法令・告示・通達

公害健康被害補償法等(費用負担関係)の施行について

公布日:昭和49年10月21日
環保企108号

環境事務次官・通商産業事務次官から都道府県知事・政令市長あて

 公害健康被害補償法は、昭和48年10月5日法律第111号をもつて公布され、また、これに伴う公害健康被害補償法施行令が昭和49年8月20日政令第295号をもつて、公害健康被害補償法施行規則が昭和49年8月31日総理府令第60号をもつて、公害健康被害補償法施行規程が昭和49年8月31日総理府令、通商産業省令第4号をもつて、それぞれ公布され、昭和49年9月1日から全面的に施行されたところである。
 本制度のうち費用に関する事項の内容は次のとおりであるがその運用の適否は、公害対策の推進に影響するところが多大であるので、法の施行について遺憾なきを期せられたく通知する。

第一 費用負担の原則

  1.  1 本制度の実施に必要な費用の負担のあり方については、本制度が基本的には民事責任をふまえた損害を填〈てん〉補する制度であることから、公平の見地からみて、大気の汚染及び水質の汚濁に対する汚染の寄与の程度に応じて分担させることを基本としていること。
  2.  2 被害者救済の費用は、このように汚染原因者が、その寄与度に応じて負担するのが原則であるが、とくに非特異的疾患たる大気汚染系疾病にあつては、個々の原因者の汚染原因物質の排出と大気の汚染又は疾病との関係を量的にかつ正確に証明することは不可能に近いので、汚染原因物質の総排出量に対する個々の施設の排出量の割合等をもつて大気の汚染に対する寄与度とみなし、これをもつて補償を要する健康被害に対する寄与度とし、費用負担を求めるという制度的取決めを行つているものであること。

第二 費用負担の構成

  本制度の実施に要する費用は、その費用の種類ごとに分けると、①補償給付費、②公害保健福祉事業費、③給付関係事務費、④徴収関係事務費の四つに分けられるが、それぞれの財源は次のようになつていること。

  1.  1 補償給付費については、全額汚染原因者負担としており、このうち慢性気管支炎等の非特異的疾患に係る補償給付費については、工場等からその汚染物質(硫黄酸化物)の排出量に応じて徴収する汚染負荷量賦課金をもつて充てるほか、別に法律で定めるところにより徴収される金員をもつて充て(昭和49年度及び昭和50年度の2年度間は、法附則第19条の2の規定により自動車重量税の収入見込額の一部をもつて充てることとなつている。)、特異的疾患に係る補償給付費については、その直接の原因者である工場等から徴収する特定賦課金をもつて充てることとされていること。
  2.  2 公害保健福祉事業費については、その2分の1を汚染原因者負担とし、残り2分の1を公費負担としていること。汚染原因者負担分の具体的な負担方法は、補償給付費の場合と同様であり、公費負担分については、その半分(全体の4分の1)を国が、残り半分(全体の4分の1)を都道府県又は政令市が負担するものであること。
  3.  3 給付関係事務費については、本制度が公的制度として実施されるという見地から、全額公費負担としており、その2分の1を国が、残り2分の1を都道府県又は政令市が負担することとしていること。
  4.  4 徴収関係事務費(公害健康被害補償協会の賦課徴収等の事務に要する費用)は、汚染原因者と国が負担することとなつていること。

第三 汚染負荷量賦課金と自動車重量税引当分の配分比率

  本制度の実施に必要な費用のうち慢性気管支炎等の非特異的疾患に係る被認定者に対する補償給付の支給等に要する費用については汚染負荷量賦課金のほか、自動車重量税の収入見込額の一部をもつて充てることとされているが、この両者の配分比率は、8対2と定められたものであること。
  なお、この配分比率は、各発生源の排出量の変動に応じて見直しが行われるものであること。

第四 汚染負荷量賦課金

  1.  1 汚染負荷量賦課金の納付義務者は、次の要件に該当する事業者であること。
    1.   (1) 大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設(鉱山に設置される施設でこれに相当するものを含む。)を設置している事業者であること。
    2.   (2) 汚染負荷量賦課金の算定の基礎となる賦課対象物質である硫黄酸化物を排出している事業者であること。
    3.   (3) そのばい煙発生施設が設置されている工場等の規模が、第一種地域内にある工場等にあつては最大排出ガス量が5,000Nm3/時以上、その他の地域内にある工場等にあつては最大排出ガス量が10,000Nm3/時以上であること。
    4.   (4) そのばい煙発生施設を各年度の初日(4月1日)において設置していること。ただし、49年度においては49年9月1日において設置しているものであること。
  2.  2 汚染負荷量賦課金の額は、硫黄酸化物の単位排出量当たりの賦課金額(賦課料率)に前年度の初日の属する年における年間排出量を乗じて得た額であり、硫黄酸化物の単位排出量当たりの賦課金額は、昭和49年度においては、第一種地域内にある工場等にあつては、硫黄酸化物1立方メートル当たり15円84銭、その他の地域内にある工場等にあつては、1円76銭であること。
       なお、硫黄酸化物の年間排出量の算定方法は、規程第3条の算式により算定することとなつていること。
  3.  3 ばい煙発生施設等設置者は、各年度ごとに、汚染負荷量賦課金をその年度の初日から45日以内に公害健康被害補償協会に申告納付しなければならないものであること。ただし、初年度においては、昭和49年9月1日から45日以内に納付することとされていること。
  4.  4 納付すべき汚染負荷量賦課金の額が500万円以上である納付義務者が、申告を行う際に延納の申請をした場合には、3期に分けて延納を認めることができることになつていること。
  5.  5 公害健康被害補償協会は、汚染負荷量賦課金の納付の督促を受けた者が、その指定の期限までに完納しないときは、納付義務者の住所地等の市町村に対しその徴収を請求することができるものとし、市町村は、その請求を受けたときは、地方税の滞納処分の例により滞納処分をすることができるものであること。
       また、市町村が滞納処分を行わなかつたときは、公害健康被害補償協会は、環境庁長官及び通商産業大臣の認可を受けて国税滞納処分の例により滞納処分をすることができるものであること。

第五 自動車重量税引当による政府の交付金

  公害健康被害補償法においては、移動発生源に係る費用負担方式は別に法律で定めることとされていたが、昭和49年度及び昭和50年度の2年度における措置として、大気の汚染の原因である物質を排出する自動車に係る費用に自動車重量税の収入の見込額の一部に相当する金額を充てることとし、政府は、その金額を公害健康被害補償協会に対して交付することとしたものであること。
  なお、このために、第72国会において公害健康被害補償法の一部改正が行われたこと。

第六 特定賦課金

  1.  1 特定賦課金の納付義務者は、第二種地域に係る指定疾病に影響を与えた大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質を排出した大気汚染防止法に規定するばい煙発生施設及び特定施設並びに水質汚濁防止法に規定する特定施設の設置者(過去の設置者を含む。)であること。
  2.  2 特定賦課金は、政令で定める特定賦課金の算定方法に従い、公害健康被害補償協会が、納付義務者、納付すべき特定賦課金の額を決定し、納付期限その他必要な事項を通知するものであること。納付義務者は、この通知されたところに従つて納付するものであること。
  3.  3 特定賦課金の算定方法は、次のとおりであること。
    1.   (1) 当該第二種地域に係る指定疾病に影響を与えた大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質を排出した原因者が一である場合にあつては、当該第二種地域に係る補償給付の種類ごとの受給者見込数及び平均受給金額の見込額、その他の事情を考慮して算定した特定賦課金の額として当該年度において必要であると見込まれる金額であること。
    2.   (2) 当該第二種地域に係る指定疾病に影響を与えた大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質を排出した原因者が二以上である場合にあつては、(1)の金額に、各原因者につき、次の①の量の②の量に対する割合を乗じて得た額であること。
      1.    ① 各原因者が排出した当該第二種地域に係る指定疾病に影響を与えた大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質の総排出量に当該原因となる物質を排出した期間及び排出した場所等を勘案して環境庁長官及び通商産業大臣が定める率を乗じて得た量
      2.    ② 当該第二種地域に係る指定疾病に影響を与えた大気の汚染又は水質の汚濁の原因である物質を排出したすべての原因者の?に規定する量を合算した量
  4.  4 公害健康被害補償協会は、納付義務者の全部又は一部から当該各納付義務者が納付すべき特定賦課金について納付の方法を明らかにして共同で納付する旨の申出があり、これを承認したときは、当該各納付義務者に係る特定賦課金の額は定めず、共同納付をさせることができるものであること。
  5.  5 その他延納の方法、強制徴収の方法等については汚染負荷量賦課金の場合と同様であること。

第七 公害健康被害補償協会

  1.   1 ばい煙発生施設等設置者からの汚染負荷量賦課金の徴収及び特定施設等設置者からの特定賦課金の徴収並びに都道府県等に対する納付金の納付に関する業務等を行う組織として、特殊法人である公害健康被害補償協会を設立したこと(49年6月10日設立)。
        都道府県等が支弁する費用の財源のほとんどは、公害健康被害補償協会から納付金として納付されることとなるので、その円滑な納付の実現に資するために、公害健康被害補償協会と密に連絡をとるよう十分配慮されたいこと。
  2.   2 公害健康被害補償協会には、役員として、会長1人、理事3人以内及び監事1人を置くこととしており、また、同協会の業務の運営に関する重要事項を調査審議するため、評議員20人以内で組織する評議員会を置くこととされていること。
  3.   3 汚染負荷量賦課金等の徴収に関し、公害健康被害補償協会から協力の要請があつた場合には、十分これに配慮されたいこと。

第八 賦課徴収に関する処分等に対する不服申立て

  賦課徴収に関して公害健康被害補償協会がした処分に不服がある者は、環境庁長官及び通商産業大臣に対して、行政不服審査法による審査請求をすることができるものとされていること。

第九 その他

  本制度は、昭和49年9月1日から全面的に実施されるものであること。