法令・告示・通達

国土利用計画

公布日:平成8年02月23日
環境庁・国土庁)

   国土利用計画(全国計画)

平成8.2.23
閣議決定

目次
 前文
  1.  1 国土の利用に関する基本構想
  2.  2 国土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標及びその地域別の概要
  3.  3 2に掲げる事項を達成するために必要な措置の概要

前文

 この計画は、国土利用計画法第5条の規定に基づき、全国の区域について定める国土の利用に関する基本的事項についての計画(以下「全国計画」という。)であり、都道府県の区域について定める国土の利用に関する計画(以下「都道府県計画」という。)及び市町村の区域について定める国土の利用に関する計画(以下「市町村計画」という。)とともに同法第4条の国土利用計画を構成し、国土の利用に関しては国の計画の基本となるとともに、都道府県計画及び土地利用基本計画の基本となるものである。
 この全国計画は、都道府県計画を集成し、また、今後の国土の利用をめぐる経済社会の大きな変化を踏まえ、必要に応じ、見直しを行うものとする。

1 国土の利用に関する基本構想

 (1) 国土利用の基本方針

  1.   ア 国土の利用は、国土が現在及び将来における国民のための限られた資源であるとともに、生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤であることにかんがみ、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件に配意して、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることを基本理念として、総合的かつ計画的に行われなければならない。
  2.   イ 今後の国土の利用を計画するに当たっては、国土利用をめぐる次のような基本的条件の変化を考慮する必要がある。
    1.    (ア) 高齢化が進行し、少子化が定着する中で、人口は、その増勢を大幅に鈍化させるものと見通される。都市化は、地方中枢・中核都市が拠点性を高めるなど、その態様を変化させながら、全体としては進展の速度を緩めるものと見通される。経済社会諸活動は、ボーダレス化、情報化及び技術革新が進展する中で、交流の活発化、ソフト化・サービス化の傾向をより一層強め、産業の高付加価値化や構造変化等を伴いながら、成熟化に向かっていくものと見通される。
           このような事情から、全体としては地目間の土地利用転換の圧力は弱まるものの、なお、都市化の進展、経済社会諸活動の安定的拡大等が進むと考えられ、土地需要の調整、効率的利用の観点から引き続き国土の有効利用を図る必要がある。
    2.    (イ) 他方、自然災害のおそれのある地域への居住地の拡大が進むとともに、都市において諸機能の集中やライフラインへの依存度が高まり、農山漁村において国土資源の管理水準の低下等が懸念される中で、国土の安全性に対する要請が高まっている。また、地球環境問題の顕在化により、我が国の国土が地球的規模の環境と密接に関係し、現在の影響が将来世代に及ぶ可能性が認識されるようになり、国土の利用に当たっては、長期的な視点に立って自然のシステムにかなった持続可能な利用を基本とすることが求められている。さらに、生活水準の向上、余暇時間の増大等に伴い、国民の価値観の高度化・多様化が進み、心の豊かさや自然とのふれあいに対する志向が高まっている。
           このような国民的要請にこたえるためには、国土利用の質的向上を図ることが特に重要となっている。
  3.   ウ このため、今回の計画期間における課題は、限られた国土資源を前提として、その有効利用を図りつつ、国土の利用目的に応じた区分(以下「利用区分」という。)ごとの個々の土地需要の量的な調整を行うこと、また、全体としては土地利用転換の圧力が低下するという状況を国土利用の質的向上をより一層積極的に推進するための機会としてとらえ、国土利用の質的向上を図ることである。
        これらの課題への対応に際しては、長期にわたる内外の潮流変化をも展望しつつ、豊かな生活や活力ある生産が展開される場として、国土の魅力を総合的に向上させるよう努めることが重要である。
    1.    (ア) 土地需要の量的調整に関しては、まず、増勢は鈍化するもののなお増加する都市的土地利用について、土地の高度利用及び低未利用地の有効利用を促進することによりその合理化及び効率化を図るとともに、計画的に良好な新市街地の形成を図る。他方、農林業的土地利用を含む自然的土地利用については、自然循環システムの維持に配慮しつつ、農林業の生産活動とゆとりある人間環境の場としての役割に配意して、適正な保全と耕作放棄地等の適切な利用を図る。また、森林、原野、農用地、宅地等の相互の土地利用の転換については、土地利用の可逆性が容易に得られないこと、生態系をはじめとする自然の様々な循環系に影響を与えること等にかんがみ、慎重な配慮の下で計画的に行うことが重要である。
    2.    (イ) 国土利用の質的向上に関しては、国土利用の質的側面をめぐる状況の変化を踏まえ、①安全で安心できる国土利用、②自然と共生する持続可能な国土利用、③美しくゆとりある国土利用といった観点を基本とすることが重要である。
           安全で安心できる国土利用の観点からは、災害に対する地域ごとの特性を踏まえた適正な国土の利用を基本として、諸機能の一層の分散やバックアップシステムの整備、防災拠点の整備、オープンスペースの確保、電気、ガス、上下水道、通信、交通等のライフラインの多重化・多元化等を進めるとともに、水系の総合的管理、国土面積の7割を占め国土の骨格を形成している森林のもつ国土保全機能の向上等を図ることにより、地域レベルから国土構造レベルまでのそれぞれの段階で国土の安全性を総合的に高めていく必要がある。
           自然と共生する持続可能な国土利用の観点からは、自然の健全な物質循環の維持、都市的土地利用に当たっての自然環境への配慮、生物の多様性が確保された自然の保全・創出とそのネットワーク化等を図ることにより、自然のシステムにかなった国土利用を進めていく必要がある。
           美しくゆとりある国土利用の観点からは、土地利用の高度化等によるゆとりある都市環境の形成、農山漁村における緑資源の確保、歴史的風土の保存、地域の自然的・社会的条件等を踏まえた個性ある景観の形成などを進めるとともに、国民の余暇志向や自然とのふれあい志向へ適切に対応していく必要がある。
    3.    (ウ) これらの課題の実現に当たっては、都市における土地利用の高度化、農山漁村における農用地及び森林の有効利用、両地域を通じた低未利用地の利用促進を図るとともに、都市的土地利用と自然的土地利用の適切な配置と組合せにより調和ある土地利用を進めるなど、地域の自然的・社会的特性を踏まえた上で、国土の有効かつ適切な利用に配慮する必要がある。
  4.   エ 首都機能の移転及び地方分権の推進は、21世紀に向けて新しい社会を築く上での重要な課題であり、その実現は、国土の利用に様々な影響を及ぼすことが考えられることから、今後の国土の利用に当たっては、首都機能移転及び地方分権の進捗状況を十分に踏まえる必要がある。

 (2) 地域類型別の国土利用の基本方向

  1.   ア 都市
        市街地(人口集中地区)については、都市人口が速度を緩めつつもなお増加すること等により、市街地面積の拡大が見込まれるとともに、都市における環境を安全でゆとりあるものとし、あわせて経済社会諸活動を取り巻く状況の変化に適切に対応できるようにすることが重要となっている。
        このため、都市施設の整備を推進しつつ、既成市街地においては、再開発、地下空間の活用等により土地利用の高度化を図るとともに、低未利用地の有効利用を促進する。市街化を図るべき区域においては、地域の実情に応じ、計画的に良好な市街地等の整備を図る。また、自然条件や防災施設の整備状況を考慮した土地利用への誘導、諸機能の分散配置、地域防災拠点の整備、オープンスペースの確保、ライフラインの多重化・多元化等により、災害に対する安全性を高め、災害に強い都市構造の形成を図る。あわせて、住居系、商業系、業務系等の多様な機能をバランスよく配置すること、水循環や資源・エネルギー利用の効率化等に配慮した整備を行うことなどにより、都市活動による環境への負荷が少ない都市の形成を図るとともに、美しく良好な街並み景観を形成することや緑地及び水辺空間をそれらのネットワーク化に配慮しつつ確保することにより、美しくゆとりある環境の形成を図る。
        特に、引き続き人口の高い伸びが見込まれる地方中枢・中核都市等については、将来の人口、産業等の動向や、当該都市の拠点性の高まり、周辺地域をはじめとする各地域との交流・連携の進展の状況等を見通し、自然条件に配慮しつつ、計画的かつ適切な土地利用を推進する。
  2.   イ 農山漁村
        農山漁村については、地域特性を踏まえた良好な生活環境を整備するとともに、多様な国民のニーズに対応した農林漁業の展開、地域産業の振興や地域に適合した諸産業の導入、余暇需要への対応等により総合的に就業機会を確保し、健全な地域社会を築く。このような対応の中で、優良農用地及び森林を確保するとともに、その整備と利用の高度化を図る。また、あわせて二次的自然としての農山漁村景観の維持・形成を図るとともに、都市との交流を促進する。
        特に、農業の規模拡大が比較的容易な地域にあっては、生産性の向上に重点を置いて、農業生産基盤の整備と効率的かつ安定的な農業経営を営む者への農用地の集積を図り、農業等の生産条件や交通等の生活条件が不利な地域にあっては、地域資源の総合的な活用等による地域の活性化のほか、新たな管理主体の形成、都市住民の参加・協力等複合的な手段を通じて国土資源の適切な管理を図る。
        また、農地と宅地が混在する地域においては、地域住民の意向に配慮しつつ、農村地域の特性に応じた良好な生産及び生活環境の一体的な形成を進め、農業生産活動と地域住民の生活環境が調和するよう、地域の実情に応じた計画的かつ適切な土地利用を図る。
  3.   ウ 自然維持地域
        高い価値を有する原生的な自然の地域や野生生物の重要な生息・生育地、すぐれた自然の風景地など、自然環境の保全を旨として維持すべき地域については、適正に保全する。あわせて、適正な管理の下で、自然の特性を踏まえつつ自然体験・学習等の自然とのふれあいの場としての利用を図る。

 (3) 利用区分別の国土利用の基本方向

  1.   ア 農用地については、効率的な利用と生産性の向上に努めるとともに、国の内外における食料の長期的な需給動向を考慮し、国内の農業生産力の維持強化に向け、必要な農用地の確保と整備を図る。また、不断の良好な管理を通じて国土保全等農用地の多面的機能が高度に発揮されるよう配慮するとともに、環境への負荷の低減に配慮した農業生産の推進を図る。
  2.   イ 森林については、地球環境問題の高まりや木材輸出国における資源的制約も考慮し、木材生産等の経済的機能及び国土保全、水資源かん養、保健休養、自然環境の保全等の公益的機能を総合的に発揮しうる持続可能な森林経営の確立に向け、必要な森林の確保と整備を図る。また、都市及びその周辺の森林については、良好な生活環境を確保するため、積極的に緑地としての保全及び整備を図るとともに、農山漁村集落周辺の森林については、地域社会の活性化に加え多様な国民的要請に配慮しつつ、適正な利用を図る。さらに、原生的な森林や貴重な動植物が生息・生育する森林等自然環境の保全を図るべき森林については、その適正な維持・管理を図る。
  3.   ウ 原野のうち、湿原、水辺植生、野生生物の生息・生育地等貴重な自然環境を形成しているものについては、生態系及び景観の維持等の観点から保全を図る。
        その他の原野については、地域の自然環境を形成する機能に十分配慮しつつ、適正な利用を図る。
  4.   エ 水面・河川・水路については、河川氾濫地域における安全性の確保、より安定した水供給のための水資源開発、水力電源開発、農業用用排水路の整備等に要する用地の確保を図る。また、水面、河川及び水路の整備に当たっては、自然環境の保全に配慮するとともに、自然の水質浄化作用、生物の多様な生息・生育環境、うるおいのある水辺環境、都市における貴重なオープンスペース等多様な機能の維持・向上を図る。
  5.   オ 道路のうち、一般道路については、地域間の交流・連携を促進し、国土の有効利用及び良好な生活・生産基盤の整備を進めるため、必要な用地の確保を図る。一般道路の整備に当たっては、道路の安全性、快適性等の向上並びに防災機能の向上及び公共・公益施設の収容機能等の発揮に配意するとともに、環境の保全に十分配慮する。特に市街地においては、環境施設帯の設置、道路緑化の推進等により、良好な沿道環境の保全・創造に努める。また、農道及び林道については、農林業の生産性向上並びに農用地及び森林の適正な管理を図るため、必要な用地の確保を図る。農道及び林道の整備に当たっては、自然環境の保全に十分配慮する。
  6.   カ 住宅地については、人口及び世帯数の増加や高齢化の進行、都市化の進展の動向等に対応しつつ、地域特性に配慮した望ましい居住水準と良好な居住環境を目標として、生活関連施設の整備を計画的に進めながら、必要な用地の確保を図る。また、災害に関する地域の自然的・社会的特性を踏まえた適切な土地利用を図る。特に大都市地域においては、土地利用の高度化や低未利用地の有効利用によるオープンスペースの確保、道路の整備など、安全性の向上とゆとりある快適な環境の確保を図る。
  7.   キ 工業用地については、環境の保全等に配慮し、工業の再配置を進めるとともに、ボーダレス化、情報化の進展等に伴う産業の高付加価値化や構造変化、工場の立地動向に対応しつつ、工業生産に必要な用地の確保を図る。また、工場移転、業種転換等に伴って生ずる工場跡地については、良好な都市環境の整備等のため、有効利用を図る。
  8.   ク その他の宅地については、市街地の再開発等による土地利用の高度化、中心市街地における商業の活性化及び良好な環境の形成に配慮しつつ、事務所・店舗用地について、経済のソフト化・サービス化の進展等に対応して、必要な用地の確保を図る。また、郊外の大型商業施設や大型リゾート施設については、周辺の土地利用との調整を図るとともに、地域の景観との調和に配慮する。
  9.   ケ 以上のほか、文教施設、公園緑地、交通施設、環境衛生施設、厚生福祉施設等の公用・公共用施設の用地については、国民生活上の重要性とニーズの多様化を踏まえ、環境の保全に配慮して、必要な用地の確保を図る。また、施設の整備に当たっては、耐災性の確保と災害時における施設の活用に配慮する。
  10.   コ レクリエーション用地については、余暇需要の増大や自然とのふれあい志向の高まりを踏まえ、自然環境の保全を図りつつ、地域の振興等を総合的に勘案して、計画的な整備を進める。その際、森林、河川、沿岸域等の余暇空間としての利用や施設の適切な配置とその広域的な利用に配慮する。
  11.   サ 低未利用地のうち、工場跡地等都市の低未利用地は、再開発用地やオープンスペース、公共用施設用地、居住用地、事業用地等としての活用を図り、農山漁村の耕作放棄地は、森林、農用地等としての活用を図るなど、それぞれの立地条件に応じて積極的に有効利用の促進を図る。
  12.   シ 沿岸域については、漁業、海上交通、レクリエーション等各種利用への多様な期待があることから、自然的・地域的特性及び経済的・社会的動向を踏まえ、海域と陸域との一体性に配慮しつつ、長期的視点に立った総合的利用を図る。この場合、環境の保全と国民に開放された親水空間としての利用に配慮する。
        また、沿岸域の多様な生態系の保全を図るとともに、国土の保全と安全性の向上に資するため、海岸の保全を図る。

2 国土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標及びその地域別の概要

 (1) 国土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標

  1.   ア 計画の目標年次は、平成17年とし、基準年次は平成4年とする。
  2.   イ 国土の利用に関して基礎的な前提となる人口と一般世帯数については、平成17年において、それぞれおよそ1億2,800万人、およそ4,800万世帯に達するものと想定する。
  3.   ウ 国土の利用区分は、農用地、森林、宅地等の地目別区分及び市街地とする。
  4.   エ 国土の利用区分ごとの規模の目標については、利用区分別の国土の利用の現況と変化についての調査に基づき、将来人口等を前提とし、用地原単位等をしんしゃくして、利用区分別に必要な土地面積を予測し、土地利用の実態との調整を行い、定めるものとする。
  5.   オ 国土の利用の基本構想に基づく平成17年の利用区分ごとの規模の目標は、次表のとおりである。
  6.   カ なお、以下の数値については、今後の経済社会の不確定さなどにかんがみ、弾力的に理解されるべき性格のものである。

  表 国土の利用目的に応じた区分ごとの規模の目標
(単位:万ha、%)

 
平成4年
平成17年
構成比
4年
17年
農用地
525
499
13.9
13.2
 農地
516
490
13.7
13.0
 採草放牧地
9
9
0.2
0.2
森林
2,520
2,522
66.7
66.7
原野
27
23
0.7
0.6
水面・河川・水路
132
135
3.5
3.6
道路
117
137
3.1
3.6
宅地
165
185
4.4
4.9
 住宅地
99
110
2.6
2.9
 工業用地
17
18
0.5
0.5
 その他の宅地
49
57
1.3
1.5
その他
292
278
7.7
7.4
合計
3,778
3,779
100.0
100.0
市街地
117
140
  •  注
    1.   (1) 平成4年の地目別区分は、国土庁調べによる。
    2.   (2) 道路は、一般道路並びに農道及び林道である。
    3.   (3) 市街地は、「国勢調査」の定義による人口集中地区である。平成4年欄の市街地面積は、平成2年の国勢調査による人口集中地区の面積である。

 (2) 地域別の概要

  1.   ア 地域別の利用区分ごとの規模の目標を定めるに当たっては、土地、水、自然などの国土資源の有限性を踏まえ、地域の個性や多様性をいかしつつ地域間の均衡ある発展を図る見地から、必要な基礎条件を整備し、国土全体の調和ある有効利用とともに環境の保全が図られるよう、適切に対処しなければならない。
  2.   イ 地域の区分は、三大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、岐阜、愛知、三重、京都、大阪、兵庫及び奈良の11都府県をいう。)及び地方圏(三大都市圏以外の36道県をいう。)とする。
    •    (注) 地域の区分については、三大都市圏は、東京都区部、名古屋市及び大阪市・京都市・神戸市を中心とする圏域の広がりとの関連でとらえることのできる土地利用の動向等を考慮して、都道府県を単位として区分した。地方圏は、それ以外の道県とした。
  3.   ウ 計画の目標年次、基準年次、国土の利用区分及び利用区分ごとの規模の目標を定める方法は、(1)に準ずるものとする。平成17年における三大都市圏の人口はおよそ6,300万人程度、地方圏の人口はおよそ6,500万人程度を前提とする。
  4.   エ 平成17年における国土の利用区分ごとの規模の目標の地域別の概要は、次のとおりである。
    1.    (ア) 農用地については、三大都市圏、地方圏とも、地域の特性に即した農用地の造成を図るものの、宅地等への転換により減少し、それぞれ59万ha、440万ha程度となる。
    2.    (イ) 森林については、三大都市圏では宅地等への転換はあるものの、緑の保全を図るという見地から現状並みの320万ha程度となるが、地方圏では農用地、宅地等への転換はあるものの、国土の有効利用並びに国土及び環境の保全を図るという見地から低未利用地の積極的な転換を図ることにより増加し、2,202万ha程度となる。
    3.    (ウ) 原野については、地方圏で森林等への転換により減少し、23万ha程度となる。
    4.    (エ) 水面・河川・水路については、両圏とも増加し、それぞれ19万ha程度、116万ha程度となる。
    5.    (オ) 道路については、三大都市圏では約1割増の28万ha程度、地方圏では約2割増の109万ha程度となる。
    6.    (カ) 宅地のうち、住宅地については、両圏とも1割以上増加し、三大都市圏では37万ha程度、地方圏では73万ha程度となる。
           工業用地については、産業構造の変化等により、三大都市圏ではほぼ横這いの6万ha程度にとどまるが、地方圏ではやや増加して12万ha程度となる。
           その他の宅地については、両圏とも増加し、三大都市圏では18万ha程度、地方圏では39万ha程度となる。
    7.    (キ) その他については、公用・公共用施設の整備を図ること等による増加はあるものの、低未利用地の有効利用の促進等により減少し、三大都市圏では50万ha程度、地方圏では228万ha程度となる。
    8.    (ク) 市街地の面積については、都市化の進展により両圏とも増加し、三大都市圏、地方圏とも70万ha程度となる。
    9.    (ケ) 上記利用区分別の規模の目標については、ウで前提とした両圏別の人口に関して、なお変動があることも予想されるので、流動的な要素があることを留意しておく必要がある。

3 2に掲げる事項を達成するために必要な措置の概要

  2に掲げる事項を達成するために必要な措置の概要は、次のとおりである。
  これらの措置については、「安全で安心できる国土利用」、「自然と共生する持続可能な国土利用」、「美しくゆとりある国土利用」等の視点を総合的に勘案した上で実施を図る必要がある。

 (1) 公共の福祉の優先

   土地については、公共の福祉を優先させるとともに、その所在する地域の自然的、社会的、経済的及び文化的諸条件に応じて適正な利用が図られるよう努める。このため、各種の規制措置、誘導措置等を通じた総合的な対策の実施を図る。

 (2) 国土利用計画法等の適切な運用

   国土利用計画法及びこれに関連する土地利用関係法の適切な運用により、また、本計画及び都道府県計画、市町村計画等の地域の土地利用に関する計画を基本として、土地利用の計画的な調整を推進し、適正な土地利用の確保と地価の安定を図る。その際、土地利用の影響の広域性を踏まえ、地方公共団体等関係行政機関相互間の適切な調整を図る。

 (3) 地域整備施策の推進

   地域の個性や多様性をいかしつつ、国土の均衡ある発展を図るため、地域の特性に応じた地域整備施策を推進し、大都市、地方都市及び農山漁村における総合的環境の整備を図る。

 (4) 国土の保全と安全性の確保

  1.   ア 国土の保全と安全性の確保のため、水系ごとの治水施設等の整備と流域内の土地利用との調和、地形等自然条件と土地利用配置との適合性及び超過洪水等への対応に配慮しつつ、適正な土地利用への誘導を図るとともに、国土保全施設の整備を推進する。また、渇水に備えるため、水利用の合理化、水意識の高揚、安定した水資源の確保等の総合的な対策を推進する。
  2.   イ 森林のもつ国土の保全と安全性の確保に果たす機能の向上を図るため、保安林及び治山施設の整備を進めるとともに、流域を基本的な単位として、地域特性に応じた管理を推進しつつ、森林の管理水準の向上を図る。その際、林道の整備等地域材の生産、流通及び加工段階における条件整備や林業の担い手の育成等を進めるとともに、森林管理への国民の理解と参加、山村における生活環境の向上を図るなど、森林管理のための基礎条件を整備する。
  3.   ウ 国土レベルでの安全性を高めるため、基幹的交通、通信ネットワークの代替性の確保、諸機能の分散等を図る。また、地域レベルにおける安全性を高めるため、市街地等において、災害に配慮した土地利用への誘導、国土保全施設や地域防災拠点の整備、諸機能の分散配置、オープンスペースの確保、ライフラインの多重化・多元化、危険地域についての情報の周知等を図る。

 (5) 環境の保全と美しい国土の形成

  1.   ア 生活環境の保全を図るため、騒音等の著しい交通施設等の周辺において、緑地帯の設置、倉庫、事業所等の適切な施設の誘導等により土地利用の適正化を図る。また、緩衝緑地の設置や住居系、商業系、工業系等の用途区分に応じた適正な土地利用への誘導を進める。
        二酸化炭素や窒素酸化物等の環境への負荷の低減に資する交通システムや都市等の形成に配慮した土地利用を図る。また、二酸化炭素の吸収源となる森林や都市等の緑の適切な保全・整備を図る。
  2.   イ 農用地や森林の適切な維持管理、雨水の地下浸透の促進、都市における下水処理水の効果的利用、水辺地等の保全による河川、湖沼及び沿岸域の自然浄化能力の維持・回復、地下水の適正な利用等を通じ、水環境への負荷を低減し、健全な水循環の確保を図る。特に、湖沼等の流域において、水質保全に資するよう、緑地の保全その他自然環境の保全のための土地利用制度の適切な運用に努める。また、土壌汚染の防止と汚染土壌の回復に努める。
  3.   ウ 廃棄物の発生抑制とリサイクルを一層進めるとともに、発生した廃棄物の適正な処理のため、環境の保全に十分配慮しつつ、必要な用地の確保を図る。また、廃棄物の不法投棄等の不適正処理の防止と適切かつ迅速な原状回復に努める。
  4.   エ 高い価値を有する原生的な自然については、公有地化や厳格な行為規制等により厳正な保全を図る。野生生物の生息・生育、自然風景、稀少性等の観点からみてすぐれている自然については、行為規制等により適正な保全を図る。二次的な自然については、適切な農林漁業活動や民間等による保全活動の促進、必要な施設の整備等を通じて自然環境の維持・形成を図る。自然が減少した地域については、自然の創出と量的確保を図る。この場合、生物の多様性を確保する観点から、生態系のネットワーク化に配慮する。また、それぞれの自然の特性に応じて自然とのふれあいの場を確保する。
  5.   オ 歴史的風土の保存、文化財の保護等を図るため、開発行為等の規制を行う。また、都市においては、美しく良好な街並み景観や緑地・水辺景観の形成、農山漁村においては、二次的自然としての景観の維持・形成を図る。
  6.   カ 良好な環境を確保するため、公共事業の計画段階等において環境保全上の配慮を行うこと、開発行為等について環境影響評価を実施すること、などにより土地利用の適正化を図る。

 (6) 土地利用の転換の適正化

  1.   ア 土地利用の転換を図る場合には、その転換の不可逆性及び影響の大きさに十分留意した上で、人口及び産業の動向、周辺の土地利用の状況、社会資本の整備状況その他の自然的・社会的条件を勘案して適正に行うこととする。また、転換途上であっても、これらの条件の変化を勘案して必要があるときは、速やかに計画の見直し等の適切な措置を講ずる。
  2.   イ 森林の利用転換を行う場合には、森林の保続培養と林業経営の安定に留意しつつ、災害の発生、環境の悪化等公益的機能の低下を防止することを十分考慮して、周辺の土地利用との調整を図る。また、原野の利用転換を行う場合には、環境の保全に配慮しつつ、周辺の土地利用との調整を図る。
  3.   ウ 農用地の利用転換を行う場合には、食料生産の確保、農業経営の安定及び地域農業や地域景観等に及ぼす影響に留意し、非農業的土地利用との計画的な調整を図りつつ、無秩序な転用を抑制し、優良農用地が確保されるよう十分考慮する。
  4.   エ 大規模な土地利用の転換については、その影響が広範であるため、周辺地域をも含めて事前に十分な調査を行い、国土の保全と安全性の確保、環境の保全等に配慮しつつ、適正な土地利用の確保を図る。また、地域住民の意向等地域の実情を踏まえた適切な対応を図るとともに、市町村の基本構想などの地域づくりの総合的な計画、公共用施設の整備や公共サービスの供給計画等との整合を図る。
  5.   オ 農山漁村における混住化の進行する地域等において土地利用の転換を行う場合には、土地利用の混在による弊害を防止するため、必要な土地利用のまとまりを確保すること等により、農用地、宅地等相互の土地利用の調和を図る。また、土地利用規制の観点からみて無秩序な施設立地等の問題が生じている地域において、制度の的確な運用等の検討を通じ、地域の環境を保全しつつ地域の実情に応じた総合的かつ計画的な土地利用の実現を図る。

 (7) 土地の有効利用の促進

  1.   ア 農用地については、土地改良等の農業基盤の整備を計画的に推進するとともに、効率的かつ安定的な農業経営を営む者への農用地の集積を図る。また、利用度の低い農用地について、不作付地の解消、裏作作付の積極的拡大等、有効利用を図るために必要な措置を講ずる。
  2.   イ 森林については、木材生産等の経済的機能及び公益的機能を増進するため、森林資源の整備を計画的に推進する。その際、森林の自然とのふれあいの場、青少年の教育の場等としての総合的な利用を促進するため、多様な森林の造成・管理と利用施設等の整備を図る。
  3.   ウ 水面・河川・水路については、治水及び利水の機能発揮に留意しつつ、生物の多様な生息・生育環境としての機能の発揮のために必要な水量・水質の確保や整備を図るとともに、地域の景観と一体となった水辺空間や水と人とのふれあいの場の形成を図る。
  4.   エ 道路については、公共・公益施設の共同溝への収容、電線類の地中化、道路緑化等を推進して、良好な街並み景観の形成を図るとともに、道路空間の有効利用に資する。
  5.   オ 住宅地については、居住環境の整備を推進するとともに、長期的な需給見通しに基づく計画的な宅地の供給を促進する。また、主として大都市地域においては、低未利用地の活用等による市街地の再開発等を促進するとともに、安全性の向上とゆとりある快適な環境の確保に配慮しつつ、住宅地の高度利用に努める。
  6.   カ 工業用地については、工業の再配置を進めつつ、ボーダレス化の進展等に伴う産業の高付加価値化や構造変化、工場の立地動向を踏まえ、高度情報通信インフラ、研究開発インフラ等の総合的な整備を促進するとともに、質の高い低コストの工業用地の整備を計画的に進める。その際、地域社会との調和及び公害防止の充実を図る。また、既存の工業団地のうち未分譲のもの等の有効利用の促進を図る。
  7.   キ 低未利用地のうち、耕作放棄地については、国土の有効利用並びに国土及び環境の保全の観点から、周辺土地利用との調整を図りつつ、森林、農用地等としての活用を積極的に促進するとともに、地域の実情に応じ、地域の活性化のための施設用地等への転換を図る。
        また、大都市地域における低未利用地については、国土の有効利用及び良好な都市環境の形成の観点から、計画的かつ適正な活用を促進する。
  8.   ク 都市環境、防災面等に配慮しつつ、河川、道路等と建物等との一体的・立体的整備、市街地における地下空間の活用など複合的な土地利用を図る。
  9.   ケ 土地の所有者が良好な土地管理と有効な土地利用を図るよう、誘導する。あわせて、定期借地権制度の活用等による有効な土地利用を図る。特に大都市地域等の市街化区域内農地について、宅地化するものと保全するものの区分を踏まえ、これらを活用した計画的なまちづくりを推進する。

 (8) 国土に関する調査の推進及び成果の普及啓発

   国土の科学的かつ総合的な把握を一層充実するため、国土情報整備調査、国土調査、土地基本調査、自然環境保全基礎調査等国土に関する基礎的な調査を推進するとともに、その総合的な利用を図る。また、国民による国土への理解を促し、計画の総合性及び実効性を高めるため、調査結果の普及及び啓発を図る。

 (9) 指標の活用

   適切な国土の利用に資するため、計画の推進等に当たって各種指標の活用を図る。


別表
  三大都市圏、地方圏別の利用区分ごとの規模の目標

(単位:万ha、%)

 
三大都市圏
地方圏
平成4年
平成17年
構成比
平成4年
平成17年
構成比
4年
17年
4年
17年
農用地
67
59
12.5
11.0
458
440
14.1
13.6
 農地
67
59
12.5
11.0
449
431
13.8
13.3
 採草放牧地
0
0
0.0
0.0
9
9
0.3
0.3
森林
320
320
59.6
59.6
2,200
2,202
67.9
67.9
原野
0
0
0.0
0.0
27
23
0.8
0.7
水面・河川・水路
18
19
3.3
3.5
114
116
3.5
3.6
道路
25
28
4.7
5.2
92
109
2.9
3.4
宅地
55
61
10.2
11.4
110
124
3.4
3.8
 住宅地
33
37
6.1
6.9
66
73
2.0
2.2
 工業用地
6
6
1.1
1.1
11
12
0.4
0.4
 その他の宅地
16
18
3.0
3.4
33
39
1.0
1.2
その他
52
50
9.7
9.3
240
228
7.4
7.0
合計
537
537
100.
100.
3,241
3,242
100.
100.
市街地
60
70
57
70
  •  注
    1.   (1) 平成4年の地目別区分は、国土庁調べによる。
    2.   (2) 道路は、一般道路並びに農道及び林道である。
    3.   (3) 市街地は、「国勢調査」の定義による人口集中地区である。平成4年欄の市街地面積は平成2年の国勢調査による人口集中地区の面積である。