法令・告示・通達

廃棄物の不適正輸出防止に係る情報提供及び指導依頼

公布日:平成14年06月28日
環廃産376号

(環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課適正処理推進室長から各都道府県・各政令市廃棄物行政主管部(局)長あて)
 廃棄物行政の推進については、かねてより御尽力を賜っているところであるが、近年、廃棄物の排出量が減少する傾向が見られない中で、最終処分場をはじめとする廃棄物処理施設の確保は依然として困難な状況にあり、また、再生品の需要も十分とはいえない状況である。こうした背景から、近年、中国を仕向地とする原材料としてのプラスチックくずや金属くずの輸出量が増加しているところである。他方、ここ数年、中国においては、廃棄物由来の物品の輸入規制が着実に整備されてきており、両国の企業間の契約に基づき販売され、出荷されたプラスチックくずや金属くずについて、参考1の基準に合致しない、例えば洗浄されていない空き缶が生活ごみと判断され、税関において陸揚げを拒否され、日本に積み戻されるケースが発生している。
 このような不要物が混入しているものや再生が不十分である物については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)上の廃棄物に該当するおそれが強く、また、仮にこのような物が輸出された場合には、廃棄物の国境を越える移動が不適切に行われたものとして、国際問題ともなりかねないものであり、こうした事例は中国以外の国でも発生することが容易に想像できるものである。
 ところで、当省においては、廃棄物の輸出入規制を所管する立場から、税関当局及び経済産業省と連携して輸出者への指導及び税関における検査の実施を進めるとともに、バーゼル法等説明会を実施する等により関係各位に周知徹底を図ってきたところであるが、最近、税関における検査において、廃棄物処理法上の廃棄物に該当する物が混入した貨物が発見され、廃棄物の輸出に該当するものとして輸出の取りやめを指導した事案が発生している。平成一一年に発生した我が国からフィリピンへの不法輸出事案の再発を未然に防止する観点からも、廃棄物の不適正輸出防止についてさらなる周知徹底が必要となっているところである。
 廃プラスチック類や金属くずを取り扱う中間処理業者においては、これらの貨物を自ら輸出し、又は輸出者に対して販売している場合もあるものと思料されることから、貴職におかれても、前述の趣旨を踏まえ、これらの物品を輸出のために販売する中間処理業者に対して、再生が不十分であるなど廃棄物に該当するものが出荷されることのないよう再生品の満たすべき規格、基準をよく確認するとともに適切な工程管理を行うよう、指導方よろしくお願いする。

別表

 輸入廃物環境保護規制基準―くず鉄(GB16487.6―1996)

 (仮訳・抄)

  4 基準

  •   ・輸入くず鉄中にはその浸出液中の有害物質濃度が基準値を超過する夾雑廃物(収集、包装及び輸送の過程において輸入くず鉄中に混入した原料として使用することのできない物)の混入を禁止する。
  •   ・輸入くず鉄中にはPCB含有量が基準値を超過する廃物の混入を禁止する。
  •   ・輸入くず鉄中にはその浸出液のpH値が一二・五に等しいかまたは上回る及び二に等しいかまたは下回る夾雑廃物の混入を禁止する。
  •   ・輸入くず鉄中には放射性廃棄物の夾雑を禁止する。
  •   ・輸入くず鉄の放射性物質汚染規制指標は物体表面放射性物質汚染規制水準に関する要求に適合しなければならない。
  •   ・輸入くず鉄中における次に掲げる夾雑廃物の総重量は輸入くず鉄重量の万分の一を超過してはならない。
       医薬廃棄物、農薬及び除草剤廃棄物、木材防腐剤を含む廃棄物、有機溶剤を含む廃棄物、廃乳化剤、精留(蒸留)残滓、感光材料廃棄物、燃焼性・爆発性廃棄物、焼却残滓
       ベリリウム、六価クロム、ヒ素、セレン、カドミウム、アンチモン、テルル、水銀、タリウム、鉛及びその化合物の廃物、弗素、シアン、フェノール化合物を含有する廃棄物
       アスベスト廃棄物、臨床廃棄物、厨房ごみ、風呂・便所ごみ、密閉容器等
  •   ・前述の各条に掲げられる廃物を除いて、輸入くず鉄中のその加工利用の過程において原料として直接利用することができないその他の夾雑廃物(例えば廃木材、古紙、織物くず、ガラスくず、プラスチックくず、土くず、剥離鉄錆等。ただし銅、アルミニウム等の国が輸入を許可している非鉄金属は含まない)の総重量は輸入くず鉄重量の一〇〇分の二を超過してはならない。
  •   ・かつて液体及び半固体化学物質を入れていた配管、容器及びそのくず砕片は、必ずきれいに洗浄して初めて輸出することができ、輸入者は必ずかつて入れていた化学物質の名称を検査機構に提供しなければならない。

 輸入廃物環境保護規制基準―非鉄金属くず(GB16487.7―1996)(仮訳・抄)

  4 基準

  •   ・輸入非鉄金属くず中にはその浸出液中の有害物質濃度が基準値を超過する夾雑廃物の混入を禁止する。
  •   ・輸入非鉄金属くず中にはPCB含有量が基準値を超過する廃物の混入を禁止する。
  •   ・輸入非鉄金属くず中にはその浸出液のpH値が一二・五に等しいかまたは上回る及び二に等しいかまたは下回る夾雑廃物の混入を禁止する。
  •   ・輸入非鉄金属くず中には放射性廃棄物の夾雑を禁止する。
  •   ・輸入非鉄金属くず中の放射性物質汚染基準指標は物体表面放射性物質汚染規制水準に関する要求に適合しなければならない。
  •   ・輸入非鉄金属くず中における次に掲げる夾雑廃物の総重量は輸入くず非鉄金属重量の万分の一を超過してはならない。
       医薬廃棄物、農薬及び除草剤廃棄物、木材防腐剤を含む廃棄物、廃乳化剤、精留(蒸留)残滓、感光材料廃棄物、燃焼性・爆発性廃棄物、アスベスト廃棄物、ベリリウム、六価クロム、ヒ素、セレン、カドミウム、アンチモン、テルル、水銀、タリウム、鉛及びその化合物の廃物、弗素、シアン、フェノール化合物を含有する廃棄物各種液体物質、臨床廃棄物、厨房ごみ、風呂・便所ごみ、密閉容器等
  •   ・前述の各条に掲げられる廃物を除いて、輸入非鉄金属くず中のその加工利用の過程において原料として直接利用することができないその他の夾雑廃物(例えば廃木材、古紙、プラスチックくず、ガラスくず、土くず及び剥離鉄錆等)の総重量は輸入くず非鉄金属総重量の一〇〇分の四を超過してはならない。
  •   ・かつて液体及び半固体化学物質を入れていた配管、容器及びそのくず砕片は、必ずきれいに洗浄して初めて輸出することができ、輸入者は必ずかつて入れていた化学物質の名称を検査機構に提供しなければならない。
  •   ・輸入の沈殿銅(泥銅)の水分含有率は一〇〇分の二五を超過してはならない。

 原料として使用可能な輸入プラスチック(PET)検査規定(SN0625.1―1997)(仮訳・抄)

  3 定義

   3・1 原料として使用可能なポリエチレンテレフタレート(PET)

     ポリエチレンテレフタレートの製造、加工工程において生じた廃塊、切れ端、半製品、共洗い切片、等級外品、廃糸、廃フィルム等;加工清浄した、使用済みのポリエチレンテレフタレート(片状、塊状又は粒状)。ただし、感光フィルム片と未清浄の粉砕廃ペットボトルは含まない。

  6 検査結果の判定

    原料として使用可能な廃ポリエチレンテレフタレート中、以下のいずれかが見られた場合、不合格と判定する。

  •    ・医学廃棄物及び爆発性物質が混入していた場合
  •    ・放射能汚染物質の汚染が基準を超えた場合
  •    ・夾雑廃物浸出液中の有害物質濃度及びpHが基準値を超えた場合
  •    ・次の夾雑廃物の総重量が貨物の総重量の一万分の一を超えた場合
        廃農薬、その他化学廃棄物及びその容器、各種液体廃棄物、厨房ごみ、風呂・便所ごみ、密閉容器と使用後のプラスチック容器等
  •    ・前記以外の夾雑廃物(例えば廃木片、金属くず、繊維くず、ガラスくず、その他廃プラ、ゴムくず、土砂等)の総重量が、貨物総重量の一〇〇〇分の一を超えた場合
  •    ・3・1の定義に合致しない輸入ポリエチレンテレフタレート

 原料として使用可能な輸入プラスチック(エチレン、スチレン、ポリ塩化ビニル及びその他のポリマー)検査規定(SN0625.2―1997)(仮訳・抄)

  3 定義

   3・1 原料として使用可能な廃プラスチック

     プラスチック及びその製品の製造及び加工工程において生じた切れ端、欠陥品及び加工洗浄後の使用済み単一種類の熱塑性プラスチック(片状、塊状、粒状、粉状)とする。

  6 検査結果の判定

    下記の状況のいずれかの状況が見られた場合は不合格と判定する。

  •    ・医学廃棄物、爆発性物質の混入
  •    ・基準を超えた放射能汚染物質の混入
  •    ・夾雑廃物浸出液中の有害物質濃度及びpHが基準値を超えた場合
  •    ・次の夾雑廃物の総重量が貨物の総重量の一万分の一を超えた場合
        廃農薬、その他化学廃棄物及びその容器、各種液体廃棄物
        厨房ごみ、風呂・便所ごみ、密閉容器と使用後のプラスチック容器等
  •    ・前記以外の混入廃物(例えば廃木片、金属くず、繊維くず、ガラスくず、その他廃プラ、ゴムくず、土砂等)の総重量が、貨物総重量の一〇〇〇分の一を超えた場合
  •    ・3・1の定義に合致しない輸入廃プラスチック

 中国が最近の不法輸入事例として公表した事案を、「廃棄物不法輸入事件の関連状況に関する通報(国家環境保護総局発、中国国内各省、自治区、直轄市及び単独都市計画環境保護局宛て、環弁〔一九九八〕一三六号)」から仮訳・抜粋して以下に示す。

  1. 一 新疆の幾つかの国境都市から入国したくず金属中、放射性廃棄物の基準超過に増加の趨勢が見られ、統計によると、一九九五年以来新疆で合計一万六七〇〇ロット余りの金属くず、一四五万トン近くが輸入された。その内調べにより見つかった放射性廃棄物は一七三ロット、計一六〇〇余トンであるとともに、すでに全部国外に返送されている。
  2. 二 A対外貿易公司は規定に違反してB国から破砕、洗浄が済んでいないプラスチック・ボトルくず九五・一トンを輸入、税関はすでに国外に返送するよう命令を下すとともに罰金に処している。本局はすでにその廃棄物輸入認可証書を取り消している。
  3. 三 C有限公司はD国からくずプラスチックを九コンテナ、一四四トン輸入した。その内三つのコンテナに大量の生活ゴミが混ざり込んでいるのを発見した。税関はすでに法に従って荷主に当該ロットの廃棄物を全部国外に返送するよう命令を下すとともに、一〇万元の罰金に処している。この件は現在さらなる処理を行っているところである。
  4. 四 若干の地方において輸入スクラップ電線、ケーブルを焼却する現象がときどき発生しており、現地の環境に対して汚染をもたらしている。
      放射性廃棄物は人体と環境に対して重大な危害性を備えており、電線、ケーブルの焼却及び生活ゴミが混ざり込んで国内に入り込むことは環境に対して危害をもたらすこととなる。これらの事件の発生は極めて悪い影響をもたらしている。類似した事件の発生を防止し、輸入廃棄物に対する環境管理を強化するため、次のとおり要求する。
    1.  一 廃棄物の輸入を申請する企業に対する監督検査を強化し、くず金属の輸入は放射性廃棄物が混ざり込むことを厳禁し、故紙の輸入は生活ゴミが混ざり込むことを厳禁し、くずプラスチックの輸入は洗浄、破砕を経ていないプラスチック・ボトルの輸入を禁止し、焼却方式を用いてスクラップ電線、ケーブル等を回収利用することを禁止する。
    2.  二 各クラスの環境保護部門は輸入廃棄物に対する監督管理を強化し、厳格に審査認可を行わなければならない。廃棄物利用単位の利用能力と利用状況、汚染防止措置に対して経常的な検査を行わなければならない。規定の要求に達しないものについては期限を限って整頓させ、処理の措置を確実なものとなるようにしなければならない。
    3.  三 法執行についての力をいっそう強化し、「廃棄物輸入環境保護管理暫定規定」と「廃棄物輸入環境保護コントロール基準」に違反し、国外の廃棄物を不法に輸入した単位と個人に対しては、法に従って厳重に処罰しなければならない。