騒音に係る環境基準について

(昭和46.5.25 閣議決定)

 公害対策基本法第9条の規定に基づき、騒音に係る環境上の条件について生活環境を保全し、人の 健康の保護に資するうえで、維持されることが望ましい基準(以下「環境基準」という。)を次のよ うに定める。

第1 環境基準

 環境基準は、地域の類型および時間の区分ごとに次表の基準値の欄に掲げるとおりとする。

地域の類型時間の区分該当地域
昼間朝・夕夜間
AA 45ホン(A)以下 40ホン(A)以下 35ホン(A)以下 環境基準に係る水域及び地域の指定権限の委任に関する政令(昭和46年政令第159号)第2項の規定に基づき都道府県知事が地域の区分ごとに指定する地域
50ホン(A)以下 45ホン(A)以下 40ホン(A)以下
60ホン(A)以下 55ホン(A)以下 50ホン(A)以下
(注)
  1. 1 AAをあてはめる地域は療養施設が集合して設置される地域などとくに静穏を要する地域とすること。
  2. 2 Aをあてはめる地域は主として住居の用に供される地域とすること。
  3. 3 Bをあてはめる地域は相当数の住居と併せて商業、工業等の用に供される地域とすること。
  4. ただし、次表に掲げる地域に該当する地域(以下「道路に面する地域」という)についてはその環境基準は上表によらず次表の基準値の欄に掲げるとおりとする。
地域の区分時間の区分
昼間朝・夕夜間
A地域のうち2車線を有する道路に面する地域 55ホン(A)以下 50ホン(A)以下 45ホン(A)以下
A地域のうち2車線を越える車線を有する道路に面する地域 60ホン(A)以下 55ホン(A)以下 50ホン(A)以下
B地域のうち2車線以下の車線を有する道路に面する地域 65ホン(A)以下 60ホン(A)以下 55ホン(A)以下
B地域のうち2車線を越える車線を有する道路に面する地域 65ホン(A)以下 65ホン(A)以下 60ホン(A)以下

  備考 車線とは1縦列の自動車が安全かつ円滑に走行するために必要な一定の幅員を有する帯状の車道部分をいう。

第2 測定方法等

 騒音の測定方法、計量単位および測定機器は、次のとおりとする。

  1. 1 測定方法は、日本工業規格Z8731に定める騒音レベル測定方法による。測定結果の評価については、原則として中央値を採用するものとする。
  2. 2 計量単位は、ホン(A)を用いる。
  3. 3 測定機器は、日本工業規格C1502に定める指示騒音計、もしくは国際電気標準会議のPub/179に定める精密騒音計、またはこれらに相当する測定機器を用いる。

第3 測定場所

 測定は屋外で行なうものとし、その測定点としては、なるべく当該地域の騒音を代表すると思われる地点または騒音に係る問題を生じ易い地点を選ぶものとする。
 この場合道路に面する地域については、原則として道路に面し、かつ住居、病院、学校等の用に供されている建物から道路側1メートルの地点とする。
 ただし、建物が歩道を有しない道路に接している場合は、道路端において測定する。
 なお、著しい騒音を発生する工場および事業場の敷地内、建設作業の場所の敷地内、飛行場の敷地内、鉄道の敷地内およびこれらに準ずる場所は測定場所から除外する。

第4 測定時刻

 測定時刻は、なるべくその地点の騒音を代表すると思われる時刻または騒音に係る問題を生じ易い時刻を選ぶものとする。
 この場合主として道路交通騒音の影響をうける道路に面する地域については、測定の回数を、朝、夕、それぞれ1回以上、昼間、夜間それぞれ2回以上とし、とくに覚醒および就眠の時刻に注目して測定するものとする。

第5 環境基準の達成期間等

 環境基準は適用地域の種別により、次の区分により、第6の施策の進展とあいまつて、その達成、維持を図るものとする。

  1. 1 道路に面する地域以外の地域については、環境基準の設定後直ちにその達成を図るよう努めるものとする。
  2. 2 道路に面する地域については、設定後、5年以内を目途としてその達成を図るよう努めるものとする。
     ただし、道路交通量が多い幹線道路に面する地域で、その達成が著しく困難な地域については5年を越える期間で可及的速かに達成を図るよう努めるものとする。

第6 環境基準達成のための施策

 環境基準の達成のためには、騒音を発生する者の特段の協力が必要であるが、政府としては、次により諸施策を強力に推進し、その達成維持を図ることとする。
 なお、施策の実施にあたつては、財政、金融、税制面において適切な助成措置を講ずるとともに、中小企業に対しては特別の配慮を払うものとする。

1 規制の強化
 騒音の規制の強化については、環境基準達成との関連で必要に応じ、工場騒音に係る規制基準の見直し、自動車騒音に係る許容限度の設定および見直しを行なうこととする。
2 土地利用の適正化
 工場と住居を分離することを基本として土地利用の適正化を図るとともに、騒音発生工場等の新増設に対する調整等を推進する。また、地域の開発計画等の策定と実施に際しては、騒音   による公害の防止につき十分な配慮を払うこととするとともに、都市計画法、建築基準法等土地、建物に関する法令の運用にあたつては、第1に示す基準値の達成に資するよう配慮するものとする。
3 騒音防止施設の設置改善の促進
 法令による規制の実効をあげるため、工場等における防音装置の設置、低騒音機械の採用等を促進するとともに、これらの設置採用が困難である中小企業に対しては工場団地への移転等を配慮する。
 なおこれらの発生源対策とともに、必要に応じ緩衝緑地等公共施設の整備もあわせて実施することとする。
4 道路交通騒音に対する総合的施策の推進
 道路に面する地域については、前記の騒音対策に加えて、騒音低減のための自動車の改善、道路交通騒音低減に資する道路構造の改善、都市再開発の推進、交通の円滑を著しく妨げない範囲における交通規制の実施、交通取締りの強化等各種の施策を総合的に推進することとする。
 また、道路の新設に際しては、道路交通騒音低減のための他の施策と併せて、道路に面する地域の環境基準の達成に資するよう、道路計画、その他道路周辺の土地利用計画の策定と実施に十分配慮するものとする。
5 監視測定体制の整備
 騒音の状況を的確には握評価し、および騒音防止のための規制措置を適正に実施するため、騒音について常時必要な監視測定を行ないうるようその体制の整備強化を図ることとする。
6 騒音防止技術等の開発の促進
 騒音による公害の防止のため、低騒音機械、低騒音車等の発生源における騒音低減技術の開発、騒音の伝搬機構、しやへい効果等の解明に関する研究測定技術の開発および騒音の人体影響に関する研究を促進することとする。
7 地方公共団体に対する助成等
 騒音防止対策の円滑な推進を図るため、地方公共団体に対して必要な助成等を行なうこととする。とくに、公害対策基本法に基づく公害防止計画の実施については、特別の配慮を払うものとする。
8 住民に対する啓蒙等
 夜間においてとくに騒音源となる、深夜営業の利用にともなう騒音、家庭等における音響機器、楽器等の使用等にともなう騒音等の防止に資するため住民に対し必要な啓蒙を行う。また、道路交通騒音については、とくに自動車等の運転者に対しその騒音の防止につき自覚と協力を促すため啓蒙活動を強力に推進する。

第7 環境基準の見直し

  1. 1 環境基準は、騒音の影響に関する知見の進展および社会的評価の変化、騒音の測定技術の進歩等に照らし、必要に応じて改訂を行なうものとする。
  2. 2 地域の類型をあてはめる地域の指定については、当該地域の利用形態の変化にともない、適宜変更が行われるものとする。

第8 環境基準の適用除外について

 本環境基準は、航空機騒音、鉄道騒音および建設作業騒音には適用しないものとする。