法令・告示・通達
公害保健福祉事業の実施について
環保業87号
[改定]
平成12年4月27日 環保企第242号
平成16年4月8日 環保企発第040408005号
平成17年3月31日 環保企発 第050331004号
(環境省総合環境政策局長から都道府県知事 各政令市(区)長あて)
標記については、本日別途環境事務次官よりその大綱が通知されたところであるが、各種公害保健福祉事業の細部については、下記の事項に留意のうえ、本事業の実施に遺憾のないようにされたい。
記
第1 リハビリテーションに関する事業
1 大気系患者リハビリテーション
(1)目的
第一種地域(公害健康被害補償法施行令の一部を改正する政令(昭和62年政令第368号)による改正前の公害健康被害補償法施行令(以下「旧令」という。)別表第一に掲げる地域を含む。以下同じ。)に係る被認定者に対し、リハビリテーションに係る運動療法を行い、基礎的体力の増進を図るとともに、公害健康被害に係る指定疾病に関する知識普及及び療養上の指導を行うことにより健康の回復に資することを目的とする。
(2)対象者
第一種地域に係る被認定者で、在宅療養者とする。
(3)実施上の留意事項
本事業は、実施当日の被認定者に対する施術のほか、被認定者が帰宅後も自主的、計画的に継続実施し得るよう、指導面にも配慮して行うものとする。
(4)事業の実施
ア 知識普及・訓練指導
- (ア)本事業は、被認定者又は、その保護者などの集合しやすい近隣地域の適当な施設を利用し、医師、保健師、看護師、理学療法士等よりなるチームにより、機能回復の実技指導を含めた指定疾病に関する知識の普及又は運動療法等を行うものとする。また、喫煙する被認定者に対しては、医師、保健師等による指導のもとに、グループ療法等により、喫煙が健康に及ぼす悪影響を認識させるとともに、禁煙の具体的な方法について実地に指導を行うものとする。
- (イ)本事業は、1日1会場当たり、おおむね20人を対象として行うものとする。
- (ウ)事業を効果的に実施するために事業計画策定打合会、事業実施前打合会及び事業実施後検討会を実施することができるものとする。
イ 1泊2日のリハビリテーション
- (ア)本事業は、1グループ当たり、おおむね50人を単位として行うこと。
- (イ)期間は、1泊2日とし、医師、看護師による健康管理のもとに療養生活上の指導、機能回復訓練の実施指導等を行うものとする。
- (ウ)本事業には、体育活動、レクリエーション活動等に要する指導員を随伴させることができるものとする。
- (エ)事業を効果的に実施するために事業計画策定打合会、事業実施前打合会及び事業実施後検討会を実施することができるものとする。
ウ 指定施設利用健康回復事業
- (ア)本事業は、被認定者が通いやすい近隣地区の適当な施設を指定し、その施設において、基礎的体力の増進のためのリハビリテーションに係る運動療法を行うものとする。
- (イ)本事業への参加は、被認定者本人の希望によるものとし、医師の健康診断等を受けたうえで、参加を認めた者とする。
- (ウ)参加を認められた被認定者は、指定された施設を各自適当な日時で利用するものとする。
エ 水中健康回復教室
- (ア)本事業は、被認定者が通いやすい近隣地区のプールを有する施設を利用し、身体機能の維持、回復及び心理的ストレスの解消のため、水中においてストレッチ運動等を行うものとする。
- (イ)本事業は、1グループ当たり、おおむね20人を単位として行うものとする。
- (ウ)本事業への参加は、医師の健康診断等を受けたうえで参加を認めた者とする。
- (エ)本事業には、ストレッチ運動を行う実施指導者の指導により行うものとする。
また、緊急の場合に対応できるよう医療機関との連携を取るようにするものとする。 - (オ)事業を効率的に実施するために、水中健康回復教室事業実施前セミナーを実施することができるものとする。
2 水質系患者リハビリテーション
(1)目的
第二種地域に係る被認定者であって、身体に障害を生じた者に対し、その社会復帰を図るために必要な医学的リハビリテーションを行うことを目的とする。
(2)範囲
医学的リハビリテーションの範囲は、理学療法及び作業療法とし、医学的リハビリテーションを行うための病院への収容を含むものとする。
(3)対象者
第二種地域に係る被認定者であって、医学的リハビリテーションを実施することにより、障害を生じた身体の機能を回復又は改善し、前記の目的を達成することができると認められる者とする。
(4)事業の実施
本事業は、都道府県知事又は公害健康被害の補償等に関する法律(昭和48年法律第111号。以下「法」という。)第4条第3項の政令で定める市の長が実施するものであるが、適切な施設を有しない場合にあっては、環境大臣の認める施設に委託してこれを行うことができるものとする。
3 知識普及等機器整備事業
(1)目的
第一種地域に係る被認定者の健康の回復、保持及び増進を図るため、リハビリテーション事業の実施に必要な知識普及・訓練指導の効果の測定及び健康管理等のために使用する機器及び装置(以下単に「知識普及等機器」という。)を整備することを目的とする。
(2)整備対象機器
整備の対象となる知識普及等機器は、公害保健福祉事業補助金算定基準に定めるものとする。
(3)機器の設置
知識普及等機器は、法の実施主体である県市(区)が所有し、設置の対象となる施設は、被認定者の健康の回復、保持及び増進のための使用に資する適切な施設であって、当該県市(区)立の病院、保健所、リハビリテーション施設(水泳プールを含む。)等とする。
ただし、適切な県市(区)立の施設がない場合はその他の施設に設置することができる。
第2 転地療養に関する事業
1 転地療養事業
(1)目的
第一種地域に係る被認定者を高原、海浜等空気の清浄な自然環境において保養させるとともに療養生活上の指導等を行い、健康の回復、保持及び増進を図ることを目的とする。
(2)対象者
第一種地域に係る被認定者を対象とする。
(3)事業の実施
ア 転地療養実施事業
- (ア)事業を効果的に実施するための事業計画策定打合会、事業実施前打合会及び事業実施後検討会を実施することができるものとする。
- (イ)人員は、おおむね50人を単位として行うこととする。
- (ウ)期間は、おおむね6泊7日とする。
- (エ)本事業は、医師及び看護師による健康管理のもとに療養生活上の指導、リハビリテーションの指導等を行うものとする。
- (オ)本事業は、リハビリテーションの指導、レクリエーション活動に要する理学療法士、指導員を随伴させることができるものとする。
イ 指定施設利用事業
- (ア)事業を効果的に実施するために事業計画策定打合会、事業実施前打合会及び事業実施後検討会を実施することができるものとする。
- (イ)施設を指定し、当該施設の全部又は一部を一定期間専用し、被認定者の転地療養受入を行うものとする。
- (ウ)被認定者は、当該施設を専用している期間内で、各自適当な期間を選択して参加するものとする。
- (エ)被認定者の受入は、1施設1日あたり、おおむね10人 とする。
- (オ)被認定者の転地療養期間は、おおむね6泊7日とする。
- (カ)当該施設においては、あらかじめ定められた計画に基づき、医師、看護師、指導員等による健康管理のほか、療養生活上の指導、リハビリテーションの指導等を行うものとする。
2 機器整備事業
(1)目的
第一種地域に係る被認定者の健康の回復、保持及び増進を図るため、転地療養活動、転地療養活動の測定及び健康管理等のために使用する機器及び装置(以下、単に「機器」という。)を整備することを目的とする。
(2)整備対象機器
整備の対象となる機器は、公害保健福祉事業補助金算定基準に定めるものとする。
(3)機器の設置
機器は、法の実施主体である県市(区)が所有し、設置の対象となる施設は、被認定者の転地療養のための使用に資する適切な施設であって、当該県市(区)立の病院、保健所、転地療養施設等とする。
ただし、適切な県市(区)立の施設がない場合は、その他の施設に設置することができる。
第3 療養に必要な用具の支給に関する事業
1 空気清浄機の支給
(1)目的
在宅療養者であって、症状の程度から必要度の高い者に対して室内の空気を清浄にさせる空気清浄機を支給し、治療効果の促進を図ることを目的とする。
(2)空気清浄機の性能
空気清浄機は、浮遊粉塵を除去し、硫黄酸化物窒素酸化物の除去に著しい効果のあるものとする。
(3)空気清浄機のフィルター交換等
空気清浄機を支給した後、一定期間を経過したものについて、当該空気清浄機の性能の維持のため、必要がある場合にフィルター交換等を行うものとする。
(4)対象者
本事業の対象者は、次の条件に該当するものとする。
- ア 在宅療養者(一時的な治療のための入院は在宅とみなす。)であること。
- イ 障害補償給付の特級又は1級に該当する者であること。
- ウ 同一家屋内に、他に受給者がいないこと。
(5)空気清浄機の管理
空気清浄機の支給を実施するに当っては、対象者に次の条件を付するものとする。
- ア 空気清浄機の支給を受けた者は、当該空気清浄機を支給の目的に反して不正に使用し、又は処分してはならないこと。
- イ 空気清浄機の取付け、維持、管理に要する費用は、自己の負担とすること。
(6)空気清浄機の返還
空気清浄機の支給を受けた者が(4)の対象者の条件に該当しなくなったとき(その状態が一時的である場合を除く。)は、当該空気清浄機を返還しなければならない。
2 加湿器の支給
(1)目的
被認定者のうち、在宅療養者であって、重症な者に対して加湿器を支給することにより、症状の回復を図ることを目的とする。
(2)対象者
- ア 在宅療養者(一時的な治療のための入院は在宅とみなす。)であること。
- イ 障害補償給付の特級又は1級に該当する者であること。
(3)加湿器の管理
加湿器の支給を実施するに当っては、対象者に次の条件を付するものとする。
- ア 加湿器の支給を受けた者は、支給の目的に反して不正に使用し、又は処分してはならないこと。
- イ 加湿器の維持、管理に要する費用は、自己の負担とすること。
3 特殊寝台の支給
(1)目的
第二種地域に係る被認定者のうち、日常生活の用をたすことができない者に対して、特殊寝台を支給し、その日常生活の利便を図り、もって、福祉の増進に寄与することを目的とする。
(2)特殊寝台の性能
特殊寝台の性能は次の条件を備えたものでなければならない。
- ア 寝台の頭部又は脚部がそれぞれ個々に傾斜角度を調節できる性能を有するものであること。
- イ 必要に応じ安全棚を取り付けられるものであること。
- ウ マットレスは、長期間の連続使用に耐えうるほか、保温及び内部の湿気の放出等についても十分配慮されたものであること。
(3)対象者
本事業の対象者は、次の条件に該当するものでなければならない。
- ア 第二種地域に係る被認定者であって在宅療養者(一時的な治療のための入院は在宅とみなす。)であること。
- イ 障害補償給付の特級又は一級に該当する者であること。
(4)特殊寝台の管理
特殊寝台の支給を実施するに当っては、対象者に次の条件を付するものとする。
- ア 特殊寝台の支給を受けた者は、当該特殊寝台を支給の目的に反して不正に使用し、又は処分してはならないこと。
- イ 特殊寝台の取付け、維持、管理に要する費用は、自己の負担とすること。
(5)特殊寝台の返還
特殊寝台の支給を受けた者が(3)の対象者の条件に該当しなくなったとき(その状態が一時的である場合を除く。)は、当該特殊寝台を返還しなければならない。
第4 家庭における療養の指導に関する事業
1 目的
被認定者に対し、家庭を訪問し、日常生活の指導、保健指導等を行うほか、家庭療養手引書等を支給し、病状回復の促進を図ることを目的とする。
2 訪問指導の実施
- (1)訪問指導は、被認定者のいる全家庭について行うこととするが、その症状の程度に応じて、訪問指導の必要度の高いものについては特に重点的に行うものとする。
- (2)訪問指導は、保健師等により行うものとする。
3 訪問指導の内容
訪問指導の内容は、次の事項とする。
- (1)日常生活指導に関すること。
- (2)保健指導に関すること。
- (3)その他必要な事項
4 訪問指導の記録
訪問指導の連続性を保つとともに、事後の指導の参考とするために記録を保存するものとする。
5 秘密の保持
訪問指導に当たる者は、職務上知り得た被訪問家庭の秘密を漏らしてはならない。
6 関係機関との協調
都道府県知事又は法第4条第3項の政令で定める市(旧令第3条に定める市を含む。)の長は、本事業の実施に際し保健所等関係機関との連絡、協調を緊密にし、効果的指導が行えるよう配慮しなければならない。
第5 インフルエンザに係る予防接種の費用の助成に関する事業
1 目的
第一種地域に係る被認定者のうち、予防接種法(昭和23年法律第68号)に基づくインフルエンザに係る定期予防接種において、被認定者の負担となる費用を助成し、もって健康の保持を図ることを目的とする。
2 対象者
第一種地域に係る被認定者のうち、予防接種法第3条第1項に基づき実施されるインフルエンザに係る定期予防接種の対象者で、かつ、接種日現在において、当該予防接種を受ける際に当該被認定者において費用を負担する必要がある者とする。
3 事業の実施
- (1)都道府県知事又は法第4条第3項の政令で定める市の長は、インフルエンザに係る定期予防接種において被認定者の負担となる費用が本事業により助成されること、その請求方法及び請求期限についてあらかじめ周知するものとする。
- (2)被認定者の負担となる費用の助成は、対象者が当該年度内にインフルエンザに係る定期予防接種を受けた場合に、被接種者又は予防接種実施機関等からの都道府県知事又は法第4条第3項の政令で定める市の長に対する請求に基づき行うものとする。
- (3)(2)の請求にあたっては、金額及び当該金額がインフルエンザに係る定期予防接種における費用であることが確認できる資料を添付するものとする。
(参考)
○公害保健福祉事業の実施について
昭和49年12月24日 環保業第87号
各都道府県知事・各政令市(区)長宛 環境庁企画調整局長通知
改正 昭和50年 7月18日 環保業第 72号
同 51年 8月 5日 同 第101号
同 52年 4月27日 同 第123号
同 53年10月13日 同 第683号
同 54年10月 2日 同 第802号
同 55年 5月17日 同 第305号
同 58年 5月24日 同 第131号
同 60年 5月20日 同 第388号
同 63年 5月28日 同 第250号
平成10年 5月27日 環保企第290号
同 11年 5月10日 同 第288号