法令・告示・通達

環境影響評価実施要綱について

公布日:昭和60年10月25日
環企管103号

[改定]
昭和63年7月23日 環企管132号

(各都道府県知事及び各政令指定都市市長あて環境庁企画調整局長通知)
 「環境影響評価の実施について」の閣議決定(昭和五九年八月二八日)については、昭和五九年一二月二一日付け環企管第一二七号をもつて貴職宛て環境事務次官からその基本的な内容について通知されたところであるが、本閣議決定の記の環境影響評価実施要綱に規定された手続等の趣旨、内容等については左記のとおりであるので、お知らせするとともに、これに留意の上本閣議決定に基づく環境影響評価が適切かつ円滑に行われるよう、貴職の御理解と御協力をお願いする。
 また、本通知の貴管下市町村(特別区を含み、政令指定都市を除く。)への周知方お願いする。

Ⅰ 実施要綱における環境影響評価の目的等
  本実施要綱は、公害の防止及び自然環境の保全(以下「公害の防止等」という。)が極めて重要であることにかんがみ、事実の実施前に、当該事業の実施が環境に及ぼす影響について調査、予測及び評価(以下「調査等」という。)を行い必要な対策を検討するとともに、その結果を公表して、地域住民、都道府県知事等の意見を聴いて更に検討を加える等の環境影響評価の手続等のルールを定めることにより、環境影響評価が適切かつ円滑に行われ、事業の実施に際し、公害の防止等について適正な配慮がなされることを期するものである。また、究極的には、国民の健康で文化的な生活の確保という公益に資するためのものである。
Ⅱ 対象事業等(実施要綱第一関係)
 一 対象事業(実施要綱第一の一関係)
   実施要綱の対象事業は、土地の形状の変更、工作物の新設等の事業であつて、規模が大きく、その実施により環境に著しい影響を及ぼすおそれのあるもので、国として全国的に環境影響評価を行わしめる必要が高いと認められるものである。なお、主務大臣が環境庁長官に協議して定めた対象事業の規模等の内容は別表のとおりである。
 二 事業者(実施要綱第一の二及び共通的事項一関係)
   環境影響評価は、対象事業を実施しようとする事業者が行うものである。これは、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を行おうとする者が、原則として自らの責任と負担で環境影響評価の手続等を行うことにより、事業の実施に伴う環境への影響について配慮するという考え方であり、これまでの環境影響評価の実績をも踏まえたものである。また、事業の実施に際しての公害防止等の措置を決めることができる事業者が環境影響評価を行うことによつて、環境保全に配慮した適正な事業の実施も期待されるものである。
   実施要綱の事業者は、国又は免許等の関与を受けるものに限られているが、これは、事業者の行つた環境影響評価の結果を免許等の行政に反映させることと対応するものである。
   共通的事項一において定められた事業者は具体的には別表のとおりである。
   なお、指示又は命令を受けて行う対象事業については、当該指示又は命令を行う国の行政機関を当該事業者に代わるものとすることができるとしている。これは、事業の実施に際しての公害の防止等の措置を実際に決定する権限を有する国の行政機関が環境影響評価を行うことが適当な場合があるためであり、これまでの実績をも踏まえたものである。
Ⅲ 環境影響評価に関する手続等(実施要綱第二関係)
 一 環境影響評価準備書の作成(実施要綱第二の一関係)
  (一) 環境影響評価準備書の作成
    環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)は、環境影響評価の手続等の核となるものであり、以後の手続を進める上で必要な内容が盛り込まれるものである。すなわち、準備書は、指針に基づく調査等の結果等を記載するものであり、関係都道府県知事等が公害の防止等の見地から所要の検討を行いうる内容が盛り込まれるものである。なお、準備書は住民に対する周知、意見把握等の手続の対象となるものであるため、わかりやすい記述も望まれるところであり、例えば準備書の内容を平易に記載した概要書を必要に応じ別途作成することも実際的な方法である。
  (二) 基本的事項と指針
    事業者の行うべき調査等の項目や内容等の技術的事項をあらかじめ定め、事業者に明らかにしておくことは、環境影響評価の適切かつ円滑な実施を図る上で重要である。このため、実施要綱においては環境庁長官が関係行政機関の長に協議して基本的事項を定め、これを考慮して主務大臣が環境庁長官に協議して指針を定めることとされており、事業者はこの指針に従つて調査等を行うものである。
 二 準備書に関する周知(実施要綱第二の二関係)
  (一) 関係地域
    関係地域は、準備書に関する周知、意見把握等の手続が進められる地域の範囲となるものであり、これを適切に定めることが手続の円滑な進行を期する上で重要である。その範囲は、事業の実施が環境に影響を及ぼす地域であつて、当該地域内に住所を有する者(以下「関係住民」という)に対し準備書の内容を周知することが適当と認められる地域である。この場合、地域の実情を踏まえ、当該地域を含む住居表示による町、丁目、字等の区画等を用いて定めることができるものである。
  (二) 公告
    公告は、準備書が作成され、住民が関与する手続が開始されることを関係住民に知らしめるためのものであり、関係住民が通常その内容を知りうる方法により行われるものである。その内容は、以後進められる手続の趣旨、内容を伝えるため、関係地域の範囲、縦覧の場所、期間及び時間、意見書を提出できる期間、提出先等の事項を含むものである。
    なお、公告について関係都道府県知事及び関係市町村長の協力を求めることとしているのは、地方公共団体が公報等公告に適した手段を有すること、これまでの環境影響評価の経験において地方公共団体が公告を行つている場合があること等による。
  (三) 縦覧
    縦覧は、関係住民に対して準備書の周知を図るための基本的な手段であり関係住民が利用しやすい方法により行われるものである。縦覧期間は公告の日から一月間であり、これは、公告の日の翌日から起算し、土曜、日曜・祝日も含むものであるが、日曜・祝日や通常の勤務、営業時間外において縦覧することまで求める趣旨ではない。
    なお、縦覧について関係都道府県知事及び関係市長村長の協力を求めているのは、地方公共団体がその庁舎等縦覧に適した場所を有すること、これまでの環境影響評価の経験において地方公共団体が縦覧を行つている場合があること等による。
  (四) 説明会
    説明会は、事業者が準備書について関係住民に対し直接説明する場であり、準備書の周知を図る方法として効果が高く重要なものである。したがつて、説明会の開催の日時、場所は地域の実情を踏まえ、関係住民の参集の便をも考慮して適切に定められ、また、予定の日時・場所についてあらかじめ関係住民に周知されるものである。
    なお、関係地域内に説明会を開催する適当な場所がないときは、関係地域以外の地域において開催することができるものであり、また、事業者が関係地域の規模、関係住民の利便等を勘案して必要があると認める場合には、関係地域をいくつかの区域に区分して当該区域ごとに説明会を開催するものである。
    説明会は、準備書の周知を図る場として、適正かつ円滑に運営される必要があるが、事業者の責めに帰することの出来ない理由で説明会を開催することができない場合には当該説明会を開催することを要しない。この理由のある場合は次のような場合である。
   ① 天災、交通の途絶その他の不測の事態による場合
   ② 説明会の開催又は続行が平穏に行いえない場合
   ③ 関係都道府県知事等から公共の安全の確保その他の公益上の理由から説明会の中止を求められた場合
   ④ その他①から③までの場合に準ずる事業者の責めに帰することのできない理由で説明会を開催することができない場合
    また、この場合に事業者が周知に努めるための方法は次のような方法である。
   ① 準備書の概要を記載した書類を関係住民に提出すること
   ② 準備書の要旨を公報、日刊紙等に掲載すること。
   ③ その他事業者が準備書の周知を図るために適切な方法
 三 準備書に関する意見(実施要綱第二の三関係)
  (一) 関係住民の意見
    関係住民の意見の把握は、事業者が手続を進める過程において公害の防止等についての配慮を行う上で重要なものである。関係住民の意見の内容としては、生活体験に基づく地域の環境情報や環境影響についての懸念等が考えられる。事業者はこれを踏まえて準備書の記載事項について検討を加え、評価書でこれに対する見解を明らかにするものであるが、かかるプロセスを通じて公害の防止等についての配慮が行われるとともに、関係住民の理解が深まることも期待される。
    なお、このように関係住民の意見は、公害の防止等の見地からの意見として求められるものであり、事業そのものに対する賛否を問う趣旨のものではない。まだ、このような趣旨を踏まえ、手続の適正かつ円滑な運用を期すため、関係住民の意見の把握は、所定の期間内に所定の方法で公害の防止等の見地から提出されたものについて行われるものである。
  (二) 関係都道府県知事の意見
    関係都道府県知事及び関係市町村長の地域の環境保全に関する事務を所掌する者としての意見は、事業者が手続を進める過程において公害の防止等についての配慮を行う上で重要なものである。
    関係都道府県知事及び関係市町村長は、準備書について十分検討の上、地域の公害の防止等の見地から意見を述べるものである。この場合、事業者が関係都道府県知事の意見を求めることとされているのは、実施要綱の対象事業は大規模で広域にわたること、他方、関係都道府県知事は地域の環境保全の要であり、関係市長村長の意見を踏まえた広域的見地からの意見で期待できること等による。
    なお、関係都道府県知事及び関係市町村長の意見を述べる事務は、当然のことながら当該地方公共団体の事務である。
 四 評価書の作成等(実施要綱第二の四関係)
  (一) 評価書の作成
    評価書は、事業者の手続の成果となるものであり、提出された関係住民及び関係都道府県知事の意見を踏まえ、準備書の記載事項について検討を加えるとともに、これらの意見に対する事業者の見解を明らかにすることにより作成されるものである。
  (二) 評価書の公告、縦覧
    公告、縦覧の方法等については、二(二)及び(三)で述べたことと同様である。なお、評価書の広告、縦覧をもつて住民の関与する手続はしめくくられる。
Ⅳ 公害の防止及び自然環境の保全についての行政への反映(実施要綱第三関係)
  実施要綱に基づく環境影響評価においては、事業者による手続等とあいまつて、行政としても公害の防止等という公益のため、免許等を行う者が免許等に際し、当該免許等に係る法律の規定に反しない限りにおいて、評価書を審査し、その結果に配慮することにより、事業者の行つた環境影響評価の結果を免許等に反映させ、公害の防止等についての配慮をより一層確かなものにすることとしている。この場合、これらの審査及び配慮は行政運用により行われるものであるので、免許等に係る法律に基づく行政処分に認められた裁量の範囲内でなされたものである。また、環境庁長官は、政府の中にあつて環境行政を総合的に推進する立場にあることにかんがみ、主務大臣の求めに応じて公害の防止等の見地から意見を述べるものである。
Ⅴ 環境影響評価の手続等に係るその他の事項(実施要綱第二の五及び共通的事項関係)
 一 説明会等の委託(実施要綱第二の五(一)関係)
   地方公共団体は地域の実情に詳しく、地域住民とも関係が深いことから、手続等の円滑な実施を期するため、事業者は、都道府県等と協議の上説明会の開催等を都道府県等に委託することが出来るものである。なお、委託の諾否及び委託される場合の内容は、当事者間の協議の結果によるものであり、この場合においても、環境影響評価の手続等は事業者自らの責任と負担において行うという原則は変更するものではない。
 二 国の配慮(実施要綱第二の五(二)関係)
   地方公共団体が国の補助金等の交付を受けて対象事業を実施する場合には、国が定めた実施要綱に基づく環境影響評価の手続等に要する費用について国が所要の財源措置を講ずることを定めたものである。
 三 経過措置(共通的事項三関係)
   経過措置は、実施要綱に基づく環境影響評価を実施に移す際、これを円滑に運ぶため設けられているものである。すなわち、施行日前に免許等が行われているものには適用しないこととし、また、施行日において、既存の条例等又は国の行政機関が定めた措置に基づき実施要綱に相当する手続等が行われている対象事業については、実施要綱を適用せず引き続き相当手続等を行うことができるものである。この場合、相当手続等が行われている対象事業とは、準備書の送付に相当する手続が行われている等その事実が明らかであると認められる対象事業である。
 四 主務大臣(共通的事項四関係)
   主務大臣は、実施要綱に基づいて、対象事業の規模や調査等の指針を定め、できるだけ速やかに、また、円滑に環境影響評価を実施に移すという重要な役割を担うものであり、具体的には別表のとおり定められている。
 五 手続等の併合(共通的事項五関係)
   相互に関連する事業がある場合の環境影響評価の手続等については、その円滑な実施を期するため手続等の併合を行うことができるものであり、併せて準備書を作成した場合には、以後の手続を引き続き併せて行うことができるものである。


別表

対象事業 事業者 主務大臣
   
実施要綱第1の1   ①国・公団(②③以外) ②許認可等、指示等又は届出に係る者 ③補助金等に係る者(②以外)
(1) 道路
高速自動車国道の新設又は改築(インターチエンジの追加等の小規模な改築を除く。)
建設大臣
建設大臣
4車線以上の一般国道の新設若しくはバイパスの設置又は新たに4以上の車線を付加することとなる一般国道の拡幅(新設若しくはバイパスの設置又は拡幅に係る部分が10km以上に及ぶものに限る。)
建設大臣
日本道路公団、本州四国連絡橋公団、地方道路公社
都道府県知事、政令指定市長
4車線以上の首都高速道路、阪神高速道路及び指定都市高速道路の新設又は改築(ランプの追加等の小規模な改築を除く。)
首都高速道路公団、阪神高速道路公団、地方道路公社
(2) ダム、河川工事
湛水面積が200ha以上の1級河川に係るダムの新築
建設大臣
都道府県知事
建設大臣
水資源開発公団、地方公共団体以外の者
地方公共団体(水力発電事業を実施する場合を除く。)
通商産業大臣
水資源開発公団、市町村等
厚生大臣
農林水産大臣
水資源開発公団
都道府県市町村等
農林水産大臣
土地改変面積が100ha以上の湖沼開発及び放水路の新築
建設大臣
都道府県知事
建設大臣
(3) 鉄道
新幹線鉄道の建設及びその大規模な改良
日本鉄道建設公団等
運輸大臣
(4) 飛行場
2500m以上の滑走路を有する飛行場の設置又は2500m以上の滑走路の増設若しくは500m以上の滑走路の延長(延長後の長さが2500m以上であるものに限る。)
運輸大臣
新東京国際空港公団、地方公共団体等
運輸大臣
防衛庁長官
防衛庁長官
(5) 埋立、干拓
設置又は変更後の面積が30ha以上の一般廃棄物及び産業廃棄物の最終処分場
市町村、事業者等
厚生大臣
埋立区域の面積が50haを超える公有水面の埋立及び干拓
事業者
建設大臣
運輸大臣
面積が50haを超える土地改良事業として行われる埋立及び干拓
農林水産大臣
都道府県
農林水産大臣
(6) 土地区画整理事業
事業を施行する土地の区域の面積が100ha以上の土地区画整理事業
建設大臣
都道府県(知事)、市町村(長)、住宅・都市整備公団、地域振興整備公団
施行者
建設大臣
(7) 新住宅市街地開発事業
事業を施行する土地の区域の面積が100ha以上の新住宅市街地開発事業
都道府県、市町村、住宅・都市整備公団、地域振興整備公団、地方住宅供給公社
建設大臣
(8) 工業団地造成事業
事業を施行する土地の区域の面積が100ha以上の首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律又は近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律に規定する工業団地造成事業
都道府県、市町村、住宅・都市整備公団、地域振興整備公団
建設大臣
(9) 新都市基盤整備事業
事業を施行する土地の区域の面積が100ha以上の新都市基盤整備事業
都道府県、市町村、住宅・都市整備公団、地域振興整備公団
建設大臣
(10) 流通業務団地造成事業
事業を施行する土地の区域の面積が100ha以上の流通業務市街地の整備に関する法律に規定する流通業務団地造成事業
都道府県、市町村、住宅・都市整備公団、地域振興整備公団
建設大臣
(11) 特殊法人による土地造成
住宅・都市整備公団法第29条第1項第2号若しくは第5号又は同項第15号イに基づき行う100ha以上の宅地の造成(同項第15号イに基づき行う事業にあつては、同項第6号に掲げる業務と併せて行うものに限る。)
住宅・都市整備公団
建設大臣
地域振興整備公団法第19条第1項第1号に基づき行う100ha以上の土地の造成
地域振興整備公団
国土庁長官
建設大臣
地域振興整備公団法第19条第1項第3号に基づき行う100ha以上の土地の造成
地域振興整備公団
通商産業大臣
地域振興整備公団(同項第1号の業務と併せて行う場合)
国土庁長官
通商産業大臣
地域振興整備公団法第19条第1項第4号に基づき行う100ha以上の土地の造成(同項第1号の業務と併せて行うものに限る。)
地域振興整備公団
国土庁長官
通商産業大臣
公害防止事業団法第18条第1項第1号に基づき行う事業に係る100ha以上の土地の造成
公害防止事業団
環境庁長官
通商産業大臣
公害防止事業団法附則第18条に基づき行う事業に係る100ha以上の土地の造成
公害防止事業団
環境庁長官
農用地整備公団法第19条第1項第1号イに基づき行う事業を施行する土地の区域内の最大の団地の面積が500ha以上の農用地の造成又は同法附則第19条第1項に規定する業務のうち農用地開発公団法の一部を改正する法律による改正前の農用地開発公団法第19条第1項第1号イに基づき行う事業を施行する土地の区域内の最大団地の面積が500ha以上の農用地等の造成
農用地整備公団
農林水産大臣