法令・告示・通達

石綿による健康被害の救済に関する法律の施行(救済給付に係る事業主負担関係の施行)について

公布日:平成18年12月27日
環保企発第061227001号

(環境省総合環境政策局環境保健部長 上田博三から独立行政法人環境再生保全機構理事長 田中健次あて)

 石綿による健康被害の救済に関する法律(平成18年法律第4号。以下「法」という。)が、平成18年2月10日に公布され、第1章(総則)、第2章第2節第1款(基金等)等については公布日より、救済給付の支給に係る部分については平成18年3月27日より施行されているが、第2章第2節第2款(一般拠出金)、第3款(特別拠出金)等については平成19年4月1日より施行することとされている。
 今般、平成19年4月1日からの法の全面施行に向けて、石綿による健康被害の救済に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成18年政令第389号)及び環境省関係石綿による健康被害の救済に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成18年環境省令第38号)が平成18年12月20日に公布されたところであるが、法の規定(平成19年4月1日施行分に限る。)及びこれらの法令の規定の内容は次のとおりであるので、貴職におかれては、救済給付の支給に要する費用の徴収に当たり、当該内容に十分御留意の上、制度の運用に遺憾なきを期されたく、格段の御協力をお願いする。

第1 事業主による費用負担の考え方

  1.  1 本制度の運営に必要な費用は、石綿による健康被害の特殊性にかんがみ、民事上の責任とは切り離して社会全体で被害者の救済を行うとの観点から、国、地方公共団体及び事業主が負担することとしていること。
  2.  2 事業主が負担する費用の総額(以下「事業主の負担総額」という。)は、救済給付の支給に要する費用の予想額から、法第32条第1項の規定による政府からの交付金及法第34条の規定による国庫の負担額並びに法第32条第2項の規定による地方公共団体からの拠出金を控除した額とするものであること。

第2 一般拠出金に関する事項

 1 総則的事項

  1.   (1) 一般拠出金は、労災保険の保険関係が成立している事業の事業主(労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号。以下「徴収法」という。)第8条第1項又は第2項の規定により元請負人が事業主とされる場合にあっては、当該元請負人。以下「労災保険適用事業主」という。)から徴収する第一項一般拠出金と、船員保険法(昭和14年法律第73号)第60条第1項に規定する船舶所有者(以下「船舶所有者」という。)から徴収する第二項一般拠出金とし、第一項一般拠出金については厚生労働大臣が既存の労働保険徴収システムを活用して、第二項一般拠出金については独立行政法人環境再生保全機構(以下「機構」という。)が直接船舶所有者から、毎年度徴収するものであること(法第35条)。
  2.   (2) 一般拠出金の額については、労働保険の一般保険料の計算の基礎となる賃金総額等に一般拠出金率を乗じて得た額とするものであること(法第37条第1項及び第2項)。
        また、一般拠出金率については、事業主の負担総額から特別拠出金の総額の見込額を控除した額を、平成17年度における全国の労災保険適用事業主がその事業に使用するすべての労働者に支払われた賃金の総額として推計した額と全国の船舶所有者が使用するすべての船員に支払われた賃金の総額として推計した額との合計額で除して得た率とし、1,000分の0.05とするものであること(法第37条第3項、石綿による健康被害の救済に関する法律施行令(平成18年政令第37号。以下「令」という。)第10条及び平成18年12月環境省告示第150号)。

 2 第一項一般拠出金に関する事項

  1.   (1) 第一項一般拠出金の額は、徴収法第10条第2項第1号の一般保険料の計算の基礎となる賃金総額に一般拠出金率を乗じて得た額とするものであること(法第37条第1項)。
  2.   (2) 第一項一般拠出金の徴収については、厚生労働大臣が、既存の労働保険徴収システムを活用し、労働保険料と併せて第一項一般拠出金を徴収するものであること。
        また、厚生労働大臣は、徴収した第一項一般拠出金の額から、当該年度における第一項一般拠出金の返還金の額並びに第一項一般拠出金の徴収及び法第38条第2項の第一項一般拠出金事務を処理する労働保険事務組合(徴収法第33条第3項の労働保険事務組合をいう。)に関する事務に要する費用の額の合計額から法第34条の規定による国庫の負担額を減じて得た額を控除して得た額を、機構に対し交付するものであること(法第36条及び令第9条)。

 3 第二項一般拠出金に関する事項

  1.   (1) 第二項一般拠出金の額は、前年度において船舶所有者が使用するすべての船員に支払った賃金の総額(その額に1,000円未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。)に一般拠出金率を乗じて得た額とし(法第37条第2項)、一円未満の端数については切り捨てるものであること(法第37条第2項)。
        なお、当該賃金の総額については、船員保険法第4条第1項に規定する標準報酬月額及び第4条ノ5第1項に規定する標準賞与額を用いて算出しても差し支えないこと。
  2.   (2) 第二項一般拠出金を納付すべき船舶所有者は、その納付すべき年度の初日に現に存する船舶所有者をいい、その年度の初日から50日以内に機構に申告書を添えて納付しなければならないものであること(法第39条第1項及び環境省関係石綿による健康被害の救済に関する法律施行規則(平成18年環境省令第3号。以下「規則」という。)第28条)。
  3.   (3) 機構は、納付すべき第二項一般拠出金の額が20万円を超える船舶所有者にあっては、当該船舶所有者が申告を行う際に延納の申請をした場合には、三期に分けて納付をさせることができることとされていること(法第40条及び環境省関係石綿による健康被害の救済に関する法律施行規則(平成18年環境省令第3号。以下「規則」という。)第30条及び第31条)。
  4.   (4) 機構は、第二項一般拠出金等を納付しない船舶所有者に対し、期限を指定して督促し、督促を受けた船舶所有者がその指定の期限までに完納しないときは、環境大臣の認可を受けて、国税滞納処分の例により、滞納処分をすることができるものであること(法第41条)。

第3 特別拠出金に関する事項

  1.  1 特別事業主は、特別事業場を有し、又は有していた事業主をいい、特別事業場は、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に規定する特定粉じん発生施設が設置された工場又は事業場その他次の①から⑤までに掲げる調査において石綿が使用されていたと認められる工場又は事業場であって、次の(ア)から(ウ)までのいずれにも該当するものであること(法第47条第1項、令第12条及び平成18年12月環境省告示第151号)
    1.   ① 財団法人機械電気検査検定協会「昭和58年度環境庁委託業務調査報告書アスベスト製品等流通経路調査(昭和59年3月報告)」
    2.   ② 国土交通省「造船業に係るアスベストによる健康被害等の状況に関する調査について(平成17年7月21日発表(平成17年9月27日改訂))」
    3.   ③ 経済産業省「経済産業省の所管に係る企業のアスベストによる健康被害の状況の結果について(平成17年8月26日発表)」
    4.   ④ 国土交通省「運輸関連企業に係るアスベストによる健康被害等の状況に関する調査について(平成17年8月26日発表(平成17年9月27日改訂))」
    5.   ⑤ 国土交通省「建設業における石綿被害の実態把握について(平成17年10月28日発表)」
      1.   (ア) 昭和26年から平成17年までの当該工場又は事業場における石綿の使用量(以下「石綿の使用量」という。)が1万トン以上であること。
      2.   (イ) 平成7年から平成16年までの当該工場又は事業場の所在地の属する市区町村における中皮腫による死亡者数の年平均数を、当該市区町村の平成16年度末における住民基本台帳上の人口で除して10万を乗じて得た数が、0.553人以上であること。
      3.   (ウ) 昭和14年度から平成16年度までに当該工場又は事業場において石綿にさらされる業務に従事することにより指定疾病にかかり、これにより労働者災害補償保険又は船員保険による保険給付を受けた人数(以下「労災認定者数」という。)が10人以上であること。
  2.  2 特別拠出金の額は、特別事業主が有し、又は有していた特別事業場ごとに次に掲げる①及び②の式によって算出した額の合計額を合算した額とし(法第48条第1項及び令第13条)、一円未満の端数については切り捨てるものであること(法第48条第1項及び令第13条)。
    1.   ① 事業主の負担総額×石綿の輸入量/(石綿の輸入量+労災認定者総数×170)×当該事業場における石綿の使用量/石綿の輸入量
    2.   ② 事業主の負担総額×(労災認定者総数×170)/(石綿の輸入量+労災認定者総数×170)×当該事業場における労災認定者数/労災認定者総数
        ※ 石綿の輸入量:昭和26年から平成17年までに我が国が輸入した石綿の量
      (9,674,240トン)
          労災認定者総数:昭和14年度から平成16年度までの全国の労災認定者数(860人)
  3.  3 機構は、特別事業主に対し、その者が納付すべき特別拠出金の額、納付すべき期限、当該期限までに納付されない場合の措置等を、各年度のできるだけ早期に通知するものとすること(法第49条第1項)。
       なお、特別拠出金を納付すべき期限は、当該納付に関して十分な時間的余裕のあるものとすること。
  4.  4 機構は、納付すべき特別拠出金の額が20万円を超える特別事業主にあっては、当該特別事業主が特別拠出金の納付をする際に延納の申請をした場合は、四期に分けて納付をさせることができることとされていること(法第50条で準用する法第40条及び規則第33条及び第34条)。
  5.  5 特別拠出金の徴収事務のうち、滞納処分等については、第二項一般拠出金の徴収事務に準じるものであること(法第50条)。

第4 その他

  1.  1 船舶所有者に対する検査をする職員が携帯する証明書は、規則第38条第1項に定める様式第3に、特別事業主に対する検査をする職員が携帯する証明書は、規則第38条第2項に定める様式第4によるものであること。また、滞納処分のため財産の差押えをする職員が提示する証明書は、規則第36条に定める様式第2によるものであること。
  2.  2 第二項一般拠出金及び特別拠出金の徴収に関する処分に不服がある者は、環境大臣に対して審査請求をすることができるものであり(法第75条第1項第2号)、審査請求に係る環境大臣の裁決を経た後でなければ、当該処分の取消しの訴えを提起することはできないものであること(法第75条及び法第77条)。
  3.  3 本制度は、平成19年4月1日から全面的に実施されるものであること。