雪の白川郷合掌造り集落
白川村は、岐阜県北西部に位置し、日本でも有数の豪雪地帯で、村の面積356.64㎢(岐阜県の約3%)のうち95.7%を山林が占めています。自然豊かな飛騨の中でも、白川村は、白山をはじめとする多くの山々と清流庄川が急峻な地形をなし、人の手が比較的入っていない自然の姿を残しており、その中には白山国立公園や天生県立自然公園など生物多様性に富んだ豊かな自然が存在する地域で、村全域が白山ユネスコエコパークの登録エリアになっています。標高2,700mの白山山頂部から里地の標高500mまでの標高差があり、その急斜面地の間を縫うように庄川が流れ、その流域に集落が形成されてきました。
また白川村は季節変化が著しく、冬の豪雪は人々に冬の生活の厳しさと同時に春の喜びも与えてくれています。このような白川村の自然環境は、白川村の地形や気象によるところ大きく、植生や動物相にも白川村らしい特色をみることが出来、10億年以上にわたる白川村の地史がもたらした自然の恵みです。
白川村は境界を岐阜県の高山市と飛騨市、富山県の南砺市、石川県の白山市、あわせて4市の地方自治体に接し、合掌造りや「結」の精神、どぶろく祭を始めとする伝統行事、有形及び無形の文化財など、今では国際的にも注目される様々な歴史や伝統文化を守り育んできた背景があります。
気候は、夏は涼しく過ごしやすい一方、冬は一面の雪に覆われるという特徴があり、この気候をうまく利用した暮らしの知恵が残っています。
村には1995年に世界遺産(文化遺産)に登録された白川郷合掌造り集落、白山国立公園や天生県立自然公園などの素晴らしい文化資源、自然資源があります。これらの資源は村が開発に不利な地域であった故に保全されたとも言えます。また、村の大半を占める山林が、来訪者に自然の雄大さを感じさせ、その多くが天然林として保存されていることが、都会では感じられない四季折々の景色を生み出し、冬でさえもライトアップを通じて人を惹きつける魅力となっています。
1995年に白川郷合掌造り集落が世界遺産(文化遺産)に登録され、年間60万人前後であった観光客数は約170万人に増加しました。2009年には東海北陸自動車道が全線開通し、2015年に北陸新幹線が開通、関東方面からの観光客も増加しています。また、近年は、海外からの観光客も増加している一方で、交通の利便性の向上とともにすっかり通過型の観光地化が定着しています。
白川村には世界遺産以外にも恵まれた自然環境がある一方で、それら魅力ある観光資源を観光振興には繋げられておらず、「世界遺産に来た」、「白山国立公園に来た」ということだけが心に残り、それぞれが持つ魅力を伝えきれてはいません。自然環境の保全という観点でもマナー啓発や訪日外国人観光客への多言語対応等考えると、適正に利用されているとは言い難い現状です。国内はもとより外国人観光客の方にとっても魅力的と感じてもらえるようなツアーの作成、効果的な情報発信や魅力を伝えられるガイドの育成等を一体化した仕組みが課題です。これらの取り組みにより、エコツーリズムを通じた「自然環境の保全」、長期滞在がもたらす「観光振興」や「地域振興」、そしてそれらを通じた「環境教育」がより一層充実すると考えます。
白川村では、エコツーリズムの推進によって目指す地域の姿を、「白川村民憲章」を活かし、また、これを実現するために次の3つの基本方針に基づいてエコツアー事業を推進していきます。
白川村民憲章(昭和50年11月1日制定)
わたくしたちは、霊峰白山のふもと、美しく厳しい自然と香り高い文化に恵まれた白川村民です。
•美しい風土を誇り 自然を守ります
•純朴な心を失わず 感謝の生活をします
•豊かな文化をたつとび 伝統をいかします
•きびしい自然に負けず たくましく生きます
•たがいに力をあわせ 住みよい村をつくります
白川村の生物多様性に富んだ豊かな自然を守り、持続性のある観光まちづくりを目指します。
豊かな文化を継承し、伝統を活かした多種多様なエコツアー・体験プログラムを開発し、宿泊滞在型エコツーリズムの確立を目指します。
環境・観光教育に村民や行政、団体が一丸となって取り組み、ガイド人材の育成やホスピタリティの醸成を目指します。
さらに、基本方針に基づく取り組みの要点を「八つの推進ポイント」として設定します。
■森林資源の保全と適正な維持管理に努め、間伐材などの森林資源の付加価値を高める方策を検討し、利活用を推進すると共に、森林資源が持続的に利用できるように保全します。
■白山国立公園、及び天生県立自然公園の自然保護対策を推進します。
■大白川園地を始めとする自然公園等の利活用に向け、施設整備や救助体制の確立、広報活動を推進します。
■大白川を環境教育やレクリエーションの場として積極的に活用するための方策について検討し、レクリエーション客誘致のためのPR活動を展開します。
■自然保護に関係する団体の活動を支援し、大自然の魅力を伝えるためのガイドを育成します。また、森林資源(伐採木)を活用した村の産業育成についても検討していきます。
■村全域の歴史・文化を総合的に伝える仕組みについて検討し、国内外から訪問する観光客に対して、村内の自然・歴史・文化や世界遺産に関する十分な情報を提供できるように、観光ガイドの育成とその組織化を支援します。
■トヨタ白川郷自然學校や天生県立自然公園協議会等、関係団体と連携し、環境の時代にふさわしい環境教育の基盤づくりを進めます。そして、これを国内外に広くアピールすることで、新しい訪問客層を確保します。
■学校教育における環境教育プログラムの導入を支援すると共に、「里山遊び塾」や「子ども会」などの地域活動を通して、村の自然にふれることのできる体験活動を実施するよう働きかけます。また、村民から名人を発掘して依頼するなど、村民自身がもつ知恵を子どもたちに伝えられるようなプログラムづくりについて検討します。
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