法令・告示・通達
建設・解体工事に伴うアスベスト廃棄物処理に関する技術指針・同解説の送付について
衛産43号
(各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部(局)長あて厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知)
産業廃棄物処理行政の推進については、かねてから種々御尽力いただいているところである。
アスベスト廃棄物の適正処理については、先に通知したところであるが、今般、(社)日本廃棄物対策協会に依頼して検討を進めてきた「建設・解体工事に伴うアスベスト廃棄物処理に関する技術指針・同解説」が別添のとおり取りまとめられたので、本指針を踏まえてアスベスト廃棄物の適正処理が図られるよう、アスベスト除却等の工事業者、産業廃棄物処理業者等の関係者に対し、周知徹底に努められたい。また、アスベスト廃棄物の受入処分場の確保、跡地管理等についても留意されたい。
別表
建設・解体工事に伴うアスベスト廃棄物処理に関する技術指針・同解説
(昭和六三年七月)
(社団法人日本廃棄物対策協会)
まえがき
アスベストは耐熱性、耐火性、吸音性等優れた特性を有するために、有史以前から用いられ、特に近代に至り量産が可能となるのに伴つて使用量が増大し、建築物のほか種々の目的に使用されてきた。しかし、近年アスベストを取り扱う労働者が飛散したアスベスト繊維を吸入することにより生じる健康障害が知られるようになつたことから、特に労働衛生分野において研究が進められ、その成果を踏まえて労働環境における規制が進められてきた。
最近では、非労働環境内における低濃度アスベストによる健康影響に関して社会的関心が高まり、主として建築物内の吹付けアスベストを除去が行われるようになつた。低濃度アスベストの人体への影響については、未だ確たる証跡が得られているとは言い難いが、排出者、処理者は建築物の除去・解体工事に伴つて排出される、アスベストを含む廃棄物処理に当たつて、大気中にアスベスト繊維を飛散させないよう可能な努力をする責務があるといえる。このため、今日ますます重要性が増しているアスベストを含む建設系廃棄物の処理に当たつての適切な処理方法を、具体的な指針として示す必要が生じてきた。
こうした状況を踏まえて、厚生省において昭和六二年八月(社)日本廃棄物対策協会に建設系産業廃棄物の処理方法に関するガイドライン策定のための検討を依頼した。これを受けて同協会では、「建設・解体工事廃棄物処理研究会」を同年九月に発足させ、「アスベスト小委員会」をその傘下に位置付けた。研究会全体の設置期間は二か年の予定であるが、同委員会については問題の緊急性にかんがみ、一年程度を目途に一応の結論を得るべく努力してきた。委員会では主として文献調査にあたるとともに、同年一一月には米国及びヨーロッパにそれぞれ二名の委員から成る調査団を派遣するなど鋭意検討を続けてきた。
この報告書は、アスベストを含む廃棄物を取り扱う際の留意すべき点を項目別に記載、解説を付したものを報告書として取りまとめたものである。
短期間の検討のため、例えば中間処理の在り方等、今後の技術開発や実証実験に待つところも少なくないが、現段階においてはおおよその合意の得られる指針を示したものと考える。
本報告書がアスベストを含む廃棄物を排出、処理する方々の手引きとなり、かつ円滑な行政の推進に役立つことを願うものである。
昭和六三年七月
(社)日本廃棄物対策協会理事長
建設・解体工事に伴うアスベスト廃棄物処理に関する技術指針・同解説
目次
- 1 総則
- 1.1 目的
- 1.2 定義
- 1.3 適用範囲
- 2 処理計画
- 2.1 処理計画書
- 2.2 処理経路
- 2.3 処理計画書の内容
- 3 処理委託
- 3.1 委託契約
- 3.2 委託の実施
- 4 発生現場における保管
- 4.1 飛散防止
- 4.2 保管
- 4.3 表示
- 5 収集・運搬
- 5.1 分別収集・運搬
- 5.2 飛散防止
- 5.3 運搬車両
- 6 中間処理
- 6.1 コンクリート等固化
- 6.2 その他の中間処理
- 7 最終処分
- 7.1 最終処分
- 7.2 最終処分場
- 7.3 最終処分場の管理
- 7.4 埋立方法
- 付属資料
/1 建設・解体工事廃棄物処理研究会委員名簿/2 「アスベスト(石綿)廃棄物の処理について(通知)」環水企第317号・衛産第34号 昭和62年10月26日/3 「建築物の解体または改修の工事における労働者の石綿粉じんのばく露防止について」労働省基安発第34号 昭和61年9月6日/4 アスベストの現況と生体影響/}略
1 総則
1.1 目的 本指針は、工作物の建設・解体工事(改修工事を含む)に伴つて発生する飛散性アスベストを含む廃棄物について、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に沿つて、適正な処理を行うための具体的な手順について規定することを目的としたガイドラインである。
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(解説)
本指針は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」という。)に沿つて、生活環境の保全のために現在実行しうる最も適当な保管、収集・運搬、処分の手順を示すことを目的とする。
1.2 定義 本指針で用いる用語の定義は、次の通りである。
飛散性アスベスト廃棄物:吹付けアスベスト、アスベスト保温材等、容易に一般大気に飛散するおそれのあるアスベストを含む廃棄物をいう。
非飛散性アスベスト廃棄物:アスベストを含む廃棄物のうち、飛散性アスベスト廃棄物以外のものをいう。
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(解説)
- (1) アスベストを含む廃棄物は、廃棄物処理法上の分類では、建設廃材、ガラスくず及び陶磁器くず、廃プラスチック類等又はそれらの混合物に該当する。
表―1 建設・解体工事(改修工事を含む)に伴う飛散性アスベスト廃棄物の具体例種類具体例建設廃材○工作物の吹付けアスベスト除去物ガラスくず及び陶磁器くず○保温材、断熱材廃プラスチック類○仮設養生プラスチックシート○HEPAフィルター○プラスチック系特殊作業服、靴カバー○室内掃除用スポンジ- 〔注1〕 HEPAフィルター:High Efficiency Paticulate Air Filter(超高性能微粒子フィルター)の略称
- 〔注2〕 ダクト、配管をアスベスト保温材付きで廃棄する場合には、金属くずとガラスくず及び陶磁器くずの混合物となる。
- (2) 飛散性アスベストは、軽く接触したり、気流があたつたりするだけで材料に含まれているアスベストが空気中に飛散するおそれのあるもので、感覚的には、手で容易にもみほぐすことができるものをいう。飛散性アスベストには、吹付けアスベスト除却物(6.1に示す措置を講じたものを含む)、保温材等がある。
- (3) 非飛散性アスベストには、石綿スレート、石綿管、パルプセメント板、ビニールタイル等がある。
- (4) 吹付けアスベスト除去等の工事において用いられたプラスチックシート、作業衣等の作業関連用具は、多量のアスベストが付着しているおそれがあるので、飛散性アスベスト廃棄物をみなす。
1.3 適用範囲 本指針はアスベストを含む廃棄物のうち、飛散性アスベスト廃棄物(以下「アスベスト廃棄物」という。)の処理について適用する。
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(解説)
- (1) アスベストを含む廃棄物のうち最も問題となるのは飛散性アスベスト廃棄物の処理である。本指針は主として吹付けアスベスト除去等の工事により発生したアスベスト廃棄物の処理について記述されているが、その他の飛散性アスベストについてもこの指針を適用するものとする。
- (2) 非飛散性アスベスト廃棄物とみなすことのできるアスベスト成型品については、それらが破断、粉砕されている場合にはアスベストが飛散することが考えられるものもあるので取扱いに注意を要する。
なお、今後非飛散性アスベスト廃棄物について必要な調査を行い適正処理の指針を示すこととしている。
2 処理計画
2.1 処理計画書 排出事業者は除去等の工事によつて発生したアスベスト廃棄物の処理に先立ち、作業者に対するアスベスト粉じんのばく露を防止し、周辺環境に対する汚染を防止するために適切な処理計画書を作成しなければならない。
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(解説)
- (1) 排出事業者とは、除去等の工事における元請業者であり、廃棄物処理法上、工事から発生する廃棄物の適正な処理の責任を負つている。
- (2) 発注者は工事着工前にアスベスト廃棄物の処理計画書を元請業者より提出させる。また、工事終了後、処理伝票等の写しを添付した廃棄物処理報告書を提出させ、適正処理を確認する。
- (3) 排出事業者は契約条件、設計図、仕様書、質疑応答事項、事前調査資料等の除去等の工事条件を十分理解して処理計画書を作成する。
- (4) 処理計画書の作成にあたつては、この指針に基づく他、国、地方公共団体の関係通知、指針等に留意するとともに、除去工事業者等と作業手順・工程等について事前に綿密な打合せを実施する。
2.2 処理経路 処理計画書の作成にあたつては、処理経路を明確にして、保管、収集・運搬、中間処理及び最終処分の各々について計画する。
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(解説)
- (1) 一般的な処理経路は次の2通りである。なお、中間処理としては、コンクリート等固化の他に熱処理してガラス化する方法(溶融)及び薬品で無害化する方法(化学処理)等があるが、現在、開発中である。
図―1 アスベスト廃棄物の処理経路 - (2) 処理経路ごとの留意事項は次のとおりである。
- 1) 排出にあたつては、湿潤化するなどの飛散防止措置を講じなければならない。
- 2) アスベストの飛散を防止するために、コンクリート等により固化する場合もあるが、それによる飛散の低減について十分な知見がないので、現段階ではコンクリート等固化したものを非飛散性アスベスト廃棄物として取り扱うことができず、最終処分に至るまで飛散性廃棄物として取り扱わなければならない。
- 3) アスベスト廃棄物の運搬は他の廃棄物との混載を避け、専用車とする。その際、パレット積み、又はコンテナに保管することにより、収集の際に飛散を防止することができる。
- 4) アスベスト廃棄物は、保管・積換え施設を経由することなく、最終処分場へ直送する。
- 5) アスベスト廃棄物の最終処分にあたつては、計画時に、最終処分場の受入れ基準、処分料金等を調査する。
2.3 処理計画書の内容 処理計画書は、除去等の工事からの排出状況を十分考慮した処理工程表及び現場内での保管方法、収集・運搬方法、最終処分方法、中間処理方法について各々具体的に記述する。
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(解説)
- (1) 処理計画書については、アスベスト廃棄物の性状、量、飛散防止措置、収集トラック荷台等への積込み方法、運搬時の安全対策、異常時の対策、最終処分業者との搬入についての事前調整、作業員教育等について明確にする。
- (2) 処理計画書は、2.2に示す処理経路ごとに各々の計画内容を記述する。なお、処理計画・作業手順等については、除去等の工事業者及び処理業者と協議する。
- (3) 処理計画書には次の事項を記載する。
- 1) 工事概要
- ア 工事名称、工事場所
- イ アスベスト廃棄物の種類・性状・発生量
- ウ 処理体制(図―2参照)
- エ 緊急連絡体制
- オ 処理伝票の管理方法等
- カ その他
- 2) 保管
- ア プラスチック袋等の保管方法及び保管場所
- イ アスベスト廃棄物飛散防止措置の方法
- ウ アスベスト廃棄物の保管場所であることを表示する立札等の取付方法
- エ その他
- 3) 収集・運搬
- ア 搬出予定日時
- イ アスベスト廃棄物の形状、量
- ウ 運搬経路
- エ 積込み方法
- オ 運搬車両荷台の覆い方法
- カ プラスチック袋等の破損時等の対応策
- キ その他
- 4) 最終処分
- ア 最終処分場
- イ 荷降し方法
- ウ 埋立場所
- エ 埋立方法
- オ その他
- 5) コンクリート等固化
- ア 作業手順
- イ 飛散防止措置の方法
- ウ 使用機材
- エ 配合計画
- オ その他
- 6) 添付書類
- ア 産業廃棄物処理委託契約書
- イ 委託処理業者の許可証(写)
- ウ 最終処分現場地確認写真
図―2 廃棄物処理体制組織図(例)
- 1) 工事概要
3 処理委託
3.1 委託契約
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(解説)
- (1) 委託契約は排出事業者が、収集・運搬業者及び最終処分業者(又は中間処理業者)とそれぞれに直接の契約をする(最終処分業者(又は中間処理業者)を以下「最終処分業者等」という。)。
契約形態には次のようなものがあるが、2者契約の形態が望ましい。- 1) 2者契約:排出事業者と収集・運搬業者及び排出事業者と最終処分業者等の契約。
- 2) 3者契約:排出事業者と収集・運搬業者及び最終処分業者等の契約。
- 3) 4者契約:上記の3者契約者と更に除去等の工事を直接施行する下請け業者を加えた契約。
図―3 産業廃棄物処理伝票の流れと処理の契約 - (2) 委託契約に際しては、事前に処理業者から許可証の写しを受け取り、次の項目について確認するとともに、事前に現場調査や写真撮影などによつて最終処分場の状況を確認する。
- ア 営業の種別
- イ 産業廃棄物の種類
- ウ 処理能力
- エ 許可の条件及び期限
図―4 産業廃棄物許可証の例
- (3) 廃棄物処理法においては廃棄物の処理委託の際、運搬の再委託は一度だけ認めている。しかし、アスベスト廃棄物の運搬において再委託を行つてはならないこととしたのは、処分までの課程における積換え等の作業に伴う再飛散の危険等を極力防止するためである。
3.2 委託の実施 排出事業者は、アスベスト廃棄物の処理を委託したときは、処理計画書に基づき適正に処理されていることを確認する。
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(解説)
- (1) 排出事業者は、収集・運搬の委託に際しては、処理計画書通りに運搬経路、積込方法、緊急時の対応策について運搬業者に指示する。
- (2) 排出事業者は、最終処分業者等から処理伝票を受け取り処分の確認を行うとともに記録し保存する。
- (3) 排出事業者は、最終処分の状況を現地立合いにより確認し、写真を記録に残すことが望ましい。
4 発生現場における保管
4.1 飛散防止 排出事業者は、アスベスト廃棄物が運搬されるまでの間、アスベストの飛散を防止するため当該物を湿潤化させる等の措置を講じた後、原則として次のいずれかの方法により、アスベストの飛散防止を図る。
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(解説)
- (1) アスベスト廃棄物を湿潤化させる方法としては、散水、発じん防止剤散布等がある。
- (2) アスベスト廃棄物を入れるプラスチック袋又は容器は、工事現場における取扱い、積込・荷降しの作業条件を十分に考慮して、容易に破損等の恐れのないものを使用する必要がある。
- (3) プラスチック袋は、厚さが0.15mm以上のものが望ましい。二重にこん包するとしたのは、袋の破損防止を図ることと、袋の外側に付着したアスベストの飛散防止のため、もう一つ袋を被せることとしたものである。
二重にこん包する手順は次のとおりである。- 1) 除去等作業場所において、発じん防止剤等により湿潤化させたアスベスト廃棄物をプラスチック袋の中に入れ、密封する。
なお、この際袋中の空気をよく抜いておくことが大切である。これは、収集・運搬、処分の時に袋が圧力を受けて破損しアスベストが飛散することを防ぐためである。 - 2) 前室で高性能真空掃除機等により、プラスチック袋に付着している粉じんを除去する。
- 3) 保護衣等着脱室で、更にプラスチック袋をかぶせ密封する。
図―5 隔離区域の代表的構成 - (4) 堅牢な容器とは、ドラムかん等の密閉容器をいう。
- (5) コンクリート等により固化する場合は6.1による。
- 1) 除去等作業場所において、発じん防止剤等により湿潤化させたアスベスト廃棄物をプラスチック袋の中に入れ、密封する。
4.2 保管
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(解説)
- (1) アスベスト廃棄物を保管する場合は、4.1に示す飛散防止措置を講じた後行う。
ただし、アスベスト除去現場からバキュームポンプ等を利用し、密閉できる保管容器に直接入れるような場合は、この限りではない。なお、バキュームポンプを利用する場合は、HEPAフィルター付きの集塵装置を備える。 - (2) 保管場所、保管方法の検討にあたつては、積込の際のアスベスト飛散にも配慮する。
なお、保管方法として、コンテナを利用することは、積込の際の飛散を防止する上で有効な手段である。
4.3 表示 アスベスト廃棄物を収納するプラスチック袋又は容器には、個々にアスベスト廃棄物である旨を表示する。
また、アスベスト廃棄物の保管場所には、作業員の見やすい箇所にアスベスト廃棄物の保管場所であることを表示する立札等を設ける。
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(解説)
- (1) アスベスト廃棄物であることの表示は、その処理過程における不適当な取扱いを防止するための措置である。
- (2) プラスチック袋等には下記事項を記入する。
- ア アスベスト廃棄物であること
- イ 取扱いの注意事項
- ウ その他
- (3) 保管場所の立札等には下記事項を表示する。
- ア アスベスト廃棄物の保管場所であること。
- イ 取扱いの注意事項
- エ その他
5 収集・運搬
5.1 分別収集・運搬 アスベスト廃棄物の収集・運搬にあたつては、他の廃棄物と混載してはならない。また、保管・積換え施設を経由せず最終処分場へ直送しなければならない。
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(解説)
- (1) 収集・運搬を行う者は、アスベスト廃棄物の収集・運搬にあたり、次の点に留意すること。
- 1) アスベスト廃棄物は、他の廃棄物と同一の車両に混載してはならない。混載した場合には他の廃棄物もアスベスト廃棄物として扱うこと。
- 2) アスベスト廃棄物を最終処分場へ直送することとしたのは、先に記述したように再飛散の危険を極力少なくしようとするための措置であり、異なる工事現場からアスベスト廃棄物を収集することを防げるものではない。
- (2) 排出事業者は、除去等の工事現場よりアスベスト廃棄物を搬出するにあたり、他の廃棄物と混載していないことを確認する。
5.2 飛散防止 アスベスト廃棄物の収集・運搬にあたつては、アスベスト廃棄物をこん包したプラスチック袋の破損等によりアスベストを飛散させないよう慎重に取扱う。
なお、プラスチック袋の破損等により、アスベストの飛散のおそれが生じた場合には、速やかに散水し又は覆いをかける等の措置を講じた後、適切に処理する。
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(解説)
- (1) アスベスト廃棄物の収集・運搬を行う者は、積込・運搬の各過程でアスベストを飛散させないよう慎重に取扱わねばならない。プラスチック袋等の積込みは、原則として入力で慎重に行なう。また、重機を利用する場合には、パレット等を利用し、重機が直接プラスチック袋等に触れないようにする。
- (2) 万一、プラスチック袋等の破損が生じた場合には、速やかに散水等により、飛散防止措置を行い、新たに二重のプラスチック袋でこん包する。
5.3 運搬車両 収集・運搬を行うものは、アスベスト廃棄物の運搬にあたり、運搬車両の荷台に覆いをかけなければならない。
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(解説)
- (1) プラスチック袋等の場合には、破損のないシート等でプラスチック袋を包み込むように覆いをかける。コンクリート等固化物をプラスチック袋に入れたものは、運搬途中の移動、転倒により袋が破損しないようクッション材等の措置を講ずる。
- (2) 容器の場合には、運搬の際に荷台での転倒、移動を防ぐための措置を講ずる。
- (3) 運搬時にプラスチック袋等の破損が生じた車両のシート等は、アスベスト廃棄物として処理する。又、荷降し後、荷台等の清掃を確実に行う。
6 中間処理
6.1 コンクリート等固化 アスベストの飛散防止措置として、コンクリート等により固化する方法がある。これらの措置を行う際には、アスベストが飛散することのないよう十分留意する。
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(解説)
- (1) 現在、アスベスト廃棄物のコンクリート等による固化については、どの程度の飛散防止効果があるか確実なデータは少ない。しかし、収集・運搬作業、埋立作業、埋立跡地の再掘削等によるアスベスト再飛散の可能性を考慮すると、より安全・確実な処理方法である。
- (2) コンクリート等による固化作業は、一般大気へのアスベスト飛散及び作業員の健康保護のため、除去等の工事に準じて隔離区域内で行う。(「既存建物の吹付アスベスト粉じん飛散防止処理技術指針・同解説」日本建築センター発行 参照)
- (3) コンクリート等による固化作業は、原則としてアスベスト廃棄物の排出現場で行う。元請業者以外のものがこの作業を行うときは、中間処理業の許可が必要である。
- (4) コンクリート固化については、以下の要領による。
- 1) コンクリート固化作業に際し、使用するミキサーの種類、配置、作業手順、養生方法等について事前に計画をたてる。
- 2) 配合比(アスベスト:セメント:水)は、アスベストの種類、状態等により異なるので各現場で試験棟を行い事前に決定しておく。
- 3) 除去したアスベスト廃棄物と水硬性セメント等との混練に際しては、コンクリート固化物の表面に塊状のアスベストが露出すること等ないように十分に混合させる。
- このためには、ローラーミキサー、スクリューミキサー等のある程度破砕・粉砕能力のある混練機を使用することが望ましい。
- 4) 混練されたまだ硬化しないアスベストとセメントの混合物はプラスチック袋に密封して養生する。養生中の現場での保管は、4.1~4.3による。
- 5) 現場からコンクリート固化物を排出する手順は、4.1解説(3)による。なお、コンクリート固化したものは、建設廃材とガラスくず及び陶磁器くずの混合物に該当する。
- 6) 作業に使用した機械・器具等は、使用後、湿つたスポンジ、ワイパー等にて確実に清掃を行う。また、使用したスポンジ、ワイパー等はアスベスト廃棄物として処理する。
6.2 その他の中間処理 アスベスト廃棄物の処理にあたり、コンクリート等による固化以外の方法により、飛散、流出防止のための中間処理を行う場合には、事前に地方公共団体の産業廃棄物担当部局と協議する。
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(解説)
- (1) アスベスト廃棄物の中間処理技術として、薬品固型化、ガラス溶融固化、プラスチック溶融固化、真空薬剤処理等も考えられるが、その飛散防止効果、実用性、当該中間処理における環境影響等において不明な点が多い。
7 最終処分
7.1 最終処分 アスベスト廃棄物の最終処分は、埋立処分により行うこととし、都道府県知事等に届出がなされた最終処分場で行う。
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(解説)
- (1) アスベスト廃棄物の最終処分は、埋立処分により行うこととし、原則として海洋投入処分を行つてはならない。
- (2) アスベスト廃棄物の埋立については、原則として廃棄物処理法第15条第1項の届出がなされた処分場で行うこととする。この措置は、埋立場所を届出がされた処分場に限定することにより、アスベスト廃棄物の埋立作業、埋立跡地の再掘削による再飛散を防止し、埋立記録の保存等を容易にするためである。
- (3) アスベスト廃棄物を受入れることのできる最終処分場は、1.2解説(1)表―1に示す種類の廃棄物について許可を受けていることが必要である。
7.2 最終処分場 アスベスト廃棄物を処分する最終処分場は、廃棄物処理法に定める廃棄物の最終処分場の構造・維持管理の技術上の基準に適合したものでなければならない。
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(解説)
最終処分場の構造・維持管理の技術上の基準は、「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令」(昭和52年3月14日、総理府令、厚生省令第1号)による。
7.3 最終処分場の管理 アスベスト廃棄物を受入れる最終処分業者は、処分場の適正な管理を行うため次のような措置を講ずる。
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(解説)
- (1) 最終処分業者は、アスベスト廃棄物を受入れるにあたり、事前に次の事項について受入れ要領を定めておく。
- ア 埋立場所
- イ 荷降しの方法
- ウ 人員・機材の配置
- エ その他
- (2) 受入れ契約時には、次の事項について関係者間で十分打ち合せる。
- ア 受入れ予定日時、アスベスト廃棄物の形状・量
- イ 2.3解説(3)4)による事項
- (3) 最終処分業者は、アスベスト廃棄物を受入れるにあたり、車両ごとに処理伝票確認と現物目視により、他の廃棄物と混載していないことを確認しなければならない。混載されている場合は、混載されているすべての廃棄物をアスベスト廃棄物として処理し、その旨排出事業者に届出なければならない。
- (4) 最終処分業者は、閉鎖後の跡地管理のため、記録をとり保存することとするが、その記録には次の事項を記載しておく。
- ア 排出事業者
- イ 埋立時期
- ウ 埋立方法
- エ 埋立量
- オ 埋立場所を示す平面配置図・断面図
- カ 最終処分場の管理者(技術管理者名)
- キ その他
- (5) 最終処分の記録は永久に保存する必要があるので、処分場の閉鎖後において土地の権利移動の際には、新たな権利者へアスベスト廃棄物の管理記録を引き継がなければならない。
7.4 埋立方法
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(解説)
- (1) アスベスト廃棄物の最終処分場における取扱いで最も重要な点はアスベストの一般大気への飛散防止である。
- (2) アスベスト廃棄物を埋立てる場所の選定にあたつては、搬入路の確保、風向き、跡地管理等を考慮する。
- (3) 溝又は穴に埋立てることとしたのは、作業用重機等によるプラスチック袋等の破損を防止するためである。
- (4) 溝又は穴の容量は、搬入予定量によるほか、幅は狭く深さは可能な限り深くした方が破損防止には効果的である。なお、掘削作業に際しては、労働安全衛生法による規定を遵守する。
- (5) 埋立ては、溝又は穴に埋立てることを原則とするが、これと同程度の破損防止効果がある埋立工法を採用してもよい。例えば、埋立場所に十分な覆土が仮設養生材等を施工することにより、プラスチック袋等の破損を防止することもできる。
- (6) プラスチック袋又は容器に入つたまま埋立てるのは、アスベスト飛散量を最小限におさえるためで、入力投入はプラスチック袋等の破損を防止するための措置である。
- (7) 作業終了後の覆土までの応急飛散防止措置として、投入前に袋・容器等が破損しているときには十分に水でぬらしてから埋立てる。
また投入時、袋・容器が破損しアスベストが露出している部分には散水し乾かないようにするか、一時的な覆土を行う。 - (8) 1日の作業終了時に行う覆土は、風雨により消失しないようにするため厚さ15cm以上行うものとする。
- (9) 埋立跡地の再掘削によるアスベストの飛散を防止するため、万一再掘削された場合でもアスベスト廃棄物の埋立場所が確認できるように埋立場所全面にシートで覆う等、目印を設ける。
- (10) 荷降しの完了後は、運搬車両の荷台にアスベスト廃棄物が残つていないことを確認する。
付属資料 略