法令・告示・通達

公害健康被害補償法等の施行について

公布日:昭和49年09月28日
環保企108号

環境事務次官から都道府県知事・政令市長あて

 公害健康被害補償法(以下「法」という。)は、昭和48年10月5日法律第111号をもつて公布され、また、これに伴う公害健康被害補償法施行令(以下「令」という。)が昭和49年8月20日政令第295号をもつて、公害健康被害補償法施行規則(以下「規則」という。)が、昭和49年8月31日総理府令第60号をもつて、公害健康被害補償法施行規程が昭和49年8月31日総理府令、通商産業省令第4号をもつて、それぞれ公布され、昭和49年9月1日から全面的に施行されたところである。
 本制度は、公害対策基本法の精神にのつとり、事業活動その他の人の活動に伴つて生ずる相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁が生じた地域について、その影響により健康被害を受けた者に対し、その受けた損害を填〈てん〉補するために療養の給付や障害補償費等の支給を行うとともに、被害者の福祉に必要な事業を行うことにより、健康被害に係る被害者の迅速かつ公正な保護を図ることを目的とするものであつて、その運用の適否は公害対策の推進に影響することが多大であるので、次の事項に留意のうえ、法の施行について遺憾なきを期せられたく通知する。

第1 法制定の趣旨

  1.  1 公害に係る健康被害の救済については、すでに公的な制度として昭和44年には「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」(以下「旧法」という。)が制定され、当面の緊急措置として医療費等の給付を行う行政上の救済措置が講じられるとともに、昭和47年には事業者の公害に係る無過失責任を明らかにする法律が制定され、民事上の見地からも被害者を救済する措置が講じられてきたところであるが、旧法においては逸失利益に対する補償がないなど給付の内容が限定されており、また、いわゆる無過失責任法においては民事訴訟という手段により損害賠償を求めるものであるためにその解決にはかなりの労力と時日を要するという問題があり、被害者の救済に万全を期するとはいいがたい現状にあつたため、今回、民事責任をふまえた制度として、公害により健康被害を受けた被害者の迅速かつ公正な保護を図ることを目的として、法が制定されたものであること。
  2.  2 本制度の基本的性格については、本制度の対象とする被害の発生が原因者の汚染原因物質の排出による環境汚染によるものであり、本来的にはその原因者と被害者との間の損害賠償として処理されるものにつき制度的解決を図ろうとするものであるので、本制度は基本的には民事責任をふまえた制度として構成されているものであること。
  3.  3 本制度と公害諸規制との関係については、環境汚染を未然に防止し、人の健康を損なわない環境基準を維持達成することが環境対策の基本である以上、汚染原因者の汚染防除努力が最大限に払われるべきことは当然であり、これを強力にすすめるため、公害諸規制をはじめ各行政分野で十分な措置がとられることが第一義的に必要であることはいうまでもないこと。
       このような意味で、本制度は、そのような環境基準が完全に維持達成されれば、本来不用となるべき性格のものであること。
  4.  4 法の施行に伴い、旧法は廃止されることになるものであること。

第2 一般的事項

  1.  1 法による補償措置は、相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁が生じた地域において、その影響による疾病にかかつたと認定された者に対し、民事上の責任をふまえた制度として、大気の汚染又は水質の汚濁の汚染原因者の負担において実施されるものであるから、この趣旨を十分了知のうえ適切な法の施行に努力されたいこと。
  2.  2 法による補償措置は、法第4条第1項又は第2項の認定を受けた者(以下「被認定者」という。)に対し、当該認定に係る疾病(以下「認定疾病」という。)に関して療養の給付及び療養費、障害補償費、遺族補償費、遺族補償一時金、児童補償手当、療養手当並びに葬祭料(以下「補償給付」という。)の支給が行われるものであるが、その実施に当たつては、特に被認定者及びその認定疾病の病状を的確に把握しておくことが重要であると考えられるので、この点に十分留意されたいこと。
  3.  3 法による補償措置は、最終的には被認定者の疾病を軽快治ゆせしめ、さらに回復した健康の保持増進にあるのであるから、医師と患者の信頼関係の上にたつた積極的な医学的管理を行うことが重要となるので、公害医療機関の利用について被認定者に対し十分徹底させるよう配慮すること。
  4.  4 法による補償措置の円滑な実施を図るためには、関係医療機関等の協力に期待しなければならないところが極めて大であるので、関係医療機関等に対する法の周知徹底に配慮するとともにその協力を得るように努めること。

第3 指定地域及び指定疾病

  1.  1 法は公害に係る健康被害の救済を図ろうとするものであるが、現にその影響による疾病の発生をみている公害としては当面大気の汚染又は水質の汚濁に限られることから、旧法の場合と同様、法第2条の指定地域及び指定疾病はこの2種類の公害に係るものとされていること。
  2.  2 指定地域は、第一種地域及び第二種地域とし、第一種地域とは事業活動その他の人の活動に伴つて相当範囲にわたる著しい大気の汚染が生じ、その影響による疾病が多発している地域として政令で定める地域とされ、具体的には横浜市鶴見区の一部の区域、川崎市の一部の区域等旧法において指定されていた慢性気管支炎等の非特異的疾患に係る12地域が当面はその対象となるものであること。
       また、第二種地域とは、事業活動その他人の活動に伴つて相当範囲にわたる著しい大気の汚染又は水質の汚濁が生じ、その影響により、当該大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質との関係が一般的に明らかであり、かつ、当該物質によらなければかかることがない疾病が多発している地域として政令で定める地域とされ、具体的には新潟市の一部の区域、富山市の一部の区域等、旧法において指定されていた水俣病、イタイイタイ病等の特異的疾患に係る5地域がその対象となるものであること。
       なお、第一種地域と考えられるその他の地域にあつても必要に応じ、調査を実施し、追加指定についての検討を行つていくものであること。
  3.  3 指定疾病の種類は、旧法の場合と同様、第一種地域に係るものは慢性気管支炎、気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎及び肺気しゆ並びにこれらの続発症とし、第二種地域に係るものはそれぞれの地域に応じ水俣病、イタイイタイ病及び慢性砒〈ひ〉素中毒症とされていること。

第4 補償給付

 1 認定

  1.   (1) 第一種地域に係る指定疾病にかかつていると認められる者の認定は、公害健康被害認定審査会(以下「認定審査会」という。)の意見をきき、その者の申請に基づき、次のいずれかに該当する者について行うものであること。
    1.    ① 申請の当時第一種地域の区域内に住所を有しており、かつ、申請の時まで引き続きその区域内に住所を有した期間あるいは断続してその区域内に住所を有した期間が指定疾病の種類に応じて令第2条第1項の表に定める期間以上である者
    2.    ② 申請の当時1日8時間以上の時間を第一種地域内で過ごすことが常態であり、かつ、申請の時まで引き続き1日8時間以上の時間をその区域内で過ごすことが常態であつた期間あるいは断続して1日8時間以上の時間をその区域内で過ごすことが常態であつた期間が指定疾病の種類に応じて令第2条第3項の表に定める期間以上である者
    3.    ③ 申請の当時第一種地域の区域内に住所を有しており、又は申請の当時1日8時間以上の時間を第一種地域内で過ごすことが常態であり、かつ、第一種地域内に住所を有した期間と1日8時間以上の時間をその区域内で過ごすことが常態であつた期間の両方がある者にあつては、令第2条第4項の算定方法により算定した期間以上である者
  2.   (2) 第二種地域に係る指定疾病にかかつていると認められる者の認定は、認定審査会の意見をきき、その者の申請に基づき、当該疾病が当該第二種地域に係る大気の汚染又は水質の汚濁の影響によると認められるときに行うものとすること。
  3.   (3) 法第4条第3項の政令で定める市は、令第3条において横浜市、川崎市、新潟市、富士市、名古屋市、四日市市、大阪市、豊中市、堺市、尼崎市、北九州市及び大牟田市と定められ、これらの市の区域内の指定地域については、認定の権限は、当該市の長が行うものであること。

 2 認定の有効期間等

  1.   (1) 認定は、指定疾病による被害の有無を適切に把握することとあわせて、定期的に検診を実施し、その結果に基づいて適切な医学的管理を行うことが重要であることから指定疾病の種類に応じて政令で定める期間内に限りその効力を有するものとされているが、慢性気管支炎、気管支ぜん息及び肺気しゆ並びにこれらの続発症にあつては3年、ぜん息性気管支炎及びその続発症にあつては2年と定められていること。
        なお、水俣病、イタイイタイ病及び慢性砒〈ひ〉素中毒症については、これらの疾病の特殊性にかんがみ、有効期間を定めないこととされていること。
  2.   (2) 有効期間が定められた被認定者の当該認定に係る指定疾病が有効期間の満了前に治る見込みがないときは、申請に基づき、認定の更新をすることができることとされていること。

 3 補償給付の免責等

  1.   (1) 本制度は、民事責任をふまえた損害を填〈てん〉補するための制度であるので、本制度において補償給付を受けることができる者に対し、同一の事由について、裁判、協定等によつて既に損害が填〈てん〉補されている場合においては、都道府県知事又は政令市の長(以下「都道府県知事等」という。)はその価額の限度において本制度の補償給付を支給する義務を免れるものであること。
  2.   (2) 具体的な調整を行うにあたつては、裁判、協定等による損害の填〈てん〉補が、本制度の補償給付の給付事由と同一の事由によつてなされているものかどうか、填〈てん〉補された損害の内容が本制度の補償給付のどの給付項目に対応するか等を十分調査し、裁判、協定等によつて填〈てん〉補されていない損害がある場合に当該填〈てん〉補されない部分に対応する本制度の補償給付の支給を行うようにされたいこと。
  3.   (3) (1)及び(2)の場合において、損害の填〈てん〉補をした者がばい煙発生施設等設置者である場合には、損害の填〈てん〉補がされた後においても引き続き汚染物質の排出量に応じて汚染負荷量賦課金を納付しなければならないことになり、二重の負担をすることになるので、その調整を行うために、本制度が免れることとなつた補償給付の価額に相当する金額又は納付した汚染負荷量賦課金から徴収事務費等に充てられる額を控除した額のいずれか低い額を限度として、損害の填〈てん〉補をした事業者が一であるような場合にはその者にその金額を、二以上であるような場合には損害の填〈てん〉補のために拠出した金額の割合で支払うこととされていること。

 4 他制度との調整

   本制度の補償給付の支給がなされた場合には、健康保険法等、令第7条で定める法令の規定により本制度の補償給付に相当する給付等を支給すべき保険者等は支給された補償給付の価額の限度で支給義務を免れるものとし、逆に、他制度から本制度の補償給付に相当する給付等が先に支給された場合には、本制度はその価額の限度で支給義務を免れるが、この場合、他制度の保険者等は本制度が補償給付の支給を免れた価額の限度で本制度に対して求償することができるものとされていること。これは、認定が遅れたこと等のために他制度から先に給付がなされた場合に、本制度が遡つて補償給付の支給を行うこととすると他制度ではすでに支給したものを受給者等から返還させることとなり、受給者等にとつて煩に堪えない結果となるので、制度間の求償の問題として整理したものであること。

 5 療養の給付及び療養費

  1.   (1) 療養の給付は、被認定者が認定疾病について受けた療養に関し行われるものであること。
  2.   (2) 療養の給付を取り扱う者(以下「公害医療機関」という。)は、とくに公害医療機関とならない旨を申し出たものを除き、健康保険法に規定する保険医療機関及び保険薬局、国民健康保険法に規定する療養取扱機関、生活保護法に規定する指定医療機関等が包括的に公害医療機関とされるものであること。
  3.   (3) 公害医療機関の診療方針、診療報酬等については、健康保険法の規定に基づく診療方針、診療報酬等の例にはよらないで、環境庁長官が中央公害対策審議会の意見をきいて定めることとなつているが、その内容は昭和49年8月31日告示第48号(公害医療機関の療養に関する規程)第50号(公害健康被害補償法の規定による診療報酬の額の算定方法)に定めるとおりであること。
  4.   (4) 療養の給付は、公害医療機関に対する公害医療手帳の提示のもとに現物給付として行われるものであるが、療養の給付を行うことが困難であると認めるとき、又は被認定者が緊急その他やむを得ない理由により公害医療機関以外の病院、診療所等から診療を受けた場合においてその必要があると認めるとき等は、被認定者の請求に基づき、療養の給付に代えて療養費を支給することができるものであること。

 6 障害補償費

  1.   (1) 障害補償費は、被認定者(15歳に達しない者を除く。)の指定疾病による障害の程度が一定の程度にある場合に、指定疾病にかかつたことによる損害を填〈てん〉補するために支給されるものであり、填〈てん〉補の対象となる損害は、逸失利益の填〈てん〉補を中心としてこれに慰謝料的な要素が加味されたものであること。
  2.   (2) 障害補償費は、障害の程度に応じて支給されるものであるが、この障害等級は、特級、1級、2級、3級のランクに分けることとされていること。
        また、障害の程度は、日常生活の困難度及び労働能力の喪失度をもつてあらわす基準を根幹とし、同時に医学的見地から各指定疾病ごとに、根幹となる基準に示された程度の日常生活の困難度及び労働能力の喪失度をもたらす症状や検査所見等に関する基準(昭和49年8月31日告示第47号(障害等級の基準))を設けているものであること。
  3.   (3) 障害補償費の額は、性別及び年齢階層別に区分して定める障害補償標準給付基礎月額(昭和49年8月31日告示第45号)に、被認定者が、特級又は1級に該当する程度の障害の場合にあつては、1.0、2級に該当する程度の障害の場合にあつては0.5、3級に該当する程度の障害の場合にあつては、0.3をそれぞれ乗じて得た額とされていること。
  4.   (4) 障害補償費の額については、被認定者の指定疾病による障害の程度が特級に該当する場合には、1万8千円の介護加算が行われるものであること。
        この介護加算は、旧法の介護手当の場合と異なり、現実に介護したことによる金銭の授受がない場合であつてもその対象となるものであること。
  5.   (5) 障害補償費の支給を受けている者は、当該指定疾病による障害の程度につき、慢性気管支炎、気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎及び肺気しゆ並びにこれらの続発症にあつては1年ごとに、水俣病、イタイイタイ病及び慢性砒〈ひ〉素中毒症にあつては3年ごとに都道府県知事等の診査を受けなければならないものであること。

 7 遺族補償費

  1.   (1) 遺族補償費は、被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡したときに、被認定者の逸失利益相当分及び慰謝料相当分並びに遺族固有の慰謝料相当分として一定範囲の遺族に対して支給されるものであること。
        したがつて、指定疾病と無関係に死亡した場合には支給されないものであること。
  2.   (2) 遺族補償費の支給は、10年間を限度として定期的に支払われるものであること。
  3.   (3) 遺族補償費を受けることができる遺族は、被認定者の配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であつて、被認定者の死亡の当時又は認定の申請の当時その者によつて生計を維持していた者であること。ただし妻以外の者にあつては、60歳以上又は18歳未満であるという要件に該当した場合に限るものであること。
        これは行政上の制度として定型化して給付を行う場合に、どのような者に給付することとすればその損失の填〈てん〉補と破壊された遺族の生活の回復に最も適当かという観点から、本制度では被認定者等の死亡により直接その生活を破壊され、生計を維持していた妻や老幼の家族をその支給を受けることができる遺族とし、これらの遺族の間においては、一般に死亡した被認定者等と密接な関係があり、より大きい損失を受けると考えられる者を先順位とすることとされたこと。
  4.   (4) 遺族補償費の額は、当該死亡した被認定者事等の診査を受けなければならないものであの性別及び年齢階層別に区分して定める遺族補償標準給付基礎月額(昭和49年8月31日告示第46号)に相当する額であること。
  5.   (5) 遺族補償費は、遺族補償費を受けることができる者が、①死亡したとき、②婚姻(事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む。)をしたとき、③直系血族又は直系姻族以外の養子(事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む。)となつたとき、④離縁によつて、死亡した被認定者との親族関係が終了したとき、⑤子、孫又は兄弟姉妹にあつては、18歳に達したときは支給されなくなるものであること。

 8 遺族補償一時金

  1.   (1) 遺族補償一時金は、被認定者が当該認定に係る指定疾病に起因して死亡した場合において、その死亡の時に遺族補償費を受けることができる遺族がいないとき、又は遺族補償費を受けていた遺族が遺族補償費の失権事由に該当し、他に遺族補償費を受けることができる同順位者も後順位者もいない場合で、すでに支給された遺族補償費の額が(2)に述べる遺族補償一時金の額に満たないときに、遺族補償費を受けることができる遺族以外の遺族の請求に基づき、支給されるものであること。
  2.   (2) 遺族補償一時金の額は、被認定者の死亡の当時遺族補償費を受けることができる遺族がない場合には、死亡した者の該当する遺族補償標準給付基礎月額(昭和49年8月31日告示第46号)に36月(3年相当)を乗じて得た額であり、遺族補償費を受けることができる遺族が失権した場合の遺族補償一時金の額は、死亡した者の死亡の当時該当した遺族補償標準給付基礎月額に36月(3年相当)を乗じて得た額から死亡した者について既に支給された遺族補償費の合計額を控除した額であること。

 9 児童補償手当

  1.   (1) 児童補償手当は、被認定者で、15歳に達しない者の指定疾病による障害の程度が一定の程度にある場合に、指定疾病にかかつたことによる損害を填〈てん〉補するために、当該被認定者を養育している者の請求に基づき支給されるものであること。
  2.   (2) 児童補償手当は、①指定疾病にかかつた児童は、家庭、近隣、学校において通常の児童なみの生活ができないことによる苦痛があること、②指定疾病にかかつた児童は、成長が遅れる、学業が遅れる等により現在及び将来に支障をきたすことがあること、③発作等により肉体的、精神的苦痛があること等の理由から支給されるものであり、その性格は、慰謝料的要素が中心となるものであること。
  3.   (3) 児童補償手当は、障害の程度に応じて支給されるものであるが、この障害等級は、障害補償費の場合と同様、特級、1級、2級、3級のランクに分けることとされていること。
        また、障害の程度は、日常生活の困難度をもつてあらわす基準を根幹とし、同時に医学的な見地から各指定疾病ごとに根幹となる基準に示された程度の日常生活の困難度をもたらす症状や検査所見等に関する基準を設けているものであること(昭和49年8月31日告示第47号(障害等級の基準))。
  4.   (4) 児童補償手当の額は、被認定者が特級又は1級に該当する程度の障害の場合にあつては2万円、2級に該当する程度の障害の場合にあつては1万円、3級に該当する程度の障害の場合にあつては6,000円であること。
  5.   (5) 児童補償手当の額については、被認定者の指定疾病による障害の程度が特級に該当する場合には、障害補償費の場合と同様の趣旨から、介護加算が行われるものであること。

 10 療養手当

  1.   (1) 療養手当は、入院に要する諸雑費、通院に要する交通費に充てるため入院・通院期間の要素を定型化して支給されるものであること。
  2.   (2) 療養手当の額は、1月において入院を要した日数が15日以上の場合は月額9,000円、入院を要した日数が8日以上15日以内である場合は月額7,000円、入院を要した日数が7日以内である場合は月額6,000円、通院を要した日数が15日以上(第二種地域に係る指定疾病については8日以上)である場合は月額6,000円、通院を要した日数が4日以上14日以内(第二種地域に係る指定疾病については2日以上7日以内)である場合は月額5,000円であること。

 11 葬祭料

  1.   (1) 葬祭料は、被認定者が指定疾病に起因して死亡した場合に、その死亡のために支出を余儀なくされる損害として、その葬祭を行う者に対して支給されるものであること。
        指定疾病とは無関係に死亡した場合には、遺族補償費の場合と同様、支給の対象とならないものであること。
  2.   (2) 葬祭料の額は、通常葬祭に要する費用として20万円であること。

 12 公害健康被害認定審査会

  1.   (1) 本制度における認定及び補償給付の支給を適正かつ迅速に行うために、第一種地域又は第二種地域の全部又は一部をその区域に含む都道府県又は政令市(以下「都道府県等」という。)に公害健康被害認定審査会を置くものとしていること。
  2.   (2) 認定審査会は、医学、法律学その他公害に係る健康被害の補償に関し学識経験を有する者のうちから都道府県知事又は政令市の長が任命する15人以内の委員をもつて組織することとしているが、これは、もつぱら指定疾病にかかつているかどうか、その指定疾病がその地域の環境汚染によるものかどうかという判断を行うことに加えて障害の程度の判定等を行うこととなるので、この方面に詳しい専門家や法律の専門家等を委員に加える必要があるために、委員数の増加を図つたものであること。
  3.   (3) 認定審査会については、法の定めるもののほか、その組織、運営等に関し必要な事項は条例で定めるものとされているが、委員の人選等にあたつても、地域における医師、医学者等の意見が十分反映されるような認定審査会の運営が確保されるように十分配慮すること。

第5 公害保健福祉事業

  1.   (1) 公害による健康被害者に対する救済は、法定給付である補償給付の支給とともに、被害者の福祉の向上を図ることが重要であるので、そこなわれた健康を回復させ、回復した健康を保持させ、増進させる等のための公害保健福祉事業を実施することとしていること。
  2.   (2) 公害保健福祉事業の実施主体は、補償給付の実施主体となる都道府県知事及び政令市の長であり、都道府県知事等が公害保健福祉事業を実施しようとするときは、あらかじめ環境庁長官の承認を受けなければならないものであること。
  3.   (3) 具体的な公害保健福祉事業の種類は、①リハビリテーシヨンに関する事業、②転地療養に関する事業、③家庭における療養に必要な用具の支給に関する事業、④家庭における療養の指導に関する事業、⑤以上のほか、被認定者の福祉を増進し、又は指定疾病による被害を予防するために必要な事業で環境庁長官が定めるものが令第25条において定められているが、いずれにせよ各地域の公害被害者の需要等を十分把握し、補償給付の支給とあいまつて実情に応じて効果のある公害保健福祉事業が実施されるよう十分配慮すること。

第6 認定又は補償給付の支給に関する処分に対する不服申立て

  認定又は補償給付の支給に関する処分に不服がある者は、その処分をした都道府県知事又は政令市の長に対して異議申立てをすることができることとし、さらに不服がある者のする審査請求は、公害健康被害補償不服審査会に対してしなければならないこととされていること。

第7 公害健康被害補償不服審査会

  認定又は補償給付の支給に関する処分に不服がある者のする審査請求事件を取り扱わせるために、環境庁長官の所轄の下に、委員6人をもつて組織する公害健康被害補償不服審査会を置くものとされていること。

第8 その他

  1.  1 本制度は、昭和49年9月1日から全面的に実施されるものであること。
  2.  2 従前の公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法は廃止されることとなるが、旧法に基づいて認定を受けた者のうち慢性気管支炎、気管支ぜん息、ぜん息性気管支炎及び肺気しゆ並びにこれらの続発症にかかつている者は第一種地域に係る指定疾病にかかつている被認定者とみなされ、それ以外の指定疾病にかかつている者は第二種地域に係る指定疾病にかかつている被認定者とみなされるものであること。
  3.  3 昭和49年9月1日前に旧法に基づいて申請をした者のうち、まだ認定がなされていない者に対する処分は旧法の規定に基づいてなされるものであること。