な自然観光資源に加えて、年間を通した活動が可能という条件から、登山・海・川で多くのガイドが活動しています。しかし、そのレベルは様々で、世界遺産の地としてどのようなエコツアーガイドが必要とされているのか、客観的かつ謙虚に現状を評価し、町公認ガイド制度を核としたエコツアーガイドの職能の確立と品質の確保、向上のための対策を進める必要があります。