法令・告示・通達
ダイオキシン類による健康障害防止のための対策について
衛環90号
(各都道府県・政令市廃棄物行政主管部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知)
廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類対策については、平成一一年三月二九日付け衛環第二九号当職通知により、焼却灰等の飛散・流出防止対策の徹底等について貴管下の廃棄物焼却施設設置者に対する指導方お願いし、また、平成一一年四月八日付け衛環第三九号当職通知において、労働省の通知の内容を踏まえた廃棄物焼却施設におけるダイオキシン類対策の一層の徹底が図られるよう指導方お願いしているところであるが、今般、労働省より別添のとおり都道府県労働基準局長あて通知が出されたので送付する。
引き続き、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四五年法律第一三七号)に基づく廃棄物焼却施設の構造及び維持管理基準の遵守の徹底を図るとともに、廃棄物焼却施設等で作業する労働者のダイオキシン類によるばく露防止を徹底するため、別添通知の内容を踏まえたダイオキシン類対策が図られるよう、貴管下の廃棄物焼却施設設置者に対する指導方お願いする。
別表
ダイオキシン類による健康障害防止のための対策について
(平成一一年一二月二日基発第六八八号)
(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通知)
ダイオキシン類については、廃棄物焼却施設の土壌等から検出されたことを契機に、廃棄物焼却施設に起因するダイオキシン類による環境汚染や労働者の健康への影響が懸念されており、労働省の実施した調査結果によると、廃棄物焼却施設で作業する労働者は、作業環境の状況等によりダイオキシン類のばく露を受ける危険性があることが明らかとなった。
また、平成一一年三月三〇日の「ダイオキシン対策関係閣僚会議」で策定された「ダイオキシン対策推進基本指針」では、「労働者のばく露防止を図るため、労働衛生管理体制の整備並びに、作業環境の測定、作業環境の改善、適切な保護具の使用等の対策を推進する」こと及び「労働者の健康状況及び労働環境の実態を把握する」こととされている。
このような状況から、平成一一年四月七日付け基発第二三一号通達により、平成一〇年七月に示した「ごみ焼却施設におけるダイオキシン類の対策」の徹底を指示したところである。
さらに、平成一一年六月、厚生省及び環境庁によってダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)の見直しが行われ、同年七月には「ダイオキシン類対策特別措置法」が定められたところであり、労働省としても、労働者のダイオキシン類のばく露防止対策の一層の徹底を図る必要があるところである。
ついては、今般、廃棄物焼却施設等で作業する労働者が、ダイオキシン類にばく露することを防止するため、事業者が講ずべき措置について、別添のとおり「ダイオキシン類による健康障害防止のための対策要綱」を策定したので、関係自治体、関係事業者等に周知するとともに、その徹底を図られたい。
ダイオキシン類による健康障害防止のための対策要綱
一 趣旨
ダイオキシン類については、廃棄物焼却施設の土壌等から検出されたことを契機に、廃棄物焼却施設に起因するダイオキシン類による環境汚染や労働者の健康への影響が懸念されている。
労働省の実施した調査結果によると、廃棄物焼却施設で作業する労働者は、作業環境の状況等によりダイオキシン類のばく露を受ける危険性があることが明らかとなった。
また、平成一一年三月三〇日の「ダイオキシン対策関係閣僚会議」で策定された「ダイオキシン対策推進基本指針」では、「労働者のばく露防止を図るため、労働衛生管理体制の整備並びに、作業環境の測定、作業環境の改善、適切な保護具の使用等の対策を推進する」こと及び「労働者の健康状況及び労働環境の実態を把握する」こととされている。
このような状況から、廃棄物焼却施設等に勤務する労働者がダイオキシン類にばく露することを防止するため、事業者が講ずべき措置について、本対策要綱を策定したものである。
なお、本対策要綱に定める事項については、原則的には対象作業を労働者に行わせる事業者が、必要に応じ施設管理者と協議及び連携して実施するものであるが、三の(一)、五及び七の事項については、施設管理者が主体となって実施するものであること。
二 対象作業
本対策要綱の対象となる作業は、一般廃棄物焼却施設、産業廃棄物焼却施設等(以下「焼却施設等」という。)において行われる次の作業(以下「焼却施設等作業」という。)であること。
- (一) 焼却炉、集じん機等の内部で行う灰出し、設備の点検、保守等の作業
- (二) 焼却炉、集じん機等の外部で行う次の作業
- イ 焼却灰等の固化、運搬等の作業で焼却灰等を取り扱う作業
- ロ (一)の作業の支援、監視等の作業
- ハ 焼却炉、集じん機その他の装置の運転、点検、保守等及び清掃の作業
三 ダイオキシン類対策の推進体制の整備
(一) 施設管理者の実施事項
イ ダイオキシン類対策委員会
焼却施設等を管理する事業者は、産業医、衛生管理者、現場責任者等で構成する「ダイオキシン類対策委員会」を設置し、本対策要綱に定める措置等を盛り込んだ「ダイオキシン類へのばく露防止推進計画」(以下「推進計画」という。)及びその具体的な推進方法を策定すること。
ロ 委託先事業者、関係請負人等との協議組織
焼却施設等を管理する事業者は、焼却施設等作業の全部又は一部を他に委託し、又は請負人に請け負わせている場合には、全ての関係事業者が参加する協議組織を設置し、当該作業を行う労働者のダイオキシン類へのばく露防止を図るため推進計画等を協議すること。
ハ 対策担当部門及び対策責任者
焼却施設等を管理する事業者は、労働者のダイオキシン類のばく露防止対策を講じるに当たり、本対策要綱に定める措置を適切に行うため、ダイオキシン類対策の対策担当部門及び対策責任者を定め、次の職務を行わせること。
- (イ) ダイオキシン類対策委員会の運営
- (ロ) 三の(一)のロの協議組織の運営
- (ハ) 推進計画の委託先事業者、関係請負人等への周知
- (ニ) その他推進計画の実施に関する事項
(二) 受託事業者又は関係請負人の実施事項
焼却施設等作業の全部又は一部を受託し、又は請け負っている事業者は、ダイオキシン類対策の実施責任者を定め、推進計画を踏まえた対策を実施させること。
四 労働衛生教育
焼却施設等作業に従事させる労働者に対して、次の事項について労働衛生教育を行うこと。
- (一) ダイオキシン類の性状、有害性等に関すること。
- (二) ダイオキシン類のばく露を低減させるための措置に関すること。
- (三) 作業手順に関すること。
- (四) 発散源を密閉する設備、作業を自動化又は遠隔操作する設備、局所排気装置等についての作業開始時の点検に関すること。
- (五) 呼吸用保護具等の種類、性能、使用方法及び保守管理に関すること。
- (六) 事故時等における措置に関すること。
五 作業環境の測定及びその結果の評価に基づくダイオキシン類のばく露を低減するための措置
常時焼却施設等作業(二の(一)の作業を除く。)が行われる作業場については、別紙の方法により、作業環境中のダイオキシン類の濃度測定及び測定結果の評価を行い、その記録を三〇年間保存すること。また、評価の結果、第二管理区分又は第三管理区分となった作業場においては、次に掲げる方法等により、焼却灰等の粉じんの発生やその発散の防止対策を行うこと。
- (一) 燃焼工程、作業工程の改善
- (二) 発散源の密閉化
- (三) 作業の自動化や遠隔操作方式の導入
- (四) 局所排気装置及び除じん装置の設置
- (五) 作業場の湿潤化
六 保護具等の使用
焼却施設等作業における労働者のダイオキシン類へのばく露の低減を図るため、次の作業について各々に掲げる措置を講じること。
(一) 二の(一)の作業
労働者にエアラインマスク、ホースマスク又はこれらと同等以上の性能を有する呼吸用保護具及び不浸透性の保護衣、保護手袋、保護眼鏡等を使用させること。
(二) 二の(二)のイ及びロの作業
労働者に型式検定に合格した防じんマスク等の有効な呼吸用保護具及び粉じんの付着しにくい作業衣、保護手袋、保護眼鏡等を使用させること。
(三) 二の(二)のハの作業
五の措置を講じてもなお第二管理区分又は第三管理区分である作業場で作業を行わせる場合には、六の(二)の措置を講じること。なお、常時作業が行われない作業場で臨時にこれらの作業を行わせる場合にあっても、六の(二)の措置を講じること。
七 休憩場所の確保等
(一) 休憩場所の確保
焼却施設等作業に労働者を従事させる場合は、焼却施設等作業を行う作業場以外の場所に休憩場所を設けること。ただし、焼却施設等作業を行う作業場以外の場所に休憩場所を設けることが困難な場合は、第一管理区分の場所に設けること。
(二) 休憩場所における措置
労働者の作業衣等に付着した焼却灰等により、休憩場所が汚染されないように次の措置を講じること。
- イ 窓等のない密閉された構造の休憩場所の入口には、エアシャワーを設け、かつ、水を流し、又は十分湿らせたマットを置く等労働者の足部に付着した焼却灰等を除去するための設備等を設けること。
- ロ 密閉されていない構造の休憩場所の入口には、作業衣等に付着した灰を除去するための電気掃除機等を備え、かつ、水を流し、又は十分湿らせたマットを置く等労働者の足部に付着した焼却灰等を除去するための設備等を設けること。
- ハ 床の清掃を毎日一回以上行うこと。
(三) 休憩場所以外の場所における措置
事務室等で焼却施設等作業に従事する労働者が出入りする場所については、労働者の作業衣等に付着した焼却灰等により当該場所が汚染されないような措置を講じること。
八 作業衣等の保管等
ダイオキシン類の付着した焼却灰等で汚染された作業衣等は、二次発じんの原因となることから、事業場外への持出しを禁止するとともに、当該作業衣等はそれ以外の衣類等から隔離して保管させ、かつ、速やかに作業衣等の汚染を除去させるための措置を講じること。
九 喫煙等の禁止
焼却施設等作業が行われる作業場については、労働者が喫煙し、又は飲食することを禁止すること。
一〇 作業記録
焼却施設等作業については、従事労働者名、従事作業名、従事期間等を記録するとともに、その記録を三〇年間保存すること。
一一 女性への就業上の配慮
母性保護の観点から、女性については二の(一)の作業に就かせないよう就業上の配慮を行うこと。
- ダイオキシン類に係る作業環境測定及び評価方法
一 作業環境測定
作業環境における空気中のダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン、ポリ塩化ジベンゾフラン及びコプラナーPCBをいう。以下同じ。)の濃度測定を行う場合においては、作業環境測定基準(昭和五一年労働省告示四六号)に準じた次の方法により行うこと。
(一) 測定の頻度
- イ 六月以内ごとに一回、定期に、実施すること。
- ロ 施設、設備、作業工程又は作業方法について大幅な変更を行った場合は、改めて測定を行うこと。
(二) 測定の時間帯
焼却炉、集じん機その他の装置の運転等の作業が定常の状態にある時間帯に行うこと。
なお、作業場が屋外の場合には、雨天、強風等の悪天候時は避けること。
(三) 測定の位置
イ 作業場が屋内の場合
次の測定を行うこと。
- (イ) A測定の測定点は、単位作業場所(当該作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域をいう。以下同じ。)の床面上に六メートル以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点の床上五〇センチメートル以上一五〇センチメートル以下の位置(設備等があって測定が著しく困難な位置を除く。)とすること。
また、A測定の測定点の数は、単位作業場所について五以上とすること。 - (ロ) B測定は、粉じんの発散源に近接する場所において作業が行われる単位作業場所にあっては、(イ)に定める測定のほか、当該作業が行われる時間のうち粉じんの濃度が最も高くなると思われる時間に、当該作業の行われる位置において測定を行うこと。
ロ 作業場が屋外の場合
粉じんの発散源に近接する場所において、B測定による測定を行うこと。
(四) 空気中のダイオキシン類の濃度測定
ほとんどのダイオキシン類が粉じんに吸着していることから、粉じんに吸着しているダイオキシン類の含有率を算出し、空気中の総粉じんの濃度にその含有率を乗じてダイオキシン類の濃度を推定することができること。
そのため、併行測定を行い、下記ハのD値を求めること。ここで求めたD値は二回目以降の測定に使用してもよいこと。ただし、作業場の施設、設備、作業工程又は作業方法について大幅な変更を行った場合は、改めて併行測定を行いD値を再度求めること。
イ 空気中の総粉じんの濃度測定
空気中の総粉じんの濃度測定は、ろ過捕集方法及び重量分析方法によること。また、試料の採取方法は、ローボリウムサンプラーを用いて、オープンフェイス型ホルダーにろ過材としてグラスファイバーろ紙を装着し、毎分二〇~三〇リットルの吸引量とすること。なお、A測定及びB測定のサンプリング時間は各測定点につき一〇分間以上とすること。
ロ 併行測定について
- (イ) 単位作業場所(作業が屋外の場合には、粉じん発生源に近接する場所)の一以上の測定点において併行測定を行って、下記ハによりD値を求め、最大のD値を下記ニのダイオキシン類の濃度の決定に用いること。
- (ロ) 併行測定点での空気中の総粉じんの濃度測定は、(ハ)のサンプリング時間と同じ時間併行して行うこと。
- (ハ) 併行測定点での空気中のダイオキシン類の濃度測定は、ろ過捕集方法及びガスクロマトグラフ質量分析方法又はこれと同等以上の性能を有する分析方法によること。また、試料の採取方法は、ハイボリウムサンプラーを用いて、毎分五〇〇~一〇〇〇リットルの吸引量とすること。さらに、サンプリング時間は、採じん量が一〇mg以上となるようにすること。
ハ D値の算出について
併行測定点において求めた「空気中の総粉じんの濃度」及び「空気中のダイオキシン類の濃度」を用いて次の式からD値を求めること。
D値=空気中のダイオキシン類の濃度(pgTEQ/m3)/空気中の総粉じんの濃度(mg/m3)
ニ 空気中のダイオキシン類の濃度の決定
空気中のダイオキシン類の濃度は、ハで求めたD値を用いて次式により空気中の総粉じんの濃度から計算することができること。
空気中のダイオキシン類の濃度(pgTEQ/m3)=D値×空気中の総粉じんの濃度(mg/m3)
二 作業環境測定の結果の評価
作業環境測定の結果の評価は、作業環境評価基準(昭和六三年労働省告示第七九号)に準じた次の方法により行うこと。
(一) 管理濃度
ダイオキシン類の管理濃度は、2.5pgTEQ/m3とすること。
(二) 管理区分の決定方法
イ 作業場が屋内の場合
作業環境測定の結果の評価は、単位作業場所ごとに、第一管理区分から第三管理区分までに区分することにより行うこと。なお、第一評価値及び第二評価値とは、作業環境評価基準第三条に従って計算した評価値をいうものであること。
(イ) 第一管理区分
第一評価値及びB測定の測定値(二以上の測定点においてB測定を実施した場合には、そのうちの最大値。イの(ロ)及び(ハ)において同じ。)が管理濃度に満たない場合
(ロ) 第二管理区分
第二評価値が管理濃度以下であり、かつ、B測定の測定値が管理濃度の一・五倍以下である場合(第一管理区分に該当する場合を除く。)
(ハ) 第三管理区分
第二評価値が管理濃度を超える場合又はB測定の測定値が管理濃度の一・五倍を超える場合
ロ 作業場が屋外の場合
作業環境測定の結果の評価は、粉じん発生源に近接する場所ごとに第一管理区分から第三管理区分までに区分することにより行うこと。
(イ) 第一管理区分
B測定の測定値が管理濃度に満たない場合
(ロ) 第二管理区分
B測定の測定値が管理濃度以上であり、かつ、管理濃度の一・五倍以下である場合
(ハ) 第三管理区分
B測定の測定値が管理濃度の一・五倍を超える場合