法令・告示・通達

ごみ処理に係るダイオキシン類の削減対策について

公布日:平成9年01月28日
衛環21号

(各都道府県知事あて厚生省生活衛生局水道環境部長通知)

 ごみ処理に係るダイオキシン類の排出削減対策については、平成二年一二月に「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を策定し、平成二年一二月二六日付け衛環第二六〇号をもって通知したところである。
 その後、平成八年六月、「ダイオキシンのリスクアセスメントに関する研究班」により、当面のTDI(耐容一日摂取量)を10pg-TEQ/kg/dayと提案する報告がまとめられたので、このTDIを新たな評価指針としてダイオキシン対策を一層推進するため、「ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会」を設置して検討を行ってきた。同検討会においては、最近のダイオキシン削減対策技術に関する新たな知見を踏まえ、ダイオキシン削減対策を緊急対策と恒久対策に分けて検討し、緊急対策に係る部分を中間報告としてとりまとめ、平成八年一〇月三日付けで水道環境部長より各都道府県知事宛に衛環第二六一号をもって通知したところである。
 その後、同検討会では恒久対策を中心に検討を進め、今般、中間報告の内容も含め、「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」(以下「新ガイドライン」という。)を策定した。貴職にあっては、別添の新ガイドラインに基づき、左記事項に留意の上、ごみ処理に伴うダイオキシン類の排出を削減するための対策を強力に推進するよう貴管下市町村を指導されたい。

  1. 1 新ガイドラインのうち、施設の構造・維持管理に係る部分については、今後、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく施設の構造・維持管理基準として正式に基準化することを検討しているので、こうした動向を踏まえ、早急に対策を推進されたいこと。
  2. 2 ダイオキシン削減対策の基本は、発生したダイオキシン類の除去だけではなく、ダイオキシン類の発生を抑制することであり、この点に留意して、ごみの排出抑制やリサイクルの推進を含めたダイオキシン対策を推進すること。
  3. 3 既存のごみ焼却施設で、緊急対策の必要性を判断する基準であるダイオキシン類の排出濃度80ng-TEQ/Nm3を下回った場合においても、新ガイドラインに示す恒久対策の基準に適合するよう、恒久対策を検討し、速やかに実施すること。
  4. 4 ごみ焼却施設の新設に関しては、以下の点に留意されたいこと。
    1.  (1) 新ガイドラインに適合した(ダイオキシン類の排出濃度0.1ng-TEQ/Nm3以下)全連続式焼却施設を整備し、新ガイドラインに沿って適切な維持管理を行うこと。
         なお、新ガイドラインでは、離島など、全連続式焼却施設による焼却が困難な地域であって、広域化又はRDF化も困難な場合にあっては、准連続式焼却施設、機械化バッチ式焼却施設もやむを得ないが、その際にはダイオキシン対策を最大限講ずることとすることとされていること。
         また、ごみ焼却施設の新設に当たっては、焼却灰・飛灰の溶融固化施設等を原則として設置すること。
    2.  (2) 都道府県は、市町村と調整のうえ、ダイオキシン削減対策のためのごみ処理の広域化について検討し、広域化計画を作成するとともに、計画に基づいて市町村を指導すること。
         広域化計画には、次の内容を含められたいこと。また、焼却灰・飛灰の溶融固化施設、最終処分場、し尿処理施設等の広域化についても計画に含めることができること。
         市町村は都道府県の作成する広域化計画に従い、広域化を推進すること。
      1.   ア 計画の目的
        •    ・都道府県内のごみ焼却施設の全連続化により、ダイオキシン類の排出を削減
      2.   イ 計画の対象地域
        •    ・都道府県内の全市町村を対象
      3.   ウ 広域化の方策及びスケジュール
        •    ・ごみ焼却施設の広域化の観点からの市町村のブロック化
        •    ・各ブロックにおける広域的な施設整備の手順及びスケジュール
      4.   エ 広域化によるダイオキシン類の削減効果
        •    ・各ブロック及び全県における現状排出量及び将来排出量
      5.   オ その他配慮すべき事項
    3.  (3) RDF(ごみ燃料)化施設の導入による広域化も有効と考えられるが、利用先でのRDFの燃焼に当たっては、新ガイドラインに示す廃棄物の焼却と同様の措置が講じられることを確認する必要があること。
         また、他人に有償で売却できないRDFは一般廃棄物に該当するので、その取扱いについては十分注意する必要があること。
    4.  (4) 今後、国庫補助のあり方について検討することとしていること。
    5. 5 ダイオキシン対策を推進するに当たっては、継続的なフォローアップが不可欠であり、以下の点に留意されたいこと。
      1.  (1) 市町村は、ごみ焼却施設等からのダイオキシン類の排出濃度を原則として年一回定期的に測定し、その結果を踏まえ、必要に応じて対策の見直しを行うこと。
           なお、測定データについては、積極的に公表すること。
      2.  (2) 都道府県は、ダイオキシン等に関する知見、対策技術等の情報を収集し、市町村に対して情報提供や技術的援助を行うこと。
           また、広域化の推進状況をフォローアップし、市町村に対する指導を行うこと。


    別表
      ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン―ダイオキシン類削減プログラム―

    〔平成9年1月〕
    〔ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会〕

     ―目次―

    1. [第1章 はじめに]
      1.  1―1 背景
      2.  1―2 これまでの取組の経緯
      3.  1―3 このたびの取組
      4.  1―4 今後のごみ処理体系
      5.  1―5 対策の効果の見込み
    2. [第2章 緊急対策の判断基準と恒久対策の基準]
      1.  2―1 緊急対策の判断基準
        1.   2―1―1 設定に関する考え方
        2.   2―1―2 設定方法
      2.  2―2 恒久対策の基準
    3. [第3章 ダイオキシン類を削減するための方策]
      1.  3―1 緊急対策の実施
      2.  3―2 恒久対策の実施
        1.   3―2―1 ごみの排出抑制とリサイクルの推進
        2.   3―2―2 排出ガス対策
        3.   3―2―3 焼却灰・飛灰対策
        4.   3―2―4 ごみ処理の広域化
      3.  3―3 対策のフォローアップ
    4. [第4章 既設のごみ焼却施設に係る対策]
      1.  4―1 全連続炉
        1.   4―1―1 施設運営
        2.   4―1―2 燃焼設備
        3.   4―1―3 ガス冷却設備
        4.   4―1―4 排ガス処理設備
      2.  4―2 准連続炉及び機械化バッチ炉
        1.   4―2―1 施設運営
        2.   4―2―2 燃焼設備
        3.   4―2―3 ガス冷却設備
        4.   4―2―4 排ガス処理設備
      3.  4―3 固定バッチ炉
      4.  4―4 日常的な管理
      5.  4―5 広域的な対応
    5. [第5章 新設のごみ焼却炉に係る対策]
      1.  5―1 全連続炉
        1.   5―1―1 施設運営
        2.   5―1―2 受入れ供給設備
        3.   5―1―3 燃焼設備
        4.   5―1―4 ガス冷却設備
        5.   5―1―5 排ガス処理設備
      2.  5―2 准連続炉及び機械化バッチ炉
      3.  5―3 日常的な管理
    6. [第6章 RDFの適切な燃焼]
    7. [第7章 焼却灰・飛灰の最終処分に係る対策]
      1.  7―1 焼却灰・飛灰の処理設備
      2.  7―2 最終処分場における対策
    8. [第8章 ごみ処理施設における作業環境の改善]
    9. [第9章 今後の課題]
      1.  9―1 ダイオキシン類に関する調査研究
      2.  9―2 ダイオキシン対策に資する関連分野の検討
    10. (資料編) 略
    ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会委員名簿
    •     内山 巌雄 国立公衆衛生院労働衛生学部長
    •     黒川 雄二 国立衛生試験所安全性生物試験研究センター長
    •     酒井 伸一 京都大学環境保全センター助教授
    •     田中 勝 国立公衆衛生院廃棄物工学部長
    •     永田 勝也 早稲田大学理工学部教授
    •     鍋島 淑郎 玉川大学工学部教授
    •     橋詰 博樹 (財)廃棄物研究財団技監
    • 委員長 平岡 正勝 京都大学名誉教授
    •     藤吉 秀昭 (財)日本環境衛生センター環境工学部次長
    •     増田 義人 第一薬科大学教授
    •     松藤 康司 福岡大学工学部助教授
    •     宮田 秀明 摂南大学薬学部教授
    •     森田 昌敏 国立環境研究所統括研究官
    •     脇本 忠明 愛媛大学農学部教授

    (五十音順)

    [第1章 はじめに]

     1―1 背景

       ダイオキシン類は、有機塩素化合物の生産過程や、廃棄物の焼却過程等で非意図的に生成する化学物質であり、その発生源は多岐にわたっている。また毒性が強く、その環境汚染が大きな問題となってきた。
       例えば、ベトナム戦争で使用された枯葉剤中の不純物として社会的に注目を集めた。また、1976年のイタリアのセベソにおける化学工場の爆発事故(セベソ事件)においても大きな関心を呼んだ(資料1―1)。
       化学的には、ダイオキシン類とは、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)の総称で、210種類の異性体を持つ化合物群である(資料1―2)。その毒性は、動物実験において、急性毒性、発ガン性、催奇形性、生殖毒性、免疫毒性等の広範囲にわたる毒性影響が報告されている。ヒトの場合には、高濃度暴露とがん発生との関係は無視できないと考えられるが、明らかではない(資料1―3)。
       ダイオキシン類は異性体ごとに毒性が異なるので、その毒性を評価する際には、異性体のうちでも最強の毒性を示す2,3,7,8―四塩化ジベンゾパラジオキシン(2,3,7,8―TCDD)の毒性に換算するのが一般的である。毒性換算後の値をTEQ(Toxic Equivalents:毒性等量)と呼ぶ(資料1―4)。
       ダイオキシン類の各種発生源からの排出状況は必ずしも明らかではないが、我が国におけるダイオキシン類の排出量は、1990年で、年間3,940~8,405g-TEQ、このうち、ごみ焼却炉からの排出が3,100~7,400g-TEQであり(資料1―5)、ダイオキシン類の総排出量の8~9割を占めているとの報告がある。
       現在までに厚生省が市町村から報告を受けたごみ焼却施設の排出濃度データによれば、1996年におけるごみ焼却施設からのダイオキシン類の年間総排出量は、約4,300g-TEQ/年と推計される。
       ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類には、不完全燃焼によって生成するものと、排ガス処理設備等でガス温度が300℃程度の温度域になった際に、ダスト表面における触媒作用によって合成されるものとがあるといわれている(資料1―6)。
       また、諸外国と比較して、我が国の一般環境大気中のダイオキシン類濃度は高水準である(資料1―7)。
       このようなことから、ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類が周辺住民に不安を与え、社会問題化しており、ごみ焼却施設からのダイオキシン類の排出削減は緊急の課題となっている(資料1―8)。

     1―2 これまでの取組の経緯

       我が国におけるダイオキシン類に関する問題は、昭和58年にごみ焼却施設の集じん灰からダイオキシン類が検出されたとの報告により始まる。
       これに対応するため、厚生省は「廃棄物処理に係るダイオキシン等専門家会議」を設置し、昭和59年5月に報告がとりまとめられた。同専門家会議では、廃棄物処理に係るダイオキシンの問題を評価考察するための評価指針を、2,3,7,8―TCDDとして100pg-TEQ/kg/day(p:ピコは10-12、1兆分の1を示す。)に設定し、対策の検討が進められた。
       また、平成2年12月には「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン検討会」により、「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン(以下「旧ガイドライン」という。)」がとりまとめられた。旧ガイドラインは、当時において技術的に実施可能な対策を総合的にとりまとめたものであり、ごみ焼却施設の種類毎に、新設・既設に分けた対策を具体的に提示している(資料1―9)。また、旧ガイドラインでは、技術的に削減可能な濃度レベルとして、新設の全連続炉のダイオキシン類排出濃度を0.5ng-TEQ/Nm3(n:ナノは、10-9、10億分の1を示す。N:ノルマルは、0℃、1気圧における気体の状態を示す。)程度以下、その他の炉についても現状に比べ大幅な排出濃度の低下が期待されており、そのための対策を提示している。旧ガイドラインをもとに、厚生省は対策の実施について市町村を指導してきた。
       また、対策が徹底された場合には、我が国のごみ焼却施設からの排出総量が1/10程度以下になることが推定されるとしている。
       旧ガイドラインによる対策の進捗状況及びその効果を評価するためには、現在各市町村において実施中のダイオキシン排出実態等総点検調査の結果を待たねばならないが、現時点までに得られた排出濃度に関するデータによれば、次のようなことがわかる(資料1―10、資料1―11)。

    1.   ① 旧ガイドラインに基づいて建設された施設とその他の施設の比較
          旧ガイドラインが策定された後に旧ガイドラインに基づいて建設された施設と、旧ガイドラインが策定される前に建設された施設とについて排出濃度を比較すると、資料11のとおりである。全体的に、前者の施設は排出濃度が低くなっており、旧ガイドラインの効果が見られる。しかしながら、その一方で、後者の施設では依然として排出濃度の高いものが多く残されており、既設炉における対策が必要であることを示している。
      •     注:ごみ焼却施設の建設に当たっては、着工から竣工まで2~3年程度かかることから、ここでは、平成5年度以降に稼働した施設を、旧ガイドラインが策定された後に旧ガイドラインに基づいて建設されたものとみなした。以下同じ。
    2.   ② 連続的な運転と間欠的な運転の比較
          24時間の連続的な運転を行う全連続炉と、毎日8~16時間程度の運転を行う准連続炉及び機械化バッチ炉とについて排出濃度を比較すると、前者の排出濃度が後者よりも低くなっている。これは、施設の建設時期にかかわりなくいえることである。
    3.   ③ 旧ガイドラインに対応した全連続炉の排出濃度
          全連続炉であって旧ガイドラインに基づいて建設された施設のうち、47施設について排出濃度に関するデータが得られており、そのうちの36施設において期待値である0.5ng-TEQ/Nm3以下となっている。

     1―3 このたびの取組

       平成7年11月より厚生科学研究班でダイオキシンの毒性評価の研究が進められ、平成8年6月に当面の耐容一日摂取量(TDI:Tolerable Daily Intake:健康影響の観点から、人間が一生涯摂取しても耐容されると判断される1日当たり、体重1kg当たりの量。資料1―12)を10pg-TEQ/kg/dayと提案する中間報告がとりまとめられた。
       ここで提案された当面のTDIを、ごみ処理に係るダイオキシン対策の新たな評価指針として、ダイオキシン対策を一層推進するため、平成8年6月に厚生省水道環境部に「ごみ処理に係るダイオキシン削減対策検討会」が設置され、ごみ処理に係るダイオキシン削減対策の検討を行ってきたところである。
       本検討会においては、最近のダイオキシン削減対策技術に関する新たな知見を活用し、後述のように緊急対策と恒久対策に分類して検討を進め、平成8年10月に緊急対策に係る部分を中間報告としてとりまとめた。
       その後、恒久対策について検討を行い、中間報告の内容も包含し、旧ガイドラインを改定して、ごみ処理に係るダイオキシン対策の総合的な推進を図っていくためのガイドライン(以下「新ガイドライン」という。)として取りまとめた。
       緊急対策については、ごみ焼却施設の影響を最も受ける最大着地濃度地点においてもダイオキシン類の摂取量がTDIを超えることのないよう対策を講ずることとし、緊急対策の必要性を判断するための基準として80ng-TEQ/Nm3を示した。この基準を満足しない焼却炉にあっては直ちに対策を講ずることが必要である。
       また、緊急対策に加え、恒久対策として、技術的に可能な限りダイオキシン類の排出を削減することとした。環境庁の「ダイオキシンリスク評価検討会」では、平成8年12月に、「健康リスク評価指針値」(人の健康を維持するための許容限度としてではなく、より積極的に維持されることが望ましい水準として人の暴露量を評価するために用いる値)として、5pg-TEQ/kg/dayを提案する中間報告が取りまとめられている。ごみ焼却施設からの排出量が我が国におけるダイオキシン類の排出量のうちかなりの割合を占めていることを踏まえ、この健康リスク評価指針値をも参考として、恒久対策を実施していくことが必要である。
       恒久対策を講ずることにより、連続運転を行う焼却炉では1ng-TEQ/Nm3(旧ガイドラインに基づく全連続炉は0.5ng-TEQ/Nm3)、間欠運転を行う焼却炉では5ng-TEQ/Nm3程度まで排出濃度を削減できるとしている。また、新設の全連続炉におけるダイオキシン類の排出濃度を0.1ng-TEQ/Nm3以下とすることを基準とし、このための対策を提示している。また、ごみ処理の広域化、焼却灰に含まれるダイオキシン類による環境汚染の防止対策を併せて提示している。
       恒久対策の基準を目指して対策を着実に推進するため、新ガイドラインのうち、施設の構造・維持管理に係る部分等については、廃棄物処理法における施設の構造基準・維持管理基準として位置づけることを検討する。

     1―4 今後のごみ処理体系

       ダイオキシン対策を実施していくためには、ごみの排出抑制、リサイクル、燃焼方式、広域的な処理、適正なRDF(Refuse Derived Fuel:ごみ燃料)化、焼却灰・飛灰の処理、最終処分など、ごみ処理全般に係る総合的な観点が必要であり、ダイオキシン対策は、ごみ処理対策全体と密接に関連しているという点に留意する必要がある。
       このため、様々なごみ処理対策を総合的に検討した上で、それぞれの地域の実情に応じた対策を適切に組み合わせていく必要があるが、基本的には当面、次のような方向でごみ処理体系を構築していくことが適当と考えられる。
       この場合、発生したダイオキシンをいかに処理するかではなく、ダイオキシン類の発生そのものの抑制が重要であることに注意する必要がある。

    1.   (1) 基本的には、当面次の方向を目指す。
      1.    ① 排出抑制・リサイクル
             ごみの排出抑制、リサイクルを徹底し、焼却量を極力削減する。
      2.    ② 全連続炉における適切な焼却
             新ガイドラインに基づき、全連続炉による適切な焼却を図り、ダイオキシン類の排出濃度0.1ng-TEQ/Nm3以下を達成する。
      3.    ③ 余熱利用
             焼却によって得られた熱を最大限回収し、熱供給、発電に供する。
      4.    ④ 灰の適正処理
             焼却灰、飛灰は、余熱利用により得られた動力を可能な限り活用するなどにより、溶融固化等の高度処理を行い、無害化するとともに、溶融スラグ等灰の処理物を可能な限り有効利用し、最終処分量を極力削減する。
             また、最終処分場における環境保全対策を徹底する。
    2.   (2) 全連続炉での焼却が困難な小規模市町村においては、ごみ処理の広域化を検討・実施した上で、(1)の方向を目指す。
          今後のごみ処理体系を資料1―13に示す。

     1―5 対策の効果の見込み

    1.   (1) 緊急対策による削減
          ダイオキシン類の排出濃度が80ng-TEQ/Nm3を超える焼却施設において、第4章に述べる対策を適切に組み合わせて緊急対策を実施することにより、1~2年のうちに、現状の約4,300g-TEQ/年から約2,800g-TEQ/年と約35%削減することが可能である。
          また、緊急対策により、ごみ焼却施設の影響をもっとも受ける最大着地濃度地点においても、摂取量が10pg-TEQ/kg/dayを上回るおそれはないと考えられる。
    2.   (2) 恒久対策による削減
          既設の焼却炉に対する恒久対策、新設の全連続炉の設置、小規模施設の広域化、RDF化施設の導入等の恒久対策を実施することにより、ダイオキシン類の総排出量を、現状の約4,300g-TEQ/年から、5年後には約590g-TEQ/年と86%削減、10年後には約100g-TEQ/年と98%削減、20年後には、約20g-TEQ/年とほぼ100%(99.6%)削減することが可能である。
          ごみの焼却によるダイオキシン類排出が全てのダイオキシン類排出の8~9割を占めるといわれていることを前提とすれば、恒久対策を実施することにより環境中のダイオキシン類濃度が低下し、ダイオキシン類の摂取量が大幅に低減することが期待される。
     [仮定]
    •   ◆ごみの焼却量は一定
    •   ◆焼却炉の耐用年数を20年に設定
    •   ◆5年後(2001年)
      •    ○1981年以前の全連続炉は新ガイドライン適用炉に置き換わる。
        •     ・新ガイドライン適用炉:0.1ng-TEQ/Nm3
      •    ○1982年以降の既設の焼却炉のうち、半数が以下の濃度を達成。
        •     ・旧ガイドライン適用炉:0.5ng-TEQ/Nm3
        •     ・連続運転炉:1ng-TEQ/Nm3
        •     ・間欠運転炉:5ng-TEQ/Nm3
    •   ◆10年後(2006年)
      •    ○1986年以前の焼却炉は、広域化等によりすべて全連続炉に置き換わる。
        •     ・新ガイドライン適用炉:0.1ng-TEQ/Nm3
      •    ○1987年以降の既設の焼却炉は全て以下の濃度を達成。
        •     ・旧ガイドライン適用炉:0.5ng-TEQ/Nm3
        •     ・連続運転炉:1ng-TEQ/Nm3
        •     ・間欠運転炉:5ng-TEQ/Nm3
    •   ◆20年後(2016年)
      •    ○すべて全連続炉に置き換わる。
          対策実施による総排出量の削減予測を資料1―14に示す。

    [第2章 緊急対策の判断基準と恒久対策の基準]

       ダイオキシン類の排出濃度の基準を設定するにあたっては、二つの考え方がある。
       ひとつは、人体に対する健康影響の観点からの基準の設定である。TDIを指標とし、既設の焼却炉の緊急対策の必要性の判断基準として、80ng-TEQ/Nm3という基準を示しているが、これはこの観点から示したものである。
       もうひとつは、技術的に実施可能な観点からの基準の設定である。旧ガイドラインにおいて、新設の全連続炉について提示した0.5ng-TEQ/Nm3や、新ガイドラインで示している恒久対策の基準(新設の全連続炉:0.1ng-TEQ/Nm3など)はこれに該当する。
       緊急対策と恒久対策の比較を資料2―1に示す。

     2―1 緊急対策の判断基準

     2―1―1 設定に関する考え方

       人のダイオキシン類の摂取は、食品及び空気からのものがほとんどであると考えられ、現在の摂取量は当面のTDIの範囲内と見られている(資料2―2、資料2―3)。
       しかし、ごみ焼却施設の周辺地域では、一般の地域における摂取の状況とは異なり、当該ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類の影響を受けるおそれがあると考え、このリスクを勘案しなければならない。例えば、排ガス中のダイオキシン類が周辺の大気中に拡散し、そのダイオキシン類を吸入することによる摂取、大気中に拡散したダイオキシン類がその地域で生産される食品に移行することによる摂取などが可能性として考えられる。
       このため、緊急対策の必要性の判断に関しては、ごみ焼却施設の周辺においては、一般の地域におけるダイオキシン類の摂取量に、ごみ焼却施設から排出されるダイオキシン類の摂取量が加わるおそれがあるものとして、その全体の摂取量がTDI(10pg-TEQ/kg/day)の範囲に収まるように、ごみ焼却施設の排出濃度の基準を設定することを提案する。摂取の増加量を正確に把握することは現状では困難であるが、ここでは、安全側に立って条件を設定し、検討を進めることとする。
       なお、全国のごみ焼却施設でそれぞれ対策が講じられることにより、今後、一般の地域における人の摂取量が減少するが、安全性を高めるため、ここでは、そのような減少分を考慮しないものとする。

     2―1―2 設定方法

       既存のデータから、通常の一般地域におけるダイオキシン類の摂取量を、

    •     大気から0.18pg-TEQ/kg/day(工業地帯近傍居住地域、大都市の平均)
    •     食品から5.9pg-TEQ/kg/day(平均+標準偏差)
    •     合計6.08pg-TEQ/kg/day

      と設定する。
       ここで、安全性を高めるため、大気については、比較的濃度の高い工業地域近傍の住宅地域、大都市地域等の平均的な濃度を用い、食品については、個人の嗜好や食習慣によって異なるので、平均よりも多い値(平均+標準偏差)としている。
       また、食品からの摂取量には、飲料水からの摂取量を含んでいる。
       次に、この摂取量に、各地域におけるごみ焼却施設から排出されたダイオキシン類によって増加するおそれのある摂取量を加える。大気から食品へのダイオキシン類の移行ルートや移行量については、いくつかの報告があるが、十分に解明されてはいない。ここでは、大気中のダイオキシン類濃度の増加に伴って、周辺で生産される食品に含まれるダイオキシン類も同じ割合で増加すると考える。実際には、当該地域で生産された食品だけを摂取するわけではないので、安全性を高める仮定となっている。
       さらに、ごみ焼却施設の排ガスに含まれるダイオキシン類は、周辺の大気中で拡散されるので、排出濃度と拡散後の大気中濃度の比(拡散倍率)を設定する必要がある。一般に、ダイオキシン類による健康影響は長期的な曝露によるものと考えられるので、1時間や1日といった短期的なものではなく、1年間の平均的な拡散倍率を検討することとする。拡散倍率は、施設からの方向・距離、煙突からの排出状況、気象条件等によって異なるが、ここでは、複数の条件を設定して実施した拡散シミュレーションの結果を参考とし、比較的拡散しにくく、地上の濃度が高くなるケースの拡散倍率として、200,000倍を用いる(資料2―4)。この数値は、昭和59年の「廃棄物処理に係るダイオキシン等専門家会議」報告と同様の設定であり、ごみ焼却施設の周辺地域において最も平均濃度が高くなる地点(最大着地濃度地点)における拡散倍率であるので、ここでも安全を見込んでいることになる。
       また、ごみ焼却施設は、毎日24時間、365日間稼働するものとし、その間の排出濃度は一定とする。
       このような考え方のもとに、摂取量の合計が当面のTDIに達する場合の排出濃度を計算すると80ng-TEQ/Nm3となるので、この濃度を緊急対策の必要性の判断のための基準として提案する(資料2―5)。
       なお、計算に当たっては安全側に立って条件を設定したので、実際の排出濃度がこの判断の基準を超えている場合であっても、必ずしも、周辺における摂取量が当面のTDIを超えているというわけではない。

     2―2 恒久対策の基準

       ダイオキシン類については、環境中の挙動も不明であり、人体への摂取量についての知見も不足している状態にあること、また、ダイオキシン類は一般環境中で分解されにくく、脂溶性で、生体内に蓄積(生物濃縮)する物質であることから、技術的に可能な限りの削減が望ましい。したがって、80ng-TEQ/Nm3はもとより、可能な限りダイオキシン類の排出を低減していく必要がある。
       恒久対策は、最新の技術に照らし、最大限可能な水準まで削減する対策である。欧米においても、このような考え方がダイオキシン類の排出濃度基準値の設定に当たっての基本的な考え方となっている。
       新設の全連続炉にあっては、最新の技術を用いることにより、ダイオキシン類の排出濃度を0.1ng-TEQ/Nm3以下とすることが可能と考えられ、現にこの値を達成している焼却炉も存在する。このため、今後建設される全連続炉については、ダイオキシン類の排出濃度の基準値を0.1ng-TEQ/Nm3以下とする。諸外国においても、0.1ng-TEQ/Nm3程度の値を基準として設定している(資料2―6)。
       既設の焼却炉にあっては、人体に対する健康影響の観点から、ダイオキシン類の排出濃度80ng-TEQ/Nm3を緊急対策の必要性の判断基準として設定しているが、この基準値を下回った場合でも、恒久対策として種々の対策を講ずることにより、可能な限りの削減を行うべきである。一般的には、現在の技術により、表1に示す値まで排出濃度を低下させることが可能と考えられるので、この値を基準値として恒久対策を実施すべきである。

      表1 恒久対策の基準
    炉の種類
    区分
    基準値
    (ng―TEQ/Nm3)
    全連続炉
    新設炉
    0.1
    既設炉
    旧ガイドライン適用炉
    0.5
    旧ガイドライン非適用炉
    1
    准連続炉
    既設炉
    連続運転
    1
    機械化バッチ炉
    固定バッチ炉
    間欠運転
    5

    [第3章 ダイオキシン類を削減するための方策]

       ダイオキシン対策を、緊急対策と恒久対策の二つに分類する。
       緊急対策は、人体に対する健康影響の観点から緊急に実施すべき対策であり、恒久対策は、技術的に可能な最大限の対策として、その時点での技術的可能性を勘案し、検討・実施するものである。

     3―1 緊急対策の実施

       ダイオキシン類は、ごみの不完全燃焼に伴って生成するほか、排ガス処理設備入口の排ガス温度が300℃程度と高い場合には、排ガス処理設備内で生成することが知られている。このため、各焼却施設において燃焼管理の適正化、施設の改造等の対策を講ずる必要がある。
       現在、全国の市町村が設置するごみ焼却施設からのダイオキシン類の排出実態について総点検調査を実施しているところであるが、排出濃度が80ng-TEQ/Nm3を超える施設にあっては、周辺環境への影響を防止する観点から、至急具体的な対策を検討し、実施に移していくことが必要である(資料3―1)。対策としては、燃焼管理の適正化、施設の改造、間欠運転から連続運転への変更、施設の休廃止等があるので、各施設の構造及び管理の実態を踏まえ、必要な対策を実施すべきである。
       対策の詳細については、第4章を参照されたい。
       そして、緊急対策の実施後には、再度濃度を測定し、講じた対策の効果を把握する必要がある。
       また、緊急対策を講ずる場合にあっては、恒久対策との関係についても検討することが必要である。例えば、既存の施設を引き続き使用する場合には、

    1.    ① 安定燃焼・完全燃焼の徹底(運転の連続化を含む。)
    2.    ② 排ガスの冷却
    3.    ③ 排ガス処理対策

      の順に、より恒久的な対策効果を持つ場合が多いと考えられるので、対策技術の選択に当たって十分留意する必要がある。また、対策が困難な小規模施設等にあっては、他の施設の暫定的利用を図りつつ集約化を急ぐなど、広域的な対応が必要である。

     3―2 恒久対策の実施

       ごみ焼却施設がダイオキシン類の主たる発生源であると言われていることに鑑み、全国のごみ焼却施設からのダイオキシン類の排出量を総体として可能な限り削減することが必要である。恒久対策はこのような考え方のもとに進められるものである。
       今後、以下に示す対策を全国的に推進することはもちろん、その状況を継続的にフォローアップしていくことが重要である。そして、対策の推進状況及び対策技術等に関する新たな知見等を踏まえ、対策の強化を図っていくべきと考えられる。

     3―2―1 ごみの排出抑制とリサイクルの推進

       ダイオキシン類の削減対策を進めるに当たっては、まず、ごみの排出抑制、リサイクル等により焼却量そのものをできるだけ減らすことが必要である。
       現在、限りある資源の有効利用や、最終処分場の確保難といった観点からごみの排出抑制、リサイクルを推進しているが、ダイオキシン類削減の観点からもごみの排出抑制、リサイクルを推進し、ごみ焼却量を削減することが重要である。

     3―2―2 排出ガス対策

       それぞれの焼却施設においてダイオキシン類の排出の少ない適切な焼却を行うことが最も重要である。これにより、大気へのダイオキシン類の排出が削減されるばかりでなく、焼却灰や、排ガス処理施設において捕捉される飛灰に含まれるダイオキシン類の低減まで行うことができる。

      (1) 新設炉

        間欠炉に比べ規模が大きく、安定的に24時間運転を行う全連続炉には以下のようなメリットがある。

    1.    ① ごみ質・ごみ量の安定化
           ごみが集まることにより、ごみ質の均一化が容易になる。これによって安定的な燃焼が可能となり、ダイオキシン類の生成抑制が期待される。
    2.    ② 燃焼の安定化
           全連続炉では一定量を24時間連続で供給することができ、安定的な燃焼を行えるので、ダイオキシンの生成を低く抑えることができる。
           また、焼却炉の立上げ・立下げ時には、一般に定常時に比べてダイオキシン類の排出が増大するが(資料3―2)、全連続炉の場合、毎日の立上げ・立下げがないため、立上げ・立下げ時のダイオキシン類の排出をなくすことができる。
    3.    ③ 排ガス処理の高度化
           燃焼が安定化すると、排ガスの性状や量も安定する。このため、集じん器等の維持管理が容易となり、かつ効率的な排ガス処理が行える。また、排ガスの性状が安定するので、活性炭吸着や分解除去などの高度処理を行うことが容易になる。
    4.    ④ 余熱利用
           全連続炉の場合、ガス冷却設備としてボイラを活用して熱回収を行い、熱供給や発電に利用できる。また、焼却施設の近隣に溶融固化設備を設置する場合には、得られた電力を用いて、溶融固化設備などの動力として活用することも可能となる。
           このため、今後新たに建設される焼却施設は、原則として全連続炉とする。
           今後新設される全連続炉におけるダイオキシン類削減のための具体的な対策を第5章に示す。
           なお、離島など、全連続炉による焼却が困難な地域であって、3―2―4で述べる広域化又はRDF化も困難な場合にあっては、准連続炉、機械化バッチ炉もやむを得ないが、その際にはダイオキシン対策を最大限講ずることとする。
      (2) 既設炉

        既設炉についても、ごみの排出抑制、リサイクルに極力努めた上で、各焼却施設において燃焼管理の適正化、施設の改造等の対策を効果的に組み合わせ、継続的に実施していくことにより、ダイオキシン類の削減を推進する必要がある。
        准連続炉、機械バッチ炉及び固定バッチ炉のような間欠的な焼却方式では、毎日の起動・停止により燃焼が不安定になりやすく、ダイオキシン削減対策に限界がある。しかし、運転方法の工夫により連続運転が可能な場合もあるので、その場合には24時間の連続運転を行う。
        具体的な対策内容を第4章に示す。

     3―2―3 焼却灰・飛灰対策

       ごみの燃焼により生じたダイオキシン類は、排ガスだけではなく、焼却炉に残った焼却灰にも含まれる。また、排ガス中のばいじんは、ほとんど集じん器で捕捉されるが、捕捉された飛灰にもダイオキシン類が含まれる。
       ダイオキシン類は、量的にはこれら焼却灰・飛灰として排出されるものが多いと考えられるため、焼却灰・飛灰に含まれるダイオキシン量を削減するとともに、焼却灰・飛灰の処分に伴う環境汚染を防止する必要がある。
       旧ガイドラインに沿って建設された焼却施設では、排ガス中に含まれて排出されるダイオキシン類について削減効果があらわれている。これは燃焼管理の適正化や排ガス処理での対策により、主として大気中へ放出されるダイオキシン類の削減を企図したものであるが、同時に焼却灰・飛灰に含まれるダイオキシン類も総じて低下していると考えられる。
       しかしながら、焼却施設の構造や稼働状況によって大きく異なるが、概ね焼却灰でND~0.3ng-TEQ/g、飛灰で1~50ng-TEQ/g程度のダイオキシン類が含まれている(資料3―3)。焼却灰・飛灰に含まれて排出されるダイオキシン類の量は、排ガスに含まれて排出されるダイオキシン類の量より多く、排出合計量の8割から9割以上を占める例が多い。また、焼却灰よりも飛灰に含まれるものの方が多い。
       元来、自然環境中に存在しなかった有害物質が焼却に伴って発生し、これらが徐々に分解されるとしても多くは長期間にわたって存在し続けることは、恒久的に人の健康や環境の保全を確保するという観点からは望ましいことではなく、これを解決するためには発生段階で削減を図ることが重要である。
       したがって、まず第一に、ダイオキシンそのものの発生を抑制することが重要である。第4、5章で述べるような、焼却の過程でダイオキシン類の発生を極力防止するための対策を講ずることが、焼却灰・飛灰中のダイオキシン類を削減する最善の対策と考えられる。
       さらにダイオキシン類を削減するためには、焼却灰・飛灰の溶融固化、加熱脱塩素化処理等の高度処理によりダイオキシン類を分解することが有効である。
       溶融固化を行う場合、1250~1450℃という高温状態とするため、ダイオキシン類は99%以上分解される。このため、溶融スラグ中のダイオキシン類濃度は極めて低濃度となる(資料3―4)。
       特に処分場の確保が困難な場合には、溶融固化による減溶化が有効である。灰は溶融固化によりガラス質のスラグとなり、灰に比べ1/3程度に減容化されるので、処分場の延命化につながる(資料3―5)。また、路盤材やセメント骨材などの再生品として使用することも可能である。
       溶融固化等の高度処理にはエネルギーやコストを要するため、施設がある程度の規模を備えていることが効率的であり(資料3―6)、この観点から、3―2―4で述べるごみ処理の広域化が有効である。
       また、焼却残渣が埋め立てられる最終処分場に起因する環境汚染を防止することも重要である。このため、最終処分場での焼却残渣の飛散や、浸出水による公共用水域及び地下水の汚染を防止するための措置が必要となる。

     3―2―4 ごみ処理の広域化

       人口の少ない市町村にあっては、発生するごみの量も少なく、全連続化が困難である。したがって、隣接市町村が連携して、一定規模以上の全連続炉への集約化(広域化)を総合的かつ計画的に推進することが必要である。

      (1) 広域化の必要性とメリット

        全連続炉での焼却を行うためには、ある程度のごみ量が必要となるので、ある程度の人口規模が必要となる。このため、人口の希薄な地域においては広域化が必要となる。広域化には、全連続炉化によるダイオキシンの排出削減に加え、以下のようなメリットがある。

    1.    ① リサイクルの推進と焼却量の削減
           施設が個別に点在している場合に比べ、広域化により、ばらばらではリサイクルが進まなかったリサイクル可能物が一箇所に集まり、リサイクルが可能となる場合がある。これにより、焼却量を減らすことができる。
    2.    ② 灰処理の推進
           ダイオキシン類を含有する焼却灰、飛灰も一箇所で集中管理できるとともに、一定量が集まれば溶融固化等の高度処理が容易になる。溶融固化等により灰を再生品として利用する場合においても、一定量の製品供給を確保できる。
      (2) 広域化にあたっての配慮事項

        広域化にあたっては、高額な費用を要する場合や、市町村の範囲を超えた対応が必要となる場合が多いので、各市町村において、ごみ処理に関する計画にダイオキシン対策を位置付け、周辺市町村と調整を図り、計画的にダイオキシン問題への広域的な取組みを進めることが必要である。
        また、均衡ある広域化を図るためには、都道府県による市町村間の調整が必要と考えられる。
        広域化の検討手法を以下に示す。

    1.    ① 広域化の規模
           広域化にあたっては、まず、市町村ブロック化の地理的条件、社会的条件を設定する必要がある。
           ごみ処理の効率性、発電の効率性・経済性等から考えて、全連続焼却施設は、ごみ焼却量300t/日程度以上の規模とすることが望ましく、最低でも一施設100t/日程度以上とすべきである。この規模に到達することが困難な場合には、RDF化施設やコンポスト化施設の整備も検討する必要がある。
           また、小規模なRDF化施設で製造されたRDFを、広域化によって一箇所で集中的に焼却処理する場合も考えられるので、このような場合も同様の規模を検討する。
    2.    ② 広域化の時期
           それぞれの市町村が運営している既存の焼却施設や最終処分場等の更新時期等を勘案し、広域化の時期や、広域化が実施されるまでの間の各市町村での処理方法等について検討する。
    3.    ③ 設置場所の選定
           施設設置場所の選定にあたっては、交通条件、用地の確保、住民の理解等多方面からの検討が必要である。
           特に既存の道路、鉄道、航路等のアクセスが容易な地点を選定し、輸送の効率性を高めることとする。
    4.    ④ 焼却施設以外の施設との組合せ
           焼却施設のみならず、リサイクル施設、ストックヤード、熱供給設備、灰の高度処理施設、最終処分場等他の施設と適切に組み合わせる方が効率的な処理ができるものと考えられる。
           逆に、地域のバランスに鑑み、ごみ処理関連施設を広域ブロック内に分散させることが適当な場合も考えられるので、処理が非効率的にならない範囲において、分散させることも検討する必要がある。
    5.    ⑤ 実施のための諸要素整備
           各市町村の役割分担、費用負担、ごみの分別方法の調整、ごみ・RDFの運搬方法、施設の維持管理方法等広域化の実施にあたって必要な諸要素について検討する必要がある。
           特に、ごみの分別方法については、リサイクルの推進、ごみ質の均一化による適正な焼却という観点から、広域化ブロック内の各市町村においてできるだけ統一することも考慮する必要がある。
    6.    ⑥ 広域化の効果把握と評価
           広域化によるダイオキシン類の排出量削減効果、リサイクル、余熱利用、灰処理等に関するメリット、ごみ・RDFの収集運搬、施設の建設・維持管理の経済性等を把握・評価することを通じ、広域化の妥当性を総合的に判断する。妥当でないと判断された場合は、より適切な広域化を目指してブロックの見直しを行うなど、別案を検討することも必要である。
    7.    ⑦ 広域化の実施手法
           市町村は、広域化ブロック会議等を組織し、広域化について検討・実施することとするが、広域化に当たっては、市町村の範囲を越えた広域的な調整が必要となることから、都道府県が関与して、市町村と共同で広域化の検討を行うことが必要と考えられる。
           このため、都道府県は広域化計画を策定し、ごみ焼却によるダイオキシン類の排出総量の削減目標(現状:〇〇g-TEQ/年→将来:〇〇g-TEQ/年)を設定し、計画の達成に向けて市町村を指導することが必要である。
           広域化のイメージを資料3―7に示す。
      (3) RDFによる広域化

        ごみをそのまま焼却する場合に比較して、ごみを適正にRDF化すると、質が均一化されるため、燃焼管理が容易になる。また、RDFは比較的長期の保管が可能であり、個々のRDF化施設で製造したRDFを一箇所に集約して燃料に使用したり、焼却することができる。
        このような特性から、以下のような場合にはRDF化施設の導入が有効である。

    1.     1) 広域化を行う場合に、焼却施設が遠くなる等の理由でごみとしての搬入が困難な場合
    2.     2) 離島である等の理由により、ごみ焼却としての広域化が不可能な場合
    3.     3) RDFの利用を広域的に進める場合

        RDF化施設の導入にあたっては、以下の点に留意する必要がある。

    1.    ① RDFの位置づけ
           現状ではRDFは有償で売却できない場合も多いが、その場合は一般廃棄物としての扱いを受けるため、その焼却には一般廃棄物の処理基準が適用され、集じん器で捕捉されたばいじんは特別管理一般廃棄物となる。
           また、有償で燃料として扱われる場合にあっては、焼却後の焼却灰、飛灰は、それぞれ産業廃棄物の燃えがら、ばいじんに該当し、これらの処理には産業廃棄物の処理基準が適用される。
    2.    ② 安定的な利用先の確保
           リサイクルの観点から、RDFを燃料として活用することが望ましいが、この場合は、RDFの品質をニーズに合ったものにし、安定的な利用先を確保する必要がある。
           また、利用先においてダイオキシン類の排出濃度0.1ng-TEQ/Nm3以下となるような燃焼を行うなど、生活環境の保全上支障がないことを確認する必要がある。
    3.    ③ 広域化
           燃料としての利用先が確保できない場合には、焼却処理することとなるが、この場合においても全連続炉で燃焼することが望ましい。RDFは比較的長期間の保存も可能で、運搬も容易であることから、集約化して処理することが容易である。このため、ごみ処理の広域化を行う際、ごみとしての運搬が困難な場合には、個別にRDF化施設を設置し、製造されたRDFを全連続炉に運搬して処理することを検討すべきである。この場合、全連続炉において、ごみとRDFを混合して焼却する場合も考えられるため、RDFの質や、焼却方法等の検討も必要である。
           また、離島である等の理由により、広域化が不可能な場合には、ごみをいったんRDF化したうえで、これを焼却することも検討すべきである。
    4.    ④ 適切なRDF化施設の設置・運営
           燃焼時にダイオキシン類の排出の少ない良質なRDFを製造するには、銅などの金属表面におけるダイオキシン生成の触媒作用を抑制するため、金属類をできるだけ取り除くことが必要である。
           このため、燃料としての使用に耐えるRDFを製造するには、適切な選別施設を併置して金属類、不燃物を除去できる構造を有するRDF化施設が必要である。また、RDFの品質が均一になるよう施設の維持管理が必要である。
    5.    ⑤ 適切なRDFの取扱い
           製造したRDFについては、湿潤による腐敗を起こさない等適正な保管や、飛散、流出しないような適正な収集運搬、RDFの利用先での適切な燃焼等が必要である。RDF焼却に伴うダイオキシン類の発生濃度は0.1ng-TEQ/Nm3以下達成には至っていない(資料3―8)。このため、RDFの燃焼にあたっては、基本的にごみ焼却施設と同様の対策が必要であり、ダイオキシン類の排出濃度についても恒久対策の基準と同様の基準を適用する。
           RDFを焼却する場合のダイオキシン対策を第6章に示す。
           今後は、生ごみの分別等による、より良質なRDFの製造技術や利用・流通体制の整備等により、より多くの需要を生み出すための検討が必要である。

     3―3 対策のフォローアップ

       本ガイドラインで示す緊急対策、恒久対策に基づき対策を実施し、その効果を把握・評価し、足りない対策を補うなどのフォローアップが常に必要であることは論を待たない。
       また、これまでみてきたように、ダイオキシン対策は、必ずしも完成された技術ではないので、今後のダイオキシンに関する新たな知見を注視し、最新の知見・技術を取り入れつつ、恒久対策としてさらにダイオキシン対策を推進していく必要がある。
       このため、以下の点に留意してダイオキシン対策のフォローアップを図ることが必要である。

      (1) 定期的なダイオキシン類排出濃度の測定

        対策を実施し、フォローアップするためには、ダイオキシン類排出濃度の定期的な実測が不可欠である。市町村は、原則として年に1回、通常の負荷、管理状態において、焼却炉のダイオキシン類排出濃度の測定を行うことが必要である。また、ダイオキシン削減対策を実施した際には、その効果を確認するため、速やかに対策後のダイオキシン類排出濃度を測定することとする。
        なお、ダイオキシン類排出濃度が表1の恒久対策の基準値(新設の准連続炉及び機械化バッチ炉については0.1ng-TEQ/Nm3)を下回る場合にあっては、2年に1回の測定で可とする。
        また、市町村は、ダイオキシン類排出濃度の測定結果を積極的に公表すべきである。

      (2) フォローアップの方法

        市町村、都道府県及び国は、以下の役割を分担し、適切なフォローアップを図る必要がある。

    •   ○市町村
      1.     ① ダイオキシン類の排出濃度を測定
      2.     ② これをもとに計画的に対策を実施
      3.     ③ 再測定による対策効果の確認
      4.     ④ 上記①~③を毎年都道府県に報告
    •   ○都道府県
      1.     ① 上記市町村報告の取りまとめと指導
      2.     ② 広域化計画の策定とこれに基づく進行管理
      3.     ③ 上記①②を毎年国に報告
    •   ○国
      1.     ① 平成2年に定めた廃棄物焼却におけるダイオキシン類測定標準法の改訂
      2.     ② 都道府県の報告を受け、さらなる対策の検討と指導
      3.     ③ ダイオキシン類に関する知見、対策技術等の調査研究と情報提供
      4.     ④ 国庫補助制度の活用による財政的支援
      (3) 最新の知見の活用

        ダイオキシン類削減に関する知見、対策技術について常時情報収集を行い、最新の知見や対策技術を反映させ、フォローアップに努める必要がある。

    [第4章 既設のごみ焼却施設に係る対策]

       既設のごみ焼却施設において実施すべき対策の内容を検討し、次のようにとりまとめた。各施設の構造及び管理の実態を踏まえ、必要な対策を選定して実施に移すべきである。
       旧ガイドラインからの変更点は、資料4―1のとおりである。
       また、既設炉に関する対策を資料4―2に図解する。

     4―1 全連続炉

     4―1―1 施設運営
    適正負荷による運営
      施設の運営に当たっては施設の運転及びごみ収集計画等において、ごみ質が均一になるように努めるとともに、焼却炉の負荷を適正な範囲に保ち、安定した燃焼を継続すること。
    連続運転の長期化
      施設の運転に当たっては、連続運転を可能な限り長期化できるような運営を行うこと。
    定期測定の励行
      排ガス中のダイオキシン類濃度を定期的に測定し、その結果を記録に残すこと。測定頻度は、年1回を原則とする。
     〔解説〕

       ダイオキシン類の発生抑制の基本となる安定運転のためには、施設を適正負荷で運転すること、投入するごみの量及び質を均一化することが重要である。そのためには、ごみピット内のごみ量の管理のほか、ごみの収集計画の面からも検討を加えることが必要である。
       通常連続運転を行っている施設においても、停止後の起動から燃焼が安定するまでの間と停止時に比較的高濃度のダイオキシン類が発生するため、可能な限り連続運転を長期化することを基本とする。連続運転を長期化するためには、ごみ量に見合った運転炉数・運転日数の調整を行うとともに、ごみ搬入量と炉能力、ピット容量等に配慮して運転計画を立てる必要がある。長期連続化が、負荷の過度の低下につながらないように配慮することも重要である。
       なお、定期補修等により停止する際には、助燃バーナを運転して燃焼室の温度を高温に維持しつつ炉内のごみを燃え切らせ、停止後炉内にごみが残らないようにする。
       起動する際には、焼却炉に支障を来さない限り炉の立上げ時間を短時間化し、低温燃焼による未燃ガスの発生を防止する。また、助燃バーナの活用により、ごみ燃焼負荷の低い時でも燃焼室の温度を高温に維持できるようにする。
       ダイオキシン類濃度測定は、原則として年1回、代表的な運転時期に、通常の負荷、管理状態において行うものとする。また、排ガスだけでなく、焼却灰、飛灰を含めた総排出量を把握することが望ましい。なお、排ガス中のダイオキシン類濃度が表1の恒久対策の基準値を下回る炉を持つ施設においては、同等の運転条件が継続されていることを条件として、当該炉の翌年の測定は省いても良いものとする。

     4―1―2 燃焼設備
    焼却炉
      焼却炉の運転に際しては、安定燃焼の継続に配慮しつつ、下記条件を指標に維持管理するものとする。管理目標が達成できない場合には、運転方法の改善、燃焼設備の改造等を行うものとする。
    •  ・燃焼温度:800℃以上(850℃以上の維持が望ましい。)
    •  ・煙突出口の一酸化炭素(CO)濃度:50ppm以下(O212%換算値の4時間平均値)
    •  ・安定燃焼:500ppmを超えるCO濃度瞬時値のピークを極力発生させないように留意する。(5回/hr程度以下)

      上記条件は、温度計に加えてCO連続分析計及びO2連続分析計を設置し監視するものとする。


     〔解説〕

       ダイオキシン類の発生は一般的に燃焼状態の善し悪しと密接な関係があり、燃焼ガスの完全燃焼を継続して達成することによりダイオキシン類の発生を抑制できる。
       燃焼温度が高いほどダイオキシン類及び前駆体の熱分解には有利であることから、燃焼温度は850℃以上を維持することが望ましい。
       燃焼状態を示す重要な指標は一酸化炭素(CO)濃度であり、CO濃度が低いほど完全燃焼に近いと言える。このCO濃度は、比較的連続測定が容易であり、中高濃度領域でダイオキシン類濃度と正の相関関係がある。
       平成2年のガイドラインにおいて指標とした「CO濃度100ppm以下」を「50ppm以下」とすることは、運転方法や設備の改善により可能であり、またこのレベルまでCO濃度を低減することが、ダイオキシン類の発生抑制に有効である。
       また、炉出口O2濃度が異常に低下したり過大になったりすると、CO濃度は一般に増加する傾向が見られるため、炉の特性に応じた適正なO2濃度を保つことが必要である。
       炉内の熱負荷(単位ごみ当たり発熱量と燃焼ごみ量の積)を一定に保つことにより、安定した燃焼を継続することができる。このためには、ごみピット内でのクレーンによるごみの撹拌混合均一化の励行や、ごみ供給装置の定量性の向上、ごみの細破砕化等の対策が有効である。なお、安定燃焼の尺度として、CO濃度瞬時値を用い、これが500ppmを超える燃焼の急変動(温度の急降下や急上昇)を避けるように運転管理するものとする。止むを得ず500ppmを超えるCO濃度瞬時値のピークが発生した場合でもこの回数は少ないほど良く、1時間当たり5回程度以下を目標とする。なお、CO及びO2の測定は集じん器出口以降で行うものとし、その結果については、記録に残しておくことが望ましい。
       CO濃度の管理目標が達成できない場合には、未燃ガスと燃焼空気の混合状態を改善するための燃焼方法の改善や必要に応じ設備の改造を行う。以下に改造例を示すが、具体的に検討を進める際には、ごみ焼却施設の種々の状況を十分勘案して最適な方法を選択する必要がある。

    1.    1) 燃焼ガスの混合を考慮した炉形状の変更
    2.    2) 二次燃焼用空気ノズルの増設、同送風量の増加、ノズル位置の変更等
    3.    3) 燃焼室容積の増加
    4.    4) 安定燃焼を実現するための自動燃焼制御の改良又は新規導入
    5.    5) 助燃バーナの設置
    6.    6) 燃焼装置(火格子、供給装置、散気装置等)の改良更新

       これらの改造例の他にも、窒素酸化物との同時低減を目指した天然ガスリバーン技術も開発されている。
       また、上記1)~3)の実施に当たっては、近年開発が進められている熱流体解析プログラムを使ったシミュレーションにより、事前に改造効果を予測しておくことも有効である。
       以上の各指標は、定常運転時に対応するものとし、起動・停止時には適用しないが、起動・停止に当たっては、4―1―1のとおり、より丁寧な操作が必要である。

     4―1―3 ガス冷却設備
    廃熱回収ボイラ
      廃熱回収ボイラを設置している場合は、ボイラ伝熱面上におけるダストの堆積の抑制及びボイラ出口排ガスの低温化が有効である。
    炉頂型ガス冷却室
      炉頂型ガス冷却室を設置している場合には、燃焼室における燃焼状態に悪影響を及ぼすことがあるので、炉頂型ガス冷却室の改造が有効である。
    空気予熱器等
      空気予熱器等に排ガスを利用している場合は、設備内のダストの堆積抑制及び設備入口排ガスの低温化が有効である。

     〔解説〕

       焼却炉の上部に直結して設置された炉頂型の水噴射式ガス冷却室では、水噴射量の増加が燃焼に悪影響を及ぼす場合があるので、水噴射ノズルを上方に移設する、冷却室入口部を絞る、炉頂型から別置型に変更する等の改造を行う。これにより、燃焼状態が改善され、CO濃度が低減される。
       また、200~600℃の排ガスがダストに触れると、ダストの表面でダイオキシン類が生成され、特に300℃前後で最も生成反応が盛んになる。廃熱回収ボイラ及び空気予熱器等でのダイオキシン類の生成を防止するため、以下の対策がダイオキシン類の低減に有効である。また、排ガス温度の低下は、排ガス処理設備におけるダイオキシン類の生成の防止のためにも有効である。

    1.    1) ボイラ、空気予熱器等のスートブローを増設し、清掃をできるだけ頻繁に行う。
    2.    2) ボイラ、空気予熱器等をダストが堆積しにくい形式に交換する。
    3.    3) エコノマイザーの設置により、ダイオキシン類の生成が盛んになる温度域の通過時間を短縮するとともに、排ガス温度を下げる。
     4―1―4 排ガス処理設備
    集じん器の種類
     ―電気集じん器
       底部の低温腐食防止に配慮しつつ、低温化を図る必要がある。ろ過式集じん器に交換する対策も有効である。
     ―ろ過式集じん器
       低温腐食防止対策が容易で入口排ガスの低温化ができ、ダイオキシン類の生成防止と吸着除去に適している。
    集じん器入口排ガス温度
      集じん器入口排ガス温度は、電気集じん器の場合200~280℃、ろ過式集じん器の場合200℃未満のできるだけ低いレベルとする。

     〔解説〕
    1.   (1) 集じん器の種類
          ごみ焼却排ガスには、ガス状のダイオキシン類と粒子状のダイオキシン類が含まれているが、粒子状のダイオキシン類を除去するためには、特にサブミクロン粒子について高い集じん効率を持った集じん器を選定する必要がある。出口のばいじん濃度は低いほど良く、ろ過式では10mg/Nm3以下まで可能である。電気集じん器においても50mg/Nm3以下とすることが望ましい。また、集じん器入口温度を低くすることが比較的容易なろ過式集じん器は、ダイオキシン類の生成防止と吸着除去に有利である。
    2.   (2) 集じん器入口排ガス温度
      1.    ① 集じん器入口排ガスが高温になるほど、排ガス中のダイオキシン類がより多く生成する。集じん器内部でのダイオキシン類の生成は、300℃前後で最大になり、ダイオキシン類の排出濃度と集じん器入口排ガス温度との間には正の相関がある。
             電気集じん器入口排ガス温度を下げるために水を噴霧する場合には、排ガス中の水分の増加等により、集じん効果が低下する場合があるので、注意を要する。
             以上のことから集じん器入口排ガス温度の上限は、電気集じん器の場合200~280℃、ろ過式集じん器の場合200℃未満のできるだけ低いレベルとする。
             なお、ろ過式集じん器において入口排ガス温度を下げると、ダイオキシン類の生成防止に加え、ガス状のダイオキシン類がろ布上の堆積ダスト層により吸着除去されることが期待できるが、200℃前後の入口排ガス温度では不十分な場合があり、さらに低温化を図ると効果がある。なお、この場合は排ガス中の水分等の影響にも十分留意する必要がある。
      2.    ② 排ガス中のダイオキシン類の生成は集じん器入口排ガス温度のみに支配されるのではなく、集じん器内に流入する前駆体の量など他の条件によっても影響されるので、排ガス中の未燃分を減少させることも重要である。また、全連続炉にあっても、起動・停止時の排ガス中の未燃分が集じん器内部に残留して、定常時にダイオキシン類を生成することも報告されており、残留した未燃分等による影響(メモリー効果)を早期に除去するダストの払い落としなど、きめ細かな対策が必要である。

     4―2 准連続炉及び機械化バッチ炉

     4―2―1 施設運営
    適正負荷による運営
      施設の運営に当たっては施設の運転及びごみ収集計画等において、ごみ質が均一になるように努めるとともに、焼却炉の負荷を適正な範囲に保ち、安定した燃焼を継続すること。
    連続運転化
      施設の運転方法については、原則として、間欠運転(1日8時間~16時間)から、連続運転に変更すること。
    埋火の廃止
      燃し切り停止を行うこと。
    定期測定の励行
      排ガス中のダイオキシン類濃度を定期的に測定し、その結果を記録に残すこと。測定頻度は、年1回を原則とする。

     〔解説〕

       ダイオキシン類の発生抑制の基本となる安定運転のためには、施設を適正負荷で運転すること、投入するごみの量及び質を均一化することが重要である。そのためには、ごみピット内のごみ量の管理のほか、ごみの収集計画の面からも検討を加えることが必要である。
       また、間欠運転では、起動から燃焼が安定するまでの間と停止時に比較的高濃度のダイオキシン類が発生するため、連続運転への変更を検討すべきである。連続運転に変更するためには、ごみ量に見合った運転炉数・運転日数の調整を行うとともに、ごみ搬入量と連続化後の炉能力、ピット容量、耐火物の急激な熱変化が起こらないように配慮して運転計画を立てる必要がある。また、夜間の運転を容易にするため、全自動クレーンや全自動燃焼制御の採用などが有効な場合がある。連続化が、負荷の過度の低下につながらないように配慮することも重要である。
       やむを得ず間欠運転を行う場合にあっては、起動の際には、焼却炉に支障を来さない限り炉の立上げを短時間化し、低温燃焼による未燃ガスの発生を防止する。また、助燃バーナの活用により、ごみ燃焼負荷の低い時でも燃焼室又は再燃焼室の温度を高温に維持できるようにする。
       停止の際には、助燃バーナを運転して燃焼室又は再燃焼室の温度を高温に維持しつつ炉内のごみを燃え切らせ、停止後炉内にごみが残らないようにする。これは、停止後ごみを残して夜間埋火を行うと、相当量のダイオキシン類が排出されるための措置である。
       ダイオキシン類濃度測定は、原則として年一回、代表的な運転時期に、通常の負荷、管理状態において行うものとする。また、排ガスだけでなく、焼却灰、飛灰を含めた総排出量を把握することが望ましい。なお、排ガス中のダイオキシン類濃度が表1の恒久対策の基準値を下回る炉を持つ施設においては、同等の運転条件が継続されていることを条件として、当該炉の翌年の測定は省いても良いものとする。

     4―2―2 燃焼設備
    焼却炉
      焼却炉の運転に際しては、安定燃焼の継続に配慮しつつ、下記条件を指標に維持管理するものとする。管理目標が達成できない場合には、運転方法の改善、燃焼設備の改造等を行うものとする。
    •  ・燃焼温度:800℃以上(850℃以上の維持が望ましい。)
    •  ・煙突出口の一酸化炭素(CO)濃度:50ppm以下(O212%換算値の4時間平均値)
    •  ・安定燃焼:500ppmを超えるCO濃度瞬時値のピークを極力発生させないように留意する。(5回/hr程度以下)

      上記条件は、温度計に加えてCO連続分析計及びO2連続分析計を設置し監視するものとする。


     〔解説〕

       ダイオキシン類の発生は一般的に燃焼状態の善し悪しと密接な関係があり、燃焼ガスの完全燃焼を継続して達成することによりダイオキシン類の発生を抑制できる。
       燃焼温度が高いほどダイオキシン類及び前駆体の熱分解には有利であることから、燃焼温度は850℃以上を維持することが望ましい。
       燃焼状態を示す重要な指標は一酸化炭素(CO)濃度であり、CO濃度が低いほど完全燃焼に近い


     略