法令・告示・通達

浄化槽法第七条及び第一一条に基づく浄化槽の水質に関する検査の検査内容及び方法、検査票、検査結果の判定等について

公布日:平成7年06月20日
衛浄34号

[改定]

平成一四年二月七日 環廃対第一〇四号

(各都道府県・各政令市浄化槽担当部(局)長あて 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課浄化槽対策室長通知)

 浄化槽法(昭和五十八年法律第四十三号。以下「法」という。)第七条及び第十一条に基づく浄化槽の水質に関する検査の項目、方法その他必要な事項については、厚生省生活衛生局水道環境部長通知(平成七年六月二十日付け衛浄第三三号)をもって指示されたところであるが、当該検査に係る検査内容及び方法、検査票、検査結果の判定等については、左記によることとしたので、その円滑な運用に格段のご協力をお願いする。
 なお、この通知は平成八年四月一日から適用し、昭和六十一年三月四日付け衛環第四一号の厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課長通知は、同日をもって廃止する。

第一 外観検査の内容

  各項目ごとの具体的な内容は以下のとおりとすること。

  1.  1 設置状況
    1.   ア 槽の水平、浮上又は沈下、破損又は変形等の状況
    2.   イ 漏水の状況
    3.   ウ 浄化槽上部の状況
    4.   エ 雨水、土砂等の槽内への流入状況
    5.   オ 内部設備の固定状況
    6.   カ 設置に係るその他の状況
  2.  2 設備の稼働状況
    1.   ア ポンプ、送風機及び駆動装置の稼働状況
    2.   イ ばっ気装置及び攪拌装置の稼働状況
    3.   ウ 汚泥返送装置、汚泥移送装置及び循環装置の稼働状況
    4.   エ 膜モジュールの稼働状況
    5.   オ 制御装置及び調整装置の稼働状況
    6.   カ 生物膜又は活性汚泥の状況
    7.   キ 設備の稼働に係るその他の状況
  3.  3 水の流れ方の状況
    1.   ア 管きょ、升及び各単位装置間の水流の状況
    2.   イ 越流せきにおける越流状況
    3.   ウ 各単位装置内の水位及び水流の状況
    4.   エ 汚泥の堆積状況及びスカムの生成状況
    5.   オ 水の流れ方に係るその他の状況
  4.  4 使用の状況
    1.   ア 特殊な排水等の流入状況
    2.   イ 異物の流入状況
    3.   ウ 使用に係るその他の状況
  5.  5 悪臭の発生状況
    1.   ア 悪臭の発生状況
  6.  6 消毒の実施状況
    1.   ア 消毒の実施状況
  7.  7 か、はえ等の発生状況
    1.   ア か、はえ等の発生状況

第二 水質検査の方法

 1 水素イオン濃度指数(pH)の検査方法

 次に掲げる方法のいずれかによるものとする。

  1) ガラス電極法
  1.    (1) 器具
           ガラス電極によるpH測定装置(以下「pH計」という。)
     ただし、日本工業規格「pH測定方法」(JIS Z 八八〇二)に掲げる型式Ⅱを用いる。
  2.    (2) 試料の採取
           消毒槽、消毒室又は消毒タンク(以下「消毒槽等」という。)に入る直前の処理水を採取する。
  3.    (3) 試験操作
           pH計を、日本工業規格「pH測定方法」(JIS Z 八八〇二)に掲げる方法に従って調整した後、検水中に電極を浸し、一分間以上経過してpH計の指針が安定したときのpH値を読みとる。
  2) 比色法
  1.    (1) 試薬及び器具
    1.      ア BCP溶液
             ブロムクレゾールパープル〇・一gに〇・〇二N水酸化ナトリウム溶液九・二五mlを加えて溶かし、蒸留水を加えて二五〇mlとしたもの
    2.      イ BTB溶液
             ブロムチモールブルー〇・一gに〇・〇二N水酸化ナトリウム溶液八mlを加えて溶かし、蒸留水を加えて二五〇mlとしたもの
    3.      ウ PR溶液
             フェノールレッド〇・一gに〇・〇二N水酸化ナトリウム溶液一四・一mlを加えて溶かし、蒸留水を加えて五〇〇mlとしたもの
    4.      エ TB溶液
             チモールブルー〇・一gに〇・〇二N水酸化ナトリウム溶液一〇・七五mlを加えて溶かし、蒸留水を加えて二五〇mlとしたもの
    5.      オ BCP標準比色液
    6.      カ BTB標準比色液
    7.      キ PR標準比色液
    8.      ク TB標準比色液
    9.      ケ 比色管
  2.    (2) 試料の採取
           消毒槽等に入る直前の処理水を採取する。
  3.    (3) 試験操作
           検水五mlを標準比色液の容器と同径の比色管に採り、検水の水素イオン濃度がpH値で五・四以上六・四以下の場合はBCP溶液、六・五以上七・二以下の場合はBTB溶液、七・三以上八・二以下の場合はPR溶液、八・三以上九・四以下の場合はTB溶液をそれぞれ〇・二五ml加えて混合し、直ちに発色した溶液の色をBCP標準比色液、BTB標準比色液、PR標準比色液又はTB標準比色液とそれぞれ比色して、該当する標準比色液から検水の水素イオン濃度を求める。

 2 汚泥沈殿率(SV)の検査方法

  1.  (1) 器具
         容量一Lで内径六・五㎝のメスシンダー
  2.  (2) 試料の採取
         ばっ気槽、ばっ気室、ばっ気タンク等(以下「ばっ気槽等」という。)の内の混合液を採取する。
  3.  (3) 試験操作
         検水一Lをメスシリンダーに採り、三〇分間静置した後、沈殿量のml数(a)から次式により汚泥沈殿率を算定する。
         汚泥沈殿率(V/V%)=(a/1000)×100=a/10

 3 溶存酸素(DO)の検査方法

   日本工業規格「工場排水試験方法」(JISK 〇一〇二)三二・三に掲げる器具及び試験操作方法に基づいて検査する。なお、試験操作は、溶存酸素計の調整を行った後に行うこととし、ばっ気槽等、接触ばっ気室、接触ばっ気槽、回転板接触槽等の内において、溶存酸素量が適正に保持されているか否かを評価し得る部位を測定するものとする。

 4 透視度の検査方法

  1.  (1) 器具及び試験操作
         日本工業規格(JIS K 〇一〇二)九に掲げる器具及び試験操作方法に基づいて検査する。なお、透視度計は、必要に応じ、五〇㎝又は一〇〇㎝のものを使用する。
  2.  (2) 試料の採取
         消毒槽等に入る直前の処理水を採取する。

 5 塩化物イオン(塩素イオン)濃度の検査方法

   次に掲げる方法のいずれかによるものとする。

  1) イオン電極法
  1.    (1) 器具及び試験操作
           日本工業規格「工場排水試験方法」(JIS K 〇一〇二)三五・二に掲げる器具及び試験操作方法に基づいて検査する。
  2.    (2) 試料の採取
           洗浄水及び消毒槽等に入る直前の処理水を採取する。
  2) 硝酸銀滴定法
  1.    (1) 試薬及び器具
    1.      ア クロム酸カリウム溶液
             クロム酸カリウム五〇gを蒸留水約二〇〇mlに溶かし、赤い沈殿が生じるまで硝酸銀溶液(五w/v%)を加え、ろ過して得た溶液に蒸留水を加えて一Lとしたもの
    2.      イ 〇・〇一N硝酸銀溶液
             硝酸銀一・七gを蒸留水に溶かして一Lとしたもの
      この溶液は、褐色びんに入れて保存する。
             なお、以下の操作により〇・〇一N硝酸銀溶液の力価(f)を求める。
             〇・〇一N塩化ナトリウム標準液二五mlを白磁皿又はビーカーに採り、クロム酸カリウム溶液〇・二mlを指示薬として加え、〇・〇一N硝酸銀溶液を用いて微だいだい色が消えずに残るまで滴定する。別に、同様に操作して空試験を行い、補正した〇・〇一N硝酸銀溶液のml数(a)から次式により力価を算定する。
             f=25/a
             ここで、〇・〇一N塩化ナトリウム標準液とは、六〇〇℃で約六〇分間加熱乾燥し、デシケーター中で放冷した日本工業規格「容量分析用標準物質」(JIS K 八〇〇五)七・三に掲げる塩化ナトリウム〇・五八四gを、蒸留水に溶かして一Lとしたものとする。
    3.      ウ 白磁皿又はビーカー
    4.      エ 褐色ビュレット
  2.    (2) 試料の採取
     洗浄水及び消毒槽等に入る直前の処理水を採取する。
  3.    (3) 試験操作
           試料から適正量の検水を白磁皿又はビーカーに採り、蒸留水を加えて五〇mlとし、クロム酸カリウム溶液〇・五mlを加えた後、液が微だいだい色となるまで〇・〇一N硝酸銀溶液で滴定し、これに要した〇・〇一N硝酸銀溶液のml数(b)を求め、次式により検水の塩化物イオン濃度(㎎/L)を算定する。
           塩化物イオン濃度(㎎/L)=(b-c)×f×{1000/検水の量(ml)}×0.355
           この式において、fは〇・〇一N硝酸銀溶液の力価を表し、cは蒸留水を用いて検水と同様に操作したときに要した〇・〇一N硝酸銀溶液のml数を表す。

 6 残留塩素の検査方法

   DPD法を用いることとする。

  1.  (1) 試薬及び器具
         日本工業規格「工場排水試験方法」(JIS K 〇一〇二)三三・二に掲げる試薬及び器具を用いる。なお、ここで調製した残留塩素標準比色液については、試験操作に用いる比色管に移して密栓し、該当する残留塩素の濃度(㎎/L)を記載して、これを試験操作で用いる残留塩素標準比色液とする。
         この残留塩素標準比色液は、暗所に保存する。
  2.  (2) 試料の採取
         消毒槽等の出口における放流水を採取し、直ちに試験する。
  3.  (3) 試験操作
         リン酸緩衝液〇・五mlとDPD試薬約〇・一gを比色管に採り、これに検水一〇mlを加えて混合し、さらにヨウ化カリウム約〇・一gを加えて溶解し、約二分間放置後の呈色を残留塩素標準比色液と比較して検水の残留塩素濃度(㎎/L)を求める。

 7 生物化学的酸素要求量(BOD)

  1.  (1) 器具及び試験操作
         日本工業規格「工場排水試験方法」(JIS K 〇一〇二)二一に掲げる器具及び試験操作方法に基づいて検査する。
  2.  (2) 試料の採取
         消毒槽等に入る直前の処理水を採取する。
  3.  (3) 注意事項
         試料は、一〇℃以下の状態で運搬し、かつ、九時間以内に試験することが望ましい。

 8 留意事項

  1.  (1) 試料の採取は、流水状態で行うこと。
  2.  (2) 水質検査に当たっては、試薬及び試験廃液は関係法令等に十分留意した上で取り扱うこと。

第三 検査票

   検査票は、法第七条に基づく検査の際に用いる設置検査票、法第十一条に基づく検査の際に用いる維持管理検査票及び検査結果書とすること。

  1.  1 設置検査票及び維持管理検査票は、検査員が検査の際にその結果を記入し、検査終了後、指定検査機関において三年間保存するものとすること。
  2.  2 検査結果書は、浄化槽の設置及び維持管理の状況に関し、第四の4から7に基づき行った判定、改善が望ましいと認められる事項又は改善を要すると認められる事項、維持管理に当たって留意すべき事項等を記入し、当該浄化槽の管理者に交付するとともに、指定検査機関においてその写しを三年間保存するものとすること。

第四 検査結果の判定等

  1.  1 外観検査については、第一で掲げる検査内容ごとに異常が認められるか否かを検査するものとすること。
  2.  2 水質検査については、別記に掲げる各検査項目の望ましい範囲に照らして、異常が認められるか否かを検査するものとすること。
     ただし、水質検査の結果が別記に掲げる範囲に該当しないことのみをもって、直ちに当該浄化槽の設置及び維持管理が不適正であると判断されるものではないことに十分留意する必要があること。
  3.  3 書類検査については、浄化槽の保守点検及び清掃が適正に実施されているか否か、記録の保存の有無及び記載内容が適切か否かを検査するものとすること。
  4.  4 検査結果の判定については、外観検査、水質検査及び書類検査の結果を総合的に勘案し、適正である(以下「適正」という。)、おおむね適正であるが、一部改善することが望ましい又は今後の経過を注意して観察する必要がある(以下「おおむね適正」という。)又は不適正であり、改善を要する(以下「不適正」という。)のいずれかに該当するかを判定すること。
  5.  5 「適正」とは、浄化槽の設置及び維持管理に問題があると認められない場合をいうこと。
  6.  6 「おおむね適正」とは、浄化槽の設置及び維持管理に関し、一部改善することが望ましいと認められる場合、又は今後の経過を注意して観察する必要があると認められる場合であって、7に掲げる「不適正」と認められる場合以外のものをいうこと。
  7.  7 「不適正」とは、浄化槽の設置及び維持管理に関し、法に基づく浄化槽の構造、工事、保守点検及び清掃に係る諸基準に違反しているおそれがあると考えられ、改善を要すると認められる場合をいうこと。

第五 留意事項

  1.  1 法第十一条に基づく検査における水質検査項目のうちBODについては、都道府県において、検査体制の整備状況等の地域の実情を勘案して検査への導入の判断を行うことが可能であること。
  2.  2 1においてBODを導入する場合にあっては、BODが設置及び維持管理の状況を総合的に示す指標であることにかんがみ、検査の効率化を図る観点から、他の検査項目の一部を軽減することも可能であること。なお、その運用については、別途通知するものであること。
  3.  3 書類検査においては、工事に係る記録等当該浄化槽の設置及び維持管理の状況を把握する上で参考となる記録も活用することが望ましいこと。
  4. 4 検査結果書については、浄化槽管理者が、自らの浄化槽の状態、検査結果を踏まえた具体的な対応方法等を十分理解できるよう、判定の根拠、改善すべき事項等が具体的かつ分かりやすく記載されるよう留意されたいこと。

第六 その他

   水質検査項目のうちBODの分析については、当分の間他の分析機関に委託することを妨げるものではないが、可及的速やかに指定検査機関自ら実施できる体制を整備すること。

(別記)
水質検査の各検査項目の望ましい範囲

  1. 1 pH 五・八~八・六
  2. 2 汚泥沈殿率
    •     単独処理浄化槽 一〇%以上六〇%以下
    •     合併処理浄化槽 一〇%以上
  3. 3 溶存酸素量
    •     単独処理浄化槽 〇・三㎎/L以上
    •     合併処理浄化槽 一・〇㎎/L以上
  4. 4 透視度
      BODの処理性能
    •     九〇㎎/L以下 7度以上
    •     六〇㎎/L以下 一〇度以上
    •     三〇㎎/L以下 一五度以上
    •     二〇㎎/L以下 二〇度以上
  5. 5 塩化物イオン濃度
    •     単独処理浄化槽 九〇㎎/L以上一四〇㎎/L以下
  6. 6 残留塩素 検出されること
  7. 7 BOD 処理性能以下
    1. (注)1 塩化物イオン濃度とは、次式により算定する値をいう。
         塩化物イオン濃度(㎎/L)=C-C0
         ここで、Cは処理水の塩化物イオン濃度を表し、C0は洗浄水の塩化物イオン濃度を表す。
    2. 2 「検出されること」とは、本通知第二の6において示した測定方法により測定した場合において、その結果が当該方法の定量限界を上回ることをいう。
    3. 3 合併処理浄化槽の汚泥沈殿率の評価に当たっては、必要に応じ、汚泥の外観、沈殿槽等における固液分離状況及び消毒槽における汚泥蓄積状況の観察、混合液浮遊物質濃度(MLSS)の測定等を行い、総合的に判断すること。
    4. 4 溶存酸素量の評価に当たっては、必要に応じ、水素イオン濃度、汚泥沈殿率等その他の水質検査項目の測定結果も参考にし、総合的に判断すること。