法令・告示・通達

建設汚泥処理物の廃棄物該当性の判断指針について

公布日:平成17年07月25日
環廃産発050725002号

(環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長から各都道府県・各政令市廃棄物行政主管部(局)長あて)

 工作物の建設工事に伴って大量に排出される産業廃棄物たる建設汚泥(「建設工事等から生ずる廃棄物の適正処理について」(平成13年6月1日付け環廃産発第276号環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知)で規定する建設汚泥をいう。以下同じ。)に中間処理を加えた後の物(ばいじん等他の廃棄物を混入している物は含まない。以下「建設汚泥処理物」という。)については、土地造成や土壌改良に用いる建設資材と称して不法投棄されたり、「土砂」と偽装されて残土処分場等に持ち込まれる事例が多発している。
 建設汚泥処理物(※1)については、建設汚泥に人為的に脱水・凝集固化等の中間処理を加えたものであることから、中間処理の内容によっては性状等が必ずしも一定でなく、飛散・流出又は崩落の恐れがあることに加え、有害物質を含有する場合や、高いアルカリ性を有し周辺水域へ影響を与える場合もある等、不要となった際に占有者の自由な処分に任せると不適正に放置等され、生活環境の保全上支障が生ずるおそれがある。そのため、建設汚泥処理物であって不要物に該当するものは廃棄物として適切な管理の下におくことが必要である。その一方で、生活環境の保全上支障が生ずるおそれのない適正な再生利用については、積極的に推進される必要がある。
 そこで、循環型社会形成推進のため、また、「規制改革・民間開放推進3か年計画(改訂)」(平成17年3月25日閣議決定)を受け、建設汚泥処理物について廃棄物に該当するかどうかを判断する際の基礎となる指針を以下のとおり示す。

 ※1 建設汚泥処理物の例

  •  ・建設汚泥にセメント等の固化剤を混練し、流動性を有する状態で安定化させたもの
  •  ・建設汚泥に石灰等の固化剤や添加剤を加え脱水させたもの
  •  ・建設汚泥を脱水・乾燥させたもの

第一 建設汚泥処理物の廃棄物該当性判断に係る基本的考え方

 廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡できないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものである。
 特に建設汚泥処理物については、建設資材として用いられる場合であっても、用途(盛土、裏込め、堤防等)ごとに当該用途に適した性状は異なること、競合する材料である土砂に対して現状では市場における競争力がないこと等から、あらかじめその具体的な用途が定まっており再生利用先が確保されていなければ、結局は不要物として処分される可能性が極めて高いため、その客観的な性状だけからただちに有価物(廃棄物に該当しないものをいう。以下同じ。)と判断することはできない。また、現状において建設汚泥処理物の市場が非常に狭いものであるから、建設汚泥処理物が有償譲渡される場合であってもそれが経済合理性に基づいた適正な対価による有償譲渡であるか否かについて慎重な判断が必要であり、当事者間の有償譲渡契約等の存在をもってただちに有価物と判断することも妥当とは言えない。これらのことから、各種判断要素を総合的に勘案して廃棄物であるか否かを判断することが必要である。
 なお、建設汚泥又は建設汚泥処理物に土砂を混入し、土砂と称して埋立処分する事例が見受けられるところであるが、当該物は自然物たる土砂とは異なるものであり、廃棄物と土砂の混合物として取り扱われたい。

第二 総合判断に当たっての各種判断要素の基準

 具体の事例においては、以下の一から五までの判断要素(以下「有価物判断要素」という。)を検討し、それらを総合的に勘案して判断することによって、当該建設汚泥処理物が廃棄物に該当するか、あるいは有価物かを判断されたい。
 また、建設汚泥処理物の廃棄物該当性(又は有価物該当性)については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という。)の規制の対象となる行為ごとにその着手時点において判断することとなる。例えば、無許可処理業に該当するか否かを判断する際には、その業者が当該処理(収集運搬、中間処理、最終処分ごと)に係る行為に着手した時点であり、不法投棄に該当するか否かを判断する際には、投棄行為に着手した時点となる。したがって、例えば不法投棄が疑われる埋立処分行為がなされた後に、当該建設汚泥処理物の性状等が変化した場合であっても、当該埋立処分行為がなされた時点での状況から廃棄物該当性を判断することが必要である。

 一 物の性状について

  当該建設汚泥処理物が再生利用の用途に要求される品質を満たし、かつ飛散・流出、悪臭の発生などの生活環境の保全上の支障が生ずるおそれのないものであること。当該建設汚泥処理物がこの基準を満たさない場合には、通常このことのみをもって廃棄物に該当するものと解して差し支えない。
  実際の判断に当たっては、当該建設汚泥処理物の品質及び再生利用の実績に基づき、当該建設汚泥処理物が土壌の汚染に係る環境基準、「建設汚泥再生利用技術基準(案)」(平成11年3月29日付け建設省技調発第71号建設大臣官房技術調査室長通達)に示される用途別の品質及び仕様書等で規定された要求品質に適合していること、このような品質を安定的かつ継続的に満足するために必要な処理技術が採用され、かつ処理工程の管理がなされていること等を確認する必要がある。

 二 排出の状況

  当該建設汚泥処理物の搬出が、適正な再生利用のための需要に沿った計画的なものであること。
  実際の判断に当たっては、搬出記録と設計図書の記載が整合していること、搬出前の保管が適正に行われていること、搬出に際し品質検査が定期的に行われ、かつその検査結果が上記一の「物の性状」において要求される品質に適合していること、又は搬出の際の品質管理体制が確保されていること等を確認する必要がある。

 三 通常の取扱い形態

  当該建設汚泥処理物について建設資材としての市場が形成されていること。なお、現状において、建設汚泥処理物は、特別な処理や加工を行った場合を除き、通常の脱水、乾燥、固化等の処理を行っただけでは、一般的に競合材料である土砂に対して市場における競争力がないこと等から、建設資材としての広範な需要が認められる状況にはない。
 実際の判断に当たっては、建設資材としての市場が一般に認められる利用方法(※2)以外の場合にあっては、下記四の「取引価値の有無」の観点から当該利用方法に特段の合理性があることを確認する必要がある。

 ※2 建設資材としての市場が一般に認められる建設汚泥処理物の利用方法の例

  •  ・焼成処理や高度安定処理した上で、強度の高い礫状・粒状の固形物を粒径調整しドレーン材として用いる場合
  •  ・焼成処理や高度安定処理した上で、強度の高い礫状・粒状の固形物を粒径調整し路盤材として利用する場合
  •  ・スラリー化安定処理した上で、流動化処理工法等に用いる場合
  •  ・焼成処理した上で、レンガやブロック等に加工し造園等に用いる場合

 四 取引価値の有無

  当該建設汚泥処理物が当事者間で有償譲渡されており、当該取引に客観的合理性があること。
  実際の判断に当たっては、有償譲渡契約や特定の有償譲渡の事実をもってただちに有価物であると判断するのではなく、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する資材の価格や運送費等の諸経費を勘案しても営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要である。
  また、建設資材として利用する工事に係る計画について、工事の発注者又は施工者から示される設計図書、確認書等により確認するとともに、当該工事が遵守あるいは準拠しようとする、又は遵守あるいは準拠したとされる施工指針や共通仕様書等から、当該建設汚泥処理物の品質、数量等が当該工事の仕様に適合したものであり、かつ構造的に安定した工事が実施される、又は実施されたことを確認することも必要である。

 五 占有者の意思

  占有者において自ら利用し、又は他人に有償で譲渡しようとする、客観的要素からみて社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思があること。したがって、占有者において自ら利用し、又は他人に有償で譲渡できるものであると認識しているか否かは、廃棄物に該当するか否かを判断する際の決定的な要素になるものではない。
  実際の判断に当たっては、上記一から四までの各有価物判断要素の基準に照らし、適正な再生利用を行おうとする客観的な意思があるとは判断されない、又は主に廃棄物の脱法的な処分を目的としたものと判断される場合には、占有者の主張する意思の内容によらず廃棄物に該当するものと判断される。

第三 自ら利用について

 自ら利用についても、第二で規定する各有価物判断要素を総合的に勘案して廃棄物該当性を判断する必要がある。
 ただし、建設工事から発生した土砂や汚泥を、適正に利用できる品質にした上で、排出事業者が当該工事現場又は当該排出事業者の複数の工事間において再度建設資材として利用することは従来から行われてきたところであり、このように排出事業者が生活環境の保全上支障が生ずるおそれのない形態で、建設資材として客観的価値が認められる建設汚泥処理物を建設資材として確実に再生利用に供することは、必ずしも他人に有償譲渡できるものでなくとも、自ら利用に該当するものである。
 排出事業者の自ら利用についての実際の判断に当たっては、第二で規定する各有価物判断要素の基準に照らして行うこと。ただし、通常の取扱い形態については、必ずしも市場の形成まで求められるものでなく、上述の建設資材としての適正な利用が一般に認められることについて確認すること。また、取引価値(利用価値)の有無については第二の四の後段部分を参照すること。
 なお、建設汚泥の中間処理業者が自ら利用する場合については、排出事業者が自ら利用する場合とは異なり、当該建設汚泥処理物が他人に有償譲渡できるものであるか否かにつき判断されたい。

第四 その他の留意事項

 一 実際の利用形態の確認

  建設汚泥処理物の廃棄物該当性の判断については、建設資材等と称する建設汚泥処理物の不適正処理が多発している現状にかんがみ、当初の計画時は有価物に該当するとされたものであったとしても、実際の工事において必要以上の建設汚泥処理物を投入したり、計画に反する品質の建設汚泥処理物や施工方法が用いられたり、工事終了後、計画と異なる用途に用いられたりするような場合には、これらのことにつき合理的な理由が認められない限り、実際には当初から主に不要物の脱法的な埋立処分を目的としたものであったと考えられ、当該建設汚泥処理物は当初から廃棄物であったものと判断される。そのため都道府県(保健所を設置する市にあっては市。以下同じ。)においては、必要に応じ法第18条第1項に規定する報告徴収又は法第19条第1項に規定する立入検査(以下「報告徴収等」という。)を実施し、当初の計画が確実に実施されていることを確認する必要がある。
  また、都道府県にあらかじめ相談することなく事業を行い、その結果として建設汚泥処理物を廃棄物として不適正に処理した疑いがある事案においては、報告徴収等を通じた現場の状況の確認及び当該建設汚泥処理物の採取・分析、関係資料の収集並びに関係者からの事実確認等を行い、第二で規定する各有価物判断要素の基準に基づき厳正に廃棄物該当性を判断されたい。

 二 建設汚泥の再生利用に係る環境大臣による認定制度及び都道府県知事による指定制度

  法第15条の4の2の規定による環境大臣の認定を受けた者が、当該認定基準に適合して再生した建設汚泥処理物については、必ずしも有償譲渡されるものではなくとも、工事に係る計画等から、当該建設汚泥処理物について、客観的な価値を有する建設資材に利用され、当該用途に係る適正な、かつ生活環境の保全上支障が生ずるおそれのない品質、利用量及び施工方法が確保され、かつ、これらのことを客観的に担保できる体制が明示された具体的な計画があらかじめ定められていることから、当該建設汚泥処理物はその再生利用先への搬入時点において、建設資材として取引価値(自ら利用する場合には利用価値)を有するものとして取り扱うことが可能である。
  また、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号)第9条第2号及び第10条の3第2号の規定による都道府県知事又は保健所設置市市長による建設汚泥の再生利用に係る指定制度(以下「指定制度」という。)において、環境大臣の認定制度と同等の判断基準等が採用されている場合には、当該指定制度の下で再生された建設汚泥処理物について同様の取扱いをして差し支えない。

 三 都道府県知事による指定制度に係る通知の発出

  上記二の要件を満たす指定制度については、本通知の趣旨を踏まえ、追って新たにその運用について通知する予定である。