自然環境・生物多様性

何が問題なの? 水草、全部切る!?

生態系等への影響

  • アメリカザリガニによる被害は、大きく分けて以下の3つ。
    1. 在来種への直接的な影響
    2. 種間相互作用、生態系全体への影響
    3. 在来種への病気の媒介
  • アメリカザリガニが既に蔓延している水域でも、捕獲し低密度状態にしたことにより、水生生物相(カエル類、魚類、水生昆虫類、水生植物)が劇的に回復した事例が報告されている。
  • 一部では農業被害も報告されている。

1. 生態系への影響

① 在来種への直接的影響

【水生植物】

  • アメリカザリガニの食害により水生植物が減少していた千葉県内の親水公園では、アメリカザリガニの駆除を行ったところ、抽水植物やミジンコのような動物プランクトンが増加。しかし、完全駆除ではないため沈水植物の増加までには至っていないと報告されている。
  • 茨城県の牛久沼では、浮葉植物であるオニバスが、アメリカザリガニの増加に伴い減り続けていることが報告されている。
  • アメリカザリガニからの影響を受けやすい水草の種類を明らかにした室内実験の事例では、シャジクモ科に属するヒメフラスコモとカタシャジクモ、コカナダモ、ハゴロモモ、セキショウモ、アサザのうち、アメリカザリガニによる捕食が最も多かったのはヒメフラスコモであり、続いてハゴロモモ、コカナダモの順であることの報告がある。
  • 兵庫県内はため池が多く、かつてはジュンサイ採りの業者が多くいたが、アメリカザリガニの侵入や水質の悪化などの影響により、ジュンサイが生育しているため池がこの10年ほどで激減しているとされる。
  • 神奈川県の公園緑地内の池では、アサザやコウホネなどの水生生物が生育していたが、アメリカザリガニが持ち込まれ爆発的に増えた結果消失。夏になり水温が上がるとプランクトンが発生し水が濁っている。

アメリカザリガニ導入前後の池の状況(神奈川県HP)

【水生昆虫類】

  • 石川県金沢市のシャープゲンゴロウモドキが生息していた池では、アメリカザリガニの侵入により植生が消失し、その結果、シャープゲンゴロウモドキも絶滅している。
  • 静岡県磐田市桶ヶ谷沼では、アメリカザリガニの生息数が急激に増加した結果、オニバスなどの希少植物だけではなく、ヒシやホザキノフサモなどのごく普通に見られた植生植物すら確認されなくなり、ベッコウトンボをはじめ、コバネアオイトトンボなど希少トンボ類の個体数が著しく減少。このほかに、コバンムシやコオイムシなどの水生昆虫も相次いで絶滅している。
  • 長崎県五島市のアメリカザリガニが生息するため池と未定着のため池で水生昆虫相の比較をしたところ、未定着のため池ではゲンゴロウ類等の希少昆虫を含む20種類以上の水生昆虫が確認された一方で、アメリカザリガニが高密度で確認されたため池ではわずか3種類となっている。
  • 三重県には、近年まで全国的に唯一安定した産地が存在した。アメリカザリガニの侵入により産地の多くが絶滅状態となっており、三重県内でも現在は確認例がない。
  • 青森県、秋田県、山形県におけるマルコガタノゲンゴロウ生息地では、アメリカザリガニの侵入の結果、絶滅したため池が複数存在することが明らかとなっている。
  • 岡山県の水田地帯ではタガメの個体数が減少傾向にあるが、アメリカザリガニの捕食が起因していることが明らかとなっている。
  • 福井県の中池見湿地ではアメリカザリガニの侵入によりトンボ類やゲンゴロウ類などの水生昆虫が激減しており、トンボ幼虫(ヤゴ)の捕獲数をアメリカザリガニが侵入していない周辺湿地と比較した結果、著しく少ないことが明らかとなった。

【魚類】

  • 室内実験によりミナミメダカ、ヤリタナゴ、ドジョウに与える影響を調査した結果、いずれもアメリカザリガニによる捕食により個体数を減らしたが、特に底生性のドジョウがもっとも捕食による影響を受けることが報告されている。
  • アメリカザリガニを駆除した結果、ホトケドジョウが増加した事例が報告されている。
  • 小規模なビオトープにおけるカワバタモロコの調査事例では、アメリカザリガニがいないビオトープでは稚魚が多数採集された一方で、アメリカザリガニがいるビオトープでは稚魚はほとんど見つからなかったことが報告されている。
  • タナゴ類の産卵母貝への食害の影響として、宮城県旧品井沼周辺ため池群による事例では、アメリカザリガニがタガイを食害した結果、産卵場所(産卵母貝)を失ったゼニタナゴが消失したとされる。

ホトケドジョウを食べるアメリカザリガニの写真
ホトケドジョウを食べるアメリカザリガニ

【両生類】

  • 東京都と神奈川県にまたがる多摩丘陵では、トウキョウサンショウウオの繁殖地である湧水のたまりにアメリカザリガニが侵入し、卵嚢の破壊等による深刻な影響がみられていること、同様の卵塊の破壊はヤマアカガエルやアズマヒキガエルと言ったカエル類でも観察されていることが報告されている。
  • 千葉県長南町の17の池のトウキョウサンショウウオの生息地の調査事例では、トウキョウサンショウウオの幼生の生存はアメリカザリガニの生息密度と負の相関関係を示し、さらに7日間実験的に圃場を囲いアメリカザリガニを閉じこめた場合には、サンショウオ幼生の高い死亡率が観察されたことが報告されている。
  • 広島県東広島池の湿地では、アカハライモリの個体数が減少傾向にある要因として、確認されたアカハライモリの多くが損傷していることから、アメリカザリガニによる捕食被害が推察されている。

② 種間相互作用、生態系全体への影響

  • オオクチバスやコイ等の上位の捕食者の存在によりアメリカザリガニの個体数が抑制されている場合、上位捕食者の駆除がアメリカザリガニの爆発的増加に繋がる(中位捕食者の開放)。
  • 広島県北西部のため池で池干しを行いオオクチバス(ブラックバス)を駆除したところアメリカザリガニが大量発生し水生植物が消失した事例が報告されている。

大量発生したアメリカザリガニのため池への深刻な影響

外来魚オオクチバス(ブラックバス)の駆除に伴い大量発生したアメリカザリガニのため池への深刻な影響

左上:池干し前 2008年8月 右上:池干し 20091月 

左下:アメリカザリガニに切断されたベニオグラコウホネ

右下:水生植物の消失2009年10月写真提供:坂本充氏(広島市森林公園昆虫館)

  • 茨城県つくば市のため池では、農業用水の利用による水位低下で酸欠が発生し、捕食者である大型魚が消失したため、アメリカザリガニが爆発的に増加し、結果としてハス等の水生植物の消失や水質悪化が起こったことが報告されている。

茨城県土浦市のため池におけるアメリカザリガニの被害例

写真提供:及川ひろみ氏(認定NPO法人 宍塚の自然と歴史の会)

  • 石川県の丘陵部では、チュウブホソガムシやシャープゲンゴロウモドキの生息するそれぞれ小規模な池へ、1990~2000年代に本種が侵入した。いずれの池でも侵入後数年でこれらの絶滅危惧種は局所絶滅し、その他の水生昆虫もほとんど確認されなったほか、水生植物も消失した。

石川県金沢市のシャープゲンゴロウモドキの生息していた池

植生は消失し、茶色く濁っている。シャープゲンゴロウモドキは絶滅し、

他の水生生物もほとんど確認されなくなった。写真提供:西原昇吾氏(中央大学)

  • 外来水草の一種オオカナダモは、アメリカザリガニと同所的に出現しやすい傾向があること、それらが出現する場所ではクロモをはじめとする在来沈水植物が出現しにくい傾向があることから、アメリカザリガニによる水草の採餌や切断は、在来水草の成長に負の影響を及ぼすことに加え、地域内でのオオカナダモの生育域を拡大するとともに、オオカナダモはアメリカザリガニに隠れ家としての機能を提供する等、相互に生育・生息可能性を高めている可能性が示唆されている。

アメリカザリガニの存在により繁茂する可能性のある外来水草オオカナダモ
アメリカザリガニの存在により繁茂する可能性のある外来水草オオカナダモ

  • 蚊の幼虫(ボウフラ)の捕食者であるトンボ類の幼虫(ヤゴ)が、アメリカザリガニの影響で個体数が減少するとともに、ボウフラの捕食効率が低下することにより、直接的・間接的に感染症媒介生物である蚊の個体数が増加して生態系サービスが低下する可能性が指摘されている。

③ 病気の媒介

  • アメリカザリガニが媒介するザリガニペスト(アファノマイシス菌)によるニホンザリガニへの感染リスク(ニホンザリガニはザリガニペストに感染した場合の致死率が高いとされる)がある。
  • 北海道では、2014年10月に札幌市南区、2015年9月に札幌市内の石狩川でニホンザリガニの大量死亡が観察され、死亡要因を分析したところ、ザリガニペストに感染したことが明らかとなった。さらに遺伝子解析の結果、アメリカザリガニが保菌していたザリガニペストに由来している可能性が高いことが分かっている。
  • 甲殻類に広く感染することが知られる白斑病の媒介リスク。中国では、エビの養殖池に隣接した天然河川で捕獲されたアメリカザリガニの99%が白斑病に感染していることが報告されている。

ザリガニペストに感染し大量死する恐れがあるニホンザリガニ
ザリガニペストに感染し大量死する恐れがあるニホンザリガニ

2. 農林水産業被害

  • 茨城県つくば市の圃場では、アメリカザリガニが掘った巣穴が漏水時に洗掘されることで拡大し、相当量の漏水が発生して修復労力を要すると思われる状況が報告されている。
  • さらに漏水が発生した圃場では、除草剤の効果が喪失しコナギが繁茂し、水稲の収量も減少しており、こうした農業被害により耕作放棄が発生する恐れもあることも指摘されている。
  • 秋田県や千葉県、兵庫県ではジュンサイ栽培池でのアメリカザリガニ食害の懸念も報告されている。
  • 石川県ではドジョウの養魚場が多く分布するが、ドジョウ仔魚の歩留まり低下の最大の原因としてアメリカザリガニの食害が挙げられており、その対応が課題となっている。

秋田県の秋田県立大学内圃場内でのジュンサイの食害状況 苗定植直後 2017年6月29日
アメリカザリガニによる農業被害(ジュンサイ)

秋田県の秋田県立大学内圃場内でのジュンサイの食害状況

左上:ジュンサイ苗定植直後 2017年629日 右上:ジュンサイ苗の消失 201725日 下段:食害されたジュンサイの葉柄

写真提供:阿部誠氏(秋田県立大学)

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