法令・告示・通達

ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進について

公布日:平成14年01月10日
環廃産11号

(各都道府県知事・各政令市長あて環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長通知)

 我が国においては、ポリ塩化ビフェニルを使用した高圧トランス・コンデンサをはじめとするポリ塩化ビフェニル廃棄物について、処理体制の整備が著しく停滞し、長期にわたり処分されず、事業者において保管が行われてきたが、処分の目途がない長期にわたる保管が継続する中で、高圧トランス・コンデンサの不明、紛失が発生し、ポリ塩化ビフェニルによる環境汚染の進行が懸念される状況にある。また、ポリ塩化ビフェニルは、難分解性、高蓄積性、環境中の挙動における長距離移動性の性状を有し、かつ、人の健康及び生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質であり、地球規模の環境汚染が報告されており、国際的な枠組みでの対策が求められてきたところである。
 このような状況を踏まえ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四五年法律第一三七号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づく適正処理確保のための措置に加えて、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成一三年法律第六五号。以下「特措法」という。)、環境事業団法(昭和四〇年法律第九五号)に基づき、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処分を今後一五年間で完了すべく取り組んでいるところである。
 特措法の施行後、環境省においては、環境事業団を活用した拠点的処理施設の立地を進め、平成一三年一〇月一一日に北九州市長から立地を受け入れる旨の回答をいただき、同年一一月一日に環境事業団による中国、四国及び九州の一七県を処理対象区域とする事業について事業認可をし、平成一六年からの処理の開始を目指した事業の推進を図っているところである。
 さらに、近畿圏については、昨年六月に環境事業団による拠点的処理施設立地の受入れ表明をされた大阪市における事業実施を中心に取り組みを進めているほか、中部圏、関東圏等においても順次立地に向けた調整を行っているところである。
 また、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理を促進する観点から、中小企業者が保管しているポリ塩化ビフェニルを使用した高圧トランス・コンデンサの処理に係る負担を軽減するため、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基金を設け、国と都道府県で基金を造成することとしたところであるが、国においては同基金の造成のため、平成一三年度予算に引き続き、平成一四年度政府予算案においても二〇億円の措置をしたところである。
 廃棄物処理法において、産業廃棄物の処理については、都道府県がその事務として行うことができるとされ、また、市町村においても、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要と認める産業廃棄物の処理をその事務として行うことができるとされているところ、ポリ塩化ビフェニル廃棄物については、これに加えて、特措法等に基づき、国においてもポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理施設の整備を推進することとしているので、貴職におかれても左記事項に御留意の上、特段の御尽力、御協力を頂くようお願いする。

一 特措法と廃棄物処理法の関係

  特措法は、廃棄物処理法の特別法としての性格を有するものであることから、ポリ塩化ビフェニル廃棄物に係る処理基準、特別管理産業廃棄物処理業の許可制度、産業廃棄物処理施設の設置の許可制度及び不適正処理がなされた場合の措置命令等特措法の規定に定める以外のポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理に関する事項は、廃棄物処理法の規定によるものである。

二 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の定義

  ポリ塩化ビフェニル廃棄物とは、ポリ塩化ビフェニル、ポリ塩化ビフェニルを含む油(絶縁油、熱媒油、潤滑油等)又はポリ塩化ビフェニルが塗布され(感圧複写紙等)、染み込み(トランス・コンデンサ内の絶縁紙、トランス・コンデンサの巻線の支持木、清掃時のウエス、使用済み保護衣類等)、付着し(トランス・コンデンサ内の碍子・鉄芯・銅線・絶縁フィルム、電線の被覆材、使用済み保護具類等)、若しくは封入された(トランス・コンデンサ、廃ポリ塩化ビフェニルを封入した容器等)物が廃棄物となったものをいい、廃棄物処理法に規定するポリ塩化ビフェニルに係る特別管理産業廃棄物(廃ポリ塩化ビフェニル等、ポリ塩化ビフェニル汚染物及びポリ塩化ビフェニル処理物)及び特別管理一般廃棄物がこれに相当するものである。なお、特措法に基づく規制は、事業活動に伴ってポリ塩化ビフェニル廃棄物を保管する事業者に課せられるものである。

三 事業者の定義及び責務

  1.  (一) その事業活動に伴ってポリ塩化ビフェニル廃棄物を保管する事業者とは、事業目的遂行のために必要な活動に随伴して保管する事業者をいうものであって、事業活動に伴って生じたポリ塩化ビフェニルを事業活動に伴い保管している事業者(排出事業者)のほか、特措法の施行前及び施行後に排出事業者から保管に係る事業を承継した事業者が含まれる。
  2.  (二) 廃棄物処理法において、事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならないこととしているところ、ポリ塩化ビフェニル廃棄物については、長期にわたり処分されていない状況にあり、これを改善し、早期に処分を行う必要があることから、廃棄物処理法における事業者の責務を強化し、特措法においては、事業者の責務として、ポリ塩化ビフェニル廃棄物を自らの責任において確実かつ適正に処理しなければならない旨を定めている。

四 ポリ塩化ビフェニルを製造した者等の責務

  ポリ塩化ビフェニル廃棄物が長期にわたり処分されていない状況にあることにかんがみ、ポリ塩化ビフェニルを製造した者及びポリ塩化ビフェニルが使用されている製品を製造した者(以下「ポリ塩化ビフェニル製造者等」という。)は、難分解性の性状を有し、かつ、人の健康及び生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質を製造し、又はこれを使用した者として、一定の責務及び役割分担を求めることが社会通念上、公平かつ適当であることから、その責務として、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理が円滑に推進されるよう、国及び地方公共団体が実施する施策へ協力しなければならない旨を定めている。

五 国及び地方公共団体の責務

  1.  (一) ポリ塩化ビフェニル廃棄物が長期にわたり処分されていない状況にあり、その確実かつ適正な処理を推進することが必要であるため、廃棄物処理法における都道府県の責務を踏襲しつつ、これを強化し、特措法においては、都道府県の責務としてポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理が行われるように必要な措置を講ずることに努めなければならない旨を定めるとともに、加えて、国の責務として、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するための体制の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない旨を定めている。
  2.  (二) また、国、都道府県及び市町村は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の推進に関する国民、事業者及びポリ塩化ビフェニル製造者等の理解を深めるように努めなければならないこととしている。

六 ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画

  我が国において、ポリ塩化ビフェニル廃棄物は長期にわたり処分されていない状況にあり、国がポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するための体制の整備等の施策を推進することが必要とされていることから、廃棄物処理法に基づく基本方針に即し、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を総合的かつ計画的に推進するための基本的な計画を定めなければならないものとしている。

七 ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理計画

  廃棄物処理法では、都道府県は、国の基本方針に即し、区域内における廃棄物の減量その他その適正な処理に関する計画を定めなければならないとされているところであるが、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理に関する施策を計画的に推進するためには、都道府県が定める廃棄物処理計画及び国が定めるポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画に即して都道府県又は政令で定める市(以下「都道府県等」という。)が計画を策定し、実施することが必要とされることから、都道府県等は、都道府県の廃棄物処理計画及び国のポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画に即し、区域内におけるポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理に関する計画を定めなければならないものとしている。

八 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管等の届出等

  1.  (一) ポリ塩化ビフェニル廃棄物が長期にわたり処分されず、事業者による保管が継続していることにかんがみ、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管及び処分の状況を的確に把握することが、保管中のものの紛失等を防止し確実かつ適正な処理を確保するために必要であることから、特措法において、ポリ塩化ビフェニル廃棄物を保管する事業者及びポリ塩化ビフェニル廃棄物を処分する者(以下「事業者等」という。)は、毎年度、保管及び処分の状況に関し、都道府県知事(保健所を設置する市にあっては、市長。以下同じ。)に届け出なければならないものとしている。
  2.  (二) ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保すること及び国民その他関係者の理解を深めることに役立てるため、都道府県知事は、毎年度、事業者等により届け出られた保管及び処分の状況について、公表することとしている。

九 期間内の処分

  1.  (一) ポリ塩化ビフェニル廃棄物が長期にわたり処分されず、事業者による保管が継続し、保管中のものの紛失等が発生していることにかんがみ、確実かつ適正な処理を確保するためには、このまま保管を継続するのみでなく、処分を実施することが必要であることから、事業者は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法施行令(平成一三年政令第二一五号。以下「特措法施行令」という。)で定める一定の期間内にポリ塩化ビフェニル廃棄物を自ら処分し、又は処分を他人に委託しなければならないこととしている。
  2.  (二) 事業者がポリ塩化ビフェニル廃棄物を自ら処分し、又は処分を他人に委託しなければならない期間として、施設の整備期間及び施設における処理の実施期間を考慮して、特措法施行令において、特措法の施行の日である平成一三年七月一五日から起算して一五年と定めている。

一〇 譲渡し及び譲受けの制限

  ポリ塩化ビフェニル廃棄物が長期にわたり処分されず、事業者による保管が継続している状況にかんがみ、特措法に基づく期間内処分等の法的義務及び廃棄物処理法の処理責任に基づく法的義務を免れんとして、ポリ塩化ビフェニル廃棄物が他人に譲り渡されることによって、紛失その他の不適正処理が生じることを防止する必要があるため、特措法において、一定の場合を除き、何人もポリ塩化ビフェニル廃棄物を譲渡し又は譲受けてはならないこととしたものである。

一一 承継

  事業者について相続、合併又は分割があった場合において、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保する上で、特措法における事業者の地位の承継関係を明確にすることが必要であるため、事業者について相続、合併又は分割があったときは、相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割によりその事業の全部を承継した法人は、その事業者の地位を承継することとしている。これにより、事業者の地位を承継した法人等は、特措法の各規定に基づく義務を課せられた事業者の地位及び改善命令を受けた場合には当該命令を受けた事業者の地位を承継するものである。

一二 ポリ塩化ビフェニル使用製品に係る措置

  ポリ塩化ビフェニルが使用されている製品は、その使用を終了することにより、今後、ポリ塩化ビフェニル廃棄物となることから、当該製品の種類、ポリ塩化ビフェニルを使用していることの判別方法及び当該製品の量に関する情報は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保する上で有効であり、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の発生量を見込む上で必要であることから、都道府県等が当該製品を使用する事業者の協力が得られるよう、環境大臣はポリ塩化ビフェニル使用製品を使用する事業を所管する関係大臣に対して必要な協力等を要請することができるものとしている。

一三 指導及び助言

  1.  (一) 特措法の目的であるポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を推進するためには、特措法に基づく義務違反に対する行政処分及び刑事告発に加え、臨機に必要な指導や計画的な処理を推進する上での助言その他要請等の相手方の任意の協力を得て実現する形式で行う行政手法(いわゆる行政指導)が有効であると考えられることから、都道府県知事は、事業者に対し、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理の実施を確保するために必要な指導及び助言を行うことができることとしている。
  2.  (二) これにより、都道府県知事は、特措法施行令で定める期間内処分に係る期限が到来する以前から、事業者に対し、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理計画に基づき、計画的な処理を実施するよう指導を行うこと等ができるものである。

一四 改善命令

  1.  (一) 事業者は、期間内にそのポリ塩化ビフェニル廃棄物を自ら処分し、又は処分を他人に委託しなければならないところ、期間内の確実かつ適正な処分の実施を確保するため、環境大臣又は都道府県知事は、義務違反に対して、処分その他必要な措置を講ずるよう命ずることができるものとしている。
  2.  (二) 命令は、環境大臣及び都道府県知事の双方に発出権限があるが、環境大臣は、緊急の必要があると認められる場合に権限を行使し得るものである。緊急の必要があると認められる場合としては、都道府県の区域を越えて広域的に生活環境保全上の支障が生ずるおそれがある場合等広域的見地から権限を行使する必要がある場合をいうものである。

一五 報告の徴収及び立入検査等

  1.  (一) ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するため、環境大臣又は都道府県知事は、事業者等に対して、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管又は処分に関して必要な報告を求めることができる。
  2.  (二) ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するため、環境大臣又は都道府県知事は、その職員に、事業者等の事務所、事業場その他の場所に立ち入り、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管又は処分に関し、帳簿書類等の物件を検査させ、又は試験の用に必要な限度においてポリ塩化ビフェニル廃棄物を無償で収去させることができる。
  3.  (三) 報告徴収及び立入検査等は、環境大臣及び都道府県知事の双方にこれを行う権限があるが、環境大臣は、緊急の必要があると認められる場合に権限を行使し得るものである。緊急の必要があると認められる場合としては、都道府県の区域を越えて広域的に生活環境保全上の支障が生ずるおそれがある場合等広域的見地から権限を行使する必要がある場合をいうものである。

一六 罰則

  1.  (一) ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するため、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の譲渡し及び譲受けの禁止、期間内処分に係る改善命令違反、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管及び処分の状況に関する届出義務違反、虚偽の届出等に関して罰則を設けている。
  2.  (二) ポリ塩化ビフェニル廃棄物の確実かつ適正な処理を確保するために罰則を設けた趣旨を踏まえ、法令違反に関する情報を入手したときは警察に対して速やかに情報提供を行うとともに、積極的な告発を行うなど法令違反に対しては厳正に対処されたい。また、捜査に必要があるため、警察から協力を要請されたときは、これに対して積極的に協力されたい。