法令・告示・通達

自然公園法施行令及び自然環境保全法施行令の一部を改正する政令等の施行について

公布日:平成17年12月16日
環自国発051216001号

(各都道府県知事・各地方環境事務所・釧路・長野・那覇自然環境事務所長宛 環境省自然環境局長通知)

 自然公園法施行令及び自然環境保全法施行令の一部を改正する政令(平成17年政令第340号)については、平成17年11月16日付けで公布され、平成18年1月1日から施行されることとなった。
 また、併せて、自然公園法施行規則及び自然環境保全法施行規則の一部を改正する省令(平成17年環境省令第33号)は平成17年12月15日付けで公布され、平成18年1月1日から施行されることとなった。
 これらの内容等は次のとおりであるので、了知の上、その適切な施行に努められたい。

第1 改正の趣旨
  近年、人為的な植物の植栽や動物の放出(以下「動植物の放出等」という。)により国立公園等の優れた景観や自然環境に影響を及ぼしている事例が大きな問題となっており、また、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号)の国会における附帯決議においても、在来種の国内移動による生態系等への被害防止について自然公園法等を活用した規制強化が求められている。
  以上を踏まえ、動植物の放出等による優れた景観や自然環境への被害を未然に防止するため、国立公園又は国定公園の特別保護地区内において許可を要する行為として、「木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと」及び「動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)」を加えるとともに、原生自然環境保全地域において許可を要する行為として、「動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)」を加えるものである。本改正により、既存の規制ともあいまって、国立公園又は国定公園の特別保護地区及び原生自然環境保全地域では、原則として全ての動植物の放出等が規制されることとなる。
  また、本政令改正に伴い、自然公園法施行規則において、審査基準及び不要許可行為を、自然環境保全法施行規則において、不要許可行為を規定するものである。
第2 国立公園又は国定公園の特別保護地区における規制の追加(改正後の自然公園法施行令第18条関係)
  特別保護地区における規制行為は法第14条第3項各号において規定されているが、平成14年の自然公園法改正により、今後、機動的に規制を追加する必要が生じたときに備えて、行為の規制について政令で規定できることとされた(法第14条第3項第10号)。今回の政令改正は、本規定に基づき実施するものである。
 1 国立公園又は国定公園の特別保護地区における「木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと」及び「動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)」の規制(改正後の自然公園法施行令第18条第1号及び同条第2号関係)
  ・ 国立公園又は国定公園の特別保護地区において、動植物の放出により景観の保護等に支障がある事例がみられるため、「木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと」及び「動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)」を新たに「許可を受けなければしてはならない行為」としたものである。
    木竹の植栽及び家畜の放牧は、既に規制されており、今回の改正で、原則として全ての動植物の放出等が規制対象となる。
  ・ 「木竹以外の植物を植栽し、植物の種子をまくこと」として規制対象となる「植栽する」、「まく」行為とは、これらの行為によって野外での植物の繁殖、生育が可能となるものを指す。このため、本法での「植栽する」には、根の付いた植物や球根等の繁殖器官を植えること、挿し木又は挿し芽を行うこと、水草を繁殖可能な状態で湖沼等に放つこと等も含まれる。
    なお、建物内の鉢植えで植物を栽培するような行為については、野外での植物の繁殖、生育が可能となるものではないため、規制の対象とはならない。
  ・ 今回、木竹以外の植物の植栽又は植物の種子をまくことが要許可行為とされたところであるが、これに伴い、従来より法面緑化や治山・砂防等の目的で実施されていた緑化(播種工、植栽工、張り芝工、航空実播工等)についても、許可を要することとなる。これらの行為は、今回の改正により要許可行為になることをもって、否定されるべきものではなく、浸食防止や国土保全等の公益性の観点から、また、これまでも各公園の管理計画等に即して行われてきたことから、従前と同様に実施することができるように取り扱うことが必要である。
    なお、工作物の新築に伴い生じた裸地の緑化のために植物を植栽し、種子をまく行為は、工作物の新築に附帯する行為として、その申請内容に含めて取り扱って良い。
  ・ 「木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと」について、公園毎に地域の実情を踏まえた詳細な審査基準を定める場合、又は景観や生物多様性の保全の観点から、新たな科学的知見をもとに緑化工について管理計画等における取扱いを見直していく必要がある場合、あらかじめ関係行政機関(森林管理局を含む。)とも十分に連絡調整を行うことが必要である。
  ・ 今回の改正にかかわらず、「自然公園法に基づく国立公園又は国定公園の特別地域内における治山事業の施行に関する取扱いについて」(昭和50年4月23日50林野治第850号林野庁長官から環境庁自然保護局長あて)の照会に対する回答(昭和50年5月26日環自企第267号環境庁自然保護局長から林野庁長官あて)における自然公園法第14条第3項に規定する「非常災害のために必要な応急措置として行う行為」の取扱いは従前どおりとする。
  ・ 「動物を放つ」の「放つ」とは、人間の管理下を離れて自由に行動し得る状態に置くことを指す。従って、動物を鎖やリードにつないだまま連れ歩く、建物内に閉じこめて飼養する等により、当該動物が直接的に人間の管理下におかれ、行動の自由を制限されている場合は、規制の対象とはならない。
    なお、このことは、他の利用者や野生動物への配慮の観点から各地で実施されてきたペットの連れ込み登山等の自粛要請を今後利用者に対して行うことを妨げるものではない。また、ペットを連れての公園利用を罰則をもって禁じる必要がある場合は、利用調整地区等の指定により対応することが考えられる。
  ・ 動物が「人間の管理下を離れて自由に行動し得る状態に置かれている」か否かは、当該動物の性状、動物を放つ態様及び目的等を総合的に考慮し、特別保護地区における景観の維持に実質的な影響を及ぼすおそれのある行為か否かで判断することとなる。例えば、良く訓練された介助犬のリードを一時的に手放し、介助犬を飼い主の近くで休ませているような場合は「放つ」には当たらないと解釈される。
  ・ 特別保護地区内の湖沼、河川等において水産動植物を放つ行為も木竹以外の植物を植栽し、若しくは植物の種子をまくこと、又は動物を放つことに該当し規制行為となるが、漁業権に係る水産動植物に限り、以下のとおり取り扱うこととする。
   ・ 共同漁業権に係る水産動植物について
     第1種共同漁業権及び第5種共同漁業権の設定されている内水面において、漁業の免許を受けた者が当該漁業権に係る水産動植物を放出等する行為は、不要許可行為として取り扱う。
   ・ 区画漁業権について
     国立公園においては、区画漁業権が設定された湖沼等を新たに特別保護地区に指定しようとする公園計画の策定又は変更に際して、公園計画の案作成の段階で、当該漁業権を有する者と調整することとし、その結果を添えて、自然公園法に基づく関係都道府県の意見聴取及び農林水産省との協議を実施することとする。また、当該漁業権を有する者との調整結果を踏まえ、改正後の自然公園法施行規則第11条第33項に基づき基準の特例を定めることとする。
     なお、国立公園の特別保護地区内における区画漁業権の新規設定に際しては、事前に都道府県又は漁業権の免許を取得する予定の者から相談を受けた場合には、基準の特例の設定について検討を行い、必要があると認められる場合は、基準の特例を定めることとする。
     また、国立公園の特別保護地区内において、改正後の自然公園法施行令施行の際に現に区画漁業権の免許を有する者がいる場合には、当該漁業権に基づき魚介類を放つことが引き続き可能となるよう基準の特例を定めることとする。
     国定公園における区画漁業権との調整については、国立公園の場合と同様に取り扱われることが望ましい。
  ・ 今回の改正にかかわらず、国立公園又は国定公園の特別保護地区を指定する際の考え方は従前どおりとする。すなわち、持ち込まれた生物の影響が生じている又は影響が懸念されることのみをもって特別保護地区を指定することにはならない。
 2 許可基準
   「木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと」及び「動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)」の許可は、公益上必要な場合又は景観の維持上支障がない場合等に行うものとし、許可基準を次のとおり改正後の自然公園法施行規則第11条第27項及び同条第32項に規定した。
   なお、「木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと」の基準については、自然公園法第14条第3項第3号に規定されている「木竹を植栽すること」の規制にも当てはまる事項であるため、改正後の自然公園法施行規則第11条第27項において同じ基準となるよう改正した。
   また、この他に各種行為共通の基準として改正後の自然公園法施行規則第11条第34項各号の規定が適用される。
  ・ 第18条第1号関係(木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと)
    次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。
   ・ 学術研究その他公益上必要であり、かつ、申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められるものであること。
   ・ 植栽し、又は種子をまこうとする地域に現存する植物と同一種類の植物を植栽し、又はその種子をまくものであること(在来の景観の維持に支障を及ぼすおそれがないと認められるものに限る。)。
   ・ 災害復旧のために行われるものであること。
  ・ 第18条第2号関係(動物を放つこと(家畜の放牧を除く。))
    学術研究その他公益上必要であり、かつ、申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められるものであること。
 3 許可を要しない行為
   「木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと」及び「動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)」については、公共性のある事業を行うための行為等を許可を要しない行為とし、次のとおり改正後の自然公園法施行規則第13条第15号から第23号までに規定した。
  ・ 第18条第1号関係(木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと)
    絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律第47条第1項に規定する認定保護増殖事業等(以下「認定保護増殖事業等」という。)の実施のために木竹以外の植物を植栽し、又は植物の種子をまくこと。
    なお、認定保護増殖事業等の実施のために木竹を植栽することについても同様に許可を要しない行為とすることとした。
  ・ 第18条第2号関係(動物を放つこと(家畜の放牧を除く。))
   ・ 認定保護増殖事業等の実施のために動物を放つこと。
   ・ 国立公園において絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律第10条第1項の規定による環境大臣の許可を受けて捕獲した鳥獣であって、同法第4条第3項に規定する国内希少野生動植物種又は同法第5条第1項に規定する緊急指定種に係るもの(同法第54条第2項の規定による協議に係るものを含む。)を当該捕獲をした場所に放つこと。
   ・ 国立公園において鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第9条第1項の規定による環境大臣の許可を受けて捕獲した鳥獣を当該捕獲をした場所に放つこと。
   ・ 国定公園において鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第9条第1項の規定による都道府県知事の許可を受けて捕獲した鳥獣を当該捕獲をした場所に放つこと。
   ・ 遭難者の救助に係る業務を行うために犬を放つこと。
   ・ 漁業法(昭和24年法律第267号)第6条第1項に規定する漁業権(同条第5項第1号に規定する第1種共同漁業又は同項第5号に規定する第5種共同漁業に係るものに限る。)の存する水面において、漁業の免許を受けた者が当該漁業権に係る水産動植物を放ち、植栽し又はまくこと。
   ・ 水産資源保護法(昭和26年法律第313号)第20条第1項の規定により農林水産大臣が定める人工ふ化放流に関する計画又は道県知事が定める人工ふ化放流に関する計画に基づきさけ又はますを放流すること。
   ・ 特別保護地区内で捕獲した動物を捕獲後直ちに当該捕獲をした場所に放つこと。
第3 原生自然環境保全地域における規制の追加(改正後の自然環境保全法施行令第3条関係)
 1 原生自然環境保全地域における動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)の規制(改正後の自然環境保全法施行令第3条第3号関係)
  ・ 原生自然環境保全地域において、動物の放出により自然環境の保全に支障が出るおそれがあるため、動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)を新たに「してはならない行為」としたものである。
    本改正により、全ての動植物の放出等が規制されることとなる。
  ・ 「動物を放つ」の「放つ」の解釈及び運用については、第2.1の及びに準じるものとする。
  ・ 今回の改正にかかわらず、原生自然環境保全地域を指定する際の考え方は従前どおりとする。すなわち、持ち込まれた生物の影響が生じている又は影響が懸念されることのみをもって原生自然環境保全地域を指定することにはならない。
 2 許可を要しない行為
   動物を放つこと(家畜の放牧を除く。)については、公共性のある事業を行うための行為等を許可を要しない行為とし、次のとおり改正後の自然環境保全法施行規則(昭和48年総理府令第62号)第3条第11号及び同条第12号に規定した。
   第3条第3号関係(動物を放つこと(家畜の放牧を除く。))
  ・ 遭難者の救助に係る業務を行うために犬を放つこと。
  ・ 原生自然環境保全地域内で捕獲した動物を捕獲後直ちに当該捕獲をした場所に放つこと。
第4 その他
  今回の改正前の自然公園法施行令、自然公園法施行規則及び自然環境保全法施行規則に基づく通知について、今回の改正により条項名のずれが生じるものがあるが、これらの通知については、改正後の自然公園法施行令、改正後の自然公園法施行規則及び改正後の自然環境保全法施行規則の施行日(平成18年1月1日)以降も条項名を読み替えて適用することとする。
  なお、当該通知について改正を行う場合には、当該通知中の条項名を改正後の自然公園法施行令、改正後の自然公園法施行規則及び改正後の自然環境保全法施行規則の条項名に、順次改正していくこととしている。