法令・告示・通達
廃棄物最終処分場の性能に関する指針について
生衛発1903号
[改定]
平成14年11月15日 環廃対726号
(厚生省生活衛生局水道環境部長から各都道府県知事あて)
今般、厚生省として、別添の「廃棄物最終処分場性能指針」(以下「性能指針」という。)を定めたので、貴管下市町村等に対する周知、助言方よろしくお願いする。
なお、平成一三年度以降新たに着手する廃棄物最終処分場に係る国庫補助事業から、性能指針を廃棄物処理施設整備費国庫補助金交付要綱(昭和五三年五月三一日付け厚生省環第三八二号厚生事務次官通知)(以下「交付要綱」という。)通則3に定める細目基準の一つとする予定である。
おって、左記の点に留意されたい。
記
- 一 平成一二年度以前に着手した廃棄物最終処分場に係る国庫補助事業については、「廃棄物処理施設整備国庫補助事業に係る施設の構造に関する基準について」(昭和五四年九月一日付け環整第一〇七号厚生省環境衛生局水道環境部長通知)別添の「廃棄物最終処分場指針」(以下「構造指針」という。)に基づき実施するものとする。
- 二 平成一三年度新たに着手する廃棄物最終処分場に係る国庫補助事業については、性能指針により難い場合は、構造指針に基づき実施することも可能とする予定である。
- 三 廃棄物最終処分場における国庫補助対象設備の範囲は、当分の間、従来どおりとする。
別表
廃棄物最終処分場性能指針
第一 総則
廃棄物の最終処分場は、その安全性や信頼性の向上を図りつつ、廃棄物処理施設を整備していくことが不可欠であるとの観点から、生活環境の保全上最低限満たすべき技術上の基準として、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づき、構造、維持管理及び廃止に関する基準(以下「基準省令」という。)を定めているところであるが、円滑かつ高度な廃棄物処理を推進することが強く求められているとともに、新技術の導入が速やかに行えるよう配慮する必要があることにかんがみ、基準省令と同等以上の能力を有する一般廃棄物最終処分場の性能に関する事項とその確認方法を示すものとする。
なお、水面埋立処分の場合等において、基準省令に基づき設置が必要とされていない設備については、本性能指針により当該設備の設置を求めるものではない。
また、安全で信頼性の高い最終処分場にするためには、この指針に適合するほか、事前の立地調査、施工管理及び維持管理等を適切に実施することが必要である。
第二 適用の範囲
本性能指針は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第八条第一項に定める一般廃棄物の最終処分場について適用する。
第三 用語の定義
本性能指針において使用する用語を、次のように定義する。
1 廃棄物最終処分場
生活環境の保全上支障の生じない方法で、廃棄物を適切に貯留し、かつ生物的、物理的、化学的に安定な状態にすることができる埋立地及び関連附帯設備を併せた総体の施設をいう。
2 埋立地
最終処分場のうち、廃棄物を埋立処分する場所をいう。
3 関連附帯設備
最終処分場のうち、擁壁、前処理設備、遮水層、保有水等集排水設備、通気設備、浸出液処理設備及び調整池等の総称をいう。
4 前処理設備
埋立処分を行うための前処理として廃棄物の破砕、選別、溶融などを行う設備(粗大ごみ処理施設を除く。)をいう。
5 計画年間埋立処分量
一般廃棄物処理計画と整合性が図られたものであり、廃棄物の種類ごとに計画される一年間ごとの埋立処分量(質量)をいう。
6 計画年間埋立処分容量
一般廃棄物処理計画と整合性が図られたものであり、廃棄物の種類ごとに計画される一年間ごとの埋立処分容量をいい、計画年間埋立処分量を埋め立てられて締め固まった廃棄物の単位容積当たりの質量で除して求めたものであること。
7 遮水工
遮水層、鋼矢板、当該設備の基礎地盤及び遮光のための不織布等で構成される設備を遮水工という。
8 遮水層
浸出液に含まれる汚染物質の埋立地外部への流出を防止するために埋立地内の底部及び斜面等に設けられる必要な数の不透水性の資材等による構造物を遮水層という。
9 遮水シート
保有水等の浸出を防止するために必要な遮水の効力、強度及び耐久力を有し、埋立地内の底部及び斜面等に設けられる不透水性の遮水材のうち、シート状の資材をいう。
10 有害物質
排水基準を定める総理府令(昭和四六年総令第三五号。以下「排水基準令」という。)別表第一の上段に掲げる有害物質をいう。
11 遮水工破損(漏水)検知設備
遮水工の破損、漏水を検知する設備をいう。
12 不織布等
遮光のために設けられるものであって、繊維で作った布状の資材及びそれと同等の機能を有する資材をいう。
13 保有水等
埋め立てられた廃棄物が保有する水分及び埋立地内に浸透した地表水をいう。
14 準好気性埋立構造
埋立地内への空気の侵入を促進させる埋立地の構造をいう。
15 保有水等集排水設備
保有水等を有効に集め、速やかに排出するために設けられる管きょ等の構造物をいう。
16 堅型保有水等集排水設備
保有水等集排水設備のうち、埋立地内部に鉛直に設置されるものを堅型保有水等集排水設備という。
17 通気設備(発生ガス排除設備)
埋立地から発生するガスを排除するために埋立地内部に設置される堅型通気設備(堅型保有水等集排水設備を兼用するものを含む。)又は法面に設置される通気設備をいう。
18 物理化学的処理
浸出液を凝集沈殿処理、砂ろ過、活性炭処理など物理化学的に処理することをいう。
19 生物化学的処理
浸出液を生物化学的に処理することをいう。
20 浸出液
埋立地の外に排出された保有水等をいう。
21 浸出液処理設備
浸出液を物理化学的又は生物化学的処理方式等により処理する設備をいう。
22 調整池
保有水等集排水設備により集められ、浸出液処理設備に流入する浸出液の水量及び水質を調整できる耐水性の設備をいう。
23 降水強度
埋立処分期間と同じ期間(年数)における過去の一日当たりの降水量の実測値(以下、「既往日降水量」という。)などをもとに合理的な方法で算出された降水量をいう。
24 一年間連続運転
通常の休業停止等による停止を除き、一年間を通して安定して連続稼働する運転をいう。
25 試験運転期間
最終処分場の試験運転を開始した時点から、試験運転を完了した時点までの間の運転期間をいう。
26 実証試験
開発技術の機能、性能等を確認するために行われる試験をいう。
27 実証設備
実証試験において用いられる設備をいう。
28 実用施設
機能、性能等が確認され、実用に供されている施設をいう。
29 安定稼働
故障等により施設の運転停止(点検、清掃、調整、部品交換等に必要な短時間の運転停止を除く。)することなく、安定した運転が支障なく維持できる状態をいう。
30 模擬浸出液
計画する水質の浸出液に類似した水質に人工的に調製した水をいう。
第四 廃棄物最終処分場
1 埋立処分容量
(1) 性能に関する事項
計画する埋立処分を行う期間内(一五年間程度を目安とし、これにより難い特別な事情がある場合には、必要かつ合理的な年数とする。)において、生活環境保全上支障が生じない方法で埋立処分可能な容量を有すること。
(2) 性能に関する事項の確認方法
計画する埋立処分を行う期間における各年次の計画年間埋立処分容量の総和に覆土容量を加算した容量を有することを確認すること。
2 遮水工
(1) 性能に関する事項
ア 遮水効力
遮水工にあっては、遮水効力が一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令(昭和五二年総理府・厚生省令第一号)第一条第一項第五号イ又はロ及びハの規定と同等以上の能力を有すること。
なお、同令附則に定める経過措置の規定については適用しない。
イ 遮水工破損(漏水)検知設備
遮水シート等の破損又は漏水を速やかに検知する設備を設置する場合にあっては、必要な能力を有すること。
ウ 有害物質の溶出
遮水シート及び不織布等から有害物質が排水基準令に定める許容限度を超えて溶出されないこと。
(2) 性能に関する事項の確認方法
以下により、各性能に関する事項の適正を確認することとし、これにより難い場合は、実証設備又は実用施設により得られたデータ等に基づき各性能に関する事項の適正を確認すること。
ア 遮水工の遮水効力
遮水工のうち、遮水層については、次によること。
- (ア) 粘土その他の材料の層又はアスファルト・コンクリートの層
使用する材料を用いた日本工業規格A一二一八に定める室内透水試験又はこれと同等以上の性能を有する試験方法による当該材料を用いた遮水層が実際に設置された状態における遮水効力を評価した結果 - (イ) 遮水シート
使用する材料を用いた実証設備又は実用施設あるいはその他の方法により得られた遮水効力を評価した結果
イ 遮水工破損(漏水)検知設備
使用する材料を用いた実証設備又は実用施設あるいはその他の方法により得られたデータを評価した結果
ウ 有害物質の溶出
昭和四八年環境庁告示第一三号又はこれと同等以上の性能を有する試験方法により得られた測定データを評価した結果
3 保有水等の集排水(水面埋立処分を除く。)
(1) 性能に関する事項
埋立地内の保有水等を有効に集め、速やかに排出する能力を有すること。
(2) 性能に関する事項の確認方法
設計図書及び使用する材料・製品の仕様等により、以下の事項の適正を確認すること。
- ア 既往日降水量の最大降水月における一日平均降水量等の計画した降水強度により埋立地内の水位が五〇cm以下になること。
- イ 準好気性埋立構造の埋立地にあっては、既往日降水量の最大降水月における一日平均降水量等の計画した降水強度により保有水等集排水設備内に空気が通気可能な空間を確保できる管径等を持ち、管きょ等の端部が大気に開放されていることを確認すること。
4 発生ガスの排除
(1) 性能に関する事項
埋立地から発生するガスを排除する能力を有すること。
また、準好気性埋立構造の埋立地にあっては、埋立地内に空気を通気する能力を有すること。
(2) 性能に関する事項の確認方法
設計図書及び使用する材料・製品の仕様等により、以下の事項の適正を確認すること。
- ア 通気装置(堅型保有水等集排水管を兼用する場合にあっては、管径二〇〇mm以上であること。)が二〇〇〇m2に一か所以上(これにより難い特別な事情がある場合は、必要かつ合理的な数値とする。)設置されること。
5 浸出液処理設備
(1) 性能に関する事項
ア 処理能力
計画した質及び量を計画する水質に処理する能力を有すること。
イ 処理水質の性状
放流水質は、BOD二〇mg/L以下(ただし、海域及び湖沼に排出される放流水については、COD五〇mg/L以下)及びSS三〇mg/L以下(ただし、ばいじん又は燃え殻を埋め立てる場合は、一〇mg/L以下)であること。なお、保有水等を当該最終処分場以外の場所において、同等以上の性能を有する処理設備で処理する場合は、この限りではない。
ウ 安定稼働
一年間連続運転可能であること。
(2) 性能に関する事項の確認方法
ア 性能確認条件
以下の条件を満たす実証設備又は実用施設における運転結果に基づき各性能に関する事項に適合しているかを確認すること。
- (ア) 実証設備又は実用施設の浸出液処理能力は、一m3/日以上であること。
- (イ) 実証試験の試験運転期間については、物理化学的処理の場合においては、六〇日以上、生物化学的処理の場合においては、一二月から二月の期間を三〇日以上含む一八〇日以上(このうちには、過負荷連続試験期間も含む。)の実績を有すること。
- (ウ) 実証試験に用いる浸出液は、計画する廃棄物と類似した廃棄物を埋め立てた場合の浸出液又は模擬浸出液を用いること。
イ 性能確認方法
- (ア) 処理能力
以下のいずれかにより確認すること。- a 実証試験により得られた運転データを評価した結果
- b 実用施設における運転データを評価した結果
- (イ) 安定稼働
以下のいずれかにより確認すること。- a 実証試験により得られた運転データと、連続した安定運転を阻害する原因への対策等を評価した結果
- b 実用施設において一年間連続して安定運転を実施した実績
6 調整池の容量
(1) 性能に関する事項
計画した浸出液処理設備の処理能力に適合するように、浸出液の量及び水質を調整できる容量を有すること。
(2) 性能に関する事項の確認方法
設計図書及び使用する材料・製品の仕様等により、以下の性能に関する事項の適正を確認すること。
- ア 埋立地の気象条件に適合した近接する気象観測所等の観測結果から求めた既往日降水量、蒸発量等を用いた計算結果(ただし、埋立地に人工的に散水する場合は、計画する散水量。)により、埋立地の底部に保有水等が貯水されないように維持できる容量が確保されていること。